前回からの変化
変わったこと(変化・新規)
- 米10年債利回りは、Trading Economicsによれば9/8時点の4.79%から9/9時点で4.845%へおよそ5〜6bp(ベーシスポイント。1bp=0.01%)上昇し、2023年10月以来の高水準となった。背景には、米財務省が9/9に発表した長期国債の買戻し規模が「最大60億ドル」にとどまり市場が想定していたより小規模だったことがあり、失望から国債売り・利回り上昇につながった(財経新聞)。米2年債も同時点で4.44%(9/8時点の4.40〜4.41%から+3bp程度)へ上昇し、2年10年スプレッドは前回の39bp程度から40bp程度へほぼ横ばい(なお順イールドを維持)。
- 米30年債利回りはTrading Economicsによれば9/9時点で5.30%(前営業日比+5bp)。前回レポートでは確度の高い一次情報を確認できず数値を割愛していたが、今回新たに確認できた。長期・超長期ゾーンへの売り圧力は、上記の米国債買戻し規模の失望が主因とみられる。
- 独10年債(Bund)利回りはTrading Economicsによれば9/9時点で3.45%(9/8時点の3.37%から+8bp)へ上昇し、2011年前後以来とされる高水準圏でさらに水準を切り上げた。米金利上昇の波及に加え、ECB理事会(本日結論)を控えた警戒感も背景にあるとみられる。
- ドル円は、財経新聞によると9/9のNY市場で153円09銭〜153円80銭のレンジで推移し、153円80銭近辺で引けた。前回(9/8引け154円40銭)からは60銭程度のさらなる円高方向で、日中には153円09銭まで一段の円高が進む場面もあった。この円高進行を受けて、片山さつき財務相は9/8の閣議後会見で「我々の対応方針は日米協調介入を実施した時から一切変わっていない」と改めて発言している(日本経済新聞)。同日、円相場は一時1ドル=152円台まで上昇し2月中旬以来およそ半年ぶりの円高水準を付けた。
- 米国では8月分PPI(生産者物価指数)が発表され、前月比マイナス0.1%(4月以来のマイナス、市場予想を下回る)、前年比プラス2.6%(7月のプラス3.1%から鈍化)となった(SeekingAlpha)。前回レポートでは発表待ちだった指標の結果が判明した形で、今回が結果の初報となる。
昨日と同じこと(継続)
- FOMC(9/15-16開催)前のブラックアウト期間が継続しており、新規のFRB高官発言は確認できない。
- 9月FOMCでの25bp利上げ観測(CME FedWatch)は前回同様57%前後で高止まりしているとみられ、大きな変化は確認できなかった。
- ハイイールドスプレッド(ICE BofA)は2.65〜2.66%で前回からほぼ横ばりで推移しており、信用市場に不安の兆候は見られない。
- 日銀の9/17-18会合での利上げ観測は、前回に続き高止まりが継続しているとみられる。
- ECB理事会(9/9-10、ベルリン開催)での25bp利上げ(中銀預金金利2.50%へ)は、前回に続きほぼ確実視されたままで変わっていない。
要因の連続性
- 継続要因: FOMCブラックアウトによるFRB高官発言の空白、ECB利上げ織り込みの高止まり、日銀の9/17-18会合を控えた利上げ観測の高止まり
- 新規要因: 米財務省の国債買戻し規模が市場予想を下回ったことによる米長期・超長期金利の急伸(独金利にも波及)、8月PPIの予想比下振れ
- 解消した要因: 特になし(前回挙げた要因はいずれも継続または進行中で、明確に後退したものは確認できなかった)
1. 金利サマリー
| 対象 | 水準(取得時点) | 前回比 | 主な変動要因 |
|---|---|---|---|
| 米2年債 | 4.44%(9/9時点) | 9/8時点の4.40〜4.41%から+3bp程度 | 9月FOMC利上げ観測(57%前後)の高止まり |
| 米10年債 | 4.85%(9/9時点) | 9/8時点の4.79%から+5〜6bp、2023年10月以来の高水準 | 米財務省の国債買戻し規模が予想を下回ったとの見方 |
| JGB10年債 | 2.880%(9/9時点) | 9/8時点の2.885%からほぼ横ばい(-0.5bp) | 米金利上昇と国内利上げ観測の綱引き |
| 独10年債(Bund) | 3.45%(9/9時点) | 9/8時点の3.37%から+8bp、2011年前後以来の高水準 | 米金利上昇の波及、ECB理事会前の警戒 |
| ドル円 | 153円80銭(9/9 NY引け) | 9/8引けの154円40銭から一段の円高(-60銭) | 米国債買戻し失望による米金利上昇と、日欧金利差縮小観測・介入姿勢維持との綱引き |
Trading Economicsによれば、米10年物TIPS(物価連動国債)利回りは9/9時点で2.46%(9/8時点の2.42%から+4bp)。名目10年債利回り(4.85%)との差から算出されるブレークイーブンインフレ率(期待インフレ率)はおよそ2.39%となり、9/8時点(2.37%)からやや上昇した。米2年・10年のスプレッド(2-10年スプレッド)は9/8時点の39bp程度から9/9時点で40bp程度へほぼ横ばいで、引き続きプラス圏(順イールド)を維持しており、逆イールド(短期金利が長期金利を上回る状態)には至っていない。米30年債利回りはTrading Economicsによれば9/9時点で5.30%(前営業日比+5bp)で、長期・超長期ゾーンへの売り圧力は米財務省の国債買戻し規模の失望が主因とみられる。
stock-marketdata.comによれば、日本の超長期ゾーンは9/8時点で20年債3.705%、30年債3.960%。前回(9/7時点)の20年債3.745%、30年債4.020%からいずれもやや低下しており、超長期ゾーンの需給不安の一服が続いている。
2. 中央銀行の動き
FRB
FRBは引き続きFOMC(9/15-16開催)前のブラックアウト期間にあり、新規の高官発言は確認できない。市場の織り込みについては、9月FOMCでの25bp利上げ確率(CME FedWatch)は前回同様57%前後で高止まりしているとみられ、本レポート作成時点で更新後の確度の高い最新値は確認できなかった。もっとも、本日発表された8月PPIが市場予想を下回ったことは(後述)、直前まで高止まりしていた利上げ観測をやや和らげる方向に働いた可能性がある。決定済みの事実ではなく市場の見方の域を出ない点には留意が必要。
日銀
植田総裁による新規の発言は本レポート作成時点で確認できなかった(直近は9/1のG20後共同会見での発言)。9/17-18会合での0.25%幅の利上げ観測は、前回に続き高止まりしているとみられるが、具体的な織り込み確率の最新値は今回も確認できなかった。日銀の国債買い入れオペの運用方針についても、新たな変更は確認できない。
ECB・その他
ECBは9/9-10の日程でドイツ・ベルリンにて理事会を開催しており、政策金利発表は米東部時間8:15(日本時間21時台の見込み)、続いてラガルド総裁の記者会見が予定されている(FinancialJuice)。ゴールドマン・サックスやウェルズ・ファーゴなど主要行は、政策金利・中銀預金金利をそれぞれ25bp引き上げ(中銀預金金利は2.50%へ)と予想しており、市場ではほぼ確実視されたまま前回から変化はない。ただし本レポート作成時点で正式な決定は確認できておらず、あくまで観測・予想の段階である。独10年債利回りはTrading Economicsによれば9/9時点で3.45%(9/8時点の3.37%から+8bp)と、2011年前後以来とされる高水準圏でさらに上昇している。BOEなど他の主要中銀については、今回検索時点で金利観に影響する大きな発言・決定は確認できなかった。
3. 経済指標
米国では、8月分PPI(生産者物価指数)が発表され、前月比マイナス0.1%(市場予想を下回り4月以来のマイナス)、前年比プラス2.6%(7月のプラス3.1%から鈍化)となった(SeekingAlpha)。財別では最終需要財の前年比伸び率が7月の1.9%から8月は2.1%へむしろ加速しており、サービス価格の鈍化が全体を押し下げた形とみられる。9月FOMC(9/15-16)を控えた主要インフレ指標の下振れであり、市場のタカ派的な織り込みをやや和らげる方向に働いた可能性があるが、決定済みの政策変更ではなくあくまで市場の見方に影響する材料である点に注意が必要。9/11には8月分CPIの発表も控えており、FOMC前最後の主要インフレ指標としてこちらにも高い関心が集まっている。
日本では、7月分毎月勤労統計・4-6月期GDP2次速報(いずれも9/8公表済み)以降、9/9・9/10にかけて金利観に影響する新規の経済指標発表は確認できなかった。
4. 為替
ドル円は、財経新聞によると9/9のNY市場で153円09銭〜153円80銭のレンジで推移し、153円80銭近辺で引けた。米財務省が長期国債の買戻し規模を「最大60億ドル」と発表し、市場が想定していたより小規模だったため米国債が売られ長期金利が上昇、いったんドル買いに転じた形。前回(9/8引け154円40銭)からは60銭程度のさらなる円高方向で、日中には153円09銭まで一段の円高が進む場面もあった。同記事によればユーロドルは1.1654ドルまで上昇した後1.1620ドルへ反落し、ユーロ円は178円77銭から178円35銭へ下落した。
為替介入については、片山さつき財務相が9/8の閣議後会見で「我々の対応方針は日米協調介入を実施した時から一切変わっていない」と述べた(日本経済新聞)。この発言は、同日に円相場が一時1ドル=152円台まで上昇し2月中旬以来およそ半年ぶりの円高水準を付けたことを受けたもので、8/3に実施された日米協調介入の姿勢を維持する意向を改めて示した形である。ただし、これは口先での姿勢表明であり、新たな実弾介入が実施された、あるいは観測されたという事実は今回確認されていない。
5. 債券需給
日本国債では、本日9/10時点で新たな入札は確認できなかった(直近は9/8の5年利付国債入札)。stock-marketdata.comによれば、超長期ゾーンは9/8時点で20年債3.705%、30年債3.960%。前回(9/7時点)の20年債3.745%、30年債4.020%からいずれもやや低下しており、超長期ゾーンの需給不安の一服が続いている。
米国では、米財務省が9/9に長期国債の買戻し規模を「最大60億ドル」と発表したが、市場予想より小規模だったため国債(特に長期・超長期ゾーン)が売られ、10年債利回りは4.85%(2023年10月以来の高水準)、30年債利回りは5.30%まで上昇した(財経新聞、Trading Economics)。クレジット市場では、ハイイールドスプレッド(ICE BofA、投資適格未満の社債が国債に対して要求する上乗せ利回り)が2.65〜2.66%と前回からほぼ横ばいで推移しており、信用不安の兆候は見られない。日銀の国債買い入れオペの運用方針について、今回検索時点で新たな変更は確認できなかった。
6. 他資産への波及
米長期金利の急伸は、金利敏感株や高PER株の重しとなりやすく、米国株には上値を抑える方向に働く可能性がある。実質金利(米10年TIPS利回り2.46%)の上昇は、金相場にとっても上値を抑える材料となりやすく、方向感の乏しいもみ合いが続いているとみられる。ドル円の一段の円高は、米国債買戻し失望による米金利上昇にもかかわらず進んでおり、日欧金利差縮小観測やECB理事会を控えたポジション調整が絡んでいるとみられ、輸出関連株の評価や外貨建て資産の円換算額に影響しうる。暗号資産については、金と同様に金利・実質金利の変化に敏感な値動きが続いているとみられ、金利観の変化が両資産に同時に効いてくる局面が引き続き意識される。
7. 今夜の注目イベント
日本時間今夜の最大の注目はECB理事会の結果発表とラガルド総裁の記者会見(米東部時間8:15、日本時間21時台の見込み)で、政策金利・中銀預金金利ともに25bp引き上げ(中銀預金金利2.50%へ)が市場で有力視されているが、本レポート作成時点で正式な決定は確認できていない(FinancialJuice)。9/11には8月分CPIの発表を控えており、本日発表された8月PPIの鈍化を受けて、FOMC(9/15-16)前最後の主要インフレ指標としてさらに注目度が高まっている。FOMCはブラックアウト期間が続くため、新規のFRB高官発言は引き続き見込まれない。
