前回からの変化
変わったこと(変化・新規)
- リキッドネットワークで3.2億ドル相当のBTC流出ハッキングが発生(新規): 複数の取引所がビットコイン送金に利用するサイドチェーン「Liquid Network」で9月7日、保有4,200BTCのうちおよそ4,000BTC(約3.2億ドル相当)が23分間で流出した。運営元ブロックストリームは鍵の窃取ではなくサイドチェーン基盤ソフトウェア「Elements」のバグが原因と説明し、攻撃者は自らを脆弱性修正後に資金を返還する意向の「ホワイトハッカー」と称しているが、返還は確約されていない。Liquid Networkは新規取引を一時停止して対応にあたっている(CoinDesk)。
- 8月雇用統計の大幅上振れでビットコインが3日ぶり安値圏に反落(新規): 前回時点では言及がなかった材料として、8月の非農業部門雇用者数が市場予想(+5.6万人)の3倍近い+16.2万人となったことが判明し、9月FOMCでの利上げ観測が一時65%まで急伸(前回時点の58%前後からさらに上振れ)した。ビットコインは9月4日に付けた3か月ぶり高値(8万2,000ドル超)からおよそ3%下落し、8万ドルを割り込んだ状態が続いている(CoinDesk)。
- 21の大手金融機関がドル建てステーブルコイン共同発行会社の設立に合意(新規): バンク・オブ・アメリカ、シティ、ゴールドマン・サックス、ウェルズ・ファーゴ、UBS、ドイツ銀行、サンタンデールなど北米10行・欧州8行を含む計21の国際金融機関が、ドル建てステーブルコイン発行のための新会社を2026年後半に設立することで合意したと発表した。2027年前半の市場投入を目指し、米GENIUS法・EU MiCA双方への準拠を想定、国際送金や機関投資家向け決済での利用を見込むが、現時点は会社設立の合意段階でトークン名・基盤ブロックチェーン・カストディアンは未発表(発表段階、実導入はこれから)(Genfinity)。
- ビットワイズCIOマット・ホーガン氏が強気見通しを上方修正しZcashも中核資産に追加(変化): 前回の「2026年サイクルで20万ドル」という目標から一歩進め、同社のソブリン債務モデルに基づく理論的フェアバリューを22万4,000ドルとし、ビットコインを「通貨の希薄化に対するヘッジ」、Zcashを「プライバシー資産」、トークン化を「長期サイクル」として今後10年保有すべき3テーマに位置付けた(Crowdfund Insider)。
- 弱気派にブルームバーグ・インテリジェンスのアナリストが加わる(新規): 前回のコーウェン氏に加え、ブルームバーグ・インテリジェンスのマイク・マグローン氏が、市場の流動性が引き締まればビットコインが1万ドル近辺まで回帰しうるとのテールリスクシナリオを新たに示した(FinanceFeeds)。
- BTCのRSIとFear&Greedが上昇、MACDには減速シグナル(変化): RSI(14日)は前回の53からおよそ64まで上昇し過熱感がやや強まった一方、MACDヒストグラムはマイナスに転じ短期モメンタムの鈍化を示唆している。Fear&Greed指数も73から75(グリード)へ上昇した(BitcoinEthereumNews)。
- ソラナの上昇ペースが加速(変化): 前回の「7日間で+25.5%」から、本日は「1か月で+40.5%」まで裾野を広げて上昇が続いている(XRPも1か月で+38.9%)(24/7 Wall St)。
昨日と同じこと(継続)
- ビットコインは7万9,300〜8万350ドルのレンジで方向感を欠く展開が継続しており、前回の7万9,700〜8万120ドルのレンジとほぼ重なる水準で推移している。
- ビットコイン現物ETFへの資金流入基調は継続しており、9月に入ってからの4営業日累計ではおよそ7.7億ドルの純流入となっている(KuCoin News)。
- Zcash(ZEC)は9月6日に9か月ぶり高値の1,200ドルを付けた後、高値圏で高止まりしており、空売りの強制決済という上昇要因も継続している。
- CLARITY法案(暗号資産市場構造法案)は上院で9月15日にクローチャー(討論終結)採決予定のまま日程に変化はなく、イリシットファイナンス対策や政府高官の利益相反防止に関する倫理条項を巡る与野党協議も継続中(CNBC)。
- 日本の金融庁による暗号資産の分離課税(20%)移行方針についても、2028年適用見込みのまま新たな進展の確認はできなかった。
要因の連続性
- 継続要因: 9月FOMCに向けた利上げ観測の高止まり、ビットコイン現物ETFへの資金流入基調、Zcashの空売り踏み上げ相場、CLARITY法案の審議停滞。
- 新規要因: リキッドネットワークの3.2億ドルハッキング、8月雇用統計の大幅上振れによる利上げ観測の急伸とBTC反落、21行によるドル建てステーブルコイン共同発行会社設立の発表、ブルームバーグ・インテリジェンスの弱気シナリオ追加。
- 解消した要因: なし(前回までの強気・弱気材料はいずれも解消せず、新規材料が上乗せされた)。
価格サマリー
取得時点: 日本時間2026年9月8日早朝(直近の材料は米国時間9月7日月曜の取引データに基づく。相場は24時間動いており、時点により数値差がある)。
| 銘柄 | 価格(ドル建て) | 24時間騰落率など |
|---|---|---|
| ビットコイン(BTC) | 7万9,300〜8万350ドルのレンジ | 24時間ではおよそ▲1%程度、週間ではおよそ+2% |
| イーサリアム(ETH) | 2,490〜2,515ドル前後 | 24時間でおよそ▲1%弱とほぼ横ばい |
| Zcash(ZEC) | およそ1,196ドル(9/6高値1,200ドル圏で高止まり) | 直近3か月ではおよそ+370% |
| ソラナ(SOL) | およそ106ドル | 1か月ではおよそ+40.5%の上昇 |
| リップル(XRP) | およそ1.41ドル | 1か月ではおよそ+38.9%の上昇 |
出典: CoinDesk、24/7 Wall St
銘柄別動向
ビットコイン(BTC)
7万9,300〜8万350ドルのレンジで方向感を欠く展開が続いている。9月4日には3か月ぶり高値となる8万2,000ドル超を付けたが、8月の雇用統計が市場予想の3倍近い上振れ(非農業部門雇用者数+16.2万人、予想+5.6万人)となったことを受けて9月FOMCでの利上げ観測が一時65%まで急伸し、およそ3%下落して8万ドルを割り込んだ。現物ETFへの資金流入は下支えとして継続しており、9月最初の4営業日累計ではおよそ7.7億ドルの純流入(9月3日には1月以来最大の単日流入7.31億ドル、うちブラックロックIBITが4.54億ドル)となっている。利上げ観測による上値の重さと、ETF資金流入の強さが綱引きする構図は前回から続いている(CoinDesk、KuCoin News)。
イーサリアム(ETH)
2,490〜2,515ドル前後で小幅安。現物ETFは9月4日までの週でおよそ2.15億ドルの純流入となったが、前週までの流入ペースからは鈍化しており、9月2日には12営業日ぶりとなる4,808万ドルの純流出を記録する場面もあった。イーサリアム財務会社ビットマインによるETH買い増しは継続中とみられるが、本日新たな続報の確認はできなかった(KuCoin News)。
その他アルトコイン
- Zcash(ZEC): 9月6日に9か月ぶり高値の1,200ドルを付け、直近3か月ではおよそ+370%という急騰を続けている。グレイスケールの現物ETF「ZCSH」への資金流入継続に加え、空売りの強制決済(ショートスクイーズ)により24時間で4,600万ドル相当のショートポジションが清算される場面もあった。ビットワイズCIOのマット・ホーガン氏がビットコインと並びZcashを「今後10年保有すべき中核資産」に挙げたことも話題になっている(Crowdfund Insider)。
- ソラナ(SOL): およそ106ドルで推移し、1か月ではおよそ+40.5%の上昇となっている。24時間ではほぼ横ばい圏とみられる(24/7 Wall St)。
- リップル(XRP): およそ1.41ドルで、1か月ではおよそ+38.9%の上昇。前回の1.45ドル前後からはやや軟化している(24/7 Wall St)。
強気派 vs 弱気派
強気派
- ビットワイズCIOのマット・ホーガン氏は「極めて強気」な地合いだとし、同社のソブリン債務モデルに基づく理論的フェアバリューを22万4,000ドルとした。ビットコインを「通貨の希薄化に対するヘッジ」、Zcashを「プライバシー資産」、トークン化を「長期サイクル」として今後10年保有すべき3テーマに位置付けている(前回の20万ドル目標から上方修正)(Crowdfund Insider)。
- 現物ETFへの資金流入が9月最初の4営業日で7.7億ドルに達したことについて、利上げ観測による逆風下でも機関投資家需要が底堅いことの証左だとする見方が引き続き示されている(KuCoin News)。
出典: Crowdfund Insider、KuCoin News
弱気派
- アナリストのベンジャミン・コーウェン氏は、2026年内に新安値をつける可能性を引き続き相応に見込んでおり、10月をサイクル底値形成の基本シナリオに据える見方を維持している(前回から変化なし)(FinanceFeeds)。
- ブルームバーグ・インテリジェンスのマイク・マグローン氏は、市場の流動性が引き締まればビットコインが1万ドル近辺まで回帰しうるとのテールリスクシナリオを新たに示した(新規の弱気論者)(FinanceFeeds)。
- 8月雇用統計の大幅な上振れを受けて9月FOMCでの利上げ観測が一時65%まで急伸したことは、無リスク資産である国債の相対的な魅力を高め、非金利資産である暗号資産の保有妙味を下げる材料として引き続き重しになっている。この材料でビットコインはおよそ3%下落し、暗号資産関連株も5%下落した(CoinDesk)。
出典: FinanceFeeds、CoinDesk
社会実装ニュース
バンク・オブ・アメリカ、シティ、ゴールドマン・サックス、ウェルズ・ファーゴ、キャピタル・ワン、フィデリティ、PNC、スコシアバンク、TDバンク、ウィズダムツリーの北米10社と、サンタンデール、BBVA、コメルツ銀行、クレディ・アグリコル、ドイツ銀行、ロイズ、ラボバンク、UBSの欧州8行、計21の国際金融機関が9月1日、ドル建てステーブルコイン発行のための新会社を2026年後半に設立することで合意したと発表した。2027年前半の市場投入を目指し、米GENIUS法・EU MiCA双方への準拠を想定した設計で、まずドル建てから始めユーロなど他のG7通貨にも順次拡大する計画としている。用途としては国際送金や卸売決済、機関投資家向け決済が想定されているが、現時点では会社設立の合意段階にとどまり、トークン名・稼働ブロックチェーン・カストディアンはいずれも未発表で、実際の運用開始はまだ先である点には注意が必要(発表段階、実導入はこれから)(Genfinity)。
米DTCC(証券保管振替機関)は7月に限定的な本番トークン化取引を既に開始しており、10月には主要株価指数(ラッセル1000)構成銘柄・主要ETF・米国債を対象とした本格運用の開始を予定している。トークン化された米国債(RWA)の残高は160億ドル超に達しており、実証段階から本番運用への移行が進みつつある。
法改正・規制ニュース
米国
上院共和党のジョン・スーン院内総務は、暗号資産市場構造法案(CLARITY法)について9月15日にクローチャー(討論終結)の手続き採決を行う動議を提出済みで、可決には60票が必要となる。イリシットファイナンス(不正資金対策)や、大統領を含む政府高官の利益相反防止に関する倫理条項など、詳細規定を巡る与野党協議は継続中。上院が9月14日に本格再開してから中間選挙前の休会までの審議日数は実質14日間しかなく、年内成立への懐疑論が強まっている(日程自体は前回から変化なし)(CNBC)。
日本
金融庁は令和8年度税制改正要望において、暗号資産取引の所得を現行の総合課税(雑所得、最高55%)から申告分離課税(税率20%)へ移行する見直しを求めている。2025年12月の令和8年度税制改正大綱でも同方針が示されており、損失の3年間繰越控除の導入も盛り込まれる見通しで、適用開始は2028年が想定されている。改正資金決済法は2026年6月1日付で既に施行済みであり、今回のサイクルで新たな進展の確認はできなかった(継続)(税のしるべ)。
テクニカル分析
ビットコイン(BTC)
日足RSI(14日)はおよそ64まで上昇し、前回の53から過熱感がやや強まった。70以上とされる「買われ過ぎ」の水準はまだ下回っている。50日・100日・200日を含む主要な移動平均線は軒並み「買い」シグナルを示し(12本中12本が買い)、価格も20日・50日・200日の各移動平均線(それぞれおよそ7万6,775ドル・7万2,072ドル・7万2,431ドル)を上回って推移しており、中長期の上昇トレンド自体は崩れていない。一方でMACDのヒストグラムはマイナスに転じており、短期的な勢いの鈍化を示唆している。サポートは7万8,000〜7万9,000ドル圏、レジスタンスは9月4日に付けた高値圏の8万1,000〜8万2,000ドル。投資家心理を0(極度の恐怖)から100(極度の強欲)で示すFear&Greed指数は75と「グリード」圏で、前回の73からやや強気に傾いている(BitcoinEthereumNews)。
イーサリアム(ETH)
支持は週足の重要な節目とされる2,438ドル(フィボナッチ0.618戻し水準)、抵抗は週足50週移動平均が位置する2,530〜2,542ドル近辺とされ、いずれも前回から水準に変化はない。RSIはおよそ60台前半とみられ、買われ過ぎの水準には至っていない。
業界トピック
- セキュリティ事件(最重要): 複数の取引所がビットコイン送金に利用するサイドチェーン「Liquid Network」で9月7日、保有4,200BTC中およそ4,000BTC(約3.2億ドル相当)が23分間で流出するハッキングが発生した。運営元ブロックストリームは鍵の窃取ではなくサイドチェーン基盤ソフトウェア「Elements」のバグが原因と説明し、流出資金は取引所サイドスワップ経由で移動したとしている。攻撃者は脆弱性修正後に資金を返還する意向を示す「ホワイトハッカー」を自称しているが、返還は確約されておらず、Liquid Networkは新規取引を一時停止して対応にあたっている(CoinDesk)。
- ステーブルコイン: 21の国際金融機関によるドル建てステーブルコイン共同発行会社設立の発表(詳細は上記「社会実装ニュース」を参照)は、業界内でも大手銀行連合による本格参入として注目されている(Genfinity)。

