前回からの変化
前回(2026-11-04、前日)との比較である。前回は米CFTCの個別株の無期限先物の容認と、バイナンスのハッキングの経緯が中心だった。今回は、前回は確認できなかった米中間選挙の結果が加わった。
変わったこと(変化・新規)
- 前回は結果を確認できなかった米中間選挙で、民主党が上院と下院の両方を制した。暗号資産の法整備を進める法案の見通しが変わった(CoinDesk: Clarity Actの見通し)
- ビットコインは前回の76,995.40ドルから、4日の更新時点で80,086.67ドルへ(約4.0%高)、イーサリアムは2,261.87ドルから2,421.07ドルへ(約7.0%高)と反発した。出典と取得時刻が異なるため、差は目安である(CoinDesk: ライブ更新)
- シュローダーが、新興国債券ファンドのトークン化株式クラスを発行した。前回までの預金・MMF・株式の話題とは別の、債券の積極運用型ファンドの事例である(CoinDesk: シュローダー)
昨日と同じこと(継続)
- バイナンスのハッキングは、前回に続き北朝鮮系の関与とされ、盗まれた資金の洗浄が続いている。前回説明された凍結額は約28億5000万ドルで、今回も同額が示された(CoinDesk: ソーチェーン)
- 運用会社や金融機関が、債券やファンドなど既存の資産をブロックチェーンに載せる流れは、前回のユーレックスや、ティーゼロの上場計画から続いている
- 前回報じられたCFTCの個別株の無期限先物について、今回の調査では新しい動きは確認できなかった
要因の連続性
- 継続要因: 取引所の信頼とセキュリティが焦点であること。伝統的な金融機関が資産のトークン化を進めること
- 新規要因: 米議会の勢力図の変化。前回は「議会の構成次第」と据え置いた論点が、民主党の上下両院制覇で一つの答えに近づいた
- 解消した要因: 選挙結果の不確実性。前回は結果が分からず見方を据え置いていたが、結果が出て、この点は解消した
市況ひとこと
ビットコインは80,086.67ドル(24時間で2.93%高)、イーサリアムは2,421.07ドル(同5.62%高)だった。取得元はCoinDeskのライブ更新で、日本時間4日の更新時点の値である(正確な時刻は出典から確認できなかった)。民主党の勝利で夜間に急落し、ビットコインは4日の朝に7万6千ドル前後から始まったが、結果が明らかになって不確実性が薄れたことで反発した。イーサリアムの上げ幅は5%を超えた(CoinDesk: ライブ更新)。
社会実装・インフラへの採用
シュローダー: 新興国債券ファンドのトークン化株式をソラナで発行
英国の運用大手シュローダー(運用資産およそ1.1兆ドル)は、「シュローダー・インターナショナル・セレクション・ファンド 新興国債券」にオンチェーンの株式クラスを設け、ソラナ(高速な処理が特徴のブロックチェーン)上で発行した。トークン化の専門企業Centrifugeの基盤を使う。段階は、発行が始まった段階で、発表の時点では本番に近い運用とみられるが、規制上の枠組み、最低投資額、償還の方法は出典から確認できなかった(CoinDesk: シュローダー)。
使われるのはブロックチェーン技術であり、暗号資産(トークン)の価格に連動する商品ではない。トークンの価値は、元のファンドの純資産価値(NAV)に連動するという。
各国の法改正・規制
米国
クラリティ法案(暗号資産の市場構造法案)(段階: 審議が停滞。9月に手続き上の採決で否決済み)。民主党が上院と下院の多数を握ったことで、業界関係者は「現在の形のままでの成立は難しい」と見ている。CoinDeskによれば、暗号資産業界は選挙のロビー活動に約1億7050万ドルを使ったが、成果は限られた。今後は、民主党が公聴会などで、資金洗浄、サイバーセキュリティ、消費者保護の観点から暗号資産企業への監視を強める可能性がある。一方、下院の民主党議員70人超が過去にこの法案を支持しており、安全策を強めた超党派の法案が出る可能性を指摘する見方もある(CoinDesk: Clarity Actの見通し)。
ステーブルコインの規則(ジーニアス法)(段階: 規則の最終化待ち)。通貨監督庁(OCC)は、法定の期限だった7月18日を過ぎたあと、11月中の最終化をめざすと8月に報じられた。今回の調査では、4日時点の最終化は確認できなかった(The Block)。
日本・EU・その他
日本、EUのほか、他の主要国・地域の新しい制度の動きは、3日〜4日の出典から確認できなかった。
特集: 新しいビジネスの形
運用会社が既存ファンドに「オンチェーンの株式クラス」を足して売る
過去2週間の特集では、最初からオンチェーンで発行するファンド(10月28日)や、認可ディーラーが随時売買するファンド(10月26日)を扱った。今回は、既存の大型ファンドをそのまま残し、ブロックチェーン上の窓口だけを足す方式を扱う。
- 仕組み: シュローダーの新興国債券ファンドは、元のファンドに投資する「フィーダー(子)ファンド」を作り、その株式をトークンとして発行する。トークンの価値は元のファンドの純資産価値に連動する。運用は従来どおりで、変わるのは株式の配り方と保有の記録だけである(CoinDesk: シュローダー)
- 誰がどう稼ぐのか: 運用会社は従来の運用報酬を得るとみられる。Centrifugeは発行・管理の基盤を提供し、運用資産がおよそ7億5000万ドル規模だが、手数料の仕組みは出典に書かれていない。運用会社は新しい投資家層へ売り込める点が利点で、基盤会社は、ほかの運用会社の商品も載せるほど基盤の価値が上がる
- 既存のやり方との違い: 既存のファンドの運用体制をそのまま使い、新規にファンドを作る手間を省く。MMF(短期の安定運用)より変動の大きい新興国の債券という、リスクと収益の源が異なる商品まで広がった点が新しい。CoinDeskによれば、トークン化した実物資産の市場全体は約390億ドルで、MMFが約140億ドルを占める
- 課題・リスク: 買えるのが誰か、いつ換金できるかは出典に明記されていない。債券市場が荒れた際の換金のしやすさは、ブロックチェーンだけでは解決しない
- 具体例: シュローダーとCentrifugeのほか、同じ基盤でニューヨーク・ライフ・インベストメンツの高利回り債ファンドもソラナで提供されている
業界トピック
バイナンス流出事件: 北朝鮮系が資金洗浄を再開
北朝鮮系の攻撃者「トレーダートレイター」は、バイナンスから盗んだ資金のうち、ソラナのトークンを複数の財布に分け、ステーブルコインのUSDCに替え、イーサリアムへ移したうえで、ソーチェーン(口座登録なしで異なるブロックチェーン同士の資産を交換できる分散型取引所)でビットコインに替えている。ビットコインやイーサリアムに替えると、発行会社が凍結できるステーブルコインの手段を避けられる。4日時点で、ソーチェーンでは約4830万ドルが交換され、約4270万ドルが受け取られた(約12パーセントが手数料や価格のずれで減った)。現金化された額はわずかとみられる。バイナンスは約28億5000万ドルを凍結し、補填は流出分の約98パーセントと説明している。ソーチェーンのトークンは24時間で約10パーセント上昇した(CoinDesk: ソーチェーン)。

