前回からの変化

変わったこと(変化・新規)

  • 日銀は9月17・18日の金融政策決定会合で、政策金利を1.00%から1.25%へ引き上げることを決定した。前回レポート時点では「引き上げ観測が大勢」という段階だったが、本日実際の決定として確定した。9人の政策委員のうち7人が賛成、2人が反対したことが新たに判明した(新規、日本経済新聞)。
  • 植田総裁は記者会見で「政策の局面が変化した」と述べ、物価の上振れリスク抑制に向けた姿勢を示す一方、「急激な利上げは資産価格の大幅な調整や貸し出しへの悪影響を招きかねない」として、急ピッチな引き締めは避ける考えも示した。連続・大幅な利上げの可能性は「排除せず」としつつ、市場は全体として「緩やかなペースでの継続」という受け止めに落ち着いたことが新たに判明した(新規、日本経済新聞)。
  • ドル円は、利上げ自体が織り込み済みだったことに加え、2人の反対票と「加速を示唆しない」声明文の内容から追加利上げペースの加速観測が後退し、公表後にむしろ円が売られた。取引レンジは155円53銭〜157円55銭で、東京時間には一時158円台まで下落する場面もあった。前回レポート時点(9/17夜、155円34銭)から一転して円安方向に振れたことが新たに判明した(新規、外為どっとコム)。
  • 米10年債利回りは、週半ばに一時5.01%まで上昇したのち木曜にいったん低下していたが、金曜(9/18)には再び5.004%まで反発し、2007年7月以来の高水準を回復した。2年債は4.743%、30年債は5.33%といずれも前日から5bp前後上昇したことが新たに判明した(新規、CNBC)。
  • CME集計の10月FOMCでの追加利上げ織り込み確率は53.1%となり、前日時点のおよそ44%から急上昇したことが新たに判明した(新規、FXStreet)。
  • ドル指数(DXY)は100.30近辺まで小幅に上昇し、日銀会合後の円安・利上げ織り込みの高まりを受けたドル全体の底堅さを新たに確認した(新規、同上)。
  • 独10年債(Bund)利回りは3.52%(前日比+4bp)となり、週半ばに付けた2009年6月以来の高値(3.57%)からやや低下したものの、高水準圏での推移が続いていることが新たに判明した。ECBの12月時点の政策金利織り込みはおよそ2.9%弱で、年内追加利上げ確率はおよそ5割とされる(新規、Trading Economics)。
  • 金(ゴールド)は1トロイオンス4,384.78ドル(前日比+1.00%)まで上昇し、週間ベースの高値を付けた。インフレ懸念の後退が買い材料になったと報じられている(新規、Yahoo Finance)。

昨日と同じこと(継続)

  • FRBが年内さらに1回の追加利上げを示唆しているという構図(9/16ドットプロット、18人中16人が年内あと1回の利上げを見込む)は前回に続き変わっていない。
  • ハイイールド(HY)・投資適格(IG)債のクレジットスプレッドは、前回に続き歴史的にタイトな水準(HYはおよそ270〜280bp、IGはおよそ80bp前後)を維持しているとみられ、信用不安の兆候は本日も確認できない。
  • 為替介入について、財務省・日銀による実弾介入の新たな確認情報は本日時点でも無い(継続)。

要因の連続性

  • 継続要因: FRBの年内追加利上げ観測、米財政赤字・国債増発観測を背景とした米長期金利の高止まり、ECBの年内追加利上げを巡るおよそ5割の織り込み。
  • 新規要因: 日銀の利上げ決定そのもの(1.00%→1.25%)、反対票2票を受けた「加速しない」との受け止めによる円安進行、CME集計の10月利上げ確率の急上昇(44%→53.1%)、米長期金利の5%台回復。
  • 解消した要因: 前回時点で「結果待ち」だった日銀会合の不透明感は決定により解消したが、代わりに「利上げペースがどこまで加速するか」という新たな論点に置き換わった。

1. 金利サマリー

対象 水準(取得時点) 前回比 主な変動要因
米2年債 4.743%(9/18、CNBC) 前回(9/17)4.68%から+6bp程度 FOMC後のタカ派観測継続、利上げ織り込みの上昇
米10年債 5.004%(9/18、CNBC) 前回(9/17)4.953%から+5bp 週半ばの5.01%からいったん低下後、金曜に再上昇し5%台を回復
米30年債 5.33%(9/18、Trading Economics) 前回比+4bp程度 長期金利全般の高止まり
JGB10年債 2.985%(9/18、Trading Economics) 前回(9/17)2.965%から+2bp 日銀利上げを織り込み済みで反応は限定的
独10年債(Bund) 3.52%(9/18、Trading Economics) 前回(9/17)3.51%からほぼ横ばい 週半ばの高値(3.57%、2009年6月以来)からやや低下
ドル円 155円53銭〜157円55銭のレンジ(9/18) 前回(9/17夜、155円34銭)から円安 日銀利上げの反対票2票を受けた加速観測の後退

米長期金利は日銀・FRBともに利上げを決定したにもかかわらず、日本国債は織り込み済みで反応が限定的だった一方、米国債は財政・インフレ観測を映して5%台へ再上昇するという対照的な反応となった。

2. 中央銀行の動き

FRB

9月16日に決定した0.25%利上げ(3.75〜4.00%、12対0の全会一致)を受けた市場の消化が続いている。ドットプロットでは18人中16人が年内あと1回の追加利上げを見込んでおり、この構図は前回から変わっていない。CME集計の10月FOMCでの利上げ織り込み確率は53.1%(前日比+9ポイント程度)まで上昇し、追加利上げ観測が強まっていることが数字の上でも裏付けられた(FXStreet、Charles Schwab)。

日銀

9月17・18日の金融政策決定会合で、政策金利を1.00%から1.25%へ引き上げることを決定した(9人中7人賛成・2人反対)。3か月ぶりの利上げで、前回(6月)からペースが加速した形である。植田総裁は「政策の局面が変化した」と述べ、物価の上振れリスク抑制に強い姿勢を示す一方、急激な利上げが資産価格の大幅な調整や貸し出しへ悪影響を及ぼしかねないとして、急ピッチな引き締めは避ける考えも示した。市場では、反対票の存在と声明文が加速を示唆しなかったことから、むしろ今後の利上げペースは緩やかにとどまるとの受け止めが広がり、これが皮肉にも円安を招く結果となった(日本経済新聞、外為どっとコム)。

ECB・BOE・その他

前回既報のBOEのQT減速決定(政策金利3.75%据え置き)以降、新たな会合・声明はない。ドイツ10年債利回りは3.52%(週半ばの高値3.57%からやや低下)で、市場はECBの政策金利を12月時点でおよそ2.9%弱と織り込み、年内追加利上げ確率はおよそ5割とされる。FRB・日銀の同時利上げを受けた世界的な金利上昇圧力の中で、ECBも据え置きと利上げの両にらみが続いている(Trading Economics)。

3. 経済指標

本日時点で新たな大型指標の発表は確認できなかった。前回既報の米8月住宅着工件数(前月比2.6%減)・新規失業保険申請件数(19.6万件)の内容から更新はない。ミシガン大学消費者信頼感指数(9月確報)については、期待インフレ率が前月4.0%から4.6%へ上昇したとの分析があるが、確定日・出典を明確に特定できなかったため、次回以降のレポートで一次情報を確認したうえで扱う。

4. 為替

ドル円は日銀会合の結果を受けて155円53銭〜157円55銭のレンジで推移し、東京時間には一時158円台まで下落する場面もあった。利上げ自体は織り込み済みだった一方、反対票2票と声明文の内容から追加利上げの加速観測が後退し、円売りが優勢となった。ドル指数(DXY)は100.30近辺まで小幅に上昇し、対円だけでなく総合的にドルが底堅く推移したことを示している(外為どっとコム、FXStreet)。為替介入に関する新たな当局者発言・実弾介入の観測は本日時点でも確認できない。

5. 債券需給

本日時点で新たな米国債入札(2年債・5年債等)の確報を出典付きで確認できなかったため、次回以降のレポートでフォローする。ハイイールド(HY)債のオプション調整後スプレッド(OAS)はおよそ270〜280bp、投資適格(IG)債はおよそ80bp前後で推移しているとみられ、前回に続き歴史的にタイトな水準を維持している。信用市場に不安の兆候は確認できない。

6. 他資産への波及

日銀・FRBの利上げが重なったにもかかわらず、株式市場は落ち着いた反応を示した。米国株はダウが0.18%安、S&P500が0.17%高、ナスダック総合が0.39%高と方向感の乏しい値動きにとどまった一方、金は週間高値となる4,384.78ドルまで上昇し、インフレ懸念の後退を映した。ドル円の円安進行は、日本の輸出関連株や海外資産の円建て評価額を支える方向に働く一方、米長期金利の5%台回復はグロース株の重しになりやすい。原油・暗号資産など他のリスク資産への波及は限定的で、金融政策の方向性そのものよりも「利上げペースが加速するかどうか」という織り込みの変化が資産価格を左右する神経質な地合いが続いている。

7. 今夜の注目イベント

週末(日本時間9/20〜21)には、米財務長官ベッセント氏と中国の何立峰副首相によるニューヨークでの通商協議が予定されており(詳細はchina_stockカテゴリ参照)、9月24日のトランプ・習近平会談を占う材料として金利・為替市場でも注目される。日本国内は19日から23日にかけてシルバーウィークの連休に入り、東京証券取引所は週明け以降も断続的に休場となる。米国では来週にかけてFRB高官の講演予定が複数あるとみられるが、本レポート作成時点で確度の高い日程を出典付きで確認できなかったため、次回以降フォローする。