前回からの変化
変わったこと(変化・新規)
- 人民銀行が9月29日、PSL(抵当補充貸款)金利を1.75%から1.5%へ0.25ポイント引き下げ、科技創新・農業零細企業向けの再貸出枠を計7000億元拡大すると発表した。前回(9月29日号)時点では想定されていなかった新たな金融緩和材料
- 東方証券・国泰君安証券など中国大手証券会社が、個人投資家による海外株購入を相次いで制限し始めたことが判明した。資本流出規制の強化という新しい引き締め材料
- 上海総合指数は3820.82→3830.45(プラス0.18%)と4営業日ぶりに反発し、前回伝えた「2カ月ぶり安値までの3営業日続落」局面が一服した。一方で香港ハンセン指数は24666.09→24523.57(マイナス0.48%)と反落し、前回と本土・香港の優劣が入れ替わった
昨日と同じこと(継続)
- 万科企業を中心とする不動産・地方債務問題は、前回に続き構造的リスクとして残っている(本日新たな進展の公表はなし)
- 米中首脳会談(9月23〜25日)で半導体輸出規制の見直しが議題外にとどまったという材料は、引き続き本土ハイテク株の重荷として意識されている
- 国家統計局・財新の9月PMIがいずれも未発表という状況も前回から継続している
要因の連続性
- 継続要因: 不動産投資の低迷、米中間の半導体輸出規制を巡る対立は、前回に続き本土ハイテク・不動産株の重し要因として継続
- 新規要因: 人民銀行のPSL金利引き下げ・再貸出枠拡大という新たな緩和材料と、証券会社による海外株購入制限という新たな資本規制強化材料が、同時に加わった
- 解消した要因: 前回本土売りの直接要因だった「米中首脳会談での失望感」は、本日の自律反発と緩和策の発表によって幾分後退した(完全に解消したわけではない)
市況サマリー
| 指数 | 終値 | 騰落率 |
|---|---|---|
| 上海総合指数 | 3,830.45 | +0.18%(4営業日ぶり反発) |
| CSI300(滬深300) | ― | データ未確認(本レポート時点で確認できず) |
| 香港ハンセン指数 | 24,523.57 | -0.48%(反落) |
| ハンセンテック指数 | ― | データ未確認(個別ハイテク株は軟調) |
指数別動向
本土(上海・CSI300)
みんかぶFX/為替によると、上海総合指数は9月29日、前日比6.83ポイント高の3,830.45(プラス0.18%)で取引を終え、4営業日ぶりに反発した。前日28日につけた約2カ月ぶり安値からいったん下げ止まった形である。CSI300(滬深300)の終値・騰落率は、今回参照できた出典では確認できなかった。ただしSouth China Morning Postは、ハイテク株売りを受けて中国本土株が28日に「13カ月ぶり安値」をつけたと報じており、本土のハイテクセクターには戻り待ちの売りがなお残っているとみられる。
香港(ハンセン・ハンセンテック)
一方、香港ハンセン指数は反落した。財経新聞によると、29日は前日比118.94ポイント安の24,523.57(マイナス0.48%)で取引を終え、米10年国債利回りが2007年以来の高水準をつけたことや原油の需給を巡る警戒感が重しとなった。中国企業指数(旧H株指数)も0.46%安の8,178.81で終えている。OANDAによると、テンセント・美団・アリババ集団といった主力ハイテク株が指数の押し下げ役となったほか、自動車の吉利汽車が7.4%安、BYD・理想汽車も売られた一方、バイオ株の康方生物が15.5%高となるなどセクター間でまだら模様だった。国慶節の大型連休入りを控えた持ち高調整の売りも指摘されている。ハンセンテック指数の終値・騰落率は今回の出典からは確認できなかったが、主力ハイテク株の下落状況からは軟調だったとみられる。
本土と香港で方向が割れた理由: 本土は前日までの下げ過ぎ感からの自律反発に加え、後述する人民銀行のPSL金利引き下げなど新たな緩和材料が下支えとなった。一方、香港市場は米長期金利の上昇や原油高という国際市場要因の影響を受けやすく、方向性が分かれた。
当局・政策の動き
人民銀行は9月29日、金融政策手段の調整を発表した(新華網、毎日経済新聞(每经网))。1年物のPSL(抵当補充貸款、政策性銀行向けの低利資金供給制度)金利を0.25ポイント引き下げ、1.75%から1.5%とした。あわせてPSLの支援対象に「六張網」(水道網・新型電力網・コンピューティング網・次世代通信網・都市地下管網・物流網)の整備を追加し、有効投資と内需の喚起を狙う。再貸出制度も拡充し、科技創新向け再貸出枠を1.2兆元から1.4兆元(支援比率は60%から100%)へ、農業・零細企業向け再貸出枠を4.35兆元から4.85兆元(うち民営企業向けが3000億元増)へ、それぞれ増額した。第15次五カ年計画(「十五五」)の順調な滑り出しを支える狙いとされる、決定済みの措置である。LPR(最優遇貸出金利)は9月20日発表分(1年物3.0%・5年物以上3.5%)のまま16カ月連続で据え置かれており、預金準備率(RRR)の変更は今回も確認されていない。
South China Morning Postによると、東方証券や国泰君安証券など中国の大手証券会社が、個人投資家による海外株式の購入を相次いで制限し始めた。これは当局による資本流出規制強化の一環で、これまで抜け道となっていた長年の慣行を閉じる動きとされる。国有系ファンド(中央匯金など、いわゆる「国家隊」)によるETF買い入れなど需給への直接介入については、本レポート時点で新たな観測・公表情報は確認できていない。
経済指標
中国国家統計局による9月の製造業PMI・非製造業PMI、および財新(Caixin)の9月製造業PMIは、いずれも本レポート時点(日本時間9月30日早朝)ではまだ発表されていない。東方財富網によると、国家統計局の9月PMIは9月30日中の発表が予定されており、8月の製造業PMIは49.8%だった。前回(9月29日号)時点で「9月分はいずれも未発表」としていた状況は継続しており、今回も確定値は確認できなかった。8月の小売売上高(前年同月比0.4%増)・鉱工業生産(同5.2%増)など既出の指標に新たな更新はない。
不動産・地方債務
万科企業(バンケ)を巡る債務再編・資金繰り難の状況は、前回から大きな進展の公表はない。一方、South China Morning Postによると、不動産サービス大手JLLは、中国の不動産市場について新規供給と需要のバランスが取れつつあるとして「回復の兆し」がみられるとの見方を示す一方、供給過剰への警戒感はなお残るとしている。不動産不況が長期化するなかでも、部分的な底打ち観測が出始めている点は、前回までの悲観一色の論調からのやや変化と言える(観測にとどまる点に留意)。
米中関係と注目銘柄
米中両国は9月23〜25日の首脳会談で貿易上の休戦延長に合意したが、半導体輸出規制の見直しは議題外にとどまった状況が続いている(前回既報)。この「限定的な成果」への失望は本土ハイテク株の重荷として残っており、South China Morning Postは、28日の本土ハイテク株売りが13カ月ぶり安値の主因になったと分析している。
個別銘柄では、29日の香港市場で財経新聞・OANDAによると、テンセント(00700、H株)、美団(03690、H株)、アリババ集団(09988、H株)が指数の重荷となった。自動車セクターでは吉利汽車(00175、H株)が7.4%安、BYD(01211、H株)・理想汽車(02015、H株)も売られた。不動産セクターでは万科企業(02202、H株・A株)の債務問題が引き続き重荷となっている。米中間の構造的な対立(半導体規制・関税)が長期化するなか、企業ごとの業績・当局対応による銘柄選別が強まっている。
強気派 vs 弱気派
強気派: South China Morning Postによると、DBS銀行はCSI300指数が2040年までに現在の2倍超となる9,500ポイントに達するとの長期見通しを示した。ただしハイテク・不動産セクター全体への強気は後退しており、世界的な競争力を持つ個別企業を選別して投資する姿勢に投資家がシフトしているという。バリュエーションの割安さよりも、成長性・収益性で銘柄を選別する動きが強気派の論拠になっている。
弱気派: South China Morning Postは、原油高・米金利上昇への警戒から中国本土のハイテク株が売られ、13カ月ぶり安値をつけたと報じている。またSouth China Morning Postが伝えた証券会社による海外株購入制限は、当局による資本規制強化という政策リスクの表れであり、「割安だが買えない」という中国株特有の論点を改めて浮き彫りにしている。バリュエーションの話(本土株は割安との見方が多い)と、政策リスクの話(資本規制・地政学)は分けて捉える必要がある。
テクニカル分析(上海総合・ハンセン指数)
上海総合指数は前日28日に約2カ月ぶり安値の3,820.82まで売られた後、29日は4営業日ぶりに反発し3,830.45で引けた(みんかぶFX/為替)。直近安値圏からの反発であり、短期的には下値を切り上げる動きになりつつあるとみられるが、200日移動平均線など長期線を明確に上抜けたかどうかは、今回参照できた出典からは確認できていない。RSIの具体的な数値も確認できていないが、直近まで売られ過ぎに近い水準だった分、自律反発が入りやすい局面だったと考えられる。目安としては、28日安値の3,820近辺がサポート、心理的な節目である3,850〜3,900近辺がレジスタンスとして意識されやすい水準とされる。
香港ハンセン指数は29日に反落し24,523.57で引けた。米長期金利の上昇を受けた調整局面にあり、短期的には上値の重さが意識されやすい状況とされる。南向き資金(香港ストックコネクト経由の本土マネー)、AH株プレミアム指数の最新データは、今回の出典からは確認できなかった。
本日の注目点
東方財富網によると、中国本土市場(上海・深セン)は10月1日から10月7日まで国慶節の大型連休で休場し、10月8日に取引を再開する。香港市場の休場は10月1日のみで、10月2日以降は通常どおり取引される(沪深股通・港股通〔ストックコネクト〕は10月1〜7日サービス停止)。連休入り直前となる本日30日は、国家統計局・財新の9月PMI発表(本レポート時点で未発表)が最大の注目材料となる。あわせて来週にかけて59銘柄・合計約147.81億株分のロックアップ解除(株式売却制限の解除)が予定されており、需給面での重荷になる可能性がある。連休明け(10月8日)は、連休中に発表される米国の9月雇用統計・PCE物価指数(10月2日発表予定)などの海外材料も含め、休場中に蓄積した材料をまとめて反映する日になる見込みである。

