前回からの変化
変わったこと(変化・新規)
- 米8月CPI(消費者物価指数)が9/11(米東部時間朝)に発表され、季節調整済み前月比は+0.4%(予想+0.4%と一致)、前年比は+3.4%(予想と一致)だった。焦点だったコアCPIは前月比+0.3%(予想を0.1ポイント上回る)、前年比+2.4%(予想と一致)。ガソリン価格が前月比3.9%上昇(前年比27.4%上昇)し、全体の押し上げ分の3分の1超を占めた(BLS)。前回レポートで注目イベントとして挙げていた指標がこの日確定した形で、結果自体は予想通りだったが、前日発表のPPI上振れと合わせて2会合連続の利上げ観測をさらに固める内容だった。
- CPI発表直後、9月FOMCでの25bp利上げ観測は一時90%近くまで急伸した(財経新聞)。その後、原油価格の反落やミシガン大学指数の下振れを受けてポジションが一服し、CME FedWatch(growbeansprout.com集計、9/11時点)では69.3%で落ち着いた。前回レポート時点の55〜60%前後から明確に切り上がっている(growbeansprout.com)。決定済みの事実ではなく、あくまで市場の織り込みの変化である点に留意。
- 米9月ミシガン大学消費者信頼感指数(速報値)は47.8と、予想51.0・8月51.7を大きく下回り、5月以来の低水準に落ち込んだ。1年先期待インフレ率は4.6%(予想4.2%、8月4.0%)、5〜10年先期待インフレ率は3.4%(予想3.3%、8月3.3%)と、いずれも上振れした(財経新聞)。消費者マインドの悪化とインフレ期待の上振れが同時に進む、いわゆるスタグフレーション的な組み合わせが金利観に新たな不確実性を加えている。
- 米10年債利回りは9/11の取引時間中に一時4.96%まで上昇し、2023年以来の高水準を更新した。引け近辺では4.95%前後で推移し、心理的な節目とされる5%に接近している(Bloomberg、財経新聞)。前回(9/10、日中一時4.91%)からさらに上振れした形。米2年債も4.56%前後まで上昇し、前回(9/9時点4.44%)から水準を切り上げた。
- 米財務省が9/10に実施した220億ドル規模の30年債入札の結果が9/11に伝わり、最高落札利回りは5.308%と2001年以降で最高を記録した一方、テールはマイナス2.7bp、応札倍率2.61倍(過去6回平均2.38倍を上回る)、間接入札者(海外中銀・大手機関投資家)比率79.5%と、利回り上昇局面にもかかわらず需要自体は底堅かった(財経新聞)。前回レポートで伝えた長期債買戻しオペの上限未達(失望材料)とは対照的な結果で、市場の反応が一様でないことを示している。
- 独10年債(Bund)利回りは3.51%(9/11)まで上昇し、2009年8月以来の高水準を更新した(Trading Economics)。前回(9/10時点3.44%)からさらに切り上がった。
- 日本の10年国債利回りは9/11に2.973%まで上昇し、前回(9/10時点2.900%)から+7bp程度切り上がった。長期国債先物(2026年9月限)は125円74銭で引けた(財経新聞)。米欧金利上昇の波及に加え、後述する日銀の利上げ観測強まりが背景とみられる。
- 日本経済新聞など複数の報道によれば、日銀は9/17-18の金融政策決定会合で政策金利を現行の1.00%から1.25%へ引き上げる方向で調整に入ったと伝えられている。実現すれば6月会合以来3カ月ぶりの利上げで、1.25%は1995年以来31年ぶりの高水準となる。原油高・円安由来の物価上振れリスクを抑える狙いとされ、植田総裁ら執行部が提案し政策委員の賛成多数で決まる見通しという(日本経済新聞)。これはあくまで報道ベースの観測であり、日銀が正式に決定した事実ではない点に注意が必要。前回レポートで伝えた増委員の「加速」発言と整合的な内容である。
- 米国の株式市場は9/11、前日までの4営業日続落から一転して反発した。NYダウは509.19ドル高(+0.98%)の52,573.29ドル、S&P500は+0.86%の7,656.98、ナスダック総合は+0.96%の26,333.04で取引を終えた。CPIが予想通りだったことへの安心感と、原油価格の反落が支えとなった(TheStreet)。金利上昇局面でも株式が反発したのは前回までとは異なる動きである。
昨日と同じこと(継続)
- FOMC(9/15-16開催)前のブラックアウト期間(9/5〜9/17)は継続しており、FRB高官の新規発言は確認できない。現FRB議長のケビン・ウォーシュ氏も同様にブラックアウト中は公の場での金融政策に関する発言を控えている。
- ハイイールドスプレッド(ICE BofA)はおおむね2.66%前後で前回からほぼ横ばいに推移しており、信用市場に不安の兆候は見られない。
- 米・イラン間の軍事衝突は収束の兆しがなく、原油価格の高止まり(および乱高下)を通じたインフレ懸念が金利観に影響を与え続けている。
- ドル指数(DXY)は98.7台で、前回(9/9時点98.77)からほぼ横ばい。
- 為替介入に関する新たな当局者発言・実弾介入の観測は本日時点でも確認できない。
要因の連続性
- 継続要因: FOMCブラックアウトによるFRB高官発言の空白、米・イラン軍事衝突の長期化とそれに伴う原油高・インフレ懸念、独・JGB金利の高水準圏での上昇基調。
- 新規要因: 米8月CPI発表とそれに伴うFOMC利上げ観測の急伸(55〜60%→一時90%近く→69.3%に落ち着く)、ミシガン大学指数の急落とインフレ期待の上振れ、日銀1.25%利上げの観測報道、米30年債入札の底堅い結果。
- 解消した要因: 特になし(前回挙げた要因はいずれも継続中で、明確に後退したものは確認できなかった)。
1. 金利サマリー
| 対象 | 水準(取得時点) | 前回比 | 主な変動要因 |
|---|---|---|---|
| 米2年債 | 4.56%前後(9/11) | 9/9時点の4.44%から+12bp程度 | FOMC利上げ観測の急伸 |
| 米10年債 | 4.95%前後(9/11)、日中一時4.96% | 9/10終値の4.84%から+11bp程度 | CPI通過後もタカ派観測が優勢 |
| JGB10年債 | 2.973%(9/11) | 9/10時点の2.900%から+7bp程度 | 米欧金利上昇の波及、日銀利上げ観測 |
| 独10年債(Bund) | 3.51%(9/11) | 9/10時点の3.44%から+7bp程度 | 2009年8月以来の高水準を更新 |
| ドル円 | 153円24銭前後(9/11 NY引け)、高値154円48銭 | 9/10引けの153円85銭からやや円高 | CPI受けのドル買いと原油安・ミシガン指数悪化によるドル売り戻し |
米10年物TIPS(物価連動国債)利回り・ブレークイーブンインフレ率の9/11時点の確度の高い最新値は、今回のリサーチでは確認できなかった。米2年・10年のスプレッドはプラス圏(順イールド)を維持しているとみられる。ドル指数(DXY)は98.7台で、9/9時点の98.77からほぼ横ばい。
2. 中央銀行の動き
FRB
FRBは引き続きFOMC(9/15-16開催)前のブラックアウト期間(9/5〜9/17)にあり、現議長ケビン・ウォーシュ氏を含め新規の高官発言は確認できない。市場の織り込みについては、米8月CPI発表直後に25bp利上げ観測が一時90%近くまで急伸したのち(財経新聞)、原油安やミシガン大学指数の下振れを受けてやや後退し、CME FedWatch(growbeansprout.com集計、9/11時点)では69.3%で推移している(growbeansprout.com)。前回レポート時点(55〜60%前後)から明確に切り上がっており、決定済みの事実ではなく観測段階である点は変わらない。
日銀
日本経済新聞など複数の報道によれば、日銀は9/17-18の決定会合で政策金利を現行の1.00%から1.25%へ引き上げる方向で調整に入ったと伝えられている(日本経済新聞)。実現すれば6月会合以来3カ月ぶり、1.25%は1995年以来31年ぶりの水準となる。原油高・円安由来の物価上振れリスクの抑制が狙いとされ、植田総裁ら執行部が提案し政策委員の賛成多数で決まる見通しという。あくまで報道ベースの観測であり、日銀による正式決定ではない点に注意。国債買い入れオペの運用方針について、本日時点で新たな変更は確認できなかった。
ECB・その他
ECBは前回(9/9-10)の理事会で決定した25bp利上げ(中銀預金金利2.50%、主要リファイナンス金利2.65%)を消化する段階にあり、本日時点で新たな高官発言・決定は確認できなかった。BOEなど他の主要中銀についても、今回検索時点で金利観に影響する大きな発言・決定は確認できなかった。
3. 経済指標
米国では8月分CPI(消費者物価指数)が発表され、季節調整済み前月比+0.4%(予想+0.4%と一致)、前年比+3.4%(予想と一致)となった。コアCPIは前月比+0.3%(予想+0.2%をやや上回る)、前年比+2.4%(予想と一致)。ガソリン価格が前月比3.9%上昇(前年比27.4%上昇)し、全体の押し上げ分の3分の1超を占めた(BLS)。前日発表の8月PPI(前年比5.4%)の上振れに続き、エネルギー価格主導のインフレ圧力が数字で改めて裏付けられた形である。
同日発表された米9月ミシガン大学消費者信頼感指数(速報値)は47.8と、予想51.0・8月51.7を大きく下回り、5月以来の低水準となった。1年先期待インフレ率は4.6%(予想4.2%、8月4.0%)、5〜10年先期待インフレ率は3.4%(予想3.3%、8月3.3%)といずれも上振れした(財経新聞)。物価上昇と消費者マインド悪化が同時進行しており、FOMCにとって利上げの是非を一段と難しくする材料といえる。
日本では、9/11時点で金利観に影響する新規の経済指標発表は確認できなかった。
4. 為替
ドル円は、財経新聞によると9/11のNY市場でCPI発表後に154円48銭まで上昇したのち、原油価格の反落やミシガン大学指数の下振れを受けたドル売りで153円24銭まで反落して引けた。CPIが予想通りだったことでいったんは利上げ織り込みのドル買いが優勢になったが、その後の弱い経済指標でポジション調整が入った格好である。ユーロドルは1.1569ドルまで下落したのち1.1615ドル前後まで反発。ポンドドルも1.3482ドルまで下落後1.3526ドルまで戻した(財経新聞)。前回(9/10引け153円85銭)からはやや円高方向だが、日中の振れ幅は前回に続き大きい。
為替介入については、新たな当局者発言・実弾介入の観測は本日時点で確認できなかった。
5. 債券需給
米国では、米財務省が9/10に実施した220億ドル規模の30年債入札の結果が9/11に伝わった。最高落札利回りは5.308%と2001年以降で最高を記録した一方、テールはマイナス2.7bp、応札倍率2.61倍(過去6回平均2.38倍を上回る)、間接入札者比率79.5%と需要自体は底堅かった(財経新聞)。前回レポートで伝えた長期債買戻しオペの上限未達(初回51.9億ドル、上限60億ドル)とは対照的な結果であり、次回の買戻しオペは9/24に予定されている(財経新聞)。クレジット市場では、ハイイールドスプレッド(ICE BofA)が2.66%前後と前回からほぼ横ばいで推移しており、信用不安の兆候は見られない。
日本国債では、本日時点で新たな入札の実施は確認できなかった。長期国債先物(2026年9月限)は125円86銭で始まり125円74銭で引けた(財経新聞)。日銀の国債買い入れオペの運用方針について、今回検索時点で新たな変更は確認できなかった。
6. 他資産への波及
米長期金利が節目の5%に接近する局面があったにもかかわらず、米国株は9/11に4営業日ぶりに反発した(NYダウ+0.98%、S&P500+0.86%、ナスダック+0.96%)。CPIが予想通りだったことへの安心感と原油安が支えとなり、金利上昇そのものよりも「インフレのさらなる悪化がなかったこと」を好感した形である(詳細はus_stockカテゴリ参照)。独10年債の高水準更新はユーロ圏の株式・信用市場にも同様の重しとなりうる。ドル円は金利差の拡大にもかかわらず前回からやや円高に振れており、財務省の買戻し失望や日銀の利上げ観測という円買い材料が、CPI受けのドル買いをある程度相殺した可能性がある。実質金利が明確に低下しない限り、金(ゴールド)は上値を抑えられやすい地合いが続くとみられ、暗号資産も引き続き金利観の変化に敏感な値動きが想定される。
7. 今夜の注目イベント
本日(9/12)は土曜日で米欧の主要市場は休場となり、日本時間今夜に予定されている大きな指標発表・入札はない。FOMC(9/15-16開催)前のブラックアウト期間(9/5〜9/17)が続くため、週明け以降もFRB高官の新規発言は見込まれない。来週の最大の注目は9/15-16のFOMCで、9/16午後(米東部時間)にウォーシュ議長の記者会見が予定されている。日本では9/17-18に日銀の決定会合が控えており、報道されている1.25%への利上げの是非が焦点となる。このほか9/14(月)にはカナダの8月CPIなど海外の指標発表が予定されている。
