前回からの変化

変わったこと(変化・新規)

  • 3営業日ぶりに米国株式市場が取引を再開し、主要3指数がそろって下落した。NYダウは前回値53,414.25ドル→52,786.07ドル(628.18ドル安、1.18%安)と下げが最大、S&P500は7,718.60ドル→7,673.52ドル(45.08ドル安、0.58%安)、ナスダック100は29,544.16ドル→29,507.70ドル(36.45ドル安、0.12%安)となり、前回レポート時点で「未消化」だった休場中の材料が実際の下落として表面化した(Yahoo Finance)(新規・具体化)。
  • 中東ではホルムズ海峡を巡る米・イランの軍事衝突が激化し、イランは弾道ミサイルによる新たな威嚇を行った。原油はWTIが93ドル台、ブレントが100ドルに接近し、前回レポートには無かった新たな地政学リスクとして市場の重荷に加わった(Yahoo Finance)(新規)。
  • カナダが9月8日未明(現地時間)、鉄鋼・アルミニウムの対米関税を50%に倍増させたほか、乳製品・家電・農業機械・パルプ紙・電子機器など700品目超・総額200億ドル超の米国製品に15〜50%の報復関税を発動した。米・カナダ間の貿易摩擦が新たな段階に入った(Yahoo Finance)(新規)。
  • インテルがPC向けCPUの値上げ報道とアナリスト格上げを受けて株価が9〜10%超上昇した一方、エヌビディアは2.01%下落し、AIハードウェア株とクラウド大手(ハイパースケーラー)の値動きの乖離が意識され始めた(Yahoo Finance)(新規)。
  • 強気派側でJPモルガン(2026年末S&P500目標を7,800→8,000へ)、エバコアISI(強気シナリオ9,000の実現確率が上昇)が目標株価を引き上げる一方、弱気派側でもJPモルガンの別ストラテジスト、ジェイソン・ハンター氏が「S&P500が7,909〜7,935ドルの抵抗帯で失速すれば9月に調整圧力が強まる」と具体的な水準を示して警告するなど、強気・弱気双方の論拠が前回より具体化した(BigGo Finance; GuruFocus)(新規・具体化)。
  • ドル円は153円台後半まで円高が進行し、前回(155円台後半〜156円台前半)から水準が切り上がった(Trading Economics)(新規・具体化)。

昨日と同じこと(継続)

  • FRBの沈黙期間(9月6日〜9月17日)は継続。9月16〜17日のFOMCでの利上げ確率は、フェデラルファンド先物ベースでおよそ58%となり、前回のおよそ60%からわずかに低下したが高水準は継続している(Yahoo Finance)。
  • 9月10日のPPI(卸売物価指数)・オラクル/アドビ決算、9月11日のCPI(消費者物価指数)という日程は変わらず確認された(Investing.com)。
  • テスラの無人ロボタクシー「サイバーキャブ」に対するNHTSAの安全性調査は継続中で、目立った進展の報道はない。
  • アップルの新製品発表イベント(9月9日)は前回から引き続き予告されていた材料で、本日ついに開催される。エヌビディアの時価総額は下落したものの世界首位は維持している。

要因の連続性

  • 継続要因: 強い雇用統計(8月非農業部門雇用者数16万2,000人増)を受けた利上げ観測、FRBの沈黙期間、マグニフィセント7への資金集中というAI関連の構造的リスクはいずれも継続。
  • 新規要因: (1)ホルムズ海峡での米・イラン軍事衝突による原油高、(2)カナダの対米報復関税発動、(3)インテルの値上げ観測とAIハードウェア/クラウド株の値動き乖離、(4)強気派(JPモルガン・エバコアISI)・弱気派(JPモルガンのハンター氏)双方の目標株価・警告の具体化。
  • 解消した要因: 3営業日連続休場という「材料未消化」の状態は、9月8日の取引再開により解消された(実際の下落という形で消化された)。

1. 市況サマリー

指数 終値 前日比 騰落率
S&P500 7,673.52ドル -45.08ドル -0.58%
ナスダック100 29,507.70ドル -36.45ドル -0.12%
NYダウ 52,786.07ドル -628.18ドル -1.18%

(取得時点: 2026-09-08(火)米国市場引け値。3営業日ぶりの取引再開初日で3指数そろって下落した。原油価格の上昇とカナダの対米報復関税発効が重荷となった。出典: Yahoo Finance、ナスダック100終値はInvesting.com)

2. 指数別動向

S&P500

7,673.52ドルで前日比45.08ドル(0.58%)安。3営業日ぶりの取引再開で、原油価格の上昇とカナダの対米関税発効を受けて売りが優勢だった。セクター別では、値上げ観測を追い風にした半導体のインテルが買われた一方、エヌビディアなどAIハードウェア株には利益確定売りが出た(Yahoo Finance)。

ナスダック100

29,507.70ドルで前日比36.45ドル(0.12%)安と、3指数の中では下げ幅が最も小さかった。インテルの急伸やクアルコムのアマゾンとの複数世代にわたるチップ供給契約(株価8%超上昇)がハイテク株を下支えした一方、エヌビディアは2.01%下落し、AIハードウェア株とクラウド大手の値動きの分かれが目立った(Yahoo Finance)。

NYダウ

52,786.07ドルで前日比628.18ドル(1.18%)安と3指数の中で下げが最大。医薬品大手ノバルティスが臨床試験結果の失望から13.93%急落するなど、ディフェンシブ株を中心に売りが広がった(Yahoo Finance)。テクニカル面では200日移動平均線を大きく下回る配置がさらに悪化している。

3. 強気派 vs 弱気派

原油高・関税・地政学リスクが重なる中でも、AI関連の設備投資と企業業績を根拠にした強気派と、9月の季節性やバリュエーションの偏りを警戒する弱気派の綱引きが続いている。

強気派(ブル)

  • JPモルガン・チェース: チーフ米国株ストラテジストらが2026年末のS&P500目標を7,800ドルから8,000ドルへ引き上げた。AIへの投資が「拠出の時代」から実際のキャッシュフロー・クラウド需要の伸びとして表れ始めていることを根拠とする(BigGo Finance)。
  • エバコアISI(ジュリアン・エマニュエル氏): 基本シナリオは7,750ドルとしつつ、S&P500が9,000ドルに達する強気シナリオの実現確率をおよそ30%とし、直近その確率が強まったとの見方を示した。現在のAIブームは1920年代・1990年代の技術革新サイクルの規模にまだ達しておらず、企業のレバレッジも抑制的で、景気後退・急激な長期金利上昇・過度な「FOMO(乗り遅れ懸念)」といった強気相場の終焉によく見られる兆候が見当たらないことを根拠に挙げている(GuruFocus)。

弱気派(ベア)

  • JPモルガン・チェース(テクニカルストラテジスト、ジェイソン・ハンター氏): 「S&P500が長期のチャネル・トレンドライン抵抗である7,909〜7,935ドル付近に接近して上値の勢いを失えば、9月に調整圧力が強まりかねない」と警告。AIハードウェア株とクラウド大手(ハイパースケーラー)の値動きの乖離を、2000年のドットコムバブル相場のピーク時と類似したパターンとして懸念し、保有ポジションのトレーリングストップ維持や株式エクスポージャーの縮小を提案した(BigGo Finance)。
  • ランス・ロバーツ氏(リアル・インベストメント・アドバイス)らが続けている、9月の季節的な弱さや自社株買い禁止期間を根拠にした防御的スタンスも継続している(前回レポートより継続)。

4. 経済ニュース

経済指標

前日(9/8)に主要な経済指標の発表はなかった。市場は引き続き9月4日発表の8月雇用統計(非農業部門雇用者数16万2,000人増、市場予想の3倍近い強さ)を消化する形となっている。次の焦点は9月10日のPPI(卸売物価指数)、9月11日のCPI(消費者物価指数)で、結果が9月16〜17日のFOMCでの利上げ判断を左右するとみられている(Investing.com)。

政策

カナダ政府が9月8日、鉄鋼・アルミニウムの対米関税を50%に倍増させたほか、乳製品・家電・農業機械・パルプ紙・電子機器など700品目超・総額200億ドル超の米国製品に15〜50%の報復関税を発動した。マーク・カーニー首相は米国の関税に「ドルフォードル」で対抗する方針を示している(Yahoo Finance)。中東ではホルムズ海峡周辺で米・イランの軍事的緊張が続き、イランが弾道ミサイルによる新たな威嚇を行うなど、原油の供給リスクプレミアムが意識される事態が続いている(Yahoo Finance)。トランプ大統領のFRBへの利下げ圧力とFRBの沈黙期間(9月17日まで)は前回から変化がない。

注目された個別銘柄・決算

  • アップル: 米東部時間9月9日午後1時(日本時間10日午前2時)に新製品発表イベントを開催予定。iPhone18 Pro・Pro Maxと、同社初となる折りたたみ型端末(「iPhone Ultra」または「Fold」と呼ばれる見通し)の披露が見込まれている。BofAは3機種のiPhone発表を予想し、シティは折りたたみ機の価格が2,000ドル超になるとの見方を示す(MacRumors)。
  • エヌビディア: 9月8日の取引で2.01%下落した。時価総額は世界首位を維持しているものの、AIハードウェア株とクラウド大手の値動きの乖離が弱気派の警戒材料として意識され始めている(Yahoo Finance)。
  • インテル: PC向けCPUを10月にも約10%値上げするとの報道と、証券会社ノースランド・セキュリティーズによる格上げ(目標株価120ドル)を受けて株価が9〜10%超上昇した(The Motley Fool)。
  • オラクル: 9月10日引け後に決算発表を予定。市場予想はEPS1.73ドル・売上高191.3億ドルで、前年比およそ28%の増収と四半期として過去最速の伸びとなる可能性がある一方、株価は52週高値から50%以上低い水準にとどまっている(Investing.com)。
  • アドビ: オラクルと同じ9月10日引け後に決算発表。市場予想はEPS6.07ドル・売上高66.9億ドルで、AIが実際の収益拡大につながっているかの証明が焦点となる「show-me」銘柄と位置づけられている(Investing.com)。

5. 金利・為替が株に効いた分

米10年債利回りは9月4日の強い雇用統計後の上昇基調を引き継ぎ、9月8日には「約20年ぶりの高水準に迫った」と報じられた。利回りの高止まりは、グロース株・高PER銘柄にとって相対的な逆風となり得る一方、金融株には追い風となり得る構図が続いている(Yahoo Finance)。為替では、日銀の追加利上げ観測やキャリートレードの巻き戻しを背景に円買いが優勢となり、ドル円は9月8日時点で1ドル=153円台後半まで下落(円高)し、2月以来の円高水準となった。前回(155円台後半〜156円台前半)から水準が切り上がっており、多国籍企業の海外収益の円換算額を目減りさせる方向に働く(Trading Economics)。ドル指数(DXY)も98.8台まで2営業日連続で低下しており、ドル安・円高の流れが強まっている(Trading Economics)。

6. テクニカル分析

S&P500

50日移動平均線(7,693.86ドル)をわずかに下回る一方、200日移動平均線(7,684.20ドル)近辺では下げ止まっており、短期的にやや弱含みの配置となっている。RSI(14日)は40.6まで低下し、中立圏からやや売られ気味の水準に近づいており、目先は下値を試しやすい地合いを示唆する(断定的な売買判断ではなく、あくまで目安)。直近の支持線はおよそ7,672ドル、レジスタンスはおよそ7,694ドル(Investing.com)。

ナスダック100

50日線(29,378.64ドル)・200日線(29,341.06ドル)をいずれも上回る配置を維持しており、3指数の中では最も底堅い。RSI(14日)は53.6で中立圏にあり、過熱感・売られすぎ感のいずれも見られない。支持線はおよそ29,504ドル、レジスタンスはおよそ29,597ドル(Investing.com)。

NYダウ

50日線(53,193.69ドル)・200日線(53,557.10ドル)をいずれも下回っており、200日線からはおよそ345ドル下に位置する。RSI(14日)は36.2まで低下し、売られすぎの水準に近づきつつある。3指数の中でテクニカル面の弱さが最も目立つ状態が続いている(Investing.com)。

センチメント指標(補助)

  • VIX(恐怖指数): 15.72(前日比+0.42、+2.75%)まで上昇したが、過去の平均的な水準からは大きく外れていない(Yahoo Finance)。
  • Fear & Greed Index: 直近ではおよそ42前後の「恐怖」ゾーンでの推移が続いているとみられる(CNN)。

7. 今夜の注目イベント

  • 米東部時間9月9日午後1時(日本時間10日午前2時)、アップルが新製品発表イベントを開催予定。iPhone18シリーズと同社初の折りたたみ型端末の発表が焦点となる(MacRumors)。
  • 9月10日引け後、オラクルとアドビが決算を発表予定。AIインフラ需要のキャッシュフローへの転化と、AIが既存事業の収益力を脅かしていないかが焦点となる(Investing.com)。
  • ホルムズ海峡を巡る米・イランの軍事的緊張、米・カナダの関税応酬は収束の兆しがなく、原油価格や株式センチメントへの影響が続く可能性がある(Yahoo Finance)。
  • 経済指標としては9月10日のPPI、9月11日のCPIが次の焦点。FRBは9月17日まで沈黙期間中で、高官発言は予定されていない。