前回からの変化
前回(2026-09-25)との比較。この1週間(9/25〜10/1)は、前回「発効予定」として伝えた医薬品232条(9/29)とEU鉄鋼ミルシート制度(10/1)が予定どおり発効し、円安は159円台から一服、運賃は国慶節を前に下落基調となった。
変わったこと(変化・新規)
- 前回「9/29適用予定」と伝えた医薬品232条関税は、9/29(米東部時間)に本格発動した。特許医薬品・原料は原則100%だが、日本・EU・韓国・スイス・リヒテンシュタインには15%が適用され、ジェネリックとバイオシミラーは対象外と報じられている(発効済み・フォロー、亜洲経済)。
- 前回「10/1適用開始」と伝えたEUの鉄鋼溶解・鋳造国の証明義務は、予定どおり10/1に始まった。証明が不十分な輸入は通関で拒否され得る(発効済み・フォロー、Crowell)。
- 米中首脳会談(9/24)の結果が明らかになった。貿易休戦は2カ月の延長にとどまり次の期限は2027年1月10日で、レアアース供給は合意水準に届かないと報じられている(新規、Newsweek日本版)。
- ドル円は前回末の159円04銭(9/24)から、9/30に156円64銭まで下落した後157円53銭へ急反発し、10/1は157円台半ばで推移した。前回比でおよそ1円50銭の円高方向(前回値→今回値、外為どっとコム)。
- BDIは前回の3,473ポイント(9/24)から3,140ポイント(10/1、約9.6%低下)へ下落した(前回値→今回値、Hellenic Shipping News)。
- 紅海では、COSCO・OOCL・CMA CGMがスエズ経由の運航を9月中旬から再開しており、前回の「迂回継続」から一部で航路回復が進んだ(新規、FreightWaves)。
昨日と同じこと(継続)
- WCI(Drewry)は4,468ドル(9/24)から4,434ドル/40ft(10/1、-1%)と高止まりのまま小幅下落が続いている。
- アジア発欧州向けの運賃下落が続き、Drewryは12週連続の下落としている。
- 対中7.5%追加関税(通商法301条)の正式な布告は、今週のリサーチでも確認できなかった(継続)。
- 中国の海関総署・商務部による新規の一次公告は、今週も確認できず「今週は該当なし」が続く(5週連続)。
- 日本の経産省・税関による新規の輸出入関連の政省令・通達は、今週も確認できなかった。
要因の連続性
- 継続要因: 日米金利差と日銀の追加利上げ時期への不透明感が円安圧力として残る。アジア発欧州向けの需要の弱さも継続している。
- 新規要因: 米PCEコア価格指数が市場予想を下回りFRBの10月利上げ観測が後退したことが、ドル円の押し下げ要因として加わった。国慶節の工場休業と船腹調整(抜港)が、運賃の下押し要因として加わった。
- 解消した要因: 前回の「医薬品232条の15%枠が適用されるか」「EU鉄鋼ミルシート制度が予定どおり始まるか」という不確実性は、いずれも発効により一巡した。
今週の概観
この1週間は、前回予告された2つの制度、すなわち米国の医薬品232条関税とEUの鉄鋼原産地証明が実際に動き出した週だった。米中は貿易休戦を2カ月延長したものの、レアアースなど本質的な論点は先送りされた。為替は159円台から一服して157円前後に戻り、運賃は国慶節を前に下落基調となった。輸入側にとっては為替と運賃の両面で追い風となり、輸出側にとっては円建て手取りがやや目減りした一方、新たな通関要件への対応が実務の焦点である。
為替とヘッジ環境
| 通貨ペア | 週内の動き | 前回末比 | 主因 |
|---|---|---|---|
| ドル円 | 159円04銭(9/24)→156円64銭(9/30安値)→157円53銭(9/30終盤)→157円台半ば(10/1午前) | 約1円50銭の円高方向 | 米PCEコアが予想を下回りFRB利上げ観測が後退、その後米長期金利上昇で反発 |
取得時点は2026-10-01午前(日本時間)で、為替は随時更新である。9/30はPCEコアの下振れで156円64銭まで急落した後、原油上昇と米景況指数の改善による米長期金利の上昇で157円53銭まで切り返した(外為どっとコム)。10/1は日銀短観後も157円台半ばでの推移となり、市場の関心は10/2の米9月雇用統計に向かっている(外為どっとコム)。ドル円の日々の値動きはfxカテゴリを参照。なおユーロ円・人民元・ドル指数の週間値は、確度の高いデータを今回確認できなかった。
輸入側・輸出側への影響: 円安の一服は、輸入者にとってはドル建て仕入れコストの上昇ペースが和らぐ材料となる。一方、輸出者にとっては円建て手取りの増加が一部巻き戻された形である。日銀短観では2026年度の大企業の想定為替レートが154円23銭(前回152円57銭)となり、実勢157円台との差は約3円40銭残る(OANDA)。
ヘッジ環境: 週内の値幅は約1円(156円64銭〜157円台半ば)にとどまり、前週のような一方向の動きではなくなった。介入観測は引き続きあるが、実施は確認できていない。フォワードポイントの数値は今回確認できておらず、ヘッジの時期についての断定的な推奨は行わない。
翌週の材料カレンダー: 10/2の米9月雇用統計、10月のFOMCと日銀会合、2027年1月10日の米中貿易休戦の新期限。
物流コストと航路
| 指数 | 値 | 前週比 | 取得時点(更新頻度) | 対象 |
|---|---|---|---|---|
| WCI(Drewry) | 4,434ドル/40ft | -1% | 2026-10-01(週次) | グローバル主要12航路 |
| WCI 上海発欧州(ジェノバ) | 3,702ドル/40ft | -3% | 2026-10-01(週次) | 上海〜ジェノバ |
| WCI 上海発米西岸 | 7,835ドル/40ft | 横ばい | 2026-10-01(週次) | 上海〜ロサンゼルス |
| WCI 上海発米東岸 | 10,428ドル/40ft | +1% | 2026-10-01(週次) | 上海〜ニューヨーク |
| BDI | 3,140ポイント | 3,473ポイント(9/24)から約9.6%低下 | 2026-10-01(日次) | 主要バルク航路 |
Drewryの総合WCIは4,434ドル/40ftと前週から1%下落し、2週連続の低下となった。アジア発欧州向けは12週連続の下落で、上海〜ロッテルダムは3,399ドル(-2%)となっている。Drewryは国慶節の工場休業で貨物量が減るため、翌週も下落が続くと見ている。船腹調整として、翌週は太平洋航路で10便、アジア欧州航路で5便の抜港が発表されている(Drewry)。BDIは10/1に27ポイント上昇し3,140ポイントとなったが、前回報告の3,473ポイントは下回っている(Hellenic Shipping News)。SCFIとTAC Index(航空貨物)は今週分の信頼できるデータを確認できなかった。
航路・港湾の状況: 紅海・スエズでは、COSCOとOOCL、CMA CGMが9月中旬からスエズ経由の運航を再開し、9月はアジア欧州航路の船腹の4分の1超が紅海を通過したと推計されている。これがアジア欧州の運賃を押し下げる一因となっている。一方でフーシ派はイエメン沿岸の領域を拡大しており、航行は引き続き危険との見方も出ている(再開船社数や時期は報道ベースで、船社ごとに対応が異なる、FreightWaves)。輸入側にとってはリードタイム短縮と運賃低下の可能性があり、輸出側も同様だが、攻撃再燃時には保険料や迂回の再開リスクが残る。パナマ運河については、今週の新たな変更は確認できなかった。
主要国の貿易ルール変更
米国
医薬品(232条)関税、9/29に本格発動・日本は15%(発効済み・フォロー)
通商拡大法232条に基づく特許医薬品・原料への追加関税が、9/29(米東部時間)に本格的に適用された。
- 対象品目: 特許医薬品および医薬品有効成分(HSコードは今回確認できず、品目名のみ)。ジェネリックとバイオシミラーは対象外と報じられている
- 税率: 原則100%。日本・EU・韓国・スイス・リヒテンシュタインの製品は15%(他の条項でより低い税率が適用される場合を除く)
- 発効日: 2026-09-29
- 影響: 輸出側の日本の医薬品・原薬メーカーは15%区分が適用される見込みだが、個別品目や適用区分の判断は税関・専門家への確認が必要である。輸入側(米国の輸入者)にとっては仕入れ原価の上昇要因となる(亜洲経済)。
米中貿易休戦の延長と首脳会談の結果(決定済み・フォロー)
9/24の米中首脳会談で、11月に期限を迎える貿易休戦の延長が合意された。延長は2カ月にとどまり、次の期限は2027年1月10日である。大豆は中国が約束した2,500万トンの購入義務を果たした一方、他の農産物170億ドルの購入は遅れており、レアアースの供給も合意水準に達していないと報じられている。年内にはシンセンとマイアミで多国間の会合が予定されている。企業にとっては、関税が一時的に抑えられていても不安定な状況が続く(Newsweek日本版)。
対中追加関税7.5%(検討中・継続)
通商法301条に基づく対中7.5%追加関税については、今週も正式な布告を確認できなかった。休戦延長の下で発動されるかは不透明で、断定はできない。
EU
鉄鋼の溶解・鋳造国証明、10/1に開始(発効済み・フォロー)
- 内容: 鉄鋼製品の輸入者は、通関申告で鋼材が最初に溶解・鋳造された国を申告し、ミルテストサート等の証拠を提示する必要がある。証拠が不十分な輸入は拒否され得る
- 根拠: 7/1発効の新鉄鋼措置(規則2026/1384。枠外関税を50%へ引き上げ)と、証拠要件を定めた実施規則2026/1963(8月下旬採択)
- 発効日: 2026-10-01(前回報告の経過措置は、初年度は代替書類が可能、2027年10月からミルテストサート必須)
- 影響: 輸出側の対EU鋼材事業者は、上流の製鉄所から証明書を入手する体制の確認が実務の焦点となる(Crowell)。
CBAMについては、今週の範囲で正式な運用変更の一次情報は確認できなかった(今週は該当なし)。
中国
今週(9/25〜10/1)も、海関総署・商務部による新規の一次公告は確認できず、「今週は該当なし」とする(5週連続)。レアアース関連の輸出管理強化の停止期間は従来2026年11月10日までとされていた。休戦延長で期限がどう扱われるかは、公式文書で確認できていない。
日本側の制度・通関実務
- 経済産業省・税関の通達: 今週、輸出令・外為令の改正や新たな通達は確認できなかった(継続)。
- 医薬品232条への実務対応: 対米輸出の医薬品・原薬メーカーは、15%区分の適用要件と通関書類の整備を専門家に確認しておく必要がある(上記「米国」参照)。
- EU向け鉄鋼の実務: 対EU鋼材輸出事業者は、10/1以降の通関で溶解・鋳造国の証明が求められる(上記「EU」参照)。
需要と貿易統計
- 韓国の9月輸出は前年比83.5%増の1,209億ドルと過去最高で、半導体輸出は603億ドル(前年比262.8%増)に達した。16カ月連続の増加で、AI関連の需要が世界貿易の先行指標として強さを示している(Newsweek日本版)。
- 日銀短観(9月調査)の大企業製造業の業況判断DIは+24(前回+22、予想+25)で、約8年半ぶりの高水準となった。大企業非製造業は+35(前回+37)だった(OANDA)。
来週までに確認すべきこと
- 医薬品232条の発動後、日本製医薬品に15%区分が円滑に適用されるか、通関での扱いに混乱がないか。
- EU向け鉄鋼で、10/1以降の通関に溶解・鋳造国の証明が必要となるため、証拠書類の準備状況に不備がないか。
- 国慶節(中国の大型連休)明けに、アジア発の運賃や船腹調整(抜港)がどう動くか。
- 米雇用統計(10/2)後のドル円の動きと、10月のFOMC・日銀会合に向けた為替のヘッジ方針。
- 米中貿易休戦の延長を受けて、対中7.5%追加関税が発動されるかどうか。

