前回からの変化

変わったこと(変化・新規)

  • ECBは9/9-10のベルリンでの理事会で、市場の予想通り主要政策金利を25bp引き上げることを決定した。主要リファイナンス金利は2.65%、中銀預金金利は2.50%となった(Bloomberg)。中東紛争(米・イラン)の長期化がインフレ圧力を押し上げているとし、2026年のインフレ見通しは3.0%で据え置く一方、2027年は2.5%、2028年は2.1%へそれぞれ上方修正した。ラガルド総裁は会見で「(理事会は)今後の利上げ経路について議論していない」と述べ、次回以降の方向性を事前にコミットしない姿勢を強調した(ECB)。前回レポート時点では「ほぼ確実視」という観測段階だったが、本日決定済みの事実として確定した。
  • 米8月PPI(生産者物価指数)が9/10に正式発表され、季節調整済みの前月比+0.4%(予想+0.4%と一致)、季節調整前の前年比+5.4%(予想+5.3%をわずかに上回る)となった(BLS)。食品・エネルギー・貿易サービスを除くコアPPIは前月比+0.3%、前年比+4.7%。上昇の4分の3超はエネルギー価格(+4.2%)が寄与し、軽油価格は24.1%急伸した。なお前回レポートでは同じ「8月PPI」として前月比マイナス0.1%・前年比+2.6%という異なる数値を速報段階の一次情報(SeekingAlpha記事)から伝えていたが、本日のBLS公式発表がこれと大きく異なる内容だったため、本日の数値を正として更新する。
  • 米財務省は9/9夜に発表した長期国債買戻し拡大オペレーションの結果を確定し、最終的な買戻し額は51.9億ドルにとどまった。上限として示していた60億ドルに2営業日連続で届かず、市場の失望からドル買い・国債売りが継続した(財経新聞)。
  • 米10年債利回りは、財経新聞・Yahoo Financeによれば9/10の取引時間中に一時4.91%まで上昇し、2023年以来の高水準を更新する場面があった。終値ベースではTrading Economicsによれば4.84%で、前日(9/9)の4.85%からわずかに低下したが、日中の振れ幅が前回より拡大した。米30年債も日中に5.35%まで上昇する場面があり、前回(9/9時点5.30%)からさらに水準を切り上げた。
  • 日本の10年国債利回りは、stock-marketdata.comによれば9/10時点で2.900%となり、9/9時点の2.880%から+2bp程度上昇した。米金利上昇の波及に加え、後述する日銀・増委員のタカ派的な発言も背景とみられる。
  • 日銀の増一行審議委員は9/10、福井市での記者会見で追加利上げについて「為替や原油価格などを全部細かく点検、検証した上で、しっかりと次の会合で議論する」と述べた。前回(6月)の利上げからの間隔を踏まえ「9月ということでも、加速といえば加速だ」と述べ、従来目安とされていた半年に1回程度のペースから加速する可能性を認めた。基調的な物価上昇率は「2%の下にいるものの、かなり近接している状況」とし、米財務長官による利上げ促進発言には「わが国の中央銀行として適切に判断していく」と独立性を強調した(時事ドットコム)。前回レポートでは新規の日銀高官発言は確認できていなかったが、本日新たに具体的な発言内容が判明した。

昨日と同じこと(継続)

  • FOMC(9/15-16開催)前のブラックアウト期間(9/5〜9/17)は継続しており、地区連銀総裁を含むFRB高官の新規発言は確認できない。
  • 9月FOMCでの25bp利上げ観測(CME FedWatch)はプラットフォームにより49〜66%とばらつきがあるが、前回同様おおむね55〜60%前後のレンジで高止まりが続いている。
  • ハイイールドスプレッド(ICE BofA)は2.65〜2.66%で前回からほぼ横ばりに推移しており、信用市場に不安の兆候は見られない。
  • 独10年債(Bund)利回りは3.44%(9/10)で、前日の3.45%からほぼ横ばい。2011年前後以来の高水準圏で高止まりが続いている。
  • 米・イラン間の軍事衝突は収束の兆しがなく、原油価格の高止まりを通じたインフレ懸念が金利観に影響を与え続けている。

要因の連続性

  • 継続要因: FOMCブラックアウトによるFRB高官発言の空白、米・イラン軍事衝突の長期化とそれに伴う原油高・インフレ懸念、独10年債の高水準圏での高止まり。
  • 新規要因: ECBの25bp利上げ決定(観測から決定済みの事実へ)、米8月PPIの大幅な上振れ確定、米財務省の国債買戻し2日連続未達、日銀・増委員の「利上げ加速」発言。
  • 解消した要因: 特になし(前回挙げた要因はいずれも継続または進行中で、明確に後退したものは確認できなかった)。

1. 金利サマリー

対象 水準(取得時点) 前回比 主な変動要因
米2年債 4.44%前後(9/9〜10) 9/9時点の4.44%からほぼ横ばい 9月FOMC利上げ観測の高止まり
米10年債 4.84%(9/10終値)、日中一時4.91% 9/9の4.85%からわずかに低下も、日中の振れ幅は拡大 PPI上振れと財務省買戻し未達
JGB10年債 2.900%(9/10) 9/9時点の2.880%から+2bp程度 米金利上昇の波及、日銀・増委員のタカ派発言
独10年債(Bund) 3.44%(9/10) 9/9時点の3.45%からほぼ横ばい ECB利上げ決定を消化
ドル円 153円85銭(9/10 NY引け)、高値154円67銭 9/9引けの153円80銭からほぼ横ばい、日中の振れ幅は拡大 PPI上振れによるドル買いと、財務省買戻し未達

米10年物TIPS(物価連動国債)利回り・ブレークイーブンインフレ率の9/10時点の確度の高い最新値は、今回のリサーチでは確認できなかった。米2年・10年のスプレッドは前回同様プラス圏(順イールド)を維持しているとみられる。ドル指数(DXY)は98.75前後で、9/9時点の98.77からほぼ横ばい(FXStreet)。

2. 中央銀行の動き

FRB

FRBは引き続きFOMC(9/15-16開催)前のブラックアウト期間(9/5〜9/17)にあり、新規の高官発言は確認できない。市場の織り込みについては、CME FedWatchでの9月利上げ確率がプラットフォームにより49〜66%とばらつきがあるものの、前回同様55〜60%前後のレンジでの高止まりが続いているとみられる。本日発表された8月PPIが前年比5.4%へ加速したことは、直前まで一進一退だった利上げ観測をやや後押しした可能性があるが、決定済みの事実ではなく市場の見方の域を出ない点には留意が必要。

日銀

増一行審議委員が9/10、福井市での記者会見で追加利上げに関する発言を行った(詳細は「前回からの変化」参照)。9/17-18会合での0.25%幅の利上げ観測は前回に続き高止まりしているとみられ、増委員の発言はこれを補強する内容だった。日銀の国債買い入れオペの運用方針について、本日時点で新たな変更は確認できなかった。

ECB・その他

ECBは9/9-10の理事会で25bp利上げを決定し、主要リファイナンス金利は2.65%、中銀預金金利は2.50%となった。中東紛争の長期化によるインフレ圧力を主因に挙げ、2027年・2028年のインフレ見通しを上方修正した一方、ラガルド総裁は今後の利上げ経路について「理事会では議論していない」とし、データ次第の姿勢を強調した(ECB、Bloomberg)。前回レポートでは「ほぼ確実視」という観測段階だったが、本日決定済みの事実として確定した。BOEなど他の主要中銀については、今回検索時点で金利観に影響する大きな発言・決定は確認できなかった。

3. 経済指標

米国では8月分PPI(生産者物価指数)が発表され、季節調整済み前月比+0.4%(予想+0.4%と一致)、季節調整前の前年比+5.4%(予想+5.3%をわずかに上回る)となった。食品・エネルギー・貿易サービスを除くコアPPIは前月比+0.3%(7月+0.4%から鈍化)、前年比+4.7%。上昇の4分の3超はエネルギー価格(+4.2%)の押し上げによるもので、軽油価格は前月比24.1%という記録的な伸びを示した(BLS)。米・イラン紛争由来の原油高がコスト面からインフレ圧力を強めている構図が数字で裏付けられた形である。9/11(日本時間今夜)には8月分CPIの発表を控えており、FOMC(9/15-16)前最後の主要インフレ指標として市場予想は前月比+0.4%、前年比+3.4%(コアは前月比+0.4%、前年比+2.4%)とされている。

日本では、9/9・9/10にかけて金利観に影響する新規の経済指標発表は確認できなかった。

4. 為替

ドル円は、財経新聞によると9/10のNY市場で154円67銭まで上昇したのち153円85銭まで反落して引けた。米・イラン紛争激化懸念による原油価格の続伸に加え、8月PPIの上振れによる長期金利上昇を受けたドル買いが優勢となった。米財務省の長期国債買戻し規模が最終的に51.9億ドルにとどまり、上限としていた60億ドルに2営業日連続で届かなかったことも、国債売り・ドル買いをさらに支えた。前回(9/9引け153円80銭)からはほぼ同水準だが、日中の値幅は前回より大きく広がった。ユーロドルは1.1592ドルまで下落したのち、ECBの利上げ決定を受けたユーロ買いで1.1631ドルまで上昇して引けた。ユーロ円は179円48銭から178円75銭まで下落した(財経新聞)。

為替介入については、新たな当局者発言・実弾介入の観測は本日時点で確認できなかった(片山財務相の「協調介入時から対応方針は変わらない」との姿勢は前回から継続しているとみられる)。

5. 債券需給

米国では、米財務省が9/9夜に発表した長期国債買戻し拡大オペレーションの結果が確定し、最終的な買戻し額は51.9億ドルにとどまった。上限としていた60億ドルに2営業日連続で届かず、市場の失望が長期・超長期ゾーンの利回り上昇(10年債は日中一時4.91%、30年債は同5.35%)につながった(財経新聞)。クレジット市場では、ハイイールドスプレッド(ICE BofA)が2.65〜2.66%と前回からほぼ横ばいで推移しており、信用不安の兆候は見られない。

日本国債では、本日時点で新たな入札の実施は確認できなかった。stock-marketdata.comによれば、超長期ゾーンは9/9〜10時点で20年債3.700%、30年債3.955%と、前回(9/8時点の20年債3.705%、30年債3.960%)からほぼ横ばいで推移している。日銀の国債買い入れオペの運用方針について、今回検索時点で新たな変更は確認できなかった。

6. 他資産への波及

米長期金利の日中の急伸(10年債一時4.91%)は、米国株にとって明確な逆風となり、S&P500・ナスダック・NYダウはそろって4営業日続落した(詳細はus_stockカテゴリ参照)。ECBの利上げ決定と独金利の高水準圏での高止まりは、ユーロ圏の株式・信用市場にも同様の重しとなりうる。ドル円は米金利上昇にもかかわらず前回とほぼ同水準にとどまっており、財務省買戻し失望というドル買い材料と、日銀・増委員のタカ派発言という円買い材料がある程度相殺し合っている可能性がある。金(ゴールド)については実質金利の動向次第で上値を抑えられやすい地合いが続いているとみられ、暗号資産も同様に金利観の変化に敏感な値動きが続く可能性が高い。

7. 今夜の注目イベント

日本時間今夜の最大の注目は米8月分CPI(消費者物価指数)の発表(米東部時間9/11午前8時30分)で、市場予想は前月比+0.4%、前年比+3.4%(コアは前月比+0.4%、前年比+2.4%)。本日発表されたPPIの上振れを受けて、FOMC(9/15-16)前最後の主要インフレ指標としてさらに注目度が高まっている。FOMCはブラックアウト期間(9/5〜9/17)が続くため、新規のFRB高官発言は引き続き見込まれない。日銀では9/17-18会合に向け、増委員に続く他の政策委員の発言が今後の材料になりうる。