前回からの変化

変わったこと(変化・新規)

  • CLARITY法案の可決観測が急落(新規・重要): 前回レポートではコインベースのブライアン・アームストロングCEOが9/15の討論終結(クローチャー)採決について「可決される」との見通しを示していたが、本日新たに、予測市場Polymarketでの2026年中の法案成立確率が2月時点の82%から9/6時点で16%へ急落していたことが判明した。ギャラクシー・リサーチも成立確率をわずか10%程度とみている。背景には、トランプ大統領の暗号資産関連所得(14億ドル)を対象とする倫理規定、DeFi開発者の法的責任(第604条)、コインベースの年間13億5,000万ドル規模のUSDC報酬収益に影響するステーブルコイン利回り条項という、3つの未解決の争点があることが新たに明らかになった。採決自体は9/15午後2時15分(米東部時間)に予定されたまま変わっていない(crypto.news)。
  • PayPal、カスタムステーブルコイン基盤「PYUSDx」を一般公開(新規・社会実装): PayPalはM0・MoonPayと共同で、9/9に開発者向け基盤「PYUSDx」を公開した。PayPalUSD(PYUSD)を裏付けとする独自のステーブルコインを、各社がゼロから準備金・発行・流動性を構築することなく発行できる仕組みで、公開時点で既にSaturn・Concrete・Capの3社が発行を開始し、処理額は1億ドルを超えた。PYUSDx上で作られるトークンはPayPalやPaxosの商品ではなく、PayPalやVenmoのウォレット内では利用できない点が明示されている(Crowdfund Insider)。
  • Liquid Networkがブロック生成を再開(続報): 9/6のハッキング事件を受けて停止していたビットコインのサイドチェーン「Liquid Network」が、9/10にブロック生成を再開した。修正版ソフトウェア(Elements v23.3.4)を適用し、修正済みのフェデレーション運用者がオンラインに復帰したが、送金・ペグ操作(相互交換)は安定性確認のため引き続き停止されたままである。盗難額の85%(3,400BTC)は既に返還済みで、残る598.5BTC(約4,700万ドル相当)についてはブロックストリーム社と「ホワイトハット」を名乗る実行者との協議が続いている(TradingView News、spendnode)。
  • ビットコイン・イーサリアムはやや軟化(変化): ビットコインは前回のおよそ7万8,800ドルから7万7,900ドル台へ、イーサリアムは前回のおよそ2,486ドルから2,460ドル台へ、いずれもわずかに水準を切り下げた。9/10・9/11に相次ぐ米PPI・CPI発表を控えた様子見姿勢が背景(Yahoo Finance)。
  • ジーキャッシュはやや反落(変化): 前回報告した2016年以来の高値(9/6時点1,249ドル)からさらに9/9には1,297.77ドルまで上値を伸ばしたが、9/10は1,244.50ドルで始まり1,206.21〜1,254.29ドルのレンジで推移し、1,235.67ドル(前日比+3%)で終えた。急騰一服も、依然として高水準を維持している。

昨日と同じこと(継続)

  • 米国とイランの軍事衝突は収束しておらず、原油価格の高止まりが続いている。
  • 9月15〜16日のFOMCを巡る利上げ観測は60%台前半で高止まりしたまま大きな変化はない(Yahoo Finance)。
  • 弱気派のベンジャミン・コーウェン氏(10月のサイクル底値説)、ブルームバーグ・インテリジェンスのマイク・マグローン氏(流動性引き締まり時の1万ドル回帰リスク)の見方はいずれも継続。
  • 日本の金融庁による暗号資産の分離課税(20.315%)移行方針は、新たな進展は確認できなかった(継続)。

要因の連続性

  • 継続要因: 米国・イランの軍事衝突と原油高、9月15〜16日FOMCに向けた利上げ観測、ビットコイン現物ETFの資金フロー動向。
  • 新規要因: CLARITY法案の成立確率急落という規制面の後退、PayPalのステーブルコイン基盤公開という社会実装の進展、Liquid Networkのブロック生成再開という事件収束に向けた前進。
  • 解消した要因: 特になし。CLARITY法案の可決期待は「後退」であり「解消」ではなく、法案自体はまだ生きている。

価格サマリー

取得時点: 日本時間2026年9月10日夜(米国時間9月10日朝〜日中の取引データに基づく。相場は24時間動いており、時点により数値差がある)。

銘柄 価格(ドル建て) 動向
ビットコイン(BTC) およそ7万7,900〜7万8,000ドル 前回からやや軟化、月間+20.7%
イーサリアム(ETH) およそ2,460〜2,465ドル 前回からやや軟化、月間+29.3%
ジーキャッシュ(ZEC) およそ1,235ドル(前日比+3%) 9/9の高値(1,297.77ドル)から一服も高水準を維持

出典: Yahoo Finance、CoinGabbar

銘柄別動向

ビットコイン(BTC)

7万7,900ドル台で推移し、前回のおよそ7万8,800ドルからやや軟化した。9/10のPPI、9/11のCPIという米インフレ指標の発表を控え、FOMC(9/15-16)での利上げ確率がおよそ62%とされる中、様子見ムードが強まっている。月間では+20.7%とプラス基調は維持している(Yahoo Finance)。

イーサリアム(ETH)

2,460〜2,465ドルで推移し、前回のおよそ2,486ドルからやや軟化した。月間では+29.3%とビットコインを上回るペースでの上昇を維持しているが、短期的には米インフレ指標を控えた様子見が優勢となっている。

その他アルトコイン

  • ジーキャッシュ(ZEC): 9/9に1,297.77ドルまで上値を伸ばした後、9/10は1,206.21〜1,254.29ドルのレンジで推移し1,235.67ドル(前日比+3%)で終えた。急騰一服も、プライバシー通貨セクターの盛り上がりは継続している。

強気派 vs 弱気派

強気派

  • ファンドストラットのトム・リー氏は、ビットコインETF主導の需要と機関投資家の継続的な資金配分を根拠に、2026年末までに25万ドルへ到達するとの強気シナリオを維持しているとみられる(前回から継続、新規の追加コメントは今回確認できず)。
  • FinanceFeedsの分析では、9/11発表の8月CPIが市場予想より軟調であれば、実質金利の低下を通じてビットコインが史上最高値(12万4,740ドル)を再び試す展開への上昇余地があるとの見方が示されている(継続)。

弱気派

  • アナリストのベンジャミン・コーウェン氏は、10月をサイクル底値形成の基本シナリオとする見方を引き続き維持している(継続)。
  • ブルームバーグ・インテリジェンスのマイク・マグローン氏は、市場の流動性が引き締まればビットコインが1万ドル近辺まで回帰しうるとのテールリスクシナリオを引き続き示している(継続)。

社会実装ニュース

PayPalは9/9、M0・MoonPayと共同で開発者向けのカスタムステーブルコイン発行基盤「PYUSDx」を一般公開した。PayPalUSD(PYUSD)を裏付けとするステーブルコインを、各社が独自に準備金・発行・流動性のインフラをゼロから構築することなく発行できる仕組みで、M0が共通基盤を構築し、MoonPay Digital Assets Limitedが発行体としてPYUSDxレイヤーのトークンを発行し裏付けとなるPYUSDを保有する。公開時点でSaturn・Concrete・Capの3社が発行を開始し、処理額は1億ドルを超えた。USD.AI・Fairblockが次の発行体として参加予定とされる。なお、PYUSDx上のトークンはPayPal・Paxosの商品ではなく、PayPalやVenmoのウォレット内では利用できない(Crowdfund Insider)。実運用としてすでに1億ドル超の取扱高を記録している点で、実証段階を超えた商用展開の初期事例といえる。

京都市内の自動販売機決済実証実験、フィリピンBPIの海外就労者向け給与受け取りパイロット、韓国のステーブルコイン国際送金プロジェクト「パンゲア」については、本日時点で新たな進展は確認できなかった(継続)。

法改正・規制ニュース

米国

上院共和党のジョン・スーン院内総務が提出済みの暗号資産市場構造法案(CLARITY法)について、9/15午後2時15分(米東部時間)のクローチャー(討論終結)採決という日程自体は変わっていないが、成立の見通しは大きく後退した。予測市場Polymarketでの2026年中の成立確率は2月時点の82%から9/6時点で16%へ急落し、ギャラクシー・リサーチも成立確率をおよそ10%とみている。トランプ大統領の暗号資産関連所得(14億ドル)を対象とする倫理規定、DeFi開発者の法的責任(第604条)、コインベースの年間13億5,000万ドル規模のUSDC報酬収益に影響するステーブルコイン利回り条項という3つの争点が未解決のまま残っている。クローチャーが否決されれば、法案は2026年中は事実上廃案となり、次の議会での再挑戦は早くて2027年、現実的には2028年になるとの見方も示されている(crypto.news)。

日本

金融庁による暗号資産の分離課税(20.315%)移行方針について、本日時点で新たな進展は確認できなかった(継続)。

テクニカル分析

ビットコイン(BTC)

RSI(14日)はおよそ42で、5日移動平均線(7万8,252ドル)・50日移動平均線(7万8,607ドル)をいずれも下回る水準にあり、短期的には売りシグナルが優勢とされる。もっとも移動平均線を広く見ると(5日〜200日)7つの買いシグナルに対し5つの売りシグナルとなっており、中長期的な上昇トレンド自体はなお崩れていないとの見方もある。9/1のおよそ7万8,756ドルから9/3に週間高値の8万1,588ドルまで上昇したのち上値が重くなっており、高値圏では相対力指数・MACDの弱気ダイバージェンス(価格の高値更新に対し勢いが伴わない現象)も観測されている。9/11のCPI、9/15-16のFOMCという重要イベントを控え、方向感を欠いたレンジ内での値動きにとどまっている。

イーサリアム(ETH)

2,500ドル近辺の抵抗を試す動きが続いており、大きな方向感は出ていない。9/11のCPI発表まで様子見ムードが強い。

業界トピック

  • セキュリティ事件(続報): Liquid Networkは9/10にブロック生成を再開したが、送金・ペグ操作は安定性確認のため引き続き停止されている。残る598.5BTC(約4,700万ドル相当)の回収協議も継続中(詳細は「前回からの変化」参照)。
  • 規制の不透明感: CLARITY法案の成立確率急落は、米国の暗号資産市場構造ルール整備の先行き不透明感を強め、業界全体のセンチメントに影響しうる材料として注目される。