前回からの変化

変わったこと(変化・新規)

  • 米労働省が9月4日に発表した8月雇用統計は、非農業部門雇用者数が前月比16万2千人増と、市場予想(5万3千人〜6万5千人程度)を大幅に上回り、3月以来最大の伸びとなった。失業率は4.1%で市場予想通り横ばい、平均時給は前月比0.3%増・前年比3.1%増でいずれも予想通り。6〜7月分も合計5万5千人上方修正され、7月に一時強まった労働市場急減速懸念が後退した。前回レポートで「今夜最重要イベント」としていた指標のフォローにあたる。 出典: CNBC、BLS
  • 発表を受け、9月15〜16日FOMCでの0.25%利上げ観測は、前回レポート時点(9月3日、ウォラー理事のハト派発言後)の約5割から、発表直後は59%程度まで切り上がった。集計によっては66%程度まで上昇したとするものもあり、前回からの「利上げ観測後退」の流れが一部巻き戻る形となった。米10年債利回りも4.75%程度から4.78%程度まで上昇した。 出典: Benzinga
  • ウォーシュFRB議長は8月28日のジャクソンホール講演で「インフレはなお2%目標を上回っており、FRBの最優先課題は物価」との考えを示していた。市場関係者の分析では、同講演はインフレへの言及が雇用の2倍程度に及んでいたとされ、本日の強い雇用統計は「労働市場の悪化を理由に利上げを見送る根拠にはならない」というウォーシュ議長の見立てを裏付ける結果と受け止められた。9月3日にハト派寄りの発言をしたウォラー理事とは対照的な立場が改めて意識された。 出典: Yahoo Finance
  • ドル円は雇用統計直後に一時156円75銭までドル買いが進んだが、日銀の利上げ観測と円買い戻しの強さから155円34銭まで反落して引け、前日(155円30銭)からほぼ横ばいで終えた。強い雇用統計にもかかわらず対円でドル高が定着しなかった点が、前回までとの変化として目立つ。 出典: 財経新聞
  • JGB10年債利回りは2.907%まで低下し、前日(2.965%)比でおよそ5.8bp低下、2営業日連続の下落となった。米金利が雇用統計を受けて上昇する中でも国内需給の強さが優勢となり、米国とは逆方向の動きとなった。 出典: Trading Economics(JGB)
  • 独10年債(Bund)は3.36%程度へ低下し、9月2日に付けた15年ぶり高水準(3.38%台)からやや一服した。 出典: Trading Economics(Bund)
  • 金鉱株やビットコイン関連株は、雇用統計の上振れで金融緩和期待が後退したことを受けて下落した。ビットコインは前日(9月3日)、ウォラー理事のハト派発言を受けて日本円換算でおよそ1260万円まで急反発していたが、本日は上げ幅の一部を戻す形となった。 出典: Investing.com、ビットバンクプラス

昨日と同じこと(継続)

  • 日銀の9月17〜18日会合での0.25%利上げ観測はOIS市場で高水準のまま高止まりしており、本日新たにこれを覆す一次情報は確認できなかった。
  • ECBの9月10日会合での25bp利上げ観測は、中東情勢に伴うエネルギー価格上昇を主因とするユーロ圏インフレ(8月3.3%)を背景に、引き続き優勢な見方となっている。
  • BOEについては、前回報告した次回会合(9月17日予定)から変わる新たな発言・動きは本日確認できなかった。
  • ハイイールド(HY)クレジット市場について、本日時点で更新された具体的なスプレッド数値は確認できなかったが、株式市場が底堅く推移する中で信用不安の兆候は見られない。

要因の連続性

  • 継続要因: 日銀の利上げペース加速観測・日本の財政悪化懸念(JGB高利回り要因として継続)。中東情勢の地政学リスク(継続、原油下支え・インフレ圧力要因)。
  • 新規要因: 米8月雇用統計の大幅な上振れ(9月FOMC利上げ観測の再浮上要因として新規に加わった)。
  • 解消した要因: 前回、ウォラー理事のハト派発言によって強まっていた「9月FOMC据え置き」観測の勢いは、本日の雇用統計の上振れでほぼ打ち消され、利上げ観測が再び優勢に転じた。

1. 金利サマリー

年限・指標 水準 前日比 取得時点
米2年債利回り 4%台前半とみられる 正確な前日比は確認できず 2026-09-04 NY市場
米10年債利回り 4.78%程度 +3bp程度 2026-09-04 NY市場
JGB10年債利回り 2.907% -5.8bp程度 2026-09-04 東京市場引け
独10年債(Bund) 3.36%程度 -2bp程度(高値圏からやや低下) 2026-09-04
ドル円 155.34円(NY引け) ほぼ横ばい(前日155.30円、日中は156.75円まで上昇) 2026-09-04 NY市場引け

米10年債利回りの上昇により、米2年10年スプレッドは前回からやや拡大方向とみられるが、2年債の正確な前日比は確認できていない。逆イールドは引き続き解消した状態。 出典: CNBC、Trading Economics(JGB)、Trading Economics(Bund)、財経新聞(ドル円)

2. 中央銀行の動き

FRB

  • 8月の雇用統計(9月4日発表)は非農業部門雇用者数が前月比16万2千人増と、市場予想(5万3千人〜6万5千人程度)を大幅に上回り、3月以来最大の伸びとなった。失業率は4.1%で横ばい、平均時給は前月比0.3%増・前年比3.1%増でいずれも予想通り。6〜7月分も合計5万5千人上方修正された。 出典: CNBC、BLS
  • 発表を受け、9月15〜16日FOMCでの0.25%利上げ観測は前回時点の約5割から発表直後は59%程度、集計によっては66%程度まで切り上がった。米10年債利回りは4.78%程度まで上昇した。 出典: Benzinga
  • ウォーシュ議長は8月28日のジャクソンホール講演で「インフレはなお2%目標を上回っており、最優先課題は物価」との考えを示していた。市場では、本日の強い雇用統計が「労働市場の悪化を理由に利上げを見送る」根拠を弱め、同議長の姿勢を後押しする材料と受け止められている。9月3日にハト派寄り発言をしたウォラー理事との立場の違いが改めて意識された。 出典: Yahoo Finance

日銀

  • 9月17〜18日会合での0.25%利上げ(政策金利1.00%→1.25%)観測はOIS市場で高水準のまま維持されており、本日これを覆す新たな一次情報は確認できなかった。
  • JGB10年債利回りは米金利上昇とは逆方向に低下し2.907%となり、2営業日連続の下落。国内投資家の需要が底堅いことが要因として指摘されている。 出典: Trading Economics

ECB / BOE

  • ユーロ圏の8月消費者物価指数は中東情勢に伴うエネルギー価格上昇を主因に3.3%まで加速しており、9月10日のECB理事会で預金ファシリティ金利を25bp引き上げるとの観測が引き続き優勢。 出典: CNBC
  • BOE(次回会合9月17日予定)については、前回報告時点から変わる新たな発言・動きは本日確認できなかった。

3. 経済指標

  • 米8月雇用統計(9月4日発表): 非農業部門雇用者数+16.2万人(市場予想+5.3万人〜+6.5万人)、失業率4.1%(予想通り)、平均時給前月比+0.3%・前年比+3.1%(いずれも予想通り)。6〜7月分は合計+5.5万人上方修正され、7月の記録的な弱さが払拭された。 出典: CNBC、BLS
  • 発表直後の反応: 予想を大幅に上回る内容を受けて、9月FOMCでの利上げ観測が前回時点の約5割から6割前後へ切り上がり、米長期金利は上昇、ドル円は一時156円75銭までドル高が進んだ。半導体関連を中心にナスダック先物は発表前から底堅く推移していた。 出典: Benzinga

4. 為替

  • ドル円は9月4日のNY市場で156円75銭から155円34銭のレンジで推移した。雇用統計の強さで一時ドル買いが優勢となったが、日銀利上げ観測を背景とした円買い戻しが強まり、前日(155円30銭)からほぼ横ばいで引けた。ユーロドルは1.1627ドルから1.1585ドルまで下落後に反発、ポンドドルは1.3536ドルから1.3483ドルへ下落、ドル・スイスフランは0.8083フランから0.8126フランへ上昇するなど、円以外の通貨に対してはドル高が優勢だった。 出典: 財経新聞
  • 日米金利差(米10年債4.78% 対 JGB10年債2.907%)は理論上ドル高要因として拡大方向にあるが、日銀の利上げ観測と、7月31日に実施された日米協調介入という政策的背景が、ドル円の上値を抑える形になっている。為替介入に関する当局の新たな発言は本日確認できなかった。

5. 債券需給

  • 本日、米国債・JGBともに新規の入札結果は確認できなかった(前回までの入札は既にフォロー済み)。QT・国債発行計画の変更に関する新たな発表も確認できなかった。
  • クレジット市場: 本日時点で更新された具体的なハイイールド(HY)スプレッド数値は確認できなかった。株式市場が底堅く推移していることから、信用不安を示す明確な兆候は現時点で見られない。

6. 他資産への波及

強い雇用統計を受けた9月利上げ観測の再燃は、金融緩和期待に依存していた資産に逆風となった。金鉱株やビットコイン関連株は下落し、ビットコインも前日(9月3日、ウォラー理事のハト派発言後)に日本円換算でおよそ1260万円まで急反発していた上げ幅の一部を戻した。一方で株式市場は半導体関連を中心に底堅さを維持し、金利上昇にもかかわらず大きな崩れは見られなかった。ドル円は結局ほぼ横ばいで終えており、金利を起点とした資産間の連鎖は前日ほど一方向には働かず、方向感が分散した1日だった。 出典: Investing.com、ビットバンクプラス

7. 今夜の注目イベント

  • 9月5日(土)夜は主要な経済指標発表・中銀高官講演・国債入札は確認できず、欧米市場は週末で休場。
  • 9月7日(月)は米国レイバーデーで米国市場が休場となる。
  • 来週は、9月10日のECB理事会、9月11日発表の米8月CPI(ウォーシュ議長が判断材料として重視するとされる指標)、9月15〜16日のFOMC、9月17〜18日の日銀会合と、金利観を左右する重要イベントが連続する。前回に続き、これらの結果を順次フォローする。