前回からの変化

変わったこと(変化・新規)

  • JGB10年債利回りは9月2日に一時3.011%まで上昇し、Bloombergによれば1996年以来はじめて3%の大台に到達した。前回(9/4時点)の2.907%程度からは、いったん高値を付けたあとやや水準を切り下げた形。
  • 同日実施の10年利付国債(第383回)入札は、財務省の結果によると最低落札価格が市場予想を下回りつつも応札倍率3.92倍(前回3.06倍、直近12カ月平均3.17倍)と底堅い需要を確認した。一方、9月3日の30年利付国債(第91回)入札は平均落札利回り4.079%・最高落札利回り4.100%、平均と最低落札価格の差(テール)が28銭とやや拡大し、超長期ゾーンでは需給の重さも意識され始めた。
  • ドル円は、ベッセント米財務長官が8月30日の植田日銀総裁との会談で「円の大幅な過小評価に対処するため断固とした対応を支持する」と発言したことや、日銀の利上げペース加速観測を受けて9月3日に一時155円30銭まで円高が進行(三井住友DSアセットマネジメント)。前回(9/4のNY引け155.34円)からは一進一退で、9月7日朝の東京市場では156円13〜15銭まで戻すなど不安定な値動きが続いている。

昨日と同じこと(継続)

  • CME FedWatchの9月FOMC(9/15-16)における25bp利上げ確率は、前回(9/4時点49.8%)からほぼ変わらず49%前後でホールド予想と拮抗したままである。9/5からFOMCブラックアウト期間に入り、新たなFRB高官発言はない。
  • 日銀の9/17-18会合における利上げ観測は8割超で高止まりが継続している。
  • ECBの9/9-10理事会での25bp利上げ(2.50%へ)の織り込みは、前回同様ほぼ確実視されたまま変わっていない。
  • ハイイールドスプレッド(ICE BofA)は2.65〜2.66%で前回からほぼ横ばいで推移し、信用市場に不安の兆候は見られない。
  • ビットコインと金の値動きの連動性が高まっているとの報道は前回から引き続き話題になっている。

要因の連続性

  • 継続要因: FOMCブラックアウトによるFRB高官発言の空白、9/17-18日銀会合を控えた利上げ観測の高止まり、ECB理事会前の25bp利上げ織り込み
  • 新規要因: 日本の中期・超長期ゾーンで国債入札のテール拡大など需給の重さが意識され始めたこと、ベッセント財務長官発言を受けた円安是正圧力への思惑
  • 解消した要因: なし(ウォラー理事のハト派発言による9月利上げ観測の急低下は反転せず、大きな巻き戻し材料はまだ出ていない)

1. 金利サマリー

対象 水準(取得時点) 前回・前日比 主な変動要因
米2年債 4.2%程度(9/4時点) ほぼ横ばい(米国休場・ブラックアウトで材料乏しい) FOMC利上げ観測の膠着
米10年債 4.76〜4.78%程度(9/4時点) ほぼ横ばい 同上
JGB10年債 2.9%程度(9/5時点、9/2高値3.011%) 高値から約11bp低下 日銀利上げ観測、国債入札後の一服
独10年債(Bund) 3.3%台(9/7時点) 緩やかに上昇基調 ECB理事会(9/9-10)前の利上げ織り込み
ドル円 156円13〜15銭程度(9/7朝時点) 前週末17時比+16銭(円高方向) 日銀の利上げペース思惑、持ち高調整

米10年債とTIPS(物価連動国債)から算出される実質金利は9/4時点で2.42%、ブレークイーブンインフレ率(期待インフレ率)は2.30%と、StreetStatsのデータでは大きな変化は確認できていない。米2年・10年の利回り差(2-10年スプレッド)はプラス圏(順イールド)を保っており、逆イールド(短期金利が長期金利を上回る状態)は解消されたままである。なお米30年債の直近水準は検索では確度の高い一次情報を確認できなかった。

2. 中央銀行の動き

FRB

FRBは9月5日からFOMC(9/15-16開催)前のブラックアウト期間に入っており、新規の高官発言は確認できない。直近の材料は9月3日、ウォラー理事がReuters NEXT主催イベントで「ディスインフレにもう少し時間を与えるべきだ」と述べ、8月の労働市場・経済活動が良好であることを踏まえ、9月11日発表の8月CPIが上振れしない限り9月会合での金利据え置きを支持する考えを示したこと(CNBC)。この発言を受けCME FedWatchの25bp利上げ確率は63.2%から49.8%へ急低下し、その後も反発せず5割前後で膠着している。ウォラー理事はハト派とされるが、インフレが根強ければ早期の再引き締めもあり得るとの留保も付けており、決定事項ではなくあくまで条件付きの見方である点には注意が必要。

日銀

植田総裁は9月1日、次回9月会合を含め毎回の会合で利上げを議論する方針を明言。氷見野副総裁は「(利上げを)しっかり検討していく」と述べたが、事前の予告は避けた(日本経済新聞)。高田審議委員も9月2日、利上げペースの機動的な対応が必要との考えを示唆したと報じられている。市場は9/17-18会合での0.25%幅の利上げを8割超織り込んでいるとみられ、原油高を背景にした価格転嫁の広がりによる物価上振れ懸念が支援材料になっているとの分析がある。8月30日には片山財務相・植田総裁とベッセント米財務長官が会談し、ベッセント氏は「円の大幅な過小評価に対処するための断固とした市場・金融政策上の措置」への支持を表明、片山財務相は秩序だったドル円相場の重要性を確認した。

ECB・その他

ECBは9月9-10日に理事会を開催する。マネーマーケットは25bpの利上げ(中銀預金金利2.50%へ)をほぼ完全に織り込んでおり、2027年6月までに3%へ達する確率もほぼ100%とみられている。OIS(翌日物金利スワップ)は12月時点で2.70%、2027年2月時点で2.78%まで織り込んでいるとの分析がある(Trading Economics)。これを受けて独10年債利回りは2011年3月以来の高水準圏となる3.2〜3.3%台で推移している。BOEなど他の主要中銀については、今週入って金利観に影響する大きな発言・決定は確認できなかった。

3. 経済指標

日本では本日9月8日午前、厚生労働省が7月分毎月勤労統計(実質賃金)を8時30分に、内閣府が4-6月期GDP2次速報(改定値)を8時50分に、それぞれ公表予定である(みんかぶほか経済指標カレンダーの記載による)。1次速報では実質GDPが前期比0.3%(年率1.1%)と3四半期連続のプラス成長ながら、個人消費・住宅投資・設備投資がいずれも減少するなど内容は弱く、2次速報での改定幅が注目される。ただし本レポート作成時点では両指標とも結果が未公表であり、確定値は次回以降に反映する。

米国では7月分CPI(消費者物価指数)が前年比+3.4%、コア指数が前年比+2.5%となり、市場予想とは一致したものの前月から伸びは鈍化していた。8月分CPIは9月11日発表予定で、9月5日からのFOMCブラックアウト入り後では会合前最後の主要インフレ指標となるため、通常以上に市場の反応が大きくなる可能性がある。8月分PPI(生産者物価指数)は9月10日発表予定。

4. 為替

ドル円は9月3日に一時155円30銭まで円高が進行したのち、9月7日午前8時30分の東京市場では156円13〜15銭(前週末17時時点比16銭の円高・ドル安)、同日午後は155円80銭〜156円28銭のレンジで推移した(Investing.com/Fisco、三井住友DSアセットマネジメント)。日銀の利上げペース加速観測が心理的節目の160円接近を抑えている一方、材料難で積極的なドル売りも入りづらい地合いが続いている。なお、ユーロドルおよびドル指数(DXY)については、検索時点で確度の高い最新水準を一次情報で確認できなかったため今回は数値を割愛する。為替介入に関する実弾介入の観測・発表は確認されていない。

5. 債券需給

日本国債では9月1日に10年利付国債(第383回、表面利率2.700%)の入札が行われ、最低落札価格は市場予想(97円70銭台)を下回ったものの、応札倍率は3.92倍と前回(3.06倍)・直近12カ月平均(3.17倍)を上回り、需要は総じて底堅かったとみられる(財務省)。最高落札利回りは3.011%と、1996年以来およそ30年ぶりの水準となった。9月3日の30年利付国債(第91回)入札は、最低落札価格98円65銭(利回り4.100%)・平均落札価格98円93銭(利回り4.079%)で、テール(平均と最低の価格差)は28銭とやや拡大し、超長期ゾーンでの需給の重さが意識された(財務省)。本日9月8日には5年利付国債の入札が予定されているが、本レポート作成時点では結果は未公表(財務省: 入札カレンダー)。クレジット市場では、ハイイールドスプレッド(ICE BofA、below investment gradeの社債が国債に対して要求する上乗せ利回り)が2.65〜2.66%と前回からほぼ横ばいで、信用不安の兆候は見られない。

6. 他資産への波及

日米欧の金利が高止まり・上昇基調にある中でも、米国株はウォラー理事のハト派発言を受けた長期金利低下を好感し、9月4日にNYダウが624ドル高となるなど底堅い動きを見せた。金相場は根強いインフレ懸念や地政学リスクを背景に高値圏でのもみ合いが続いているとみられ、ビットコインと金の連動性が高まっているとの報道もあり、投資家がビットコインを「デジタルゴールド」的な位置づけで見る動きが強まっている可能性がある。ドル円は日銀の利上げ観測で上値が抑えられる一方、明確な方向感には欠けており、金利差の変化が為替に素直に反映されにくい局面が続いている。

7. 今夜の注目イベント

本日(9/8)は日本時間午前に4-6月期GDP2次速報・7月分毎月勤労統計、日中に5年利付国債入札が予定されている。日本時間今夜にかけては米国側の重要指標の発表はないが、9月9-10日のECB理事会(25bp利上げが有力視)、9月10日の米PPI、9月11日の米CPI(FOMC前最後の主要インフレ指標)が今週後半の焦点となる。