前回からの変化
前回(2026-09-18)との比較。この1週間(前週金曜9/18〜9/24)は、前回結果待ちだった日銀会合が実施され利上げが決定した一方で円安がむしろ加速したこと、そして前回「首脳会談前の発表を目指す」段階だった対中追加関税が、会談後も発表されないまま貿易休戦の延長合意という形に着地したことが最大の変化となった。
変わったこと(変化・新規)
- 日銀は9/18の金融政策決定会合で、前回予告していた通り政策金利を1.00%から1.25%(31年ぶり水準)へ引き上げた。ただし全会一致ではなく2委員が反対し、植田総裁会見でも今後の利上げペースについて明確な道筋が示されなかったことから、通常の「利上げ=通貨高」のセオリーに反してドル円はむしろ円安方向へ加速した。前回値156円台前半(9/17)から、9/22に157円07銭〜157円77銭、9/23に158円40銭、9/24のNY市場では200日移動平均線を上抜けて159円04銭まで上昇し、前週末比でおよそ2円台後半の円安となった(新規・逆行、Yahoo!ニュース、Yahoo!ニュース)。
- 前回、対中追加関税7.5%は「9月24日の米中首脳会談前の発表を目指す検討段階」と伝えたが、実際には発表が首脳会談後まで見送られ、代わりに9/23の閣僚級協議(ベッセント財務長官・何立峰副首相、ワシントン)で、高関税・輸出規制の応酬を停止する「貿易休戦」を2026年11月10日から2027年1月10日へ2カ月延長することが決定した。9/24には習近平国家主席が11年ぶりに公式訪米しトランプ大統領と首脳会談を行ったが、7.5%関税の正式布告はこの時点でも確認できていない(変化・フォロー、日本経済新聞、Yahoo!ニュース)。
- 前回「9/29適用予定」とだけ伝えていた医薬品232条関税について、今回ホワイトハウスの大統領布告原文で裏付けを取ったところ、Annex III非記載企業への適用開始は米東部時間9月29日午前0時1分からで、基本税率100%に対し日本・EU・韓国・スイス等の貿易相手国には15%の優遇税率が適用されることが新たに判明した(具体化・新規、The White House)。
- 前回「10/1適用開始、変更なし」とだけ伝えていたEU鉄鋼原産地(溶解・鋳造国)証明について、今回Implementing Regulation (EU) 2026/1963(8/19加盟国承認、8/31官報公布)の内容が判明した。10月1日からの初年度(2027年9月まで)はミルテストサート以外の書類(請求書・納品書・品質証明書等)も代替可能で、ミルテストサートの完全必須化は2027年10月からとなる(具体化・新規、SteelOrbis)。
- バルチック海運指数(BDI)は、前回報告した9/16の3,327ポイントから一転して上昇に転じ、9/24時点で3,473ポイント(約2週間ぶりの高水準)まで回復した(新規、Hellenic Shipping News)。
- 紅海沿岸では9/24、イラン支援のフーシ派(イエメン)がサウジアラビアの首都リヤドの「機密目標」と、紅海沿いの石油積出拠点ヤンブーのサウジアラムコ施設にミサイル・ドローン攻撃を実施したと表明した。9/11のドローン攻撃で一時停止していた東西パイプラインが再開した直後の地域であり、紅海・スエズ迂回が続く中で新たな地政学リスクが加わった(新規、詳細は
commodityカテゴリ参照)。
昨日と同じこと(継続)
- WCI(Drewry)は4,500ドル(9/17)→4,468ドル/40ft(9/24、-1%)とほぼ横ばいの高止まりが続いている。
- SCFI上海発欧州向けは11週連続の下落(2,425ドル/TEU、前週比-4.7%)となる一方、上海発米西岸向けは7,560ドル/FEU(同+3.0%)と、アジア発の航路間で「東高西低」の構図が続いている(継続)。
- パナマ運河庁の通航制限(1日32隻、9/15適用開始)には、今週の新たな変更は確認できなかった。
- 米税関(CBP)の銅232条・溶解鋳造国申告のACE運用強化(9/14開始)について、今週も新たな一次情報・変更は確認できなかった。
- 中国の海関総署・商務部による新規の一次公告は今週も確認できず、「今週は該当なし」の状態が続く(4週連続)。
- 中国のレアアース輸出許可の遅れは今週も課題として報じられており、対日レアアース磁石輸出は8月に212トン(前月比ほぼ倍増も前年同月比-17.1%)にとどまっている。
要因の連続性
- 継続要因: FRBのタカ派姿勢と日米金利差の高止まりは、前回に続きドル高・円安要因として作用している。WCI・BDIの高止まり(BDIは反発)も物流コストの下支え要因として継続している。
- 新規要因: 日銀の利上げにもかかわらず「利上げペースの不透明さ」が新たな円安要因として加わった。米中貿易休戦の2カ月延長という不確実性後退材料が、中国関連の調達・レアアース環境を下支えする新たな要因として加わった。紅海沿岸へのフーシ派攻撃も、新たな地政学リスク要因として加わった。
- 解消した要因: 前回「日銀会合結果待ち」という不確実性は、利上げ決定によって解消した。前回「対中7.5%関税が首脳会談前に発表されるか」という緊張は、発表見送りと貿易休戦延長という形でいったん後退した。
今週の概観
この1週間は、日銀の31年ぶり利上げという「引き締め」方向の決定が、逆に円安加速という形で市場に消化された週だった。通商面では、対中7.5%関税の発表が首脳会談後も見送られ、代わりに米中が貿易休戦を2カ月延長したことで、当面の対中関税・レアアース輸出規制のエスカレーションは回避された形となった。一方で、医薬品232条の9/29適用開始とEU鉄鋼ミルシート制度の10/1適用開始という、前回から予告されていた2つの制度変更がいよいよ来週実施段階に入る。紅海沿岸への新たな攻撃も加わり、為替・物流・通商の複数の面で来週にかけて不確実性が高い状態が続く。
為替とヘッジ環境
| 通貨ペア/指数 | 週内の動き | 前週末比 | 主因 |
|---|---|---|---|
| ドル円 | 156円台前半(9/17)→157円07銭〜157円77銭(9/22)→158円40銭(9/23)→159円04銭(9/24、200日線上抜け) | 円安方向(前週末比およそ2円台後半の円安) | 日銀利上げ後の先行き不透明感、FRB高官のタカ派発言、米長期金利の上昇 |
| オフショア人民元(CNH) | 対ドルで3年半ぶりの高値圏(9/22) | 元高方向(ドル円とは逆行) | 中国人民銀行(PBOC)の基準値設定が市場予想を上回ったこと |
9/18、日銀は政策金利を1.00%から1.25%(1995年以来およそ31年ぶりの水準)へ引き上げたが、2委員の反対票と、植田総裁会見で利上げペースの明確な道筋が示されなかったことから、通常の「利上げ=通貨高」のセオリーに反して円安が進んだ。ドル円は9/22に157円台、9/23に158円台、9/24のNY市場では200日移動平均線を上抜けて159円04銭まで上昇した(Yahoo!ニュース、Yahoo!ニュース)。ドル円の詳細な値動きはfxカテゴリ、FRB・日銀の金融政策の背景はecon_indicatorsカテゴリを参照。
輸入側・輸出側への影響: 週を通じた一段の円安は、輸入者にとってはドル建て仕入れコストのさらなる押し上げ要因となる一方、輸出者にとっては円建て手取りの増加要因となる。前回の156円台前半を前提にしていた事業者は、想定より円安方向へのブレへの見直しが必要になる可能性がある。
ヘッジ環境: 利上げにもかかわらず円安が進んだことは、フォワードポイント(ヘッジコスト)の変化方向が一様でないことを示している。財務省は9/24時点で日銀のレートチェック水準超えを受けて介入警戒感を強めているとされるが、実際の介入実施は確認できていない。米長期金利がなお高水準にある中、ヘッジコストが縮小したとは言い切れず、ヘッジのタイミングについての断定的な推奨は行わない。
なお、ユーロ円・ドル指数(DXY)の週間値は、今回のリサーチでも確度の高い一次データを確認できなかった。一方でオフショア人民元(CNH)は、9/22時点で対ドル3年半ぶりの高値圏となり、ドル円の円安とは対照的な動きを見せた。
翌週の材料カレンダー: 9/29の医薬品232条関税の非Annex III企業への適用開始、10/1のEU鉄鋼ミルシート制度の適用開始、10/28のFOMC(市場は9/24時点で0.25%利上げの確率を73.5%織り込み)、2027年1月10日に迫る米中貿易休戦の新期限。
物流コストと航路
| 指数 | 値 | 前週比 | 取得時点(更新頻度) | 対象 |
|---|---|---|---|---|
| WCI(Drewry) | 4,468ドル/40ft | -1% | 2026-09-24(週次) | グローバル主要12航路 |
| BDI(バルチック海運指数) | 3,473pt(9/24) | 3,327pt(前回時点の9/16)→3,473pt、約4.4%上昇 | 2026-09-24(日次) | 主要バルク航路(石炭・穀物・鉄鉱石) |
| SCFI(上海発欧州) | 2,425ドル/TEU | -4.7%(11週連続下落) | 2026-09-18(週次) | 上海発欧州 |
| SCFI(上海発米西岸) | 7,560ドル/FEU | +3.0% | 2026-09-18(週次) | 上海発米西岸 |
Drewryの総合WCIは9/24時点で4,468ドル/40フィートコンテナとなり、前週から1%下落してほぼ横ばいの高止まりが続いている(Drewry)。バルチック海運指数(BDI)は、前回報告した9/16の3,327ポイントから反発し、9/24時点で3,473ポイントと約2週間ぶりの高水準まで回復した(Hellenic Shipping News)。上海航運交易所のSCFIは9/18時点で、上海発欧州向けが2,425ドル/TEU(前週比-4.7%、11週連続の下落)、地中海向けが3,125ドル/TEU(同-5.3%)と下落が続く一方、上海発米西岸向けは7,560ドル/FEU(同+3.0%)と上昇し、アジア発の航路間で「東高西低」の構図が続いている(Kaijipress)。TAC Index(航空貨物)については、今回も信頼できる直近1週間分の一次データを確認できなかった。
航路・港湾の状況: パナマ運河庁の通航制限(1日32隻、9/15適用開始)には、今週の新たな変更は確認できなかった(継続)。紅海・スエズ運河については、主要船社が喜望峰経由の迂回を継続している状況に加え、9/24にイラン支援のフーシ派がサウジアラビアの首都リヤドおよび紅海沿いの石油積出拠点ヤンブーのサウジアラムコ施設をミサイル・ドローン攻撃したと表明した。現時点で航路変更や戦争保険料への具体的な影響は確認できていないが、紅海沿岸での攻撃再燃は迂回継続・保険料動向を注視すべき新たなリスク要因である(新規)。
主要国の貿易ルール変更
米国
医薬品(232条)関税、9/29に非Annex III企業へ適用開始・日本には15%(決定済み・フォロー)
通商拡大法232条に基づく特許医薬品・医薬品原料への追加関税について、大統領布告原文で適用開始日と税率区分を確認した。
- 対象品目: 特許医薬品および医薬品有効成分(API)
- 税率: 基本税率100%(米国内生産計画が承認された企業は20%、2030年に100%へ段階引き上げ)。日本・EU・韓国・スイス等の一部貿易相手国には15%の優遇税率、英国製品には10%(将来0%への引き下げの可能性)が適用される
- 発効日: Annex III記載企業は2026-07-31発効済み、その他の企業は2026-09-29午前0時1分(米東部時間)発効予定
- 影響: 対米輸出を行う日本の医薬品・原薬メーカーは、15%の優遇税率区分に該当するとみられるが、個別品目・自社の適用区分は税関・専門家への確認が必要である(The White House)。
米中貿易休戦、2カ月延長で合意(決定済み・新規)
ベッセント財務長官と中国の何立峰副首相は9/23、ワシントンで閣僚級協議を行い、高関税・輸出規制の応酬を停止する「貿易休戦」を2026年11月10日から2027年1月10日へ2カ月延長することで合意した。9/24には習近平国家主席が11年ぶりに公式訪米し、トランプ大統領と首脳会談を行った。
- 対象: 2025年10月の米中合意に基づく高関税措置・輸出管理(レアアース等)の一時停止措置
- 内容: 停止期間を2カ月延長。「より広範な合意に至るか、単純延長にとどまるかは今後数カ月の中国側の対応次第」(ベッセント氏)
- 発効日: 新期限2027年1月10日(旧期限2026年11月10日)
- 影響: 対中の追加関税・中国のレアアース輸出許可停止措置の双方が当面延長される見通しとなり、日本企業のレアアース調達環境が急激に悪化するリスクは当面後退したとみられるが、恒久合意ではなく不確実性は残る(日本経済新聞、Yahoo!ニュース)。
対中追加関税7.5%(検討中・観測段階、継続)
米政権は中国の構造的な過剰生産能力を理由に、通商法301条に基づく追加関税7.5%を検討しているが、9月24日の米中首脳会談後もこの時点で正式な布告は確認できていない。上記の貿易休戦延長合意を踏まえると、当面発動が見送られる可能性があるとみられるが、断定はできない(재경일보/JKN)。
このほか、米税関(CBP)の銅232条・溶解鋳造国申告のACE運用強化(9/14開始)、カナダとの338条関税・報復関税の発動済み状態には、今週の新たな変更は確認できなかった(継続)。
EU
鉄鋼原産地証明(ミルシート)、実施規則の詳細が判明(決定済み・フォロー)
前回「10/1適用開始、変更なし」とだけ伝えていた鉄鋼原産地(溶解・鋳造国)証明について、根拠となるImplementing Regulation (EU) 2026/1963の内容を確認した。
- 対象品目: EUに輸入される鉄鋼製品(鉄鋼セーフガードの対象品目)
- 内容: 輸入業者は通関申告で鋼材の溶解・鋳造国を申告する必要があり、主にミルテストサート(検査証明書)を根拠資料とする
- 経過措置: 初年度(2026年10月〜2027年9月)はミルテストサートに加え、請求書・納品書・品質証明書・生産記録等を単独または補足資料として使用可能。2027年10月以降はミルテストサートが必須となり、他の書類は補足扱いにとどまる
- 発効日: 2026-10-01(規則自体は2026年8月19日に加盟国が承認、8月31日に官報公布)
- 影響: 対EU鋼材輸出事業者は、初年度は代替書類での対応余地があるものの、2027年10月からはミルテストサートの整備が必須となるため、サプライチェーン上流での証明書入手体制を早めに整える必要がある(SteelOrbis)。
鉄鋼セーフガード後継措置(年間輸入枠1,830万トン、超過分50%関税)、CBAM(炭素国境調整メカニズム)の対象品目拡大を巡る欧州議会内の議論には、今週(9/18〜9/24)の範囲で確度の高い正式決定の一次情報は確認できなかった(継続)。
中国
今週(9/18〜9/24)についても、海関総署・商務部による新規の一次公告(輸出入規制・関税に関わるもの)は確認できず、「今週は該当なし」とする(4週連続)。参考として、レアアース輸出許可の遅れが課題として報じられており、対日レアアース磁石輸出は8月に212トン(前月比ほぼ倍増も前年同月比では-17.1%)にとどまっている。上記「米国」の項目の通り、レアアースを含む輸出管理の一時停止措置は米中貿易休戦の2カ月延長により当面継続する見通しである。
日本側の制度・通関実務
- 経済産業省の輸出令・外為令: 今週、新たな政省令改正・告示は確認できなかった(継続)。
- 医薬品232条への実務対応: 対米輸出を行う日本の医薬品・原薬メーカーは、9/29の適用開始に向けて、自社が15%の優遇税率区分に該当するか、通関実務担当者・専門家に確認しておく必要がある(上記「米国」参照)。
- 中国向け食品輸出企業登録: 中国税関総署令第280号に基づく登録移行期の扱いについて、今回のリサーチでも確度の高い一次情報を確認できなかった。対中食品輸出事業者は、農林水産省の案内に沿った登録状況の確認を引き続き行う必要がある(次回以降フォロー継続)。
来週までに確認すべきこと
- 医薬品232条の非Annex III企業への適用開始(9/29)後、対米輸出する日本の医薬品・原薬メーカーで15%税率が円滑に適用されるか。
- EU鉄鋼ミルシート制度の適用開始(10/1)後、対EU鋼材輸出事業者の通関実務に混乱が生じていないか。
- 対中追加関税7.5%が、米中貿易休戦の延長を経てなお発動されるか、あるいは今後も見送りが続くか。
- 紅海沿岸へのフーシ派攻撃再燃を受け、航路迂回・戦争保険料に新たな動きが出ていないか。
- ドル円が200日移動平均線を上抜けたことを受け、財務省・日銀による為替介入の実施有無。

