前回からの変化
変わったこと(変化・新規)
- 米2年債利回りは、前回(9/4時点)の4.2%程度からTrading Economicsによれば9/8時点で4.40〜4.41%へおよそ20bp(ベーシスポイント。1bp=0.01%)上昇した。背景には、ウォラー理事のハト派発言(9/3)でいったん49.8%まで下がった9月FOMCでの25bp利上げ観測が、強い8月雇用統計などを受けて反発し、Bitcoin.com Newsが伝えるCME FedWatchのデータで57%前後まで切り返したことがある。米10年債は前回(9/4時点)の4.76〜4.78%から9/8時点で4.79%とほぼ横ばいのため、2年10年スプレッドは前回の57bp程度から39bp程度へおよそ18bp縮小(ベアフラットニング、短期金利の上昇が長期金利より大きく効いて利回り曲線が寝る動き)した。
- 日本では9/8朝、厚生労働省が7月分毎月勤労統計を、内閣府が4-6月期GDP2次速報を公表した。実質賃金は前年同月比2.4%増と7カ月連続のプラスで、現金給与総額(名目賃金)は4.7%増と、6カ月連続で3%以上の伸びとなるのは1992年3月以来およそ34年4カ月ぶりという水準になった(日本経済新聞)。GDP2次速報値は実質前期比0.4%増(年率1.4%増)となり、8月17日公表の1次速報値(前期比0.3%増、年率1.1%増)から上方修正された。設備投資の減少幅が縮小したことが主因(Yahoo!ニュース(共同通信))。前回レポートでは両指標とも発表前で結果未公表だったため、今回が結果の初報となる。
- 9/8実施の5年利付国債(第187回)入札は、財務省の結果によると平均落札価格99円83銭(利回り2.239%)、最低落札価格99円79銭(利回り2.248%)、応札倍率3.42倍だった。テール(平均と最低の価格差)は4銭とごく小さく、入札自体は無難にこなした一方、利回り水準は9/7時点の流通利回り(2.230%程度、stock-marketdata.com)よりやや高く、上振れした賃金・GDP統計を受けた日銀利上げ観測の強まりが押し上げ材料になったとみられる。
- ドル円は、Investing.com(Fisco)によると9/8のNY市場で153円70銭〜154円40銭のレンジで推移した。米財務省による国債買い戻し観測を受けた米金利低下でいったんドル売りが優勢になったが、その後イランのカーグ島での爆発報道を受けた原油高で長期金利が上昇に転じ、ドル売りは後退した。前回(9/7朝)の156円13〜15銭からは1円50銭〜2円程度の円高で、日欧金利差縮小観測によるユーロ売り・円買いも重なった。
昨日と同じこと(継続)
- ECB理事会(9/9-10)での25bp利上げ(中銀預金金利2.50%へ)は、前回に続きほぼ確実視されたままで変わっていない。独10年債利回りは9/8時点で3.37%程度(Trading Economics)と、前回(9/7時点)の3.3%台からほぼ横ばいで推移している。
- FOMC(9/15-16開催)前のブラックアウト期間が継続しており、新規のFRB高官発言は確認できない。
- ハイイールドスプレッド(ICE BofA)は2.65〜2.66%で前回からほぼ横ばいとみられ、信用市場に不安の兆候は見られない。
- 日銀の9/17-18会合での利上げ観測は、高止まりが継続しているとみられる。
要因の連続性
- 継続要因: FOMCブラックアウトによるFRB高官発言の空白、ECB理事会前の25bp利上げ織り込み、日銀の9/17-18会合を控えた利上げ観測の高止まり
- 新規要因: 強い8月雇用統計等を受けたFedWatch利上げ確率の反発(ウォラーのハト派発言による下押しの巻き戻し)、日本の実質賃金・GDP改定値の上振れによる日銀利上げ観測の補強、5年国債入札での利回り上昇
- 解消した要因: ウォラー理事のハト派発言による9月利上げ観測の下押し圧力は、その後の統計改善で相当程度巻き戻された(完全な解消ではないが後退)
1. 金利サマリー
| 対象 | 水準(取得時点) | 前回比 | 主な変動要因 |
|---|---|---|---|
| 米2年債 | 4.40〜4.41%(9/8時点) | 9/4時点の4.2%程度から急伸(+約20bp) | 9月FOMC利上げ観測の反発(57%、前回49.8%) |
| 米10年債 | 4.79%(9/8時点) | 9/4時点の4.76〜4.78%からほぼ横ばい | 短期主導の変動、長期はレンジ内推移 |
| JGB10年債 | 2.885%(9/8時点) | 9/5時点の2.9%程度からほぼ横ばい | 5年入札での利回り上昇と相殺的に推移 |
| 独10年債(Bund) | 3.37%程度(9/8時点) | 9/7時点の3.3%台からほぼ横ばい | ECB理事会(9/9-10)前の25bp利上げ織り込み継続 |
| ドル円 | 154円前半(9/8 NY引け) | 9/7朝の156円13〜15銭から約1.5〜2円の円高 | 米国債買い戻し観測・日欧金利差縮小観測とイラン情勢の綱引き |
stock-marketdata.comによれば、日本の超長期ゾーンは9/7時点で20年債3.745%、30年債4.020%。30年債は9/3の入札(平均落札利回り4.079%)からやや低下しており、超長期ゾーンの需給不安はいったん一服したとみられる。
米10年債とTIPS(物価連動国債)の利回りから実質金利を確認すると、Trading Economicsの米10年TIPS利回りは9/8時点で2.42%(前回9/4時点も2.42%でほぼ変わらず)。名目10年債利回り(4.79%)との差から計算されるブレークイーブンインフレ率(期待インフレ率)はおよそ2.37%となり、前回(9/4時点、2.30%)からやや上昇した。米2年・10年の利回り差(2-10年スプレッド)は前回の57bp程度から39bp程度へ縮小したが、なおプラス圏(順イールド)を保っており、逆イールド(短期金利が長期金利を上回る状態)には至っていない。米30年債については、検索時点で確度の高い一次情報を確認できなかったため今回も数値を割愛する。
2. 中央銀行の動き
FRB
FRBは9/5からFOMC(9/15-16開催)前のブラックアウト期間に入っており、新規の高官発言は確認できない。もっとも市場の織り込みは動いている。Bitcoin.com Newsが伝えるCME FedWatchのデータによれば、9月FOMCでの25bp利上げ確率は前回(9/4時点)の49.8%から57%前後へ切り返した。ウォラー理事のハト派(金融緩和方向を志向する立場)発言(9/3)で急低下した利上げ観測だが、その後発表された8月雇用統計の強さなどを背景に反発したとみられる。ただしこれは市場参加者の見方・織り込みであり、FRBとして利上げを決定したわけではない点には注意が必要。
日銀
植田総裁は9/1のG20後会見で、9月会合を含め毎回の会合で利上げを議論する方針をあらためて説明しており、この発言自体は前回から新しいものではない。一方、9/8に公表された7月の実質賃金(前年比2.4%増、7カ月連続プラス)と4-6月期GDP2次速報(年率1.4%増への上方修正)は、いずれも日銀が利上げの根拠としてきた「賃金と物価の好循環」を裏付ける材料として市場で意識された(日本経済新聞、Yahoo!ニュース(共同通信))。9/17-18会合での0.25%幅の利上げ観測は、前回に続き高止まりしているとみられるが、具体的な織り込み確率の最新値は今回検索時点で確認できなかった。
ECB・その他
ECBは9/9-10にドイツ・ベルリンで理事会を開催する予定で、2日目の9/10に政策金利発表・記者会見が予定されている。25bp利上げ(中銀預金金利2.50%へ)の織り込みはほぼ確実視されたまま、前回から変化はない。独10年債利回りは3.37%程度(9/8時点、Trading Economics)で、2011年以来の高水準圏での推移が続いている。BOEなど他の主要中銀については、今回検索時点で金利観に影響する大きな発言・決定は確認できなかった。
3. 経済指標
日本では9/8午前、厚生労働省が7月分毎月勤労統計(速報)を公表し、実質賃金は前年同月比2.4%増と7カ月連続のプラス、現金給与総額(名目賃金)は43万6401円で前年比4.7%増だった。6カ月連続で3%以上の伸びとなるのは1992年3月以来、約34年4カ月ぶりという(日本経済新聞)。同日、内閣府が公表した4-6月期GDP2次速報値は実質前期比0.4%増(年率1.4%増)となり、8月17日の1次速報値(前期比0.3%増、年率1.1%増)から上方修正された。設備投資の減少幅が前期比1.2%減から0.9%減へ縮小したことが主因で、個人消費は横ばい、住宅投資はやや下方修正された(Yahoo!ニュース(共同通信))。市場予想(前期比0.4%増、年率1.8%増程度)と比べると、年率ベースではやや下振れたが、実質賃金の伸びと合わせて日銀の利上げ判断を後押しする材料と受け止められている。
米国では8月分CPI(9/11発表予定)・PPI(9/10発表予定)がFOMC(9/15-16)前最後の主要インフレ指標として控えており、本レポート作成時点ではまだ結果は出ていない。7月分CPIは前年比3.4%増、コア指数は前年比2.5%増で、市場予想とは一致していた(前回レポートまでに確認済みの既報値)。
4. 為替
ドル円はInvesting.com(Fisco)によると、9/8のNY市場で153円70銭〜154円40銭のレンジで推移した。米財務省による国債買い戻し観測を受けた米金利低下で一時ドル売りが優勢になったが、その後イランのカーグ島での爆発報道を受けた原油高で長期金利が上昇に転じ、ドル売りは後退した。同記事によればユーロドルは1.1611ドルから1.1634ドルまで上昇し、ユーロ円は179円48銭から178円46銭へ下落、日欧金利差縮小観測を受けたユーロ売り・円買いが観測されている。前回(9/7朝時点)の156円13〜15銭からは1円50銭〜2円程度の円高方向で、日銀の利上げペース加速観測が引き続き上値を抑えている。為替介入に関する新たな当局発言や実弾介入の観測は、今回検索時点では確認されていない。
5. 債券需給
日本国債では9/8に5年利付国債(第187回)の入札が行われ、財務省の結果によると平均落札価格99円83銭(利回り2.239%)、最低落札価格99円79銭(利回り2.248%)、応札倍率3.42倍(応募額6兆5,543億円÷募入決定額1兆9,154億円)だった。テール(平均と最低の価格差)は4銭とごく小さく、応札倍率も5年債として無難な水準にとどまり、入札自体は落ち着いてこなされたとみられる。ただし利回り水準は9/7時点の流通利回り(2.230%程度)よりやや高く、賃金・GDP統計の上振れを受けた利上げ観測の強まりが上乗せされた形。クレジット市場では、ハイイールドスプレッド(ICE BofA、投資適格未満の社債が国債に対して要求する上乗せ利回り)が2.65〜2.66%と前回からほぼ横ばいで、信用不安の兆候は見られない。日銀の国債買い入れオペの運用方針について、今回検索時点で新たな変更は確認できなかった。
6. 他資産への波及
米2年債利回りの上昇と9月FOMC利上げ観測の反発は、金利敏感株の重しとなりやすく、米国株には上値を抑える方向に働く可能性がある。金相場は、実質金利(米10年TIPS利回り2.42%)がおおむね横ばいで推移していることから、方向感に乏しいもみ合いが続いているとみられる。ドル円の一段の円高は、日欧の利上げ観測が金利差縮小を通じて為替に波及した形で、輸出関連株や外貨建て資産の評価に影響しうる。暗号資産については、前回から続くビットコインと金の連動性の高まりが引き続き話題になっており、金利観の変化が両資産に同時に効いてくる局面が続いている可能性がある。
7. 今夜の注目イベント
本日(9/9)日本時間の夜にかけては、米国側で大きな経済指標の発表は予定されていない。ECB理事会は9/9-10の日程で開催されており、政策金利発表・ラガルド総裁記者会見は2日目の9/10(日本時間夜)の見込み。25bp利上げがほぼ確実視されている。このほか9/10に米PPI(8月分)、9/11に米CPI(8月分、FOMC前最後の主要インフレ指標)の発表を控えており、今週後半の焦点になる。FOMC(9/15-16)はブラックアウト期間が続くため、新規のFRB高官発言は引き続き見込まれない。
