前回からの変化

前回(2026-10-29、前日)との比較である。

変わったこと(変化・新規)

  • 前回はDTCCのトークン化サービスの開始が中心だった。今回は、米国の大手銀行が証券貸借の台帳基盤に加わった。市場の違いはあるが、いずれも既存の金融インフラへの台帳技術の組み込みである(Ledger Insights: Goldman Sachs joins 1Source)
  • 前回は米国と欧州大陸の動きが中心だった。今回は英国の中央銀行が、トークン化担保の受け入れで意見募集を始めた(Ledger Insights: Bank of England)
  • ビットコインは前回の81,243.16ドルから78,746.55ドルへ(2,496.61ドル安、3.1%安)、イーサリアムは2,358.85ドルから2,259.93ドルへ(98.92ドル安、4.2%安)と、ともに下落した。取得時刻は前回と異なる(CoinDesk、CoinDesk)
  • 前回の特集だったDTCCのトークン化サービス、バイエルンLBのトークン化CP、リップルの信託銀行免許は、今回確認した範囲で新しい動きは見つかっていない(続報なし)

昨日と同じこと(継続)

  • 銀行や市場インフラが、既存の業務に台帳技術を組み込む流れが続く。いずれも一般の暗号資産の売買ではなく、許可制の台帳や中央銀行マネーとの組み合わせである
  • 米国のトークン化株式をめぐる制度づくりは、前回の10月20日の特集(OKXとICEへの異議)から続いており、企業側の反発が強まっている

要因の連続性

  • 継続要因: 当局の枠組みの中で、金融機関が台帳技術を採用していく構図。昨日のDTCCに続いて、今日は証券貸借で本番運用の参加者が増えた
  • 新規要因: 英国で、清算機関の担保という「金融システムの土台」にトークン化が検討対象として加わった。欧州では、無認可のステーブルコインを扱いにくくする規則変更が確認された
  • 解消した要因: なし

市況ひとこと

ビットコインは78,746.55ドルで24時間では3.12パーセント安、イーサリアムは2,259.93ドルで4.20パーセント安だった。数値は10月30日朝(日本時間)に価格サイトで確認した表示値で、いずれも5パーセント未満の変動のため、理由は付けない(CoinDesk: Bitcoin price today、CoinDesk: Ethereum price today)。

社会実装・インフラへの採用

ゴールドマン・サックス、証券貸借の台帳基盤1Sourceに参加

  • 誰が・何を: 米国の大手銀行ゴールドマン・サックスが、EquiLend(エクイレンド)の証券貸借向け台帳基盤「1Source」に参加した。参加は、先行して使っていたBNYとナショナル・バンク・オブ・カナダに続くもの。ゴールドマンはEquiLendの少数株主でもあり、借り手としての取引量が大きい
  • 技術: Digital Assetの「Canton」という技術を使った、参加者限定の非公開台帳である。合意された取引と変更内容を、参加者が1つの記録として共有する
  • 段階: 本番運用。BNYとナショナル・バンク・オブ・カナダは約1年前から実取引を流している
  • 規模: 参加行の数と取引量は確認できなかった
  • 暗号資産(トークン)そのものが使われるのか: 暗号資産やトークンは使われない。台帳技術だけが使われる(Ledger Insights)。記事の公開は30日朝(日本時間)の約3時間前だった

DBSの調査、大企業の67%がトークン化マネーを導入済み

  • 誰が・何を: DBS銀行がEYに委託して実施した調査で、売上高5億ドル以上の大企業の67%が、すでにトークン化マネー(ステーブルコイン、トークン化預金、トークン化MMF、中央銀行デジタル通貨の総称として使われている)を何らかの形で導入していた
  • 段階: 本格運用が24%、限定的な地域での運用が43%、実証段階が21%
  • 内訳: 使っている・使う予定の手段は、ステーブルコインが63%、トークン化預金が53%、トークン化MMFが52%、中央銀行デジタル通貨が51%。近い将来の利点は、追跡と監査のしやすさ、リアルタイムの国際送金が各48%
  • 注意点: 回答者の70%超がアジア太平洋の8か国の企業で、他地域より導入が進んだ層に偏っている可能性がある。「導入済み」の定義の細部は有料部分で確認できなかった(Ledger Insights)

ポリゴンとソラナ、銀行向けのステーブルコイン決済で提携(見出しのみ確認)

  • CoinDeskの見出しによると、ポリゴンとソラナが銀行向けのステーブルコイン決済で提携した。段階、対象行、規模は本文を確認できておらず不明である。提携発表の段階とみられる(CoinDesk)

各国の法改正・規制

英国

  • 段階: イングランド銀行が、中央清算機関(CCP)のトークン化担保の受け入れについて、監督上の期待を示す意見募集を行っている。締め切りは2027年2月12日
  • 何が変わるのか: 「同じリスクには同じ規制結果」という考え方で、担保が国債のような適格資産でも、トークン化された形は新しい形として承認が必要とする。さらに、規制されたステーブルコイン、トークン化MMF、トークン化された金の3つを将来の担保として、証拠の提出を求めている
  • 影響する人: 英国で担保を受け入れる中央清算機関と、その参加者(銀行・証券会社)(Ledger Insights)

EU

  • 段階: ESMA(欧州証券市場監督機構)が、無認可の電子マネートークン(EMT、法定通貨に連動するステーブルコイン)の扱いに関する整理を変え、認可を受けた暗号資産サービス事業者が、規則に適合しないステーブルコインの保管を提供しにくくなった。記事は10月26日付
  • 影響する人: EUの暗号資産サービス事業者、欧州のTether保有者。取引所ではすでにUSDCがTetherの取引ペアに置き換わっている。MiCA(暗号資産市場規則)は見直しの途中で、欧州委員会の意見募集が終わったところ。Tetherは、ブリュッセルで欧州の規制対応を担う責任者を募集している(Ledger Insights)

米国

  • 段階: SECがトークン化証券の取引所(TSV)に対し、イノベーション免除の枠組みを用意している。キャントンやOKXとICEの合弁の取引所が、この枠組みでの最初の取引を競っている。これに対し、マイクロソフト、アルファベット、ゴールドマン・サックス、JPモルガンなどがトークン化に反対する立場を示し、ウォール・ストリート・ジャーナルに匿名の全面広告が出た。広告の資金元は不明で、ナスダックが推進者ではないかとの見方があるが、ナスダックは関与を否定している(Ledger Insights)
  • 影響する人: 株式の発行企業(トークン化された自社株をめぐる責任の問題)、トークン化取引所、名義書換代理人

タイ

  • 段階: CoinDeskの見出しによると、タイの最高裁が、ビットコインは財産にあたると判断した。窃盗事件の有罪判決をめぐる判断とされる。判決の日付と詳細は本文を確認できていない(CoinDesk)

日本・その他

  • 今回確認できた範囲で、新しい法改正や当局の規則の動きは見つかっていない

特集: 新しいビジネスの形

銀行が株を貸し借りする業務を、共有の台帳で回す

直近2週間の特集は、国債のレポ、送金の事前積み立て、協調融資の共通台帳、Partior、デジタル国債、AIエージェント決済、ステーブルコインの報酬、利息付きトークン化預金、銀行アプリのステーブルコイン、トークン化ファンドの随時売買、オンチェーン発行ファンド、証券保管機関のトークン化などだった。今回は、証券を貸し借りする「証券貸借」の事務に台帳技術を使う1Sourceを扱う。10月17日の協調融資の特集とは、扱う市場が異なる。

  • 仕組み: 証券貸借とは、株式や債券を持つ側が、手数料を受け取って、空売りなどのために証券を借りたい側に貸す取引である。従来は貸し手と借り手が、それぞれ自分の帳簿に取引を記録し、金利の変更や貸し出し銘柄の差し替えがあるたびに、記録の食い違い(取引の不一致)が起きて、手作業で突き合わせていた。1Sourceでは、参加者が1つの共有台帳に合意済みの取引と変更を書き込むので、突き合わせの作業が要らなくなる
  • 誰がどう稼ぐのか: 運営はEquiLendである。利用の対価は公開情報では確認できなかった。参加する銀行の利点は、不一致の処理にかかる人手と時間を減らせることで、第三者の推計では業界全体で年間数億ドルのコスト削減につながる可能性があるとされる(EquiLendの発表による推計)
  • 既存のやり方との違い: 資金や証券の移動の方法は変えず、記録と突き合わせだけを変える点が特徴である。決済が翌営業日になったことで、事務の遅れの許容度が下がり、需要が高まっているとされる。暗号資産やトークンは使わない
  • 課題・リスク: 参加者が増えるほど効果が高まるので、大手の借り手と貸し手がそろうかが鍵である。参加行の数と取引量は確認できなかった。許可制の台帳なので、公開のブロックチェーンのような誰でも使える仕組みではない
  • 具体例: EquiLend、Digital Asset、Canton Network、BNY、ナショナル・バンク・オブ・カナダ、ゴールドマン・サックス(Ledger Insights、EquiLend)

業界トピック

  • 取引所・事業者: CoinDeskの見出しによると、KuCoinがロシアとベラルーシから撤退し、HTXが英国FCAとの和解を受けて英国から撤退した。ICE(NYSEの親会社)は、ハイパーリキッドの無期限先物の米国への導入を検討している(CoinDesk)
  • セキュリティ: CoinDeskの見出しによると、予測市場のポリマーケットが、第三者の提供事業者が侵害されたとして取引を停止し、利用者の口座から資金が流出した。被害額と原因の詳細は本文を確認できていない。また、ビットコインのノードをクラッシュさせる脆弱性の公表と、イーサリアムのクライアントの証明書関連の欠陥の修正が報じられた。いずれも見出しのみの確認で、影響の範囲は不明である(CoinDesk)