前回からの変化

前回(2026-10-01)のレポートは相場・ハッキング中心の旧構成であり、本日から社会実装・法改正・特集を中心とする構成に切り替えた。そのため前回の相場観・テクニカル分析との直接比較は行わず、前回から続く話題のみを整理する。

変わったこと(変化・新規)

  • 日本では、金融庁が9月30日に「AI時代を見据えたオンチェーン金融フォーラム」の第1回会合を開き、DeFi(分散型金融)・ステーブルコインの制度点検と日銀当座預金のオンチェーン対応を検討課題に挙げた。前回は7月成立の金商法移行法の施行(2027年度予定)が焦点だったが、制度の次の論点が示された段階である(CoinChoice: 金融庁、DeFi・ステーブルコイン制度を検討へ)
  • 米国では、前回扱った取引所ハッキングやSECの詐欺摘発とは別に、FRB・OCC・SEC・CFTCによるステーブルコインとトークン化の規則整備が9月中旬から下旬にかけて相次いだことを新たに整理した(Troutman Pepper Locke)
  • ビットコインは前回(9月30日、8万3,300〜8万3,800ドル前後)から、本日は8万4,580ドル前後へ小幅に上昇した(CoinDesk: Bitcoin price today)

昨日と同じこと(継続)

  • ビットコインが8万2,000〜8万5,000ドルのレンジで推移する構図は継続している
  • 日本の金商法移行法の施行は引き続き2027年度の予定で、本日時点で日程の変更は確認できなかった
  • 金融庁支援のTradeWaltz・メガバンク3行によるステーブルコイン貿易決済の実証は、引き続き実証実験の段階で、新たな進捗は確認できなかった

要因の連続性

  • 継続要因: ビットコインを下支えする機関投資家の資金流入(現物ETF)と米長期金利の動向への注目が、前回に続いて働いている
  • 新規要因: 金融庁のオンチェーン金融フォーラム、FRBのGENIUS法規則案、DTCCの10月本格稼働という制度・インフラ面の材料が加わった
  • 解消した要因: なし

市況ひとこと

ビットコインは8万4,580ドル前後で、24時間では1.1パーセント高(CoinDesk: Bitcoin price today、取得は10月1日の米東部時間午後、日本時間では10月2日朝)。イーサリアムは2,710ドル台で推移した(Coinbase: Ethereum price。24時間騰落率は確認できなかった)。どちらも大きな変動ではなく、理由の付記は不要な水準である。

社会実装・インフラへの採用

DTCC(米証券保管振替機構)のトークン化サービス

  • 誰が・何に: 米国の証券決済インフラであるDTCC傘下のDTC(預託信託会社)が、保管中の証券のトークン化版を発行するサービスを提供する。対象はラッセル1000構成銘柄、主要指数連動ETF、米国債である
  • 技術: DTCC自前のBesu系プライベートネットワークとCanton Networkのマルチチェーン構成(Hokanews)
  • 段階: 7月に30社超が参加する限定的な本番取引を実施済みで、10月に本格開始の予定。2025年12月にSECからノーアクションレター(規制当局が執行措置を取らないと示す書簡)を受けており、期間は3年間(Traders Union)
  • 規模: 対象となるDTC保管資産は約114兆ドル規模とされるが、当初に実際にトークン化される範囲は流動性の高い銘柄に限られる。ワーキンググループには50社超(報道により100社超との記載もある)が参加
  • トークンの扱い: 既存の証券と同じ権利を持つ「トークン化版」であり、暗号資産のトークンを新たに売買させる仕組みではない。ブロックチェーン技術が使われる事例である

Swift(国際銀行間通信協会)の共有台帳

  • 誰が・何に: Swiftがブロックチェーンの共有台帳を構築し、銀行が24時間の国際送金に使うトークン化預金(銀行預金をトークンの形にしたもの)の支払い約束を記録・検証する
  • 段階: 7月にパイロットとして稼働し、17行が年末まで試験運用する。9月28日にはOracle、IBM、Cosmosが台帳への接続を発表した。Oracleは同社のバンキング決済製品と接続する(Ledger Insights)
  • 技術の使われ方: トークン化預金は各銀行のシステム内にとどまり、共有台帳は銀行同士の支払い約束を記録する役割で、台帳自体が資金を動かすわけではない。暗号資産の公開トークンの採用は明示されていない

米国の銀行・決済関連の動き

  • OCC(通貨監督庁)は9月18日、Bastion、Catena、Agoraの3社にステーブルコイン・暗号資産サービス向けの国法信託銀行免許を条件付きで承認した。完全な承認には連邦準備銀行の株式取得が必要(Troutman Pepper Locke)
  • SECは9月17日、トークン化された上場株式を取引所登録なしで扱える5年間の暫定救済(イノベーション免除)を承認した。取引量や銘柄数に上限がある(同)

各国の法改正・規制

日本

  • 金融庁は9月30日の第1回フォーラムで、DEX(分散型取引所)・DeFiについて「技術の性質に合わせた過不足のない規制を含むリスク低減策」を検討すると示した。ステーブルコインは裏付け資産など現行制度を利点・欠点の両面から見直す
  • 日本銀行は2026年内に、日銀当座預金のオンチェーン対応の論点と道筋を整理する予定。対象は金融機関同士の決済であり、個人の口座ではない
  • 公金給付へのステーブルコイン・トークン化預金の活用や国債のトークン化も検討対象。第2回会合(2027年初)で中間整理とロードマップを示す予定(以上、CoinChoice)
  • 段階は検討開始であり、具体的な規制内容は未決定である

米国

  • FRBは9月24日、GENIUS法(米国のステーブルコイン法)に基づく決済用ステーブルコイン発行者向けの規則案2本を公表した。準備資産の裏付け、償還、資本基準、抱き合わせ禁止などを定める。コメントは官報掲載から60日以内
  • CLARITY法案(市場構造法案)は9月15日の上院採決で賛成49・反対50で否決され、当面の立法は望めない。そのため規制当局とカリフォルニア州などの州が個別に動いている
  • CFTCは9月24日にトークン化担保とブロックチェーンでの記録保存に関するFAQを更新し、SECは9月21日にトークン化した株式クラスについて初の投資会社法の適用除外を認めた(以上、Troutman Pepper Locke)

EU

  • 欧州中央銀行(ECB)は9月28日、デジタルユーロ(CBDC=中央銀行デジタル通貨)の革新プラットフォームについて民間企業からの参加希望の募集を開始した。実験は2027年1〜6月の予定(同)。日米の動きと比べ、公的主導で通貨そのものを発行する方向である点が異なる

特集: 新しいビジネスの形

証券そのものをトークンにする「預託機関型トークン化」

直近2週間に同じテーマの特集はない(本日が再編後の初回)。

  • 仕組み: 通常、株式や国債の所有記録は預託機関(米国ではDTC)の中央台帳に置かれる。DTCCのサービスでは、参加者が望めば、この中央台帳の記録と並行して、同じ権利を持つトークン版をブロックチェーン上に記録できる。トークンは承認されたデジタルウォレットやブロックチェーン間で動かせ、理論上は24時間取引が可能になる(Hokanews)
  • 誰がどう稼ぐのか: 手数料体系は公表資料では確認できなかった。参加するブローカーや銀行、取引所は、24時間取引や決済の短縮による新サービスを提供でき、DTCCは既存の独占的な預託事業の延長線上で新しい対象を扱える。同様の動きとして、NYSEとBlockchain.comがトークン化株式の24時間取引で非拘束の覚書を結んだ(9月23日)ほか、MoonPayは証券トークン化向けの取引システムを持つNorth Capitalを買収した(Troutman Pepper Locke)
  • 既存のやり方との違い: 現行の株式決済は営業日・営業時間に縛られ、清算・決済に時間がかかる。トークン版は時間の制約が小さくなる可能性があるが、当初は流動性の高い銘柄に限られ、効果は参加者の採用次第である
  • 課題・リスク: SECのノーアクションレターは3年間の期限付きで条件が付いている。複数のチェーンにまたがる運用の相互接続や、トークンと中央台帳の記録のずれをどう防ぐかが課題。参加企業の採用が広がるかも未知数
  • 具体例: DTCC、BlackRock、Goldman Sachs、JPMorganなどがワーキンググループに参加している

業界トピック

本日は、収集範囲で新たに確認できた大きなハッキング・取引所の破綻・業務停止命令はなかった。前回までに扱った9月の流出被害(CertiK集計)は、続報がないため改めて取り上げない。