前回からの変化
変わったこと(変化・新規)
- 英BOE(イングランド銀行)は9月17日、政策金利を3.75%で据え置くことを決定した。投票は9人中6対3で、3人は4.00%への利上げを主張した。前回(7/30会合)時点では「観測」だった据え置きが、実際の決定として確定した(Seoul Economic Daily)。
- BOEは同時に、QT(量的引き締め、保有国債の圧縮)のペースを大きく減速させると決定した。これまで年単位で行ってきたギルト(英国債)売却を8年かけて実施する方針に切り替え、2027年4月まで売却を停止する。BOE自身が「QTによる国債供給増がこれまで英国債利回りをおよそ0.25%押し上げてきた」と説明しており、需給面の圧力緩和を意図した新規の政策判断である(新規、Seoul Economic Daily)。
- 米財務省が実施した10年物TIPS(物価連動国債、190億ドル)の再入札で、実質利回りが2.653%となり、2008年10月以来およそ18年ぶりの高水準となった。一方で応札倍率は2.24倍にとどまり、この年限としては1年ぶりの低さで「さえない需要」と評価された。FRBの利上げ・追加利上げ示唆を受けて実質金利が急速に切り上がっている実態が、入札という一次データで裏付けられた形である(新規、TipsWatch)。
- 同入札で確認されたブレークイーブン(期待インフレ率)は2.30%で、実質金利の上昇ペースに比べてインフレ期待は落ち着いた水準にとどまっていることが新たに判明した(新規、同上)。
- 米8月住宅着工件数は前月比2.6%減の127.5万件(市場予想131.9万件、6.9%増を予想)と5月以来の低さとなり、着工許可件数も139.4万件(予想140.8万件)と予想を下回った。一方、9/12週の新規失業保険申請件数は19.6万件(予想20.7万件、前回20.6万件)へ減少し、7月に記録した1969年以来の低水準に次ぐ良好な結果となった。住宅の弱さが上回った形でドルが売られ、ドル円は155円91銭から155円34銭まで下落した(新規、財経新聞)。
- 米国株はFOMC後の急落(前回レポート既報、ダウ▲631.21ドル)から一夜明けて反発し、SP500は前日比0.59%高の7596ポイントで取引を終えた。半導体株の指数は3%上昇し、原油安による物価懸念の後退が支えとなった(新規、TheStreet)。
- サウジアラビアの被損パイプラインについて、サウジ・アラムコがホルムズ海峡近くのオマーン・ソハール港沖でのシップ・トゥ・シップ(瀬取り)輸送によりアジア向け供給を確保しつつあると伝わった。WTIは1バレル101.91ドル、ブレントは104.82ドルまで続落し、前回レポート時点(105ドル台・108ドル超)からさらに水準を切り下げたことが新たに判明した(新規、CNBC)。
- 金(ゴールド)はFOMC直後の下落分を取り戻し、1トロイオンス4,310.80ドル(前日比1.12%高)まで反発した。原油安がインフレ懸念とタカ派観測の双方を和らげたことが押し上げ要因となった(新規、USAGOLD)。
- JGB10年債利回りは9月17日時点で2.965%(財経新聞算出)となり、前回(9/16)2.995%から3.0bp低下した。日銀会合の結果発表を控え、方向感の定まらない狭いレンジでの推移となった(新規、財経新聞)。
昨日と同じこと(継続)
- 日銀は9月17・18日会合での結果発表(9/18午後、植田総裁会見15時30分予定)をなお控えている。政策金利1.00%→1.25%への引き上げ観測が大勢を占める構図は前回から変わっていない。
- 中東情勢の緊張(サウジのパイプライン攻撃を発端とする供給不安)という基本構図は変わっていない。復旧観測の進展で一服してはいるが、根本的なリスクは解消していない。
- ハイイールド(HY)債・投資適格(IG)債のクレジットスプレッドは前回に続き歴史的にタイトな水準を維持しているとみられ、信用不安の兆候は確認できない(本日時点で新規の確報なし)。
要因の連続性
- 継続要因: 日銀9月利上げ観測、FRBのタカ派スタンス・年内追加利上げ観測(9月のドットプロットを引き続き材料視)、中東情勢の緊張という地政学リスク、財政赤字・国債増発観測を背景とした米長期金利の高止まり傾向。
- 新規要因: BOEのQT減速決定(英国債の需給圧力緩和材料)、米10年物TIPS実質利回りの18年ぶり高水準(引き締め効果の強さを示す新指標)、米住宅指標の予想外の弱さ(ドル売り材料)、原油のさらなる下落(サウジの瀬取り輸送による供給確保進展)。
- 解消した要因: BOEの利上げ・据え置きを巡る不透明感(据え置き決定により解消)。米国株の急落基調は、半導体株中心の見直し買いと原油安を受けて一服した(完全解消ではなく反発の域)。
1. 金利サマリー
| 対象 | 水準(取得時点) | 前回比 | 主な変動要因 |
|---|---|---|---|
| 米2年債 | 4.68%(9/17、Trading Economics) | 前回(9/16)4.66%から+2bp | 労働指標の底堅さと住宅指標の弱さが綱引き |
| 米10年債 | 4.953%(9/17NY債券市場オープン時点、みんかぶ) | 前回(9/16)5.01〜5.02%から-6bp程度 | FOMC直後の急伸から一服 |
| JGB10年債 | 2.965%(9/17、財経新聞) | 前回(9/16)2.995%から-3.0bp | 日銀会合結果待ちで狭いレンジ |
| 独10年債(Bund) | 3.51%(9/17、Trading Economics) | 前回(9/16)3.504%からほぼ横ばい | 2009年以来の高水準圏で推移 |
| ドル円 | 155円34銭(9/17夜、米指標後) | 前回(9/16未明)155円88銭から円高方向 | 米住宅指標の弱さでドル売り |
米2年・10年のスプレッドはプラス圏(順イールド)を維持しているが、前回の35bp程度からやや縮小した。TIPS実質利回りの急上昇(2.653%)は、名目金利以上に「実質的な引き締め効果」が強まっていることを示している。
2. 中央銀行の動き
FRB
新規の会合・声明はないが、9月16日の利上げ決定とドットプロット上方修正を受けたタカ派姿勢が引き続き市場の主要材料になっている。ウォーシュ議長が示した「インフレは高すぎ、その状態が長く続いている」との認識を市場は消化し続けており、米10年物TIPSの実質利回りが18年ぶり高水準まで切り上がったことは、この引き締め姿勢が実体の金利水準に及び始めている一次的な証拠といえる(TipsWatch)。
日銀
9月17・18日の日程で開催中の金融政策決定会合は、結果発表・植田総裁会見を9/18午後に控えたままである。政策金利1.00%→1.25%への引き上げ観測は前回に続き大勢を占めている。JGB市場は方向感を欠く狭いレンジでの推移となり、結果待ちの様子見姿勢が強い(財経新聞)。
ECB・BOE・その他
BOEは9月17日の会合で、政策金利を3.75%に据え置くことを9人中6対3で決定した(3人は4.00%への利上げを主張)。同時に、量的引き締め(QT)のペースを年単位から8年かけた緩やかな売却へ減速し、2027年4月までギルト(英国債)売却を停止すると決定した。ベイリー総裁は、世界的なエネルギーコストの物価への影響はこれまで限定的だが、変動が長引けば利上げが必要になり得るとの認識を示した。市場では11月会合での利上げ確率がおよそ9割と織り込まれている(Seoul Economic Daily)。
3. 経済指標
米8月住宅着工件数は前月比2.6%減の127.5万件(市場予想131.9万件、6.9%増を予想)と5月以来の低水準となり、住宅建築許可件数も139.4万件(予想140.8万件)と予想を下回った。一方、9/12週の新規失業保険申請件数は19.6万件(予想20.7万件、前回20.6万件)へ減少し、7月に付けた1969年以来の低水準に次ぐ良好な結果となった。継続受給者数(9/5週)も173万件(予想177.9万件)と2024年1月以来の低さとなり、労働市場の底堅さと住宅市場の弱さが対照的な結果となった(財経新聞)。
4. 為替
ドル円は米経済指標の発表を受けて155円91銭から155円34銭まで下落した。住宅着工件数の予想外の弱さがドル売りにつながった一方、雇用統計系の指標は底堅く、方向感の定まらない綱引きとなった。ユーロ・ポンドはいずれもドルに対して上昇した(財経新聞)。為替介入に関する新たな当局者発言・実弾介入の観測は本日時点でも確認できない。
5. 債券需給
米財務省が実施した10年物TIPS(物価連動国債、190億ドル)の再入札は、実質利回り2.653%(2008年10月以来の高水準)、応札倍率2.24倍(この年限として1年ぶりの低さ)という「さえない需要」の結果となった。ブレークイーブン(期待インフレ率)は2.30%で確定した。米2年債・5年債の入札も9/17に予定されていたが、確報を出典で確認できなかったため次回以降フォローする(TipsWatch)。
BOEのQT減速(ギルト売却を8年かけた緩やかなペースへ変更、2027年4月まで停止)は、英国債の需給圧力を緩和する材料になる。BOE自身、QTによる供給増がこれまで英国債利回りをおよそ0.25%押し上げてきたと説明している(Seoul Economic Daily)。ハイイールド・投資適格債のクレジットスプレッドは前回に続き歴史的にタイトな水準を維持しているとみられる。
6. 他資産への波及
TIPS実質利回りの18年ぶり高水準は、株・為替・金・暗号資産のすべてに影響し得る「引き締めの本気度」を映す数字である。米国株はそれでもFOMC後の急落から反発し、SP500は0.59%高・半導体株指数は3%高となった。原油はサウジの供給確保進展で続落し、この原油安がインフレ懸念とタカ派観測の双方を和らげたことで金(ゴールド)の反発を後押しした。金利・ドル・原油・株がそれぞれ異なる方向へ振れる神経質な地合いが続いており、暗号資産も同様の値動きになりやすいとみられる。
7. 今夜の注目イベント
日銀は9月17・18日の日程で金融政策決定会合を開催中で、結果発表・植田総裁会見は9/18午後(会見は15時30分)の予定。政策金利1.00%→1.25%への引き上げが有力視されている。米財務省が9/17に実施した2年債・5年債入札の確報は次回以降のレポートで扱う。中東情勢では、サウジ石油パイプラインの復旧進捗(「数日」とする米側見通しと、瀬取り輸送による供給確保の進展)が引き続き焦点となる。
