前回からの変化
前回(2026-10-29、前日)との比較である。前回は10月28日時点、今回は10月29日時点の値で、いずれもTradingEconomicsの表示値(今回は30日朝に取得)である。取得時刻と限月は確認できておらず、確定終値でないものを含む。騰落率は出典の前日比をそのまま載せたため、前回値との差とは一致しない。
変わったこと(変化・新規)
- 銀は前回の53.966ドルから52.150ドルへ(1.816ドル安)下落し、前回「約1.25ドル先」だった2026年の安値(約52.66ドル)を割り込んだ。Metals Focusによると金銀比価は76倍を超え、2025年12月以来の水準である(Kitco: Metals Focus)
- 金は前回の4,067.13ドルから4,021.33ドルへ(45.80ドル安)下げた。前回は横ばいだったが、29日は米PCE物価指数(9月)が前月比0.5%上昇し、コア物価の伸びが3.1%に加速したほか、GDPも3.4%成長と強く、12月の利上げ確率は約80%と報じられた(TradingEconomics: Gold)
- 天然ガスは前回の3.0284ドルから2.9034ドルへ(0.125ドル安)下落した。貯蔵量が予想の75bcfを上回る80bcf増えたことと、11月13日までの穏やかな気温予報が重しとなった(TradingEconomics: Natural Gas)
- 金のアナリストの顔ぶれが入れ替わった。前回のスーキン・ファイナンシャルに代わり、TDセキュリティーズのバート・メレク氏の見方を採った(Kitco: TDS' Melek)
昨日と同じこと(継続)
- 金は4,000ドルの大台を保つ展開が続く。前回と同様に、利上げ観測が上値を抑えている
- WTI原油は前回の101.93ドルから102.917ドルへ(0.99ドル高)と、100ドル台での推移が続いた(TradingEconomics: Crude Oil)
- 小麦は前回の599.50セントから603.25セントへ(3.75セント高)小幅に反発したが、8月の高値767セントからは10%超下げた水準にとどまる(TradingEconomics: Wheat)
- 前回は1日で3%を超えた商品がなく特集なしだったが、今回は銀(3.33%安)が目安を超えたため特集した
要因の連続性
- 継続要因: 12月の米利上げ観測が貴金属の重しとなる構図は前回と同じである。中東情勢による原油の供給不安、ロシア・ウクライナの和平外交による小麦の重しも続いている
- 新規要因: 強い物価指標とGDPで利上げ観測が補強された。銀では、投資需要の弱さと実物市場の在庫の積み上がりが新たな売り材料になった。原油には、米国のイランとの外交再開の動きが緩和要因として加わった
- 解消した要因: 前回の原油高の材料だったフーシ派の「サウジ製油所攻撃の主張」は、今回は追加の確認が見当たらず、材料としては後退した(フーシ派によるサウジ施設への攻撃姿勢そのものは残る)。天然ガスを支えたLNG向けの強い流入は残るが、貯蔵量の積み増しが上回った
価格サマリー
| 商品 | 価格(2026年10月29日) | 騰落率(前日比) | 前回値(10月28日) |
|---|---|---|---|
| 金 | 1オンス4,021.33ドル | 1.14%安 | 4,067.13ドル |
| 銀 | 1オンス52.150ドル | 3.33%安 | 53.966ドル |
| WTI原油 | 1バレル102.917ドル | 0.13%高 | 101.93ドル |
| ブレント原油 | 1バレル115.450ドル | 0.11%高 | 114.135ドル |
| 天然ガス | 1MMBtu 2.9034ドル | 4.24%安 | 3.0284ドル |
小麦は1ブッシェル603.25セント(0.71%高)、トウモロコシは451.25セント(0.11%安)、大豆は1,220.50セント(0.33%安)、銅は1ポンド6.5628ドル(1.25%安)である。週間の騰落は、金が0.09%安、銀が4.47%安、WTIが3.47%高、小麦が3.44%安だった。取得時刻と限月は確認できていない(TradingEconomics: Commodities)。
商品別動向
金・銀
TradingEconomicsによると、金は1.14%安の4,021.33ドルで、月間では3.28%下げた。米PCE物価指数(9月)は前月比0.5%上昇し、コア物価の伸びは3.1%に加速した。GDPは3.4%成長と強く、市場は12月の利上げを約80%織り込んでいる。FRBは前日に政策金利を据え置いたが、利上げを主張する反対票が出ている(TradingEconomics: Gold)。
Metals Focusによると、金は4,015.60ドル(1%超安)、銀は52.06ドル(3%超安)で、銀は年初来安値を更新した。金銀比価は76倍を超えた(Kitco: Metals Focus)。
原油
WTIは102.917ドルで0.13%高、ブレントは115.450ドルで0.11%高となった。月間ではWTIが13.82%上昇した。TradingEconomicsによると、バンス米副大統領がイラン当局者に連絡を取り、トランプ大統領も協議の可能性に触れたと報じられ、外交による緩和期待が出た。一方、イランと連携するフーシ派はサウジの施設やホルムズ海峡周辺の航路を標的にしており、供給不安は残る。米国の原油在庫は10月23日の週に190万バレル減った。欧州は今後3か月で4,200万バレルの備蓄を放出する計画である(TradingEconomics: Crude Oil)。
OilPrice.comによると、OPECプラスは現行の生産枠を据え置く見通しである。エクソンモービルのウッズCEOとシェブロンのニーフ上流部門長は、安全上の懸念からアブダビのADIPEC会議への出席を見送った(OilPrice.com)。
天然ガス
米国の天然ガスは2.9034ドルで4.24%安となった。TradingEconomicsによると、本土48州の生産は日量1,133億立方フィートに回復し、貯蔵量は80bcf増えて予想の75bcfを上回った。貯蔵量の合計は3.724兆立方フィートで、前年同期より3.8%少ないが、5年平均を1%上回る。LNG輸出向けの流入は日量185億立方フィートに増え、下値を支えた。11月13日までの気温予報が穏やかで、暖房需要が弱いとみられている(TradingEconomics: Natural Gas)。
農産物
小麦は603.25セントで0.71%高となった。TradingEconomicsによると、中国国有のコフコが米国産の軟質赤冬小麦の購入を打診し、関税引き下げが広い農産物の購入につながるとの観測が出た。一方、世界の小麦生産は史上2番目の高水準の見込みで、豪州とアルゼンチンの収穫増が供給を押し上げる。ロシア・ウクライナの和平協議の期待で黒海の穀物貿易の再開観測も強く、リスクプレミアムは縮小している(TradingEconomics: Wheat)。コーヒーは週間で8.29%安、ココアは0.06%高の1トン5,459ドルだった(TradingEconomics: Commodities)。
急変動の特集
銀が年初来安値、金との価格差が約10か月ぶりに拡大
銀は29日に3.33%下落し、52.15ドルと年初来安値を更新した。週間では4.47%安である。値動きの理由として、Metals Focusは次の点を挙げている。第1に、債券利回りの上昇で、利息を生まない貴金属を持つコストが上がった。第2に、銀の上場投資信託(ETF)から年初来で約6,000万オンスが流出した。第3に、地金コインの販売が4〜6月期に1〜3月期から80%減った。第4に、太陽光パネル向けなどの工業需要が弱まった。第5に、市場で利用可能な在庫が約2億6,700万オンスと、2025年10月の最低水準の約2倍に増えた。同社は、銀の需給の不足は今年さらに縮小し、2027年に余剰へ転じるとみており、再び実物市場が逼迫する可能性は低いとしている(Kitco: Metals Focus)。
生活・産業への波及は限定的とみられるが、太陽光パネルなどの製造業にとっては原材料コストの低下要因となる(一般論)。投資家にとっては、金銀比価(金1オンスを買うのに必要な銀の量)が76倍を超えたことが、銀の相対的な弱さを示す目安になっている。
前回、特集した天然ガスのその後は、3.0284ドルから2.9034ドルへ下落した。貯蔵量の積み増しと穏やかな気温予報が理由で、2年ぶり安値(2.53ドル)からの戻りは一服した。
強気派 vs 弱気派
調査したのはKitco、TradingEconomics、OilPrice.comの3サイトである。
金・銀
- 弱気(短期)・強気(長期): TDセキュリティーズのコモディティ戦略責任者バート・メレク氏は、FRBが据え置きでも引き締め寄りの姿勢を保っているとして、「当面は大きな反発は見込みにくい」と述べた。金は3,900〜4,250ドル、銀は50〜55ドルのレンジにとどまるとみる。一方、インフレが2%に近づけばFRBが雇用重視に転じ、金は最近の高値に向けて戻ると長期では強気である(Kitco: TDS' Melek)
- 弱気: Metals Focusは銀について、投資需要の弱さと実物市場の流動性の改善を指摘し、今後12か月は金の動きに追随するとみる(Kitco: Metals Focus)
- 参考(金融政策の見方): ナティクシスのクリストファー・ホッジ氏とセリン・アケル氏は、12月に追加利上げが1回あり、その後は成長鈍化、原油安、関税の影響の薄れでインフレが和らぐとみる。金価格への見通しは示されていない(Kitco: Natixis)
原油
- 強気: UBSはブレントの年末予想を1バレル110ドルとした。今月2回引き上げており、根拠はペルシャ湾からの流れが紛争前の水準を下回ったままであることである(OilPrice.com)
- 弱気: 今回の出典では、名前の付いた弱気派は確認できなかった。欧州の備蓄放出や米国とイランの外交再開の動きは、価格の下押し材料として挙がっている
前回の顔ぶれのうち、スーキン・ファイナンシャルの見方は今回再確認できていない。UBSの原油見通しは前回に続く強気の見方である。
地政学・物価関連ニュース
米国のバンス副大統領がイラン当局者に連絡を取り、トランプ大統領も協議の可能性を認めたと報じられた。一方で、フーシ派がサウジの施設や航路を標的にし、ホルムズ海峡周辺の緊張も続く。ADIPECへの米石油大手の出席見送りは、湾岸の安全への懸念を映している(TradingEconomics: Crude Oil、OilPrice.com)。欧州が4,200万バレルの備蓄を放出し、その半分はディーゼルである。冬の燃料価格の上昇を和らげる狙いがある。
物価への波及は、原油が100ドル台にある間は、日本でもガソリンや電気料金の高止まりにつながる(一般論)。米国ではPCE物価のコア指数が3.1%に加速し、利上げ観測の背景になっている(TradingEconomics: Gold)。
穀物では、ロシア・ウクライナの和平協議への期待が小麦の重しである。中国がコフコを通じて米国産小麦を打診したことは、需要面の小さな支えとなった(TradingEconomics: Wheat)。
テクニカル分析(金・銀・原油・天然ガス・農産物)
移動平均線とRSIの当日値、投機筋の建玉の詳細は、今回の出典では確認できなかった。確認できた範囲だけを載せる。断定的な売買判断ではない。
金: TDセキュリティーズは4,000ドルを重要な節目(サポート)とし、3,900〜4,250ドルのレンジを想定する。4,000ドルを割り込むかどうかが、短期の焦点とされる。TradingEconomicsの機械的な予測は、四半期末に3,922.74ドル、12か月後に3,630.11ドルである(Kitco: TDS' Melek、TradingEconomics: Gold)。
銀: 前回に挙げた2026年の安値(約52.66ドル)を割り込み、年初来安値を更新した。TDセキュリティーズは50〜55ドルのレンジを想定する。金銀比価は76倍を超え、前回の75.1倍から広がった(Kitco: Metals Focus)。
原油: WTIは100ドルを上回る水準を保つ。TradingEconomicsの予測は、10〜12月期末に106.90ドル、12か月後に123.86ドルである(TradingEconomics: Crude Oil)。天然ガスは、予測が四半期末に2.77ドルで、現在値に近い(TradingEconomics: Natural Gas)。小麦は8月の高値767セントから10.73%下げた水準にあり、当日のテクニカル指標は確認できなかった(TradingEconomics: Wheat)。

