前回からの変化

前回(2026-11-02、前日)との比較である。前回はバイナンスの出金再開と米国のステーブルコイン規則が中心だった。今回は、その続報と、新しい社会実装の案件が加わった。

変わったこと(変化・新規)

  • バイナンスの出金再開の結果が出た。再開初日の出金は46億5000万ドル、入金は10億1000万ドルで、差し引き36億4000万ドルの純流出となった。総資産1710億ドルの2.1%にあたる。流出の大半は再開直後の数時間に集中した(CNBC)
  • 凍結の規模が広がった。サークルが凍結したUSDCは、前回報じられた約8億ドルから11億ドル超に増えた(同上)
  • 前回は「社会実装で一次情報まで確認できた案件はなかった」が、今回は香港金融管理局の発表と、OnePayの新サービスが加わった
  • ビットコインは77,846.41ドルから77,750.64ドルへ(0.1%安)、イーサリアムは2,263.14ドルから2,281.82ドルへ(0.8%高)と、ほぼ横ばいだった(Fortune)

昨日と同じこと(継続)

  • バイナンスのハッキングを、FBIが北朝鮮系の「TraderTraitor」によるものと見ている点は前回から続く(CNBC)
  • 銀行が預金やステーブルコインをブロックチェーン上で使い始める流れは、前回のトークン化預金の特集から続く

要因の連続性

  • 継続要因: 取引所の信頼回復が焦点であること。米国の暗号資産の法整備(CLARITY法)は、中間選挙後の議会の構成が焦点である点も変わらない
  • 新規要因: 香港が中央銀行主導の基盤でステーブルコインを試験に加える方針を示した。ケニアで移行期限が4日に迫っている
  • 解消した要因: 出金再開の初日に大規模な流出が起きるかという不確実性は、36億4000万ドルの純流出で一巡した

市況ひとこと

ビットコインは77,750.64ドル(24時間で0.13%安)、イーサリアムは2,281.82ドルだった。取得時点は米東部時間2日午前6時30分(日本時間2日午後8時30分)で、取得元はFortuneである。24時間の変動は±5%に満たないため、理由は付さない(Fortune)。

社会実装・インフラへの採用

香港金融管理局: トークン化取引の24時間決済(EnsembleTX)

誰が・何に: 香港金融管理局(HKMA)が、香港フィンテック週間の初日の2日、プロジェクト「EnsembleTX」を新しい段階に進めたと発表した。銀行が、従来の営業時間外にも、トークン化された資産の取引や資金の移動を実取引として決済できるようにする。2024年8月に試験環境で始まり、2025年11月に実取引の試験段階へ移ってきた(crypto.news)。

段階・規模: 実取引の試験(パイロット)の延長である。認定ディーラーが、トークン化された為替基金証券(HKMAが発行する短期債)の流通市場での取引試験を終えた。次の試験では、規制対象のステーブルコインを加え、レポ取引(債券を担保にした短期の資金取引)も扱う予定だが、開始時期は公表されていない。参加する銀行などの数は、報道により異なり確認できなかった。HKMAのエディ・ユー(余偉文)総裁は、フィンテックで成長機会を生かせる位置にあると述べた(TokenPost)。

トークンの使われ方: 決済に使われるのは、デジタル化されたお金の表現(トークン化預金など)と、トークン化された債券である。暗号資産(仮想通貨)の相場とは直接関係しない。

HSBC: 香港ドルのステーブルコインの利用

HSBCのジョルジュ・エルヘデリーCEOは同じ会議で、10月23日に始めた香港ドルのステーブルコインが、決済アプリ「PayMe」を通じて、開始から約5万人に使われたと述べた(段階: 本番運用。crypto.news)。

OnePay: USDCを銀行口座の残高に入れる

米国のウォルマート系フィンテック「OnePay」は、10月30日、USDC(米ドルに連動するステーブルコイン)を外部のウォレットや取引所から自分の当座口座へ送ると、自動でドルに両替される機能を、一部の米国の利用者向けに始めた。技術基盤はStripe傘下のBridgeで、12のブロックチェーン(Tempo、Base、Solana、イーサリアムなど)に対応する。段階は限定提供(パイロット)で、開始時点では両替手数料は取らないという(Cryptobriefing、KuCoin News)。

各国の法改正・規制

ケニア

仮想資産サービス提供者法(VASP法)(段階: 施行済み・既存事業者の移行期限が4日)。同法は2025年11月4日に施行され、すでに営業している事業者には1年の猶予が与えられた。期限は2026年11月4日である。2026年7月22日には財務省が関連の規則を官報で公表した。ケニア中央銀行がウォレットや決済、ステーブルコインの発行者を、資本市場庁が取引所、ブローカー、トークン化の事業者を監督する。猶予の終了後は、免許のない事業者は営業できなくなる(Data Protection Digest、TL Advocates)。

米国

CLARITY法(暗号資産市場構造法案。段階: 審議が停滞)。9月15日の上院の手続き採決で否決されたあとの動きは、3日の中間選挙で議会の構成がどうなるかに左右される(CoinDeskは、議会の主導権が暗号資産の立法を左右しうる、と週間見通しで伝えた。CoinDesk)。

日本・EU・その他

日本、EUのほか、他の主要国・地域の新しい制度の動きは、1日〜2日の出典から確認できなかった。

特集: 新しいビジネスの形

外部のステーブルコインを、そのまま銀行口座の残高にする入金口

直近2週間の特集は、トークン化預金、ファンド、株式、国債担保、無期限先物、上場前企業の先物、ステーブルコインの報酬などだった。今回は、ステーブルコインを銀行口座へ入れる「入口」を扱う。

  • 仕組み: 利用者は、OnePayのアプリで専用のUSDC受取アドレスを作り、外部のウォレットや取引所からそこへUSDCを送る。Stripe傘下のBridgeがアドレスの生成、法令順守の確認、ドルへの両替を担い、数分のうちに口座の残高に反映される(Cryptobriefing)
  • 誰がどう稼ぐのか: 現時点では両替手数料は無料で、収益源は公表されていない。OnePayには預金が集まり、口座を主に使ってもらえる利点がある。Bridgeにとっては、ステーブルコインの両替と送金の基盤を、消費者向けアプリの業者に貸す事業になる。手数料の取り分は確認できず、ここから先は見方である
  • 既存のやり方との違い: 暗号資産の取引所で売って銀行へ出金する手順を、アプリの中だけで済ませる。フリーランスや、USDCで報酬を受ける人には、取引所の口座や出金の待ち時間を避けられる利点がある
  • 課題・リスク: 提供は一部の利用者に限られ、上限額や銀行側の提携先は報道で確認できなかった。無料の期間が終わったあとの手数料も未定である。USDCを受けるだけで、利用者が暗号資産を保有し続ける仕組みではない
  • 具体例: OnePay、Stripe(Bridge)、USDCを発行するサークル。OnePayは2025年1月にビットコインとイーサリアムの取引を始め、2026年4月にはTempoと提携していた

業界トピック

バイナンス流出事件の続報

バイナンスは、出金の再開について、約63億ドルの流出のうち約95%を補填し、残る約5%は流動性の低いトークンだと説明している。創業者のチャンポン・ジャオ氏は「98%の利用者が残った」と述べた。「信頼は良いときの言葉ではなく、苦しいときの行動で得られる」とも語った(CNBC)。純流出は、総資産の2.1%にとどまった。ビットコインは、週末を通じて7万7000〜7万8000ドルの範囲を保った(CoinDesk)。

今週の主な予定

3日が米中間選挙、4日がケニアの移行期限、5日がBOEの政策金利発表とZcashの更新、6日が米雇用統計である。ムンバイでは3〜6日に開発者会議「Devcon 8」が開かれる(CoinDesk)。