前回からの変化

前回(2026-09-23)との比較(週報のため、比較対象は1週間前)

変わったこと(変化・新規)

  • 欧州委員会が9月29日、生成AIによる著作物利用・オンライン海賊版対策・音楽クリエイターへの公正な報酬・学術研究における著作権という4つの論点について意見募集を新たに開始した(新規、欧州委員会)。
  • 米国では、前回レポートで未報告だった米FTCによるアマゾン広告オークション不正操作訴訟(8月31日提訴)が判明した(新規、Regulatory Oversight)。
  • 米FTCは9月17日、2025年9月のアマゾン・プライム和解にもとづく返金プログラムを拡大すると発表した。これも前回未報告の動きである(新規、FTC)。

昨日と同じこと(継続)

  • 前回既報の米国Google広告テクノロジー独禁法訴訟は、両当事者が10月2日までに最終判決案を提出する段階のまま今週は新たな一次情報が確認されなかった(継続)。
  • EUのDMA/DSAを巡っては、今週(9月23日〜29日)も欧州委員会の公式発表において新規の制裁金決定・正式調査開始・EU司法裁判所(CJEU)判決は確認されなかった(継続、2週連続)。
  • 日本の公正取引委員会・個人情報保護委員会についても、今週テック企業を対象とした新規の勧告・命令等は確認されなかった(継続、2週連続)。
  • 英CMAのMicrosoft業務用ソフトウェアに関する戦略的市場的地位(SMS)調査(5月14日開始)は継続中で、今週の新たな決定は確認されなかった(継続)。

要因の連続性

  • 継続要因: 米国における巨大テック企業への反トラスト追及の流れ(Google・Amazonの双方で訴訟が並行進行)、EUのDMA/DSA・AI法の執行体制整備。
  • 新規要因: EUが生成AIと著作権の関係を正式な政策アジェンダに載せたこと(意見募集開始)。米国では広告オークションの価格操作という新たな反トラスト行為類型がアマゾンに対して提起されたこと。
  • 解消した要因: 特になし。

今週の概観

今週(9月23日〜29日)、EU・日本・英国ではテック企業に対する新規の制裁金決定・排除措置命令など確定的な一次情報は確認されなかった。もっとも欧州委員会は9月29日、生成AIによる著作物利用のあり方を含む著作権の課題について意見募集を開始し、11月3日を期限として著作権者・生成AI開発企業・プラットフォーム事業者などに意見を求めている。米国では、前回レポートまでに報告していなかった動きとして、FTCと22州が8月31日にアマゾンの広告オークション不正操作を理由に提訴していたこと、FTCが9月17日にアマゾン・プライム返金プログラムの拡大を発表していたことが判明した。いずれも今週時点で確認できた一次情報にもとづき、発生日を明記して扱う。米国の2件はいずれもプラットフォーム規制というより取引慣行(広告オークション・解約手続き)を対象とした消費者保護・反トラスト執行である点に注意が必要である。

EU

欧州委員会は9月29日、テクノロジー(とりわけ生成AI)が著作権に与える影響について意見募集(ターゲット・コンサルテーション)を開始した。論点は(1)生成AIシステムにおける著作物の利用のあり方、(2)ライブイベントのオンライン海賊版対策、(3)音楽クリエイターへの公正な報酬(公平な報酬請求権)の適用、(4)学術研究における著作権上の課題、の4点である。回答期限は11月3日で、著作権者・コンテンツ事業者・生成AI開発企業・プラットフォーム事業者・音楽著作権管理団体・スポーツイベント主催者・研究機関・消費者団体等を対象としている。欧州委員会は現行の著作権枠組みを「堅固」としつつ、技術・市場の変化を踏まえ追加的な措置が必要かどうかを今回の意見募集で見極めるとしている。今回はあくまで意見募集の開始であり、法案の提案や規則の改正が決まったわけではない(段階: 意見公募開始。欧州委員会)。EUのAI規制はこれまでAI法によるリスクベースの規律が中心だったが、今回の意見募集は生成AIと著作権という別の切り口から規律のあり方を検討するものである。

DMA・DSA・AI法については、今週、欧州委員会のデジタル政策・競争政策の公式発表を確認したが、新規の制裁金決定、正式調査の開始、EU司法裁判所(CJEU)判決など一次情報で確認できる動きはなかった(前回に続き2週連続)。前回既報のとおり、EU AI法は8月2日に透明性義務(第50条)・汎用AI(GPAI)提供者への執行権限・罰則の適用が本格化しており、今週時点でこの適用状況に変更を示す新たな一次情報は確認できなかった。

米国

米FTCと22州の司法長官は8月31日、ワシントン州西部地区連邦地裁にアマゾンを提訴した。訴状は、アマゾンが広告オークションにおいて「ソフトリザーブ」と呼ばれる非公開の上乗せ価格を適用しながら、対外的には透明な「一般化第二価格(GSP)」オークションを運営していると説明していたと主張し、この仕組みにより約120万の広告主から7年超にわたり200億ドルを超える金額を不当に徴収したとしている。上乗せ幅を段階的に拡大して発覚を避けたこと、広告主がデータで実態を把握できないようにしたこと、プライムデーなど繁忙期に上乗せの上限を引き上げたことなども指摘されている。救済として恒久的差止命令・金銭的判決・不当利得の吐き出し・民事制裁金・原状回復を求めている。アマゾンは声明で「見当違い」と反論し、2019年から2025年にかけてスポンサープロダクト検索広告の平均落札価格が50%下落したこと、配信される広告の約92%は入札額だけで選ばれていないこと、広告の関連性を優先した結果2021年から2025年に広告主が80億ドル以上を節約できたことを主張し、法廷で争う姿勢を示した。裁判はまだ始まっておらず、主張は係争中である(段階: 提訴。Regulatory Oversight、AdExchanger)。

FTCは9月17日、2025年9月に成立したアマゾン・プライムの登録・解約手続きを巡る和解(総額25億ドル規模)にもとづく消費者への返金プログラムを拡大すると発表した。裁判所はFTCとアマゾンの共同申立てを承認し、1人あたりの上限を51ドルから200ドルに引き上げるとともに、対象となる利用実績の範囲を広げた。新たに対象となる消費者への自動返金は10月1日に開始し、既に受給した消費者への追加給付(上限149ドル)は2027年4月までに開始される予定である。FTC消費者保護局のクリストファー・ムファリージ局長は「この改定命令により、アマゾンの欺瞞的な登録・解約慣行で被害を受けたより多くの消費者が、歴史的な和解の恩恵を受けられるようになる」と述べた(段階: 和解の履行拡大〔裁判所承認済み〕。FTC)。

前回既報の米国Google広告テクノロジー独禁法訴訟(司法省 対 Google)については、バージニア州東部地区連邦地裁のリオニー・ブリンケマ判事が9月16日に示した救済措置判断(AdXの構造的売却は退け、6年間の技術監視人設置などの行為的救済を命じる内容)を受け、両当事者が10月2日までに最終判決案を提出する段階にある。今週時点で新たな一次情報は確認できなかった(継続。AdExchanger)。

前回既報のカリフォルニア州の子ども保護関連法(AIコンパニオンチャットボット規制のSB1119等)を巡っては、今週新たな訴訟提起や施行に関する動きは確認できなかった(継続)。

日本

今週(9月23日〜29日)の公正取引委員会の報道発表を確認したところ、スマホソフトウェア競争促進法や独占禁止法に関するテック企業向けの新規の勧告・命令・排除措置命令は確認されなかった。今週公表された排除措置命令・課徴金納付命令(関東地区マンション大規模修繕工事の受注業者を対象)や日本郵便への勧告はテック企業を対象としたものではない(段階: 該当なし。公正取引委員会)。

個人情報保護委員会についても、今週テック企業を対象とした是正勧告・立入検査等の公表は確認できなかった。AI推進法にもとづく施策・AI事業者ガイドラインの改定についても、今週時点で新たな一次情報は確認できなかった(前回に続き2週連続で新規動向なし)。

その他の国・地域

英競争市場庁(CMA)は5月14日、Microsoftの業務用ソフトウェア(生産性ソフト・OS・データベース管理・セキュリティソフト等)を対象とした戦略的市場的地位(SMS)調査を開始しており、バンドリングや相互運用性の制限、デフォルト設定による乗り換え障壁の有無などを審査している。調査はクラウド市場調査で指摘されたMicrosoftのソフトウエアライセンス慣行の問題やAI機能との連携も対象に含む。今週、CMAから新たな決定・意見募集の締切等の発表は確認されなかった(段階: 調査継続中。GOV.UK)。

韓国・インド・中国のプラットフォーム・データ規制について、今週の主要な新規動向は確認できなかった。

今後の予定

  • 2026年10月1日: FTCによるアマゾン・プライム返金プログラム拡大で、新たに対象となった消費者への自動返金が始まる
  • 2026年10月2日: 米国Google広告テクノロジー独禁法訴訟で、両当事者が最終判決案を提出する期限
  • 2026年10月13日: FTC対アマゾン(オンライン小売の独占的地位を巡る本訴訟)の裁判がワシントン州西部地区連邦地裁で開始予定
  • 2026年11月3日: 欧州委員会の「技術(生成AI含む)が著作権に与える影響」に関する意見募集の回答期限
  • 2026年12月2日: EU AI法第50条2項にもとづく、生成AIコンテンツのAI利用表示義務に関する追加の履行期限(前回既報、詳細は今後の一次情報で確認)