前回からの変化

前回(2026-10-23)との比較である。本カテゴリは週次のため、比較対象は1週間前のレポートである。

変わったこと(変化・新規)

  • WCIは前回の4,585ドルから4,429ドル(-156ドル、-3%)へ下がった。前回までの2週連続の上昇が止まった。上海発は、ロサンゼルス向けが8,007ドルから7,514ドル(-6%)、ニューヨーク向けが10,166ドルから9,631ドル(-5%)へ下がり、ロッテルダム向けは3,632ドルから3,686ドル(+1%)へ上がった。ジェノバ向けは4,152ドルから4,151ドルでほぼ横ばいだった(Drewry)
  • BDIは前回(22日)の2,693ポイントから、29日は2,712ポイントへ小幅に上がった。ケープサイズ指数が5.3%上がって4,090ポイントとなった一方、パナマックス指数は7か月ぶりの安値まで下がった(TradingEconomics)
  • ドル円は前回末(22日NY引け)の156円79銭から、30日0時台の157円88銭へ約1円09銭の円安に戻った。前回は円高に転じていたが、米利上げ観測の根強さで流れが戻った(みんかぶFX)
  • 米国が、10月23日に出した布告で、カナダ産自動車関連製品への50%追加関税の見直しを決めた。前回までに無かった新しい措置である(後述)

前回と同じこと(継続)

  • 中国の建設機械・浚渫機器の輸出管理(11月18日発効)に、変更の報道は確認できなかった
  • 米国の追加関税の発効予定(ポリシリコンへの通商拡大法232条の関税は12月4日など)に、新しい変更は確認できなかった
  • 日本の経産省・税関による新しい政省令・通達は、今週も確認できなかった

要因の連続性

  • 継続要因: 中東情勢を背景にした原油高(ブレント原油は115ドル前後)が、燃料費と輸入コストを押し上げる構図。ホルムズ海峡を通るコンテナ船の少なさも前回に続いている
  • 新規要因: 米国の需要の弱まり(全米小売業協会は11月の海上輸入量を前月比11%減と見込む)が、太平洋航路の運賃を押し下げた。米国の新たな対カナダ関税の見直しも加わった
  • 解消した要因: 前回の運賃上昇を支えた、米国向けの底堅い需要は後退した。上海港の混雑も緩和している

今週の概観

運賃は3週ぶりに下落に転じ、WCIは4,429ドルとなった。太平洋航路の下げが全体を押し下げ、欧州航路は小幅に上がった。為替は前週末の156円台後半から157円台後半へ円安に戻った。米国はカナダ産自動車関連製品の関税の対象を見直した。輸入側には運賃の下落が追い風だが、円安と原油高が逆風となる。輸出側には円安が追い風で、太平洋航路の需要の弱さが気がかりである。

為替とヘッジ環境

通貨ペア 週内の動き 前回末比 主因
ドル円 29日3時台の158円30銭から、30日0時台の157円88銭へ 約1円09銭の円安(157円88銭) 米利上げ観測、日銀会合待ち
ユーロドル 29日に1.1133ドル前後から1.1163ドルへ 前回レンジ(1.1189〜1.1231ドル)をやや下回る ECBの据え置き、12月利上げ示唆

取得時点は2026-10-30早朝(日本時間)で、為替は随時更新される。米連邦準備制度理事会は28日に政策金利を据え置いたが、2人の委員が利上げを主張して反対した。12月の米利上げの織り込みは約80%とされる。ECBは29日に金利を据え置き、ラガルド総裁が12月の追加利上げの可能性を示した(みんかぶFX、みんかぶFX)。日々の値動きはfxを参照。ドル指数・人民元の週間値は、確かな数値を確認できなかった。

輸入側・輸出側への影響: ドル円が157円台後半へ戻ると、輸入者にとってはドル建て仕入れの円換算コストが上がる。一方、輸出者にとっては円建ての手取りが増える。ただし、運賃の下落は輸入側のコストを一部和らげる。

ヘッジ環境: 確認できた範囲の値幅は156円79銭〜158円30銭の約1円50銭で、前回(約1円80銭)よりやや狭い。フォワードポイントの数値は確認できておらず、ヘッジの時期についての断定的な推奨は行わない。

翌週の材料カレンダー: 30日に日銀の金融政策決定会合の結果が発表され、据え置きが確実視されている。植田総裁の会見で12月利上げへの示唆があるかが焦点である。11月3日は米中間選挙、12月8〜9日はFOMCである。

物流コストと航路

指数 値 前週比 取得時点(更新頻度) 対象
WCI(Drewry) 4,429ドル/40ft -3% 2026-10-29(週次) グローバル主要12航路
WCI 上海発ロサンゼルス 7,514ドル/40ft -6% 2026-10-29(週次) 上海〜ロサンゼルス
WCI 上海発ニューヨーク 9,631ドル/40ft -5% 2026-10-29(週次) 上海〜ニューヨーク
WCI 上海発ロッテルダム 3,686ドル/40ft +1% 2026-10-29(週次) 上海〜ロッテルダム
BDI 2,712ポイント 前回(10/22)の2,693から約+0.7% 2026-10-29(日次) 主要バルク航路

Drewryは、太平洋航路の運賃は米国の輸入需要の弱まりでさらに下がると見ている。欧州航路は、船会社が11月の運賃引き上げを告知しているものの、船腹に余裕があり需要も弱いため、横ばいにとどまる見通しである。来週の抜港(船会社が運航を取りやめること)は、太平洋航路が6便(前週の5便から増加)、アジア欧州航路が4便(前週の8便から減少)と見られる。スエズ運河の通航は週62隻と2026年で最高になった一方、ホルムズ海峡を通ったコンテナ船は前週は2隻にとどまった(Drewry)。BDIは、鉄鉱石価格の持ち直しと中国の製鋼所の生産増を背景に、ケープサイズが押し上げた(TradingEconomics)。SCFIとTAC Index(航空貨物)は、信頼できるデータを確認できなかった。

航路・港湾の状況: 上海港の混雑は緩和している一方、台風チャンピの影響が懸念されている。原油高が続くため、燃油サーチャージの改定が遅れて出る可能性がある(推測)。国内では、福山運輸が11月2日から運賃をおよそ20%引き上げると伝えられた(トップページの見出しのみで、詳細は未確認。LNEWS)。輸入側にとっては、太平洋航路の運賃下落は追い風だが、燃料費と国内の配送費の上昇は逆風。輸出側にとっては、欧州向けの船腹に余裕があり、スペースは確保しやすい見通しである。

主要国の貿易ルール変更

米国

カナダ産自動車関連製品への50%追加関税の見直し(10月23日の布告。10月30日発効)

  • 内容: トランプ大統領の布告で、カナダ産の自動車関連製品に課している50%の追加関税(従価税)の対象を見直す。付属書Iの「パートA」の製品は追加関税の対象から外れ、「パートB」の製品は引き続き50%の対象となる。232条の関税に上乗せして課される。カナダが8月に約束した自動車関税の枠組みを守らなかったためと説明されている
  • 対象: 付属書の品目リストが今回の出典では確認できず、HSコードは未確認、品目名のみ
  • 発効日: 2026年10月30日午前0時1分(米国東部時間)以降に通関・倉出しされる貨物から。経過措置は設けられていない
  • 影響: 輸入側(米国向けにカナダ経由で部品や完成品を調達する事業者)は、品目がパートAかパートBかで関税が変わる。輸出側への直接の影響は確認できないが、カナダ工場経由で米国へ出す日本企業は品目の確認が必要。適用の可否は専門家や税関への確認が必要(World Trade Scanner)

風力タービンへの通商拡大法232条の調査結果(10月22日の布告。関税は未導入)

  • 内容: 風力タービンとその部品の輸入は国家安全保障上の脅威にあたると認定し、商務長官と米通商代表に各国との交渉を指示した。新たな関税、品目の追加、割当、輸入禁止は定めていない
  • 期限: 交渉状況の報告は180日以内(2027年4月20日ごろ)
  • 影響: 輸入側・輸出側とも、現時点で直接の関税負担はない。鉄鋼・アルミ・銅の既存の232条関税は変わらず、部品が既存の措置に該当する場合がある(Ginger Control)

そのほかの関税・輸出管理の新しい措置は、今週は一次情報で確認できなかった。前回挙げた12月4日(ポリシリコン)などの発効予定に変更の報道はない。

EU

今週は該当なし(確認できた範囲で、TARIC、CBAM、制裁パッケージなどに関する新しい一次公告は見つからなかった)。EUの対ロシア第22弾制裁は準備段階で、採択時期は未定である。

中国

今週は該当なし(新しい公告は確認できなかった)。前回伝えたトンネル掘削機などの輸出管理は、11月18日の発効に変更の報道はない。レアアースなどの拡大した輸出管理の一時停止は、2026年11月10日までと報じられている。二次報道に基づき、延長や失効の扱いは確認できていない(Asharq Al-Awsat)。

日本側の制度・通関実務

今週、経済産業省・税関による輸出令・外為令の改正、税関の新しい通達や公告は、確認できる範囲では見つからなかった(継続)。

需要と貿易統計

財務省の貿易統計や中国の海関統計の発表は、今週は確認できなかった。先行指標では、全米小売業協会が11月の海上輸入量を前月比11%減と見込み、太平洋航路の需要の弱まりを示している。BDIは鉄鉱石や石炭などの資源貨物の需給が持ち直していることを示す一方、パナマックス指数の下落は穀物などの需要の弱さも映す(Drewry、TradingEconomics)。

来週までに確認すべきこと

  • 30日の日銀会合の結果と植田総裁の会見。12月利上げへの示唆があるかで、ドル円がどちらへ動くかを見る。ヘッジ方針は自社の判断で、断定的な推奨はしない
  • 11月5日ごろに公表される次回のWCI。太平洋航路の運賃下落が続くか、欧州航路が11月の運賃引き上げで上がるかを確認する。見積りの有効期限が燃料価格に連動していないかも見る
  • 米国のカナダ産自動車関連製品の関税(30日発効)の付属書の品目。カナダ経由の調達がある場合は、品目がパートAかパートBかと契約条件を確認し、適用の可否は専門家や税関に確認する
  • 中国の建設機械・浚渫機器の輸出管理(11月18日発効)の対象範囲とHSコード、およびレアアースなどの輸出管理の一時停止が期限とされる11月10日前後の動き
  • 11月3日の米中間選挙後の関税・制裁政策の変化。ロシア産燃料に関わる取引がある場合は、日本・EU・米国の対ロシア措置の違いを専門家や当局に確認する