前回からの変化

前回(2026-10-31、前日)との比較である。前回は、バイナンスの流出事件の発生直後の状況と、欧州中央銀行のデジタルユーロの動きが中心だった。今回はその続報に加え、銀行のトークン化預金の試験と、上場前企業の先物を扱う。

変わったこと(変化・新規)

  • バイナンスの流出事件は、発生直後の状況から補填の進み具合に論点が移った。CoinDeskの見出しは、流出した資産の9割を補填したと伝える。攻撃者がビットコイン1万8270枚(約14億ドル)を19のウォレットに分けたという前回の情報も、同じ見出し一覧に残っている(CoinDesk)
  • ビットコインは、前回の76,838.60ドルから77,523.17ドルへ(684.57ドル高、0.9%高)、イーサリアムは2,236.80ドルから2,253.29ドルへ(16.49ドル高、0.7%高)と、ともに小幅に上がった。取得時刻は前回と異なる(CoinDesk)
  • 前回は欧州の中央銀行の動きが中心だったが、今回は民間銀行の動きとして、HSBCのトークン化預金の試験を取り上げる(Ledger Insights)
  • 前回確認できなかった英国とタイの動きが、CoinDeskの見出しとして出ている。いずれも見出しのみの確認である

昨日と同じこと(継続)

  • 銀行や市場インフラが既存業務に台帳技術を組み込む流れは続く。今回のHSBCの試験も、許可制の台帳と公開ブロックチェーンを組み合わせる点で、前回の欧州中央銀行の動きと同じ路線にある
  • 前回の特集で扱ったICEとCMEの無期限先物をめぐる裁判の続報は、今回確認した範囲では見つかっていない

要因の連続性

  • 継続要因: バイナンスの流出事件を受けた、取引所の保管体制への関心。北朝鮮系の関与が疑われている点も前回と同じである
  • 新規要因: 補填が9割まで進んだと報じられ、顧客の資産が守られるかの焦点が、出金の再開と準備金の証明に移った
  • 解消した要因: 前回「ほかの侵入経路も見つかった」とされた点について、今回は新しい情報を確認できなかった

市況ひとこと

ビットコインは77,523.17ドルで24時間では0.90パーセント高、イーサリアムは2,253.29ドルで0.73パーセント高だった。数値は11月1日朝(日本時間)にCoinDeskの表示値で確認したもので、いずれも5パーセント未満の変動である(CoinDesk)。

社会実装・インフラへの採用

HSBCのトークン化預金で、トークン化ファンドに投資する試験

  • 誰が・何を: 英国の大手銀行HSBCが、顧客企業のトークン化預金(銀行預金を台帳上のトークンとして扱う仕組み)を使い、フランクリン・テンプルトンのトークン化されたマネー・マーケット・ファンド(MMF)に投資する取引を、Ant Internationalの決済基盤「WhaleRTP」を通じて行った
  • 技術: HSBCのトークン化預金は許可制の台帳で動く。ファンドのトークンはフランクリン・テンプルトンの「ベンジ」基盤が公開ブロックチェーン上で発行する。WhaleRTPが両者をつなぐ役を担うとされる
  • 段階: HSBCは「初めての取引」と位置づけており、パイロット(限定的な本番)の段階と考えられる。開始時期や商用化の予定は確認できなかった
  • 規模: 取引金額は確認できなかった
  • 暗号資産(トークン)そのものが使われるのか: 預金トークンとファンドのトークンが使われる。民間の暗号資産は明示されていない
  • 仕組みの狙い: 通常のMMFは、午後早くの締め切りがあり、決済も同日がせいぜいである。申し込みと解約が24時間可能になれば、余った資金が必要になる直前まで運用でき、預金トークンが即時の出入口になる(Ledger Insights)

CoinDeskの見出しは、ウーバーがHSBCやフランクリン・テンプルトンと組んで資金管理のトークン化を試すと伝える。上記の取引とウーバーの試験が同じ案件か、別の案件かは、見出しのみの確認で、特定できなかった。記事の公開日も確認できていない(CoinDesk)。

各国の法改正・規制

英国

  • 段階: CoinDeskの見出しは、HTXが英国の金融行動監視機構(FCA)との和解を受けて英国から撤退すると伝える。FCAは、無登録で英国の消費者に暗号資産のサービスを宣伝したとしてHTXを提訴しており、両者は和解の協議を続けていた(Decrypt: FCA, HTX in settlement talks)
  • 影響する人: 英国の利用者と、英国の消費者向けに宣伝する海外の取引所。見出しのみの確認で、和解の条件は確認できていない

タイ

  • 段階: CoinDeskの見出しは、窃盗の有罪判決の中で、タイの裁判所がビットコインを財産として扱ったと伝える。見出しのみの確認である

米国・EU・日本

  • 今回確認できた範囲で、新しい法改正や当局の規則の動きは見つかっていない

特集: 新しいビジネスの形

上場前の企業の評価額に賭ける先物

直近2週間の特集は、国債のレポ、送金の事前積み立て、協調融資の共通台帳、デジタル国債、AIエージェント決済、ステーブルコインの報酬、利息付きトークン化預金、トークン化ファンドの随時売買、証券保管機関のトークン化、無期限先物などだった。昨日の特集は、規制された取引所での無期限先物だった。今回の上場前企業の先物は、同じ「無期限先物」の仕組みを別の対象に使うもので、続報として扱う。

  • 仕組み: 暗号資産の取引所が、まだ上場していない企業の評価額に連動する無期限先物(満期のない先物)を提供している。実際の株式は動かない。価格は外部のデータ提供者(オラクル)がつくる指数にもとづいて決まる合成的な契約である(Crypto Briefing)
  • 誰がどう稼ぐのか: 取引所は手数料を得る。バイナンスは、アンソロピックの上場前契約を最大20倍のレバレッジ(自己資金の何倍もの額で取引する仕組み)で上場した。取引者は、上場前に評価額の上下を取引できる。バイナンスの調査部門は、契約を裏づける実際の株式は不要で、取引者は互いに反対の持ち高を持つ関係になると説明している(CryptoSlate)
  • 既存のやり方との違い: 上場前の株式は、通常は機関投資家や従業員しか持てない。この契約は暗号資産の口座があれば、少額から評価額に賭けられる点が変わる。反面、株式の保有権はなく、実際の株式が手に入るわけではない
  • 課題・リスク: Crypto Briefingによると、契約が示す評価額は約1.8兆ドルで、5月の直近の資金調達時の評価額9650億ドルを88%上回る。取引額は約8000万ドルと報じられている(CryptoSlate)。評価額は実際の上場価格を保証するものではなく、レバレッジの高さから急な下落時の強制清算も起こりうる。各国の規制上の位置づけは、確認できていない
  • 具体例: バイナンス、コインベース、クラーケンが、上場前企業の無期限先物を提供している(Crypto Briefing)。CoinDeskの見出しは、31日にも同種の契約へのレバレッジ取引が増えていると伝える。見出しのみの確認である

業界トピック

バイナンスの流出事件の続報

  • 補填: CoinDeskの見出しは、バイナンスが流出分の約9割を補填したと伝える。前回の報道では、会社資金63億4000万ドル超とユーザー向け緊急基金(SAFU)で顧客残高を1対1で戻す方針だった(CoinDesk、Decrypt)
  • 出金の再開: バイナンスは、安全確認のため止めている出金を、11月1日(日)の再開を目標としていると前回の報道で伝えられた。準備金の完全な証明は、月曜日(11月2日)に公表する予定とされた。今回、再開が実際に行われたかは確認できていない(Decrypt)
  • 攻撃者の動き: 約1万8270枚のビットコイン(約14億ドル)が19のウォレットに分けられたと報じられている。北朝鮮のハッカー集団ラザルスの関与は、分析会社の見立てで、公式な認定ではない(CoinDesk)

その他

  • CoinDeskの見出しは、取引所KuCoinがロシアとベラルーシから撤退すると伝える。いずれも見出しのみの確認である