前回からの変化

前回(2026-11-03、前日)との比較である。前回は香港の24時間決済とバイナンスの出金再開が中心だった。今回は、米国の規制の新しい動きと、ハッキングの原因の説明が加わった。

変わったこと(変化・新規)

  • バイナンスのハッキングの経緯が初めて詳しく示された。9月に偽の採用面接で技術者のパソコンが感染し、10月20日に社内の別の端末へ広がり、10月29日に資金が動き出した(CoinDesk)。前回は北朝鮮系の攻撃との見立てまでだった
  • 凍結額は、前回の「11億ドル超」(サークル分)から、全体で約28億5000万ドルへと示された。補填は流出分のおよそ98パーセントと説明されている(同上)
  • 米CFTCが個別株の無期限先物を認めた。前回の週間予定には入っていなかった新規の材料である(CoinDesk)
  • ビットコインは77,750.64ドルから76,995.40ドルへ(0.97%安)、イーサリアムは2,281.82ドルから2,261.87ドルへ(0.9%安)と、小幅に下がった(Fortune)

昨日と同じこと(継続)

  • バイナンスのハッキングを北朝鮮系が実行したとする見方は前回から続く。FBIも同じ見立てだと同社は説明している(CoinDesk)
  • 銀行や市場インフラが、ブロックチェーン上の資産を既存の仕組みに組み込む流れは続いている。ケニアの暗号資産事業者の移行期限は、前回お伝えしたとおり本日4日である
  • 米国の暗号資産の法整備が議会の構成次第であるという構図は、3日の中間選挙の結果を確認できておらず、前回のまま据え置く

要因の連続性

  • 継続要因: 取引所の信頼回復と、セキュリティ強化が焦点であること
  • 新規要因: 米当局が株式にも無期限先物を認め、暗号資産の取引手法が伝統的な市場へ広がる動き。ハッキングの原因が偽の採用面接だったと分かり、人の採用過程が攻撃経路になる点が加わった
  • 解消した要因: なし

市況ひとこと

ビットコインは76,995.40ドル(24時間で0.97%安)、イーサリアムは2,261.87ドルだった。取得時点は米東部時間3日午前6時45分(日本時間3日午後8時45分)で、取得元はFortuneである。24時間の変動は±5%に満たないため、理由は付さない(Fortune)。

社会実装・インフラへの採用

ユーレックス: デジタル債を清算の担保とレポ取引の対象に

欧州の清算機関ユーレックス・クリアリングは、欧州安定メカニズム(ESM)が10月26日に発行した10億ユーロのデジタル債を、レポ取引(債券を担保にした短期の資金取引)の担保の一部と、清算のための証拠金の担保として使えるようにすると発表した。同社は、従来型の清算機関として初めて、従来の証券とデジタル証券を併せて扱うと説明している(Ledger Insights)。

段階は、受け入れの体制が整った段階である。債券はクリアストリームの分散台帳「D7」で作られ、ドイツ連銀らと連携して中央銀行マネーで決済された。発行後は従来の決済システムに移り、売買や利払いは通常どおり行われる。使われるのはブロックチェーン技術であり、暗号資産(仮想通貨)の相場とは関係しない。ユーレックスの発表日は出典から確認できなかった。債券の発行自体は前回までの特集で扱い済みで、今回は担保として使える範囲の続報である(Clearstream)。

各国の法改正・規制

米国

無期限先物の株式への拡大(段階: 当局の方針表明。実施日は未定)。CFTCのマイケル・セリグ委員長は3日、個別株を対象にした無期限先物(満期のない先物。暗号資産の取引で普及した)を、既存の証券先物の規則の下にあるものとして、米国の登録取引所で扱えると示した。CFTCと証券取引委員会(SEC)が共同で監督する。委員長は、投資家が海外の無登録の取引所に流れるのを防ぐ狙いだと述べた。どの取引所がどの銘柄で始めるかは、公表されていない(CoinDesk)。

トークン化株式の取引計画(段階: SECへの申請後、発行企業の異議申立て期間中)。OKXとニューヨーク証券取引所の親会社ICEが10月5日にSECへ申請した、約60銘柄のトークン化株式の取引計画に、発行企業の異議が積み上がっている。10月24日時点の異議は26社だった。3日にはアマゾン、テスラ、スペースXも異議を出したと伝えられているが、本文は確認できておらず、見出しの確認にとどまる(Cointelegraph)。

日本・EU・その他

日本、EUのほか、他の主要国・地域の新しい制度の動きは、2日〜3日の出典から確認できなかった。

特集: 新しいビジネスの形

証券のトークン化を専業で担う企業が、SPAC合併で上場をめざす

これまでの特集は、トークン化預金、ファンド、株式の保管、国債担保、無期限先物などだった。今回は、それらを支える基盤を売る専業企業の資金調達の形を扱う。

  • 仕組み: tZEROは、ブロックチェーン上の証券の取引、証券会社業務、保管、名義書換の代行を、規制を受けた子会社で一括して提供する。2014年から事業を行い、関連特許は100件を超える。ICE(ニューヨーク証券取引所の親会社)が出資しており、NYSEのトークン化証券の取引基盤で設計面のパートナーに選ばれた(CoinDesk)
  • 誰がどう稼ぐのか: 収益源は、取引・保管・名義書換などの手数料である。今回の合併相手は、買収目的の上場会社(SPAC)のFG Imperiiで、tZEROの評価額は3億5000万ドル。信託口座から最大2億3100万ドルの資金が入りうるが、株主の償還請求次第で減る。合併後はNYSE Americanに「TZRO」で2027年初めに上場する計画である(同上)
  • 既存のやり方との違い: 証券会社や取引所が自前でトークン化の仕組みを作る代わりに、規制対応済みの基盤を借りて始められる。市場全体の見通しとして、シティはトークン化証券が2030年に5.5兆ドルに達しうると試算している(同上)
  • 課題・リスク: 合併は株主と規制当局の承認待ちで、完了は2027年初めの見込みである。SPACは償還で調達額が減りやすい。ライバルのセキュリタイズとは特許をめぐって係争中である。収益の規模や黒字化の時期は出典で確認できなかった
  • 具体例: tZERO、ICE。tZEROはトークンを発行する会社ではなく、証券のトークン化の基盤を提供する会社で、特定の暗号資産が値上がりする話ではない

業界トピック

バイナンス流出事件: 攻撃の経緯が判明

バイナンスは、6月に技術者が改ざんされた開発用パッケージを入れた問題に始まり、9月に別の技術者へ偽の採用担当者が接触したと説明した。2回目の面接では、課題のプログラムを仕事用のパソコンへ取り込むよう指示され、これに未知の脆弱性を突くマルウェアが仕込まれていた。10月20日に攻撃者は社内の人工知能ツールを使い、ウォレット担当の技術者2人の端末へ到達し、29日の協定世界時20時5分ごろに資金が動き出した。封じ込めは30日の0時10分である。攻撃にはイーサリアムの機能「EIP-7702」が悪用された。リチャード・テン最高経営責任者は「何か月もかけた作戦だった」と述べ、独立した専門家による検証を受け入れる。今年は北朝鮮系とみられる57件の試みを防いだという(CoinDesk)。

韓国大統領、サイバー安全保障の司令塔を検討

韓国の大統領は、バイナンスの事件を受け、金融と国家をまたぐサイバーセキュリティの責任者を置く必要があると述べたと伝えられている。ただし本文は確認できておらず、見出しの確認にとどまる(CoinDesk)。