前回からの変化
前回(2026-11-05、前日)との比較である。前回は米中間選挙後の暗号資産法案の見通しと、シュローダーのトークン化ファンドが中心だった。今回は、消費者向けの財布アプリへの採用と、大手銀行による標準づくりが加わり、相場は選挙後の反発から一転して下落した。
変わったこと(変化・新規)
- ビットコインは前回の80,086.67ドルから、日本時間6日5時ごろに約75,700ドルへ(約5.5%安)、イーサリアムは2,421.07ドルから約2,247ドルへ(約7.2%安)と反落した。出典と取得時刻が異なるため、差は目安である(The Block: 暗号資産の清算)
- 米国で、サムスンの財布アプリのUSDC口座が実際に使えるようになった。10月7日の発表から、本番運用に進んだ形である(The Block: サムスンウォレット)
- 米CFTCが認めた個別株の無期限先物について、連邦地裁の判事が「CFTCは権限を超えた可能性が高い」と指摘した。前回は新しい動きがなかった論点が動いた(Ledger Insights: 株式の無期限先物)
- 通貨監督庁(OCC)のジーニアス法の最終規則は、前回は「最終化待ち」だったが、今回の調査で10月21日に公表済みと分かった(二次情報で、一次情報は確認できていない)(Winston Taylor: OCCの最終規則)
昨日と同じこと(継続)
- バイナンスのハッキングは、前回に続き北朝鮮系のトレーダートレイターによるものとされ、盗まれた額は約63億ドルと報じられている(CoinDesk: トレーダートレイター)
- 運用会社がファンドの新しい株式クラスをブロックチェーン上で発行する流れは、前回のシュローダーに続き、今回のアムンディでも見られた
- 米国の暗号資産の法整備は、選挙結果を受けた不透明感が続いている。今回の調査では新しい審議の動きは確認できなかった
要因の連続性
- 継続要因: 伝統的な金融機関による資産のトークン化の拡大。バイナンスの流出事件が引き続き取引所の安全性の論点であること
- 新規要因: 米ハイテク・AI関連株の急落。ナスダックが約4.7%下げ、それにつれて暗号資産も下げた。同時に、消費者向けの財布アプリ(サムスン)という新しい採用の経路が加わった
- 解消した要因: 前回の上昇を支えた選挙結果の確定による不確実性の後退。出典によれば、その効果は短命だった
市況ひとこと
ビットコインは約75,700ドル(24時間で約6%安)、イーサリアムは約2,247ドル(同約7%安)だった。取得元はThe Blockで、日本時間6日5時ごろ(米東部時間5日15時11分)の値である。米国のナスダックが約4.7%下落し、S&P500とダウも約3%下げるなか、暗号資産も売られ、24時間の清算額は10.9億ドルを超えた(The Block: 暗号資産の清算)。
社会実装・インフラへの採用
サムスン: 財布アプリで米国向けにUSDC口座を開始
サムスン電子は、米国のギャラクシー利用者向けに、財布アプリ「サムスンウォレット」でステーブルコインのUSDC(米ドルに連動する暗号資産)の口座を5日に開始した。基盤はソラナで、口座の管理は認可を受けたカストディ事業者(顧客の資産を預かる事業者)のBastionが担い、再委託先としてコインベースが保管を行う。利用者は秘密鍵(資産を動かす鍵)を自分で管理せず、別の暗号資産アプリを入れる必要もない。段階は本番運用で、対象は約8200万台の対応端末だが、ニューヨーク州の居住者は除かれる。使われるのは暗号資産(USDC)そのものである(The Block: サムスンウォレット)。
大手5行が非営利団体GL1を設立
HSBC、JPモルガン、三菱UFJ、ソシエテ・ジェネラルのFORGE、スタンダードチャータードの5行は、トークン化した金融市場の共通の枠組みを作る非営利団体「GL1 Org」を設立した。もともとシンガポール金融管理局のもとで始まった取り組みで、当初の目標だった共有台帳(参加者が共同で使う記録の仕組み)の構築から、標準やルールづくりに重心を移している。段階は団体の設立で、市場インフラ事業者やフィンテック、政策担当者の参加も呼びかけている。暗号資産の発行ではなく、ブロックチェーン上の金融の標準づくりである(Ledger Insights: GL1)。
アムンディ: 欧州株指数ファンドにトークン化クラス
仏運用大手アムンディは、運用資産約228億ユーロの「Core STOXX Europe 600」指数ファンドに、ブロックチェーン上の株式クラスを加えた。基盤は公開のイーサリアムで、名義書換などの代理はCACEISが担う。同誌は、大型の欧州株指数ファンドとして初めてと伝える。購入できる投資家の範囲や手数料は出典から確認できなかった(Ledger Insights: アムンディ)。
中国とオマーン: デジタル通貨で協力の覚書
オマーン国王の訪中にあわせ、中国とオマーンは5年間で人民元300億元(約45億ドル)の通貨スワップ協定と、デジタル通貨・デジタル決済の協力に関する覚書を結んだ。段階は覚書で、オマーン側のCBDC(中央銀行デジタル通貨)は検討の初期段階にある。中国のデジタル人民元を使う二国間の決済になるとみられるが、複数の中央銀行が参加する「mBridge」への参加は明示されていない(Ledger Insights: 中国とオマーン)。
各国の法改正・規制
米国
個別株の無期限先物(CFTCの承認をめぐる訴訟)(段階: 仮差し止めの審理へ)。ニューヨーク南部地区連邦地裁のカプロニ判事は、4日、「無期限先物は株式を実際に受け渡さないので、証券先物には当たらず、スワップとして証券取引委員会の管轄になる」との見方を示し、CFTCが権限を超えた可能性が高いと述べた。ただし緊急の差し止めは、差し迫った損害がないとして認めなかった。事件はスコフィールド判事に移り、CFTCは今週金曜までに反対意見を提出する。カルシはクアルコムなど4銘柄の無期限先物を、最大約4.9倍のレバレッジで始め、24時間で約2300万ドルの取引があった(Ledger Insights: 株式の無期限先物)。
ステーブルコインの規則(ジーニアス法)(段階: 最終規則の公表済み、施行は2027年1月18日)。通貨監督庁(OCC)が10月21日に最終規則を公表し、準備資産、償還、保管、資本、監査などの枠組みを定めたとされる。前回は最終化が確認できなかったが、今回の調査で公表済みと分かった。ただし出典は法律事務所の解説で、一次情報(OCCの公表資料)は確認できていない(Winston Taylor: OCCの最終規則)。
日本・EU・その他
日本、EUのほか、他の主要国・地域の新しい制度の動きは、4日〜5日の出典から確認できなかった。
特集: 新しいビジネスの形
暗号資産の盗難を、ビットコイン建てで補償する保険
バイナンスの約63億ドルの流出事件で、取引所やカストディ事業者の盗難リスクが改めて意識されている。5日に資金調達を発表した保険会社ソーター・インシュアは、その損失を暗号資産のまま補償する事業を営む。
- 仕組み: ハッキング、盗難、ソフトウェアの故障による損失を補償する保険で、保険料の受け取りと保険金の支払いをビットコインやイーサで行える。自社の資産で最大500万ドル、200BTC、2000ETHまで補償し、それを超える分は他の保険会社と分担する。調達したビットコインやイーサは、同じ通貨建ての保険契約の原資に使われ、規制を受けたカストディ事業者の別口座にコールドストレージ(インターネットから切り離した保管)で置かれる(CoinDesk: ソーター)
- 誰がどう稼ぐのか: ソーターは保険料と、運用する暗号資産の資金を収益源にするとみられる(収益の内訳は出典に書かれていない)。保険に入る機関投資家は、保有資産を円やドルに換えずに、同じ通貨建てで備えられる点が利点である。出資者はギャラクシーが主導し、スタンダードチャータード傘下のベンチャー部門、SBIグループが加わった。今回のシリーズBは、現金2350万ドルとビットコイン500枚、イーサ2000枚を含め、合計約6600万ドルである
- 既存のやり方との違い: 従来の保険は法定通貨で保険料と保険金をやり取りする。暗号資産の価格が大きく動くなかで、補償額が価格の変動に左右される問題を、同じ通貨建てで揃えることで避ける。ただし、ビットコインの価格が下がれば、法定通貨で見た補償の額も目減りする
- 課題・リスク: 補償に上限があり、規模の大きい流出事件を単独では賄えない。バイナンスのように数十億ドル規模の事件が起きれば、再保険の引き受け手があるかが課題になる。保険の適用条件や免責の範囲は出典に書かれていない。バミューダの保険ライセンスに加え、ドバイ金融サービス機構の認可を最近得た
- 具体例: ソーター・インシュア(本拠はアブダビ。ロンドン、ニューヨーク、ドバイにも拠点)。スタンダードチャータードとSBIが出資したことは、銀行や金融グループが暗号資産の保管リスクの引き受けを事業として重く見ていることを示す
業界トピック
バイナンス流出事件: 実行グループの素性が整理される
コインデスクによれば、バイナンスの流出事件は約63億ドルと、2025年2月のバイビットの約15億ドルの4倍超にあたる史上最大の被害である。FBIや分析会社のチェイナリシスなどは、北朝鮮系のトレーダートレイター(ラザルス系の一派)の犯行と結論づけた。経緯は、9月にソフトウェア技術者が事業責任者を装う人物から面接を持ちかけられ、偽の面接で不正なコードをダウンロードしたことで社内システムに侵入された、というものである。北朝鮮側は金与正氏を通じて関与を否定している。チェイナリシスは、今回の盗難資金が9月のビットゲットの流出資金の流れとつながると指摘する。今回の調査では、回収額や凍結額の新しい数字は確認できなかった(CoinDesk: トレーダートレイター)。

