前回からの変化
変わったこと(変化・新規)
- 前回レポート(9/7)では取引開始前で9月4日(金)終値を暫定的に記載していたが、9月7日(月)の確定終値が判明した。上海総合指数は3,932.70pt(前日比+0.07%)、CSI300は4,575.02pt(+0.59%)とそろって続伸した一方、香港ハンセン指数は25,413.12pt(▲0.93%)、ハンセンテック指数は4,527.71pt(▲0.92%)と反落し、前回の香港優位(ハンセン+1.74%、ハンセンテック+2.27%)から一転して本土・香港で方向が明確に割れた(Trading Economics(香港)、Trading Economics(上海)、Investing.com(ハンセンテック))。
- 香港下落の主因は、米国の雇用統計が市場予想を上回りFRBの利上げ観測が浮上したことによるリスク回避で、金融・テクノロジー・エネルギー関連株が売られた。個別にはシャオミが約3.9%安、テンセントが0.5%安、美団(メイトゥアン)が1.8%安となった一方、ミニマックスが6.9%高、建滔化工が5.7%高と対照的な動きも見られた。これは前回にはなかった新規の材料である(Sunday Guardian Live)。
- 恒大地産集団(境内法人)について、広州市中級人民法院が8月21日付で破産清算の申立てを正式に受理していたことが確認できた。前回は「手続き進行中」という表現にとどまっていたが、法的な受理という具体的な進展として新たに確認された。恒大系ではすでに900社超が破産清算・破産再編・強制清算の手続きに入り、1000社超が自主清算等で整理済みとされる。保交楼(引き渡し保証)は7月末時点で全国累計124万戸超に達し、未引き渡しは1%未満まで縮小した(中国新聞網)。
- ハンセン指数のテクニカルシグナルは、前回の「strong buy(強い買い)」から中立寄りに転換し、14日RSIは60.3程度から48.8程度まで低下した(詳細はテクニカル分析参照)。
- 恒生沪深港通AH株溢価指数(AHプレミアム、A株のH株に対する割高度を示す指数)は、8月3日〜9月3日の期間で高値125.35・安値120.62・平均122.76のレンジで推移していたことが新たに確認できた(HSI Indexes社ファクトシート)。
昨日と同じこと(継続)
- 米国が検討する対中追加関税7.5%(通商法301条・過剰生産能力調査に基づく)は、9月24日の米中首脳会談前の発表を念頭に準備が続いているとされ、税率・実施時期は依然として観測段階にとどまる(Bloomberg)。
- 中国商務部は8月27日の反対表明以降、立場を変えていない。
- 習近平国家主席の9月23〜25日訪米、24日のトランプ大統領との会談予定に変更はない。
- 人民銀行のLPR(1年3.0%・5年超3.5%)は8月20日公表分から変わらず、次回改定は9月22日を予定。
- 中国8月貿易収支(9月8日発表予定)・CPI/PPI(9月9日発表予定)は、本レポート作成時点でまだ結果が判明していない。
要因の連続性
- 継続要因: 9月24日の米中首脳会談を控えた追加関税7.5%の観測、対中輸出規制の現行措置、恒大の法的整理プロセスは、いずれも前回から続く構造的な材料。
- 新規要因: 米雇用統計を受けたFRB利上げ観測というグローバル金利要因が香港市場にのみ重石となり、本土・香港の方向乖離を生んだ点が新規。また、米中実務者間で「非機微品目」の関税引き下げ幅を巡る協議が続いているものの、範囲について合意に至っていないとの報道も新たな要因として加わった(Nikkei Asia)。
- 解消した要因: なし。
1. 市況サマリー
| 指数 | 市場・通貨 | 終値 | 前日比 | 銘柄区分 |
|---|---|---|---|---|
| 上海総合指数 | 本土・人民元建て | 3,932.70pt | +0.07% | A株 |
| CSI300(滬深300) | 本土・人民元建て | 4,575.02pt | +0.59% | A株 |
| 香港ハンセン指数 | 香港・香港ドル建て | 25,413.12pt | ▲0.93% | H株中心 |
| ハンセンテック指数 | 香港・香港ドル建て | 4,527.71pt | ▲0.92% | H株中心 |
出典: Trading Economics(香港)、Trading Economics(上海)、Investing.com(ハンセンテック)
なお米国は9月7日が振替休日(レイバーデー)で株式市場が休場だったとみられ、中国ADR(ナスダック・ゴールデンドラゴン中国指数)の直近終値は本レポート作成時点で確度の高い出典をもって確認できなかったため、次回改めて確認する。
2. 指数別動向
本土(上海・CSI300)
上海総合指数は3,932.70pt(前日比+2.58pt、+0.07%)、CSI300は4,575.02pt(+26.97pt、+0.59%)と、いずれも小幅ながら続伸した。前回の終値(9/4)からの変化は限定的で、9月24日の米中首脳会談への期待や、財新(RatingDog)サービス業PMIの改善など国内材料が下支えした一方、米金利動向の影響は香港市場ほど強く出なかった(Trading Economics(上海))。
香港(ハンセン・ハンセンテック)
香港ハンセン指数は25,413.12pt(▲237.75pt、▲0.93%)、ハンセンテック指数は4,527.71pt(▲42.09pt、▲0.92%)と反落し、2週間ぶり高値圏からの調整となった。米雇用統計の強さを受けたFRB利上げ観測の浮上でリスク回避姿勢が広がり、金融・テクノロジー・エネルギー株が軟調。個別ではシャオミが約3.9%安、テンセントが0.5%安、美団が1.8%安となった(Trading Economics(香港)、Sunday Guardian Live)。
本土・香港の方向乖離について: 香港市場は米ドルにペッグする香港ドルの金利体系上、米金利動向の影響を強く受けやすく、外国人資金の比率も高いため、米利上げ観測に対して本土市場より敏感に反応したとみられる。一方、本土市場(A株)は資本規制下で国内資金が主体であり、米金融政策より国内の政策期待・PMI動向に左右されやすい構造的な違いが、今回の方向乖離の背景にあると考えられる。
参考として、恒生沪深港通AH株溢価指数(AHプレミアム、A株がH株に対してどれだけ割高かを示す指数)は8月3日〜9月3日の期間で高値125.35・安値120.62・平均122.76のレンジで推移しており、A株の相対的な割高感は大きくは変わっていない(HSI Indexes社ファクトシート)。
3. 当局・政策の動き
- 人民銀行(PBOC): LPR(ローンプライムレート、銀行の最優遇貸出金利で事実上の政策金利)は1年3.0%・5年超3.5%のまま据え置かれており(8月20日公表分)、次回改定は9月22日を予定。9月4日発表・7日実施の3か月物(89日)買い切り型リバースレポ5000億元(等量続作、中新社)以降、新たな公開市場操作の発表は本日時点で確度の高い出典をもって確認できなかった(継続)。
- CSRC・国務院: 本日時点で、市場の需給に直接影響する新規の資本市場改革措置・景気対策の発表は確認できなかった。
- 米国側の通商措置(観測)と中国側の公式反応(決定済み): 米国は通商法301条調査(過剰生産能力を理由)に基づき、9月24日の米中首脳会談前の発表を念頭に追加関税7.5%の導入を検討しているとされる(観測)。対象品目にはアルミニウム・自動車・電池・鉄鋼・セメント・電子製品・工作機械・半導体・太陽光パネルなどが挙がる。これに対し中国商務部は8月27日、「単一主義・保護主義」だとして反対する立場を公式に表明済み(決定済み・継続)。米中の実務者間では「非機微品目」の関税引き下げについても協議されているが、引き下げ幅の範囲では合意していないと報じられている(観測)(中国新聞網、Bloomberg、Nikkei Asia)。
4. 経済指標
8月の製造業PMIは、国家統計局(公式)が49.8%(7月49.2%から+0.6ポイント、依然50を下回る)、RatingDog(旧財新、民間調査)が51.5(予想50.9・前月50.9を上回る)と、いずれも改善したが水準は3ポイント近く食い違う。非製造業(サービス業)PMIも、国家統計局が49.0%(7月から横ばい、50割れが続く)であるのに対し、RatingDogサービス業PMIは51.4(7月50.4から改善、市場予想50.6を上回る)と、官民で明暗が分かれた状態が続いている。大企業中心の公式統計と、輸出志向の強い中小・民間企業を含む民間調査の対象の違いが、この乖離の一因とみられる。どちらか一方を「正しい」と断定はしない(国家統計局、FXStreet)。
中国8月の貿易収支(輸出入)は本日9月8日に発表予定だが、本レポート作成時点ではまだ結果が判明していない。市場では輸入が前年比+30%程度まで加速し、貿易黒字は7月の1,125億ドルからやや拡大するとの予想がある(あくまで予想であり確定値ではない)。9月9日には8月の消費者物価指数(CPI)・生産者物価指数(PPI)の発表も予定されている。
社会融資総量・新規人民元貸出については、本日時点で新たな発表は確認できなかった。
5. 不動産・地方債務
恒大地産集団(境内の不動産事業法人。香港上場のH株「中国恒大集団」とは別法人で、中国恒大集団は2025年8月に香港取引所を上場廃止済み)について、広州市中級人民法院が8月21日付で破産清算の申立てを正式に受理した。恒大グループ全体では900社超が破産清算・破産再編・強制清算の手続きに入り、1000社超が自主清算・株式譲渡等でリスクを解消済みとされる。恒大汽車(EV子会社)は取引停止が2026年9月30日まで18か月続くと香港取引所の上場廃止基準に抵触しうる状況にある。住宅の引き渡し保証(保交楼)については、7月末時点で全国累計124万戸超が引き渡し済みで、未引き渡しは1%未満まで縮小したとされる(中国新聞網)。地方政府の隠れ債務(融資平台)や銀行・信託の理財商品に関する新たな進捗は、本日時点で確認できなかった。
6. 米中関係と注目銘柄
米国は通商法301条調査に基づき、9月24日の米中首脳会談前の発表を念頭に、対中追加関税7.5%(過剰生産能力を理由)の導入を検討しているとされる。対象品目はアルミニウム・自動車・電池・鉄鋼・セメント・電子製品・工作機械・半導体・太陽光パネルなど広範に及び、半導体については既存の関税と合算されると最大70%程度に達しうるとの観測がある。中国商務部はこれを「単一主義・保護主義」だとして8月27日に反対を表明済みで、姿勢を崩していない。一方、米中の実務者間では「非機微品目」の関税引き下げについても協議されているが、引き下げ幅の範囲では合意に至っていないと報じられている(中国新聞網、Nikkei Asia)。
習近平国家主席は9月23〜25日にワシントンを訪問し、24日にトランプ大統領と会談する予定に変更はない。
注目銘柄では、香港市場でテンセント(H株)が0.5%安、シャオミが約3.9%安、美団が1.8%安となった。CATL(寧徳時代)はAH株のプレミアム率がマイナス圏(H株がA株に対して割高)で推移しているとの統計が確認された(智通財経 AH統計)。SMIC(中芯国際)は米国の輸出規制下でも成熟プロセス(28nm以上)を中心に北京・上海・深セン・天津で新工場を建設中とされ、先端プロセス(7nm相当)は多重露光技術でEUV機を使うTSMCに比べ歩留まりが劣るとの分析がある。アリババ・貴州茅台・BYDについては、本日時点で確度の高い個別の値動き情報を確認できなかった。
7. 強気派 vs 弱気派
強気派: BarclaysやUBSなどの証券会社では、CSI指数の中小型株を中心にブル方向のオプション・スワップ取引への顧客需要が増えているとの報道がある。BNPパリバやバンク・オブ・アメリカは、資本市場改革の進展、半導体・AIの自給率向上、ハードウエア関連企業の増益期待を強気の根拠に挙げる。バリュエーション面では、ゴールドマン・サックスやバーンスタイン、ソシエテ・ジェネラルが「割安な株価水準」「支援的な産業政策」を理由に評価を引き上げているとされる(Bloomberg)。
弱気派: Eurasia Groupは、住宅価格が4年半にわたり下落を続けていることを2008年の米国に匹敵する家計の資産毀損と位置づけ、需要不足に対して企業が値下げ競争で対応する「内巻(インボリューション)」が採算悪化とデフレスパイラルを助長していると指摘する。MSCI中国指数はインターネット・消費関連の主要銘柄の軟調が続き、弱気相場入りが意識される場面もあったとされる。バリュエーションの割安さ(強気派の根拠)と、政策・成長期待の弱さ(弱気派の根拠)は分けて紹介する(Eurasia Group)。
8. テクニカル分析
上海総合指数は50日移動平均(単純)3,949.88・200日移動平均(単純)3,901.36に対し、終値3,932.70は50日線をわずかに下回りつつ200日線は上回る水準が継続。14日RSIは44.99程度で中立からやや弱含み、総合シグナルは前回に続き「strong sell(強い売り)」寄りとされる。サポート目安は3,921〜3,911pt、レジスタンス目安は3,940〜3,948pt程度(Investing.com 上証指数テクニカル)。
ハンセン指数は50日移動平均(単純)25,412.83・200日移動平均(単純)25,574.87に対し、終値25,413.12はほぼ50日線上で、200日線はなお下回る水準。14日RSIは48.8程度まで低下し、前回の60.3程度から中立圏に後退した。総合シグナルも前回の「strong buy(強い買い)」から、買いシグナルと売りシグナルが拮抗する中立〜やや弱含みに転換した(Investing.com 恒生指数テクニカル)。
南向き資金(ストックコネクト経由の香港株買い)の直近の日次・週次の純流入額は、本レポート作成時点で確度の高い出典をもって確認できなかったため次回改めて確認する。AH株プレミアム指数(A株のH株に対する割高度)は8月3日〜9月3日で高値125.35・安値120.62・平均122.76のレンジで推移しており、大きな変化はない(HSI Indexes社ファクトシート)。
9. 本日の注目点
- 9月8日発表予定の中国8月貿易収支(輸出入)の内容と、対米輸出の動向。
- 9月9日発表予定の中国8月CPI・PPIが、財新PMIの改善を裏付けるか、デフレ圧力の継続を示すか。
- 本土・香港の方向乖離が一時的な米金利要因によるものか、それとも構造的な資金フローの違いを反映した継続的なものかの見極め。
- 9月24日の米中首脳会談に向け、追加関税7.5%と「非機微品目」の関税引き下げ協議がどう決着するか。
- ハンセン指数のテクニカルシグナルが中立圏から再度「strong buy」に戻るか、それとも本格的な調整に入るかの分岐点。

