前回からの変化
変わったこと(変化・新規)
- 本土市場が反落に転換: 上海総合指数は前回(8/31)+0.86%→本日(9/1)-0.16%(3,986.30pt→3,979.89pt)、CSI300は+0.35%→-0.30%(4,625.09pt→4,611.44pt)。前回は本土高・香港安で方向が割れていたが、本日は上海・CSI300・ハンセンの3指数がそろって下落し方向性が一致した。
- 不動産融資制度の抜本改革(8月28日公表)を受け、不動産株が急落: 個人住宅ローンの最長期間を30年から40年に延長し、プレセール(予約販売)住宅向け融資の実行タイミングを竣工後に後ろ倒しする新制度が導入され、9月1日も国有系の越秀地産(-7%超)・建発国際集団(-6%超)、民営の華潤置地・龍湖集団(各-4%超)が続落した。前回報告した恒大集団の個別破綻処理(判決確定・清算)とは別の、業界全体を巻き込む構造改革が新たな材料として浮上した。
- 銀行株が軒並み最高値を更新: 国有6大銀行(中国銀行・中国工商銀行など)が過去最大規模となる合計約2,209.89億元(前年同期比+7.98%)の中間配当計画を発表し、複数行が株価最高値を更新。中国銀行のA+H株時価総額は2兆元を突破した。第2四半期の商業銀行純金利マージンが1.41%と2022年1-3月期以来初めて前期比プラスに転じたことも支援材料となった。
- ハンセンテック指数の確定値を確認(前回は未取得): -1.49%の4,550ptで引けた。
- バイドゥの香港取引所における上場地位が9月1日付で「二次上場」から「主要上場」に転換した(米国ADRの上場廃止リスクへの備えとみられる、決定済みの事実)。
昨日と同じこと(継続)
- 恒大集団の破綻処理は最終局面が続いているとみられるが、前回報告(創業者への無期懲役判決8/20、広東子会社の清算手続き開始8/22)以降の新たな進捗は本日確認できなかった。
- 8月の製造業PMI(公式49.8・財新50.4)の官民乖離は引き続き論点として意識されているが、本日新たな月次PMIの発表はなかった。
- 米中間の輸出規制・関税を巡る新たな決定は本日も確認できず、現状の措置が継続している。
要因の連続性
- 継続要因: 不動産セクターの構造的リスク(材料の中心は恒大の個別破綻処理から業界全体の融資制度改革へと移りつつも継続)。米金利上昇圧力が香港株の重石として継続している点も同じだが、直接の引き金は前回のウォーシュFRB議長のタカ派発言から、本日は米イラン軍事衝突再燃による原油高・長期金利上昇に変わった。
- 新規要因: 8月28日公表の不動産融資制度改革(プレセール規制見直し・住宅ローン最長40年)。中東(米イラン)情勢の緊迫化による原油高・地政学リスク。銀行株の記録的な中間配当・純金利マージン改善を材料とした資金の物色。
- 解消した要因: 本土市場を「景気対策への期待」だけで押し上げていた期待先行の地合いは後退し、本土市場も本日は下落に転じた。ただし財政部・人民銀行・金融監督当局が8月21日付で財政金融協調による内需拡大策(利子補給の対象拡大等)を通知していたことが判明し、前回「期待先行」としていた材料に具体的な制度の裏付けが加わった。
1. 市況サマリー
| 指数 | 終値 | 前日比 |
|---|---|---|
| 上海総合指数 | 3,979.89pt | -0.16% |
| CSI300(滬深300) | 4,611.44pt | -0.30% |
| 香港ハンセン指数 | 25,329.73pt | -0.93% |
| ハンセンテック指数 | 4,550pt | -1.49% |
出典: 財経新聞(本土)、財経新聞(香港)、Investing.com(CSI300)
2. 指数別動向
本土(上海・CSI300)
上海総合指数は前日比-0.16%の3,979.89と反落した。CSI300も-0.30%の4,611.44と続落した。午前は中国当局の景気対策・内需拡大策への期待を支えに上海総合指数が一時+0.03%の3,987.56まで切り返す場面があったが、午後にかけて米国とイランの軍事的緊張再燃(米軍によるホルムズ海峡ララク島への攻撃とイランの報復)を受けた原油高・米長期金利上昇を嫌気する流れが強まり、大引けにかけてマイナス圏に沈んだ。セクター別には媒体(メディア)・農業関連が値上がり率上位となった一方、不動産融資制度改革を受けた不動産関連や電子部品・半導体、非鉄金属が軟調だった。深セン成分指数は-1.02%、創業板指数は-1.32%とグロース市場がより大きく下げた。 出典: 財経新聞(本土)
香港(ハンセン・ハンセンテック)
ハンセン指数は前日比-0.93%の25,329.73と続落し、9月相場は波乱の幕開けとなった。ハンセンテック指数は-1.49%の4,550ptと日中安値圏で引け、これまで香港市場を牽引してきたテック株の失速が目立った。国企指数(旧H株指数)も-0.59%の8,462.64。下落の背景は本土同様、米イラン軍事衝突再燃による原油高・米長期金利上昇に加え、8月28日公表の不動産融資制度改革を受けた不動産株の続落。一方、国有大手銀行の記録的な中間配当発表を受けて銀行株・消費関連株(乳製品・食肉株など)が逆行高となり、指数の下げ幅を圧縮した。 出典: 格隆匯(Investing.com)
本土(上海・CSI300)・香港(ハンセン・ハンセンテック)ともに下落となり、前回レポート(8/31)で見られた「本土高・香港安」という方向の割れは解消し、方向性が一致した。ただし内訳を見ると、本土は農業・消費・メディアなど内需関連銘柄が下支え役となった一方、香港は国有銀行の高配当物色が下支え役となっており、下支えを担ったセクターの性質は異なる。
3. 当局・政策の動き
- 人民銀行(PBOC): ローンプライムレート(LPR)は8月20日公表分(1年3.0%・5年超3.5%)から変更なく、15カ月連続据え置きが継続している(次回改定は9月22日予定)。本日新たな金融政策の発表は確認できなかった。
- 財政・内需拡大策: 財政部・人民銀行・国家金融監督管理総局は8月21日付で財政金融協調による内需拡大促進策に関する通知を公表し、利子補給(貼息)の対象拡大・取扱機関の増加・限度額引き上げの3項目を同月から実施すると明らかにした。財政部副部長は下半期にさらなる政策を追加する方針を示している。前回レポートで「期待先行」としていた本土の景気対策期待に、具体的な制度の裏付けが加わった形。決定済みの措置。 出典: 新華網
- 銀行の株主還元: 国有大手6銀行(中国銀行・中国工商銀行など)が2026年中間配当として合計約2,209.89億元(前年同期比+7.98%)の配当計画を発表し、6大行としては過去最大規模。第2四半期の商業銀行純金利マージンは1.41%と、2022年1-3月期以来初めて前期比プラスに転じたことも銀行株買いを支えた。決定済みの決算・配当発表。 出典: 21世紀経済報道
- 不動産金融規制: 8月28日、人民銀行と国家金融監督管理総局が個人住宅ローンの最長期間を30年から40年に延長し、プレセール(予約販売)住宅向け融資の実行タイミングを竣工後へ後ろ倒しする制度改革を公表した。決定済みの制度変更で、9月1日時点も市場は不動産株売りで反応を続けている。 出典: The Star
4. 経済指標
8月の中国製造業PMIは前回レポートで報告済み(公式49.8・財新50.4、官民で活動の縮小・拡大が分かれる乖離が継続)であり、9月1日時点で新たな月次PMIの発表は確認できなかった。財新サービス業PMIは例年月内第3営業日前後に発表されるため、次回レポートで結果を確認する。官民統計の乖離という論点自体は継続している。
5. 不動産・地方債務
- 8月28日公表の住宅ローン制度・プレセール融資改革を受け、8月末以降CSI300不動産指数は-4.6%、香港上場デベロッパー指数は-6.5%下落したと報じられており、9月1日も国有系の越秀地産(-7%超)・建発国際集団(-6%超)、民営の華潤置地・龍湖集団(各-4%超)が続落した。制度改革はプレセール依存からの脱却を狙う一方、短期的には資金繰りへの懸念が売り材料となっている。 出典: The Star、格隆匯(Investing.com)
- 2026年1〜8月の上位100社(百強房企)の販売総額は2兆175.9億元で、前月までの累計と比べ前年同月比の減少幅が0.3ポイント拡大した。中海地産・華潤置地・招商蛇口・中国金茂など一部の国有系デベロッパーは年初来の累計販売額で前年同期比プラスを維持しており、業界内の二極化が続いている。 出典: 每経網
- 恒大集団については、前回報告した創業者への無期懲役判決(8/20)・広東子会社の清算手続き開始(8/22)以降、本日時点で新たな進捗は確認できなかった。
6. 米中関係と注目銘柄
- 米中間の半導体輸出規制・関税を巡る新たな決定は、本日時点で確認できなかった(現状の措置が継続)。
- バイドゥ: 香港取引所における上場地位が9月1日付で「二次上場」から「主要上場」に転換した。米国ADRの上場廃止リスク(HFCAA関連)への備えを進める動きとみられる、決定済みの事実。 出典: 金融界
- テンセント・アリババ・バイドゥ・京東(JD.com)・美団: 香港市場でテンセント-2.56%、アリババ・京東が各-3.2%、バイドゥ・美団が各-3%近くと、プラットフォーム大手がそろって下落した。米国ADRも8月31日(現地時間)の取引でテンセント-1.04%、アリババ-1.03%、バイドゥ-0.44%、京東-1.20%とそろって軟調だった。米イラン情勢の緊迫化を受けた米国株全体の調整(ダウ工業株30種平均-374ドル、S&P500-25.62pt、ナスダック総合-31.53pt)が波及したとみられる。 出典: 格隆匯(Investing.com)、智通財経ADR統計(Investing.com)
7. 強気派 vs 弱気派
強気派(バリュエーション重視)
- モルガン・スタンレー: 2026年末の目標値としてMSCI中国指数90(現水準から+3.4%)、ハンセン指数27,500(+3.5%)、CSI300指数4,840(+4.6%)を提示し、緩やかな上昇継続を予想している。米中関税の暫定合意とFRBの利下げ期待が、予想PER12〜13倍というバリュエーションを支えるとの見方。上昇ペースは減速するとしつつ強気トレンド自体は維持するとの立場で、前回報告したゴールドマン・サックスの見方とおおむね同方向。 出典: South China Morning Post
弱気派(政策・業績リスク重視)
- 9月1日の値動きについては「赚钱效应较差(値上がり益を確定しにくい相場地合い)」との評価があり、テック大型株を中心に利益確定売りが出やすい状況が指摘されている。 出典: 格隆匯(Investing.com)
- 不動産セクターについては、8月28日の融資制度改革が中長期的な業界健全化を狙う一方、短期的には資金繰り悪化・販売鈍化への懸念から国有系デベロッパーの株価急落を招いており、改革が想定通りに機能するかは見通せていないとの見方がある(観測)。 出典: The Star
バリュエーション論(モルガン・スタンレーらの割安感を根拠とした強気論)と政策リスク論(不動産融資制度改革の実効性への懸念)は、引き続き分けて捉える必要がある。
8. テクニカル分析
ハンセン指数は、50日移動平均(単純)25,531.25・(指数)25,483.17、200日移動平均(単純)25,543.44・(指数)25,338.18に対し、終値25,329.73はおおむね50日線を下回る水準で推移している。14日RSIは41.3程度で、売られすぎの水準(30以下)には至らないものの、やや弱気寄りの位置にある。ピボットポイント(クラシック方式)ではサポート1が25,273.66、レジスタンス1が25,396.16と算出されており、目先はこのレンジ内での一進一退が意識されやすい状況といえる。 上海総合指数については、確度の高いテクニカル指標(移動平均線・RSI)を出典付きで確認できる情報源が本日は見つからなかったため、次回レポートで改めて取り上げる。 南向資金(香港ストックコネクト経由)は、8月の1カ月累計で約104億香港ドルの純買い越しとなり、ハイテク株を買い増す一方で医薬品・金融株を売り越したと報じられている(集計期間: 2026年8月)。9月1日単日の確定値は出典をもって確認できなかった。AH株プレミアム指数についても、本日時点の確定値を出典付きで確認できなかったため、次回改めて確認する。 出典: Investing.com(ハンセン指数テクニカル)
9. 本日の注目点
- 財新中国サービス業PMI(例年月内第3営業日前後に発表)の結果と、製造業PMIとの整合性。
- 8月28日公表の不動産融資制度改革(プレセール規制見直し・住宅ローン最長40年)を受けた不動産株の値動きが一巡するか。
- 国有大手銀行の高配当・株価最高値更新の流れが他行・他セクターに波及するか。
- 米イラン情勢の緊迫化が長期化した場合の、原油高・米長期金利上昇を通じた中国株(とくに香港市場)への影響。
- 本レポート作成時点で、9月2日固有の決算発表・政策会合の確定情報は確認できなかった。

