前回からの変化

前回(2026-11-01、前日)との比較である。前回は、バイナンスの補填が「約9割」と報じられ、出金は1日の再開を目標としていた段階だった。今回は、その再開が実際に始まった。社会実装の案件は、1日〜2日の出典から一次情報まで確認できたものは見当たらなかったため、法改正と特集の比重を高めた。

変わったこと(変化・新規)

  • バイナンスの出金が1日に再開された。前回は「再開を目標」だったが、グリニッジ標準時の午前6時から9時までの最初の枠でビットコインなどの出金が動き出した。補填の割合も約9割から、会社の資金で95%を補ったとの説明に進んだ(CoinDesk、Forbes)
  • 米国の規則の中身が分かった。OCCの最終規則は、準備資産の流動性の下限を提案時の10%から5%に緩めた(Reed Smith)
  • ビットコインは、前回の77,523.17ドルから77,846.41ドルへ(323.24ドル高、0.4%高)、イーサリアムは2,253.29ドルから2,263.14ドルへ(9.85ドル高、0.4%高)と、ともに小幅に上がった(CoinDesk)

昨日と同じこと(継続)

  • バイナンスのハッキングを北朝鮮に結びつける見方は続いている。ブロックチェーン分析会社は「TraderTraitor」と呼ばれる北朝鮮系の組織によるものとし、米連邦捜査局(FBI)も北朝鮮の関与を確認したと報じられている(前回は「ラザルス」と整理されていた。CoinDesk)
  • 銀行によるトークン化預金の取り組みは、前回のHSBCの試験から続く動きである

要因の連続性

  • 継続要因: 大型のハッキングを受けた取引所の信頼回復が焦点であることと、銀行がトークン化預金に取り組む流れは前回から変わらない
  • 新規要因: 米国でステーブルコインの具体的な規則(準備資産・償還・自己資本)が確定した。DeFi(分散型金融)では、トークン化ビットコインtBTCの発行・償還停止が起きた
  • 解消した要因: 前回の「出金再開は目標」という不確実性は、再開が始まったことで後退した。ただし、段階的な再開で全ての資産が戻ったわけではない

市況ひとこと

ビットコインは77,846.41ドル(24時間で0.27%高)、イーサリアムは2,263.14ドル(同0.35%高)だった。取得元はCoinDeskのトップページで、日本時間の2日朝に確認した値である。24時間の変動は±5%に満たないため、理由は付さない(CoinDesk)。

社会実装・インフラへの採用

前日〜実行時点に、一次情報(当局・決済機関・企業の公式発表)まで確認できた新しい採用案件は見当たらなかった。Ledger Insightsの見出しに出ていたのは、ECBのデジタルユーロの通信事業者選定など、前回までに紹介した案件が中心だった(Ledger Insights)。

各国の法改正・規制

米国

OCCのステーブルコイン最終規則(段階: 公表済み・2027年1月18日施行)。OCCは10月21日、GENIUS法(ステーブルコインを連邦レベルで規制する法律)に基づく最終規則を公表した。

  • 準備資産は1対1で保有する。現金、FRBの預け金、満期93日以内の米国債、政府系の短期金融ファンドが認められる(Reed Smith)
  • 毎日の流動性の下限は5%(提案時は10%)、1つの取引相手への集中は準備の40%までとした(同上)
  • 償還は、手続き完了後2営業日以内に額面どおり行う。償還の請求が発行残高の10%を超えたら、24時間以内にOCCへ通知する(同上)
  • ステーブルコインの保有者への利息・利回りの支払いは禁止のままだが、関連会社を通じた支払いを違反と推定する規定は削除された(同上)
  • 影響を受けるのは、無保険の国法銀行(信託銀行を含む)、外国の発行体、連邦の認可を求める非銀行などである(同上)

CLARITY法(暗号資産市場構造法案。段階: 審議が停滞)。上院は9月15日の手続き採決で賛成49、反対50となり、審議を進めるのに必要な60票に届かなかった。リップルのガーリングハウスCEOは「この結果は痛い」と述べた。成立はしておらず、3日の中間選挙後の動きが焦点になる(The Block)。

EU

無認可ステーブルコインの扱い(段階: 運用)。欧州証券市場監督局(ESMA)が、無認可の電子マネートークンを欧州の事業者が保管することなどを止める措置を、最近取った(記事の「earlier this month」にもとづき、時期の詳細は未確認)。USDTはすでに欧州の取引所の取引の組み合わせから外れ、MiCA(暗号資産市場規則)に適合したUSDCに置き換わっている。テザーはブリュッセルで欧州の規制担当者を募集しており、欧州への参入の道を探っているとみられる。措置の詳細は有料記事の範囲のため、確認できていない(Ledger Insights)。

日本・その他

日本や他の主要国・地域の新しい制度の動きは、1日〜2日の出典から確認できなかった。

特集: 新しいビジネスの形

利息を付けられるトークン化預金と、付けられないステーブルコイン

仕組み: トークン化預金は、銀行の預金残高を、ブロックチェーン上の「トークン」で表したものである。持ち主と銀行の預金関係はそのままで、送金の記録をチェーン上で動かす。ステーブルコインは、発行体が準備資産を持ち、1枚あたり1ドルなどで償還を約束する別の仕組みで、預金ではない(The Digital Banker)。

誰がどう稼ぐのか: OCCの最終規則は、トークン化預金を「支払い用ステーブルコイン」の定義から外した。そのため預金には、ステーブルコインに課される「保有への利息の禁止」が及ばない。銀行は、預金金利を付けたままチェーン上の決済に参加できる。顧客を預金口座につなぎとめつつ、決済手数料を得られるのが利点である(Reed Smith、The Digital Banker)。

既存のやり方との違い: 従来の銀行間送金は、営業時間や決済の締め時間に縛られる。トークン化預金は、記録の書き換えだけで、機関どうしの預金移動を行える設計である。担保や証拠金の移動を速くする用途から始まっている。

課題・リスク: 規制上の線引きが焦点である。OCCは、取引所や仲介業者が出す報酬の仕組みに明確な答えを示さず、個別に審査するとした。ステーブルコイン側の事業者には、競争条件の不確実性が残る(同上)。銀行どうしの相互運用がそろうまでは、利用範囲が限られる。

事例: BNYは2026年1月に、機関投資家向けのトークン化預金サービスを始めた。既存の預金残高をチェーン上で表し、まず担保と証拠金の管理に使う。JPモルガン、バンク・オブ・アメリカ、シティグループ、ウェルズ・ファーゴも開発を進めている。銀行間の共有ネットワークはThe Clearing Houseが運営し、2027年前半に始まる可能性がある(同上)。段階はBNYが本番運用、共有ネットワークは構想から試験である。

業界トピック

バイナンスの流出事件の続報

バイナンスは1日、ビットコイン、イーサリアム、XRP、ドージコインなど15の資産の出金から、段階的に再開した。流出した約63億ドルの約95%を、自社の資金で買い戻したトークンで補った。原資は、利用者保護基金SAFUの10億ドル、先物の保険基金の一部、会社の資金である。残る約5%は、上位10銘柄より流動性の低いトークンで、市場や相対取引で調達している(Reuters(Investing.com)、CoinDesk)。

流出分のうち約30億ドルは、金曜時点で凍結できた。多くはUSDTとUSDCで、発行体が凍結できる性質がある。ビットコインとイーサリアムは同じ方法では凍結できない(同上)。

トークン化ビットコインtBTCの発行・償還停止

Threshold Networkは10月31日、公表していないセキュリティ上の問題を理由に、tBTCの発行とビットコインへの償還を止めた。これを受け、DeFiの貸付サービスAaveは、イーサリアムのコア市場でtBTCの新規預け入れと担保借り入れを制限した。Aaveに預けられたtBTCは約1760枚(約1億3660万ドル)で、流通量の約42%にあたる。同ネットワークは「資金は失われておらず、全額が裏付けられている」と説明した。再開の時期は公表されていない(CryptoSlate)。

その他

CoinDeskの見出しは、研究者がAIエージェントに暗号資産の支出上限を回避させることに成功したと伝える。詳細は見出しのみの確認で、本文は確認できていない(CoinDesk)。