前回からの変化

変わったこと(変化・新規)

  • JGB10年債利回りが前回(2.92〜2.95%)から一段と上昇し、9月1日の東京市場で一時3.000%へ到達。1996年9月以来30年ぶりに心理的節目の3%に乗せた。 出典: 読売新聞(Infoseek)
  • 米10年債利回りが前回(4.73〜4.75%)から4.78〜4.80%へ上昇し、2025年1月以来(19カ月ぶり)の高水準を更新。5営業日続伸となった。ISM・JOLTSなど指標が市場予想を下回ったにもかかわらず金利が上昇する展開となった。 出典: Trading Economics
  • 独Bund10年債利回りも前回の「3.25%超」から3.36〜3.37%へ一段高となり、2011年4月以来の高水準を更新した。 出典: Trading Economics
  • CME FedWatchの9月FOMC利上げ確率が前回の56%から上昇を続け、8月31日時点で60%台(日本経済新聞)、一部報道では66%(Forbes)まで切り上がった。 出典: 日本経済新聞、Forbes
  • 新たに中東(ホルムズ海峡・イラン)の地政学リスクが浮上した。米中央軍が9月1日、イラン革命防衛隊(IRGC)関連の目標への攻撃を開始したと発表し、これを受けた質への逃避的なドル買いが金利・為替を動かす新規材料に加わった(前回レポートには言及なし)。 出典: Investing.com
  • ベッセント米財務長官が「財政の持続可能性や利上げに向けた道筋を市場に明確に示すことが重要」と発言し、片山財務相が「金融政策の具体的な手法は日銀に委ねられている」と応じるやり取りが新たにあった。 出典: 外為どっとコム

昨日と同じこと(継続)

  • ドル円は160円前後での高止まりが継続(前回159〜160円台→今回160.27円でNY市場引け)。
  • 日銀の9月利上げ観測はOIS市場で約8割のまま、新たな材料は確認できなかった。
  • ECBは9月10日会合での追加利上げ観測が継続。7月の議事要旨が地ならしとなっている構図に変化なし。
  • BOEについては8月20日会合の結果を含め、確認できる一次情報が引き続き見当たらない(情報空白が継続)。
  • ハイイールド・スプレッドは285bp前後(7月31日時点の最新公表値)と歴史的にタイトな水準を維持し、信用不安の兆候は確認できない。

要因の連続性

  • 継続要因: ウォーシュFRB議長のタカ派スタンス(9月FOMC利上げ観測の土台として継続)。日銀の利上げペース加速観測、および日本の財政悪化懸念(いずれもJGB上昇要因として継続)。
  • 新規要因: 中東(イラン・ホルムズ海峡)の地政学リスクの高まり(米中央軍のイラン攻撃)が、安全資産としてのドル買い・米金利上昇の一因に新たに加わった。米財務長官の対日発言も新規材料として加わった。
  • 解消した要因: なし(前回挙げた要因はいずれも継続、または強まっている)。

1. 金利サマリー

年限・指標 水準 前日比 取得時点
米2年債利回り 4.35〜4.37% ほぼ横ばい 2026-09-01 NY市場
米10年債利回り 4.78〜4.80% +4〜6bp程度、2025年1月以来の高水準 2026-09-01〜02、5営業日続伸
JGB10年債利回り 一時3.000% +6bp程度、1996年9月以来30年ぶり 2026-09-01 東京市場
独10年債(Bund) 3.36〜3.37% +9bp程度、2011年4月以来の高水準 2026-09-01
ドル円 160.27円(NY引け) 前日比0.5円程度の円安 2026-09-01 NY市場引け

米2年10年スプレッドはプラス43bp前後とみられ、前回のプラス38bp前後からやや拡大(スティープ化)した。逆イールドは引き続き解消した状態。 出典: Trading Economics(米10年債)、Trading Economics(独Bund)、読売新聞(JGB)

2. 中央銀行の動き

FRB

  • ウォーシュ議長の8月28日ジャクソンホール講演の余波が続き、CME FedWatchでの9月16日FOMC利上げ確率は8月29日時点の56%から、8月31日には60%台(日本経済新聞)、一部では66%(Forbes)との報道も出た。年内の利上げ観測は「1.5回」程度まで急回復し、年末時点の政策金利はほぼ4%(現行3.50〜3.75%レンジからの引き上げを織り込む水準)と見積もられている。 出典: 日本経済新聞、CNBC
  • 一方でシティグループのアンドリュー・ホレンホースト氏は、ウォーシュ議長の発言を「通常よりタカ派だが、その度合いはわずか」と評しており、経済指標面では引き締め強化を急ぐ必要性は乏しいとの見方も残る(タカ派度合いについては市場内で評価が割れている段階)。 出典: CNBC

日銀

  • 9月17〜18日会合での追加利上げ(政策金利1.00%→1.25%)をOIS市場が約8割織り込む状況に変化はなく、新たな公式発言等は確認できなかった。
  • もっとも、9月1日の東京市場でJGB10年債利回りが1996年以来の3%に到達した背景として、米長期金利の上昇に加え「日銀の利上げペースが加速するとの見方の広がり」が指摘されており、市場では利上げ観測そのものが金利上昇の一因として作用し続けている。 出典: 読売新聞(Infoseek)

ECB / BOE

  • ECBは7月23日会合の議事要旨(7月27日公表)で「追加利上げがおそらく必要になる」との見方を示しており、9月10日会合での利上げ観測を後押ししている。市場はECB預金金利が12月までに2.70%前後まで引き上げられ、9月の利上げに続く2回目の利上げ確率を約8割織り込んでいるとされる。 出典: Trading Economics
  • BOEは7月30日会合で政策金利を3.75%に据え置き(賛成6・利上げ支持3)としたことを前回レポートで報告済み。8月20日会合の結果を含め、本稿執筆時点でも確認できる一次情報は見当たらず、次回以降のレポートで追って確認する。

3. 経済指標

  • 米ISM製造業景況指数(8月分)は54.6で、市場予想55.2・7月実績55.6をいずれも下回った。新規受注指数は53.7と7月の56.7から3ポイント低下したが、8カ月連続で拡大圏を維持している。 出典: PR Newswire、FXStreet
  • JOLTS求人件数(7月分)は727.1万件で、市場予想(730万件前後)をやや下回った。専門職・企業サービスの採用者数が18.8万人減少するなど、労働需要の減速を示す内容だった。 出典: TechTimes
  • 7月建設支出は前月比マイナス0.5%となり、市場予想(横ばい)を下回った。 出典: Investing.com
  • これら弱含みの指標が発表された直後は「ドル買い後退」となったが、その後の米中央軍によるイラン攻撃発表を受けて地政学リスク回避のドル買いが優勢となり、米長期金利・ドルはいずれも上昇に転じた。指標の弱さよりも地政学要因が相場を支配する展開だった。 出典: Investing.com

4. 為替

  • ドル円は9月1日のNY市場で159円90銭〜160円27銭のレンジで推移し、160円27銭で引けた。前日(8月31日)の159円75銭からは円安方向。日中は米指標の弱さで一時軟化する場面もあったが、イラン攻撃発表後にドル買いが再加速して戻した。 出典: Investing.com
  • ベッセント米財務長官は「財政の持続可能性や利上げに向けた道筋を市場に明確に示すことが重要」と述べたと報じられており、これに対し片山財務相は「金融政策の具体的な手法は日銀に委ねられている」と応じた。日米間で通貨・金融政策を巡るやり取りが続いている。 出典: 外為どっとコム
  • 日米金利差(米10年債4.78〜4.80% 対 JGB10年債約3.0%)は理論上のドル高要因として作用しているが、7月31日の日米協調為替介入後という状況下では、実弾介入への警戒が引き続きドル円の上値を抑える要因になっているとみられる。

5. 債券需給

  • 米国債入札は今週(3年・10年・30年債)の発表が9月3日、実施は9月8〜10日の予定で、本稿執筆時点で確定した入札結果はない。
  • クレジット市場: ハイイールド(HY)スプレッドは7月31日時点の最新公表値でおよそ285bpと、過去の分布の中でも歴代最も引き締まった(タイトな)水準を維持している。9月1日時点の更新値は確認できなかったが、信用不安を示す明確な兆候は現時点で確認できない。

6. 他資産への波及

米10年債利回りの19カ月ぶり高水準への上昇は、株式市場ではグロース株・半導体株の重荷となりやすい一方、金融株には引き続き追い風となる構図が続いている。金(ゴールド)は、金利上昇という逆風と、中東情勢の緊迫化による安全資産需要という追い風がせめぎ合い、方向感の定まらない展開となった。暗号資産(ビットコイン)も同様に、金融引き締め観測による逆風と、米財政持続性への懸念を背景とした無国籍資産としての需要という綱引きの中、直近高値圏で底堅く推移している。為替では、地政学リスク回避のドル買いが日米金利差によるドル高圧力に上乗せされる形となった。

7. 今夜の注目イベント

  • 9月2日(米東部時間朝、日本時間夜21時15分予定): ADP全国雇用統計(8月分)の発表が予定されている。
  • 9月2日(米東部時間午後2時、日本時間9月3日未明予定): 地区連銀経済報告(ベージュブック)の公表が予定されている。
  • 中東(イラン・ホルムズ海峡)情勢: 米中央軍による攻撃の継続・拡大の有無が、原油価格やドルの安全資産需要を通じて金利・為替に波及する可能性がある。
  • 9月4日(金): 8月分雇用統計の発表が予定されており、9月16日FOMCの利上げ判断を左右する今週最大のイベントとなる見通し(前回に続き注目)。