前回からの変化

変わったこと(変化・新規)

  • 米・イラン軍事衝突がさらに激化: 米軍がホルムズ海峡周辺のイラン軍事拠点(レーダー・ミサイルシステム関連とされる)へ新たな攻撃を実施し、トランプ大統領は自身のSNSで「ホルムズ海峡付近のイラン標的を攻撃中」と表明した。背景には、前日夜にサウジアラビア船籍の超大型タンカー「シドル」号とリベリア船籍「セネガル・プロスペリティ」号がホルムズ海峡出港中に正体不明の飛翔体で相次いで攻撃された事件がある。前回報告した「タンカーが機雷に接触」という段階から、複数タンカーへの直接攻撃という、より深刻な局面に進んだ。 出典: CNBC、Benzinga
  • ウクライナがロシアのバルト海石油拠点を新たに攻撃(新規): ウクライナ軍のドローンが、ロシア最大級の海上石油輸出拠点の一つであるウスチルーガ港(レニングラード州)を半年間で3回目となる攻撃、出火した。同港は隣接するプリモルスク港と合わせてロシアの海上原油輸出能力の4割超を担うとされ、中東(ホルムズ海峡)に加えロシア側からも供給不安が強まる形となった。前回まで中東情勢のみだった地政学リスクの震源が、ロシア方面にも広がった。 出典: Ukrainian Shipping Magazine
  • 原油が1日で5%超の急伸(前回は2〜3%台の上昇): WTIは前回84.50ドルから90.65ドル(+7.3%)へ、ブレントは前回90.69ドルから95.19ドル(+5.0%)へ急伸した。中東・ロシア双方での供給不安が重なり、前回の上昇ペースを大きく上回る値動きとなった。 出典: Trading Economics(WTI)、Trading Economics(ブレント)
  • 金・銀の下落が加速(前回は1%未満、本日は3%台): 金は前回4,488.60ドルから4,328.43ドル(-3.6%)、銀は前回66.44ドルから64.07ドル(-3.6%)へ下落した。ウォーシュFRB議長のジャクソンホール講演を受けたタカ派再評価が続き、9月利上げ確率は前回の57.5〜60%からさらに66〜67.5%へ切り上がり、米10年債利回りは4.79%(2025年1月以来の高水準)まで上昇、ドル指数も99.4近辺へ強含んだ。 出典: Kitco、FXStreet
  • 大豆が続伸、ほぼ3年ぶり高値(新規材料): 大豆は前回1,288.00セントから1,304.00セント(+1.2%)へ続伸し、バイオ燃料政策の変更と中国からの継続的な購買需要を背景に、ほぼ3年ぶりの高値圏で推移している。前回までの黒海供給網混乱・猛暑という天候・地政学要因に加え、需要側の新規材料が加わった。 出典: Trading Economics(大豆)
  • ガーナのカカオ減産見通しが上方修正(前回のカカオ懸念をやや後退させる材料): ガーナ・ココア委員会(COCOBOD)は当初(7月末時点)2026/27年産の生産量を前年の75万トンから45万〜55万トン(最大40%減)と見込んでいたが、圃場調査を経て65万トン(前年比13%減)へ上方修正した。前回報告したアイボリーコーストの生産者価格据え置きと合わせ、西アフリカのカカオ供給不安はやや後退した。 出典: ChemAnalyst

昨日と同じこと(継続)

  • 黒海の穀物輸出網混乱は継続しており、小麦(+1.8%)・トウモロコシ(+1.9%)ともに堅調な地合いが続いている。
  • ホルムズ海峡の実質的な緊張状態は継続し、地政学リスクプレミアムが原油価格に乗り続けている。
  • 砂糖はエルニーニョによる天候不安を背景とした上昇基調が継続し、本日も+3.7%と大幅高となった。

要因の連続性

  • 継続要因: 黒海供給網の混乱、ホルムズ海峡の地政学リスク、9月FOMC利上げ観測、ドル高はいずれも前回に続き作用している。
  • 新規要因: (1) ウクライナによるロシア・バルト海石油拠点(ウスチルーガ)への攻撃という、中東とは独立した新たな供給リスクが原油に加わった、(2) タンカーへの直接攻撃という、より具体的な軍事エスカレーションが発生した、(3) 大豆の中国需要・バイオ燃料政策という新規の需要材料が加わった、(4) ウォーシュ議長の発言を受けた9月利上げ確率のさらなる切り上がりと長期金利上昇が金・銀の重しとして強まった。
  • 解消した要因: ガーナのカカオ減産見通しが当初の最大40%減から13%減へ上方修正され、カカオの供給不安はやや後退した。

1. 価格サマリー(2026年9月1日(火)NY市場終値時点、日本時間では2026年9月2日早朝に相当)

商品 価格 前日比
金(オンス建て) 4,328.43 USD/oz -2.54%
銀(オンス建て) 64.07 USD/oz -3.69%
WTI原油(期近) 90.65 USD/バレル +5.71%
ブレント原油(期近) 95.19 USD/バレル +5.19%
天然ガス(ヘンリーハブ期近) 2.94 USD/MMBtu +0.29%
小麦(シカゴ期近) 765.50 セント/ブッシェル +1.19%
トウモロコシ(シカゴ期近) 521.75 セント/ブッシェル +1.31%
大豆(シカゴ期近) 1,304.00 セント/ブッシェル +2.25%
砂糖(ICE期近) 18.38 セント/ポンド +3.20%

出典: Trading Economics(金)、Trading Economics(銀)、Trading Economics(WTI)、Trading Economics(ブレント)

2. 商品別動向

金・銀

金はCOMEX先物ベースで4,328.43ドル(-2.54%)、同時間帯のスポット価格は4,370.80ドル前後(-1.72%、Kitco調べ)で、いずれも8月19日以来の安値水準となった。銀もCOMEX先物ベースで64.07ドル(-3.69%)、スポットは64.60ドル前後(-2.73%)。ウォーシュFRB議長のジャクソンホール講演を受けたタカ派再評価が続き、9月利上げ確率は66〜67.5%まで切り上がった。米10年債利回りは4.79%(2025年1月以来の高水準)、ドル指数(DXY)は安値98.55近辺から99.4近辺まで戻すなど、金利・ドル高の両面から金・銀の重しとなっている。 出典: Kitco、FXStreet

原油

WTIは90.65ドル(+5.71%)、ブレントは95.19ドル(+5.19%)へ急伸した。米軍がホルムズ海峡周辺のイラン軍事拠点へ新たな攻撃を実施したほか、前日夜にはサウジアラビア船籍・リベリア船籍のタンカー計2隻が正体不明の飛翔体に襲撃される事件が発生した。これに加え、ウクライナのドローンがロシア最大級の海上石油輸出拠点の一つであるウスチルーガ港(バルト海)を攻撃し出火するなど、中東とロシアの双方で供給不安が同時に強まったことが急伸の直接的な材料となった。 出典: CNBC、Ukrainian Shipping Magazine

天然ガス

天然ガスは2.94ドル(+0.29%)とほぼ横ばいで、5週間ぶりの高値圏を維持している。平年を上回る気温予報が冷房需要・発電用ガス消費を支えている一方、在庫水準は5年平均を上回っており、上値は重い展開が続く。 出典: Trading Economics

農産物

小麦は765.50セント(+1.19%)、トウモロコシは521.75セント(+1.31%)と、黒海地域での攻撃激化による供給懸念を背景に堅調地合いが続いている。大豆は1,304.00セント(+2.25%)とほぼ3年ぶりの高値圏にあり、バイオ燃料政策の変更と中国からの継続的な購買需要が支えとなっている。砂糖は18.38セント(+3.20%)とエルニーニョによる天候不安を背景に大幅高となった。 出典: Trading Economics(小麦)、Trading Economics(大豆)、Trading Economics(砂糖)

3. 急変動の特集

前回特集した金・銀・カカオに加え、本日は原油の急伸が新たな急変動対象となる。

  • 原油(新規特集): 中東(ホルムズ海峡周辺でのタンカー攻撃・軍事拠点攻撃)とロシア(ウスチルーガ港へのドローン攻撃)という、独立した2つの供給リスクが同時に重なり、WTI・ブレントとも1日で5%超上昇した。エネルギーコストの上振れは電気代・輸送コストを通じて幅広い物価に波及する可能性があり、9月FOMCの利上げ判断にも影響しうる。 出典: CNBC、Ukrainian Shipping Magazine
  • 金・銀(前回特集のフォロー): 前回に続き下落が加速し、両商品とも3%台の下落となった。9月利上げ確率の急速な織り込みが要因で、金は8月19日以来の安値水準に沈んだ。 出典: Kitco
  • カカオ(前回特集のフォロー): ガーナの2026/27年産見通しが当初の最大40%減から13%減へ上方修正され、供給不安はやや後退した。もっとも前年比で見れば依然2桁の減産であり、アイボリーコーストの生産者価格据え置きと合わせ、来シーズンの供給が細ること自体は変わらない。 出典: ChemAnalyst

4. 強気派 vs 弱気派

原油

  • 強気: KCM TradeのアナリストTim Waterer氏は、ホルムズ海峡問題の具体的な進展が見えないことを指摘し、「合意の実務的な詳細に疑問が残る限り、価格にはリスクプレミアムが乗り続ける」との見方を示した。トランプ大統領はイランの石油輸出拠点であるカーグ島への軍事的圧力にも言及しており、供給不安をさらに強める材料として意識されている。
  • 弱気: 米エネルギー情報局(EIA)は、ホルムズ海峡の通行が徐々に回復し停止中の生産が再開に向かえば、ブレント原油は2026年第4四半期に平均78ドルまで下落すると予測している。中期的には供給過剰への転換を見込む立場で、目先の急伸とは対照的な見方を示している。 出典: Rigzone

金・銀

  • 強気: Crescat CapitalのKevin Smith氏は、金価格が「2万ドルに向かう」との強気な見通しを示し、FRBはインフレ抑制において「無力」だと主張している。TD Securitiesのアナリストは、2027年第3四半期までに5,350ドルへ達する可能性が「引き続きある」との見方を維持している。
  • 弱気: Brown Brothers Harrimanの戦略チームは、ドルが前日の下落分の大半を回復したと指摘し、「政策期待はさらなる引き締めに強く傾斜している」との見方を示した。金は200日移動平均線を下回って推移しており、テクニカル面でも弱気派の主張を裏付ける形になっている。 出典: Kitco、FXStreet

穀物

  • 強気: 黒海地域での攻撃激化による供給懸念が小麦・トウモロコシを押し上げており、大豆については中国からの継続的な購買需要とバイオ燃料政策の変更が支えとなっている。 出典: Trading Economics(小麦)、Trading Economics(大豆)
  • 弱気: 国際穀物理事会(IGC)は2025/26年の世界小麦生産量を過去最大となる8億1900万トンと算出しており、中期的には大豊作という供給過剰要因が残っているとの見方もある。 出典: World Grain

5. 地政学・物価関連ニュース

米・イラン軍事衝突の激化(タンカーへの攻撃、ホルムズ海峡周辺拠点への攻撃)と、ウクライナによるロシア・バルト海石油拠点(ウスチルーガ港)への攻撃が同時進行しており、東西両方向から原油供給への不安が生じている。エネルギー価格の急伸は電気代・燃料費を通じたインフレ圧力を強める可能性があり、9月FOMCの利上げ確率上昇(66〜67.5%)の一因ともなっている。同時に黒海供給網の混乱やエルニーニョによる天候不安を背景とした穀物・砂糖の上昇も続いており、エネルギーと食料の両面から物価の上振れリスクが強まっている。 出典: CNBC、Ukrainian Shipping Magazine

6. テクニカル分析

金: 200日移動平均線を下回って推移しており、RSIは50近辺で弱気圏入りが試されている状態、MACDもゼロを下回り下値圧力の増加を示唆する。サポートは4,310〜4,330ドル(8月中旬安値)、その下に4,247ドル、レジスタンスは4,450ドル(旧サポート)、その上に4,487ドル・200日移動平均線がある4,530ドル付近。断定的な売買判断ではなく、あくまで目安となる水準。 出典: FXStreet

銀: レジスタンスは65.64ドル・66.87ドル・67.75ドル、サポートは62.98ドル・61.51ドル・60.84ドルとされる水準。 出典: Kitco

WTI原油: 100日移動平均線(86ドル近辺)を上抜けたとされ、RSIは58近辺と買われすぎ圏には達していないものの底堅い買い意欲を示唆する水準。レジスタンスは89.24ドル、その上に92〜94ドル(過去の高値圏)が意識される。本日終値の90.65ドルは89.24ドルを上抜けており、次は92〜94ドル圏が試される展開もあり得る(断定的な売買判断ではない)。 出典: FXStreet WTI Forecast関連報道

天然ガス: RSIは中立ライン(50)を下回った状態から回復途上にあり、50ラインを明確に上抜けられなければ、目先の戻りは下降トレンド内の一時的な反発にとどまる可能性がある。50%フィボナッチ・リトレースメント水準である2.97ドル付近が上値の壁として意識されており、3.00ドル近辺が心理的な上値抵抗となっている。

小麦: 移動平均線ベースの総合判定は「強い買い」とされ、黒海情勢を受けた上昇局面で200日移動平均線を上回って推移している。オシレーター系指標も上向きを示しているが、あくまで「〜とされる水準」の参考情報であり断定的な売買推奨ではない。

投機筋のポジション動向(CFTC建玉明細): 直近の週間集計では、金の運用会社(マネージドマネー)の買い越し(ネットロング)は2,445枚減の166,417枚、銀のネットロングは3,254枚減の37,768枚となっており、本日の急落が織り込まれる前の週の時点で、投機筋の買いポジションはすでに縮小傾向にあった。 出典: StoneX