前回からの変化

変わったこと(変化・新規)

  • 金は前回(9月28日)の3.22%急落から一転し、9月29日は1.63%反発(4,181.90ドル→4,182.01ドルとほぼ同水準まで回復)。ただし取引時間中には2か月ぶり安値(1オンス4,100ドル近辺)まで売られる場面もあった(Yahoo Finance)
  • 原油は前回の上昇(WTI+0.76%、ブレント+1.27%)から一転し急落。WTIは93.11ドル→88.92ドル(マイナス3.98%)、ブレントは105.64ドル→102.51ドル(マイナス2.63%)となった。米国が戦略石油備蓄(SPR)の追加放出を発表したことが新たな弱気材料に加わった(TradingEconomics)
  • 天然ガスの供給不安要因だったTCエナジーのパイプライン障害は解消。フォースマジュール(不可抗力)が解除され、価格は3日続落で1MMBtuあたり3.0147ドル(マイナス2.94%)まで下げた
  • 新たに銅の急変動(史上最高値からの4.7%急落)が特集対象として浮上した(詳細は後述)

昨日と同じこと(継続)

  • 原油相場を巡るホルムズ海峡情勢・イラン情勢の緊張は継続。トランプ大統領がイランの提案を拒否した状況に変化はない
  • OPECプラスが10月の生産枠を維持し大幅増産を見送る方針も継続している

要因の連続性

  • 継続要因: 金・銀の重しとなっている実質金利の上昇とドル高は前回に続き本日も作用している。10年債利回りは2007年以来の高水準(5.257%)まで上昇し、FRBが10月に追加利上げに踏み切るとの見方(市場織り込み70%程度)も継続(Tradingpedia)
  • 新規要因: 原油では、米国の戦略備蓄追加放出とサウジアラビアなど中東産油国からの輸出回復(9月に日量約1280万バレルと2月以来の高水準)という新たな弱気材料が加わった。あわせてIEA・OPECが2026年の需要見通しを下方修正したことも新規の弱気材料である
  • 解消した要因: 前回「特集」級だった天然ガスのパイプライン障害(TCエナジーの不可抗力宣言)は同社が復旧を完了し解除されたため、供給不安プレミアムは解消した

価格サマリー

商品 価格(2026年9月29日時点) 騰落率(前日比)
金(NY先物) 1オンス4,182.01ドル +1.63%(+67.03ドル)
銀(NY先物) 1オンス61.47ドル +1.38%(+0.84ドル)
WTI原油 1バレル88.92ドル -3.98%(-3.68ドル)
ブレント原油 1バレル102.51ドル -2.63%(-2.77ドル)
天然ガス(Henry Hub) 1MMBtu 3.0147ドル -2.94%(-0.09ドル)

出典: TradingEconomics: Gold、TradingEconomics: Silver、TradingEconomics: Crude Oil、TradingEconomics: Brent crude oil、TradingEconomics: Natural gas(いずれも日本時間9月30日早朝取得時点で2026年9月29日データとして表示)

商品別動向

金・銀

Yahoo Financeによると、NY金先物は9月29日、前日終値から0.4%安の1オンス4,150.10ドルで取引を開始し、その後一時2か月ぶり安値圏の4,100ドル近辺まで下落する場面があった。しかしTradingpediaによれば、その後は下げ渋って反発に転じ、TradingEconomicsの集計では最終的に前日比1.63%高の4,182.01ドルまで戻した。反発の背景には短期的な売られ過ぎ感からの押し目買いがあるとみられるが、上値は重い。米10年債利回りが2007年以来の高水準となる5.257%まで上昇し、実質金利(10年物TIPS利回り)も上昇していることが重荷になっている。FRBは9月16日のFOMCで0.25%の利上げを決定済みで、市場は10月の追加利上げを約70%の確率で織り込んでいる。

銀はNY先物が61.47ドル(前日比+1.38%)。Yahoo Financeによると、取引開始時点では前日比1.1%安の61.03ドルまで売られ、8月6日以来の安値水準となる場面もあった。週間ではマイナス6.7%、月間ではマイナス12%と金以上に下落幅が大きく、実質金利上昇の影響が金より強く出ている構図となっている(年初来では依然プラス圏)。

原油

TradingEconomicsによると、WTI原油は9月29日、米国が戦略石油備蓄(SPR)から追加放出を実施すると発表したことを受けて売りが加速し、前日比3.98%安の1バレル88.92ドルまで下落した。TradingKeyは、アジア時間には強含んでいたWTI・ブレントが、ニューヨーク時間にかけて上昇分を消して2%超下落に転じたと報じている。ブレント原油もTradingEconomicsによれば前日比2.63%安の102.51ドルとなった。

下落の背景には、サウジアラビアなど中東産油国からの原油輸出が9月に日量約1,280万バレルまで回復し、2月以来の高水準となったことがある。Business Standardが伝えた前日のイラン情勢緊迫による上昇分が、供給回復観測でほぼ帳消しになった形だ。加えてOilPrice.comによると、IEAは2026年の世界石油需要見通しを日量160万バレルの減少に下方修正し、OPECも需要見通しを大きく下げており、需要面からも弱気材料が重なった。一方でOPECプラスは10月の生産枠維持を決めており(前回既報)、大幅な供給増にはつながっていない。

天然ガス

TradingEconomicsによると、米国天然ガス(Henry Hub)は9月29日、前日比2.94%安の1MMBtuあたり3.0147ドルまで下落し、3営業日続落となった。記録的な9月の生産量と高水準の在庫見通しが重荷となっているほか、暖房・冷房需要が限定的との天気予報も弱材料となった。前回レポートで特集した、TCエナジーが運営するアパラチア地方パイプラインの機械的トラブル(不可抗力宣言)は日曜(9月27日)に復旧が完了して解除され、供給不安プレミアムは剥落した。一方でLNG輸出向けフィードガス需要は主要9基地向けで日量18bcf(9月)と8月の17.3bcfから増加しており、下値を支える要因として残っている。

農産物

TradingEconomicsによると、小麦は9月29日に前日比0.65%高の1ブッシェル6.9325ドルとなったが、月間ではマイナス8.36%と軟調が続く(年間ではプラス36.47%)。トウモロコシは同日、前日比0.14%安の1ブッシェル5.2225ドルで、幅広い穀物相場の下げに押され約3週間ぶりの安値水準にある(TradingEconomics)。大豆は前日比0.74%高の1ブッシェル12.9775ドル(TradingEconomics)。小麦・トウモロコシ・大豆はいずれも生産コストを下回る水準が続き、業界では4年連続の減益年になるとの指摘もある。

急変動の特集

銅が史上最高値からの急落で荒い値動き。Discovery Alertによると、ロンドン金属取引所(LME)の銅3か月物は9月10日に1トン14,875ドルの史上最高値をつけたが、同日中にCOMEX銅が1ポンド6.49ドル(1トン約14,308ドル相当)まで4.7%急落する場面があった。背景には、米政権が精製銅への関税拡大を検討していたものの、決定期限(9月8日)を過ぎても発表がなく「関税拡大の勢いが失速した」との観測が広がったことがある。ゴールドマン・サックスは銅の理論価格(ファンダメンタルズ価格)を1トン約11,500ドルと試算しており、直近価格にはなお1トンあたり2,800ドル程度の「関税思惑プレミアム」が上乗せされているとみている。

銅相場は2026年に入り年初来で約17〜19%上昇しており、チリ・ペルーの鉱山供給の逼迫に、データセンターや送電網向けの旺盛な需要(電化・再生可能エネルギー関連)が重なったことが構造的な上昇要因。米国内の保管在庫は100万トン超に達し、その多くが関税発動を見込んだ思惑買いとされる(Discovery Alert)。9月28日時点でCOMEX銅は1ポンドおよそ6.70ドルと、9月8日の史上最高値(6.80ドル)に近い水準まで戻しており、関税を巡る当局判断次第で今後も荒い値動きが続く可能性がある。生活・産業への波及としては、電線・電子機器・EV(電気自動車)・建設資材など銅を多用する製品のコスト増につながりやすく、関税が最終的に発動されれば米国内の川下産業のインフレ圧力になり得る。

強気派 vs 弱気派

金: 弱気派は、FRBのタカ派姿勢と実質金利の上昇、ドル高を根拠に上値の重さを指摘する(Tradingpedia)。ロイター調査(2026年7月)ではJPモルガンが1オンス6,000ドルという強気目標を示す一方、StoneXは4,000ドル程度にとどまるとの慎重な見方を示しており、強気・弱気の見方が大きく分かれている。強気派は中央銀行による継続的な金購入や、中東情勢を背景とした質への逃避(リスク回避)需要を根拠に挙げる。

銀: 弱気派は、銀のほうが金より実質金利上昇の影響を強く受けており、10年物TIPS利回りの上昇(8月半ばから約20ベーシスポイント上昇)が銀の相対的な弱さを説明するとみる。強気派は、2026年に6年連続となる需給の物理的な不足(供給不足見通し4,630万オンス、前年の4,030万オンスから拡大)を根拠に、地上在庫の取り崩しが続けば実需面から価格を支えるとの見方を示す(goldsilver.com)。

原油: 強気派はホルムズ海峡を巡るイランとの緊張継続や、地政学リスクプレミアムの残存を根拠に上値余地を指摘する(TradingKey)。弱気派はIEA・OPECによる2026年需要見通しの下方修正、中東産油国からの輸出回復、米国の戦略備蓄放出を根拠に上値を抑えられるとみる(OilPrice.com、TradingEconomics)。

地政学・物価関連ニュース

トランプ大統領がイランのホルムズ海峡開放提案を拒否した状況(前回既報)は継続しており、世界の原油輸送の要衝であるホルムズ海峡を巡る緊張は解消していない。一方で、サウジアラビアなど周辺産油国からの実際の輸出量は9月に日量約1,280万バレルまで回復しており、供給面での「地政学リスクの現実化」は限定的にとどまっている。原油価格が高止まりすれば、エネルギーコストを通じた物価(インフレ)への波及が見込まれ、FRB・ECB・日銀など主要中央銀行の金融引き締め路線を後押しする材料になり得る。銅を巡る米国の関税政策の帰趨も、電線・電子機器・建設資材などの物価に波及しうる論点として注視が必要だ。

テクニカル分析(金・銀・原油・天然ガス・農産物)

金: Tradingpediaによると、9月29日時点でRSI(14日)は売られ過ぎ圏とされる26付近から上向き始めており、下落の勢いが一服しつつあることを示唆する。MACDもマイナス圏ながら上向きに転じつつあり、短期的な底打ちの兆しとされる。ただし上値では実質金利上昇という重しが残るため、「戻り待ちの売り」が出やすい地合いとの見方が示されている。

原油(WTI): Tradingpediaによると、WTIは4時間足の200日単純移動平均線(SMA)を上回って推移しており、これが目先のサポートとして意識されている。フィボナッチ・リトレースメントでは50%戻し水準(およそ88.88ドル)が支持線、23.6%戻し水準(およそ95.31ドル)が上値抵抗線とされる。RSI(14日)は50近辺で推移しており、方向感に乏しいものの、これを上抜ければ上昇基調再開のシグナルとされる(売買推奨ではなく、あくまで目安の水準として)。

天然ガス: RSIは58.5前後(過去には65超まで上昇する場面もあった)で、買われ過ぎとまでは言えない水準。200日SMA(およそ2.841ドル)を上回って推移しており、中期的な上昇トレンドはなお崩れていないとされる。もっとも、MACDのヒストグラムは縮小し始めており、上昇の勢いがやや鈍化している可能性が指摘されている。

銀: 金と同様に実質金利上昇の影響を受けやすく、直近安値圏(61〜62ドル台)を明確に下抜けるかが目先の焦点とされる。金銀比価(金価格÷銀価格)は、銀が金より下落率が大きいことを踏まえると足元で上昇(銀が相対的に割安化)している可能性が高いが、具体的な比価の数値については本レポート時点で確認できる出典がなかった。

小麦: 直近3年ぶり高値(1ブッシェル7.95ドル、9月2日)から約12%下落し、週足では4週連続の下落となっている。CFTC建玉明細(投機筋のポジション)やドル指数との具体的な相関については、本レポート時点で信頼できる最新の出典を確認できなかった。