前回からの変化

前回(2026-10-30、前日)との比較である。

変わったこと(変化・新規)

  • 前回は台帳技術の採用が中心で、セキュリティ事件はポリマーケットの取引停止などの見出し確認にとどまっていた。今回は、取引所バイナンスの巨額流出が最大の話題になった(CoinDesk: Binance arranges $6.34 billion)
  • 前回は米国と英国の動きが中心だった。今回は欧州中央銀行が、デジタルユーロの通信網の事業者選定と、トークン化預金・証券の作業部会の設置を示した(Ledger Insights: ECB picks Nexi and Telefónica)
  • ビットコインは前回の78,746.55ドルから76,838.60ドルへ(1,907.95ドル安、2.4%安)、イーサリアムは2,259.93ドルから2,236.80ドルへ(23.13ドル安、1.0%安)と、ともに下落した。取得時刻は前回と異なる(CoinDesk: Bitcoin price today、CoinDesk)
  • 前回取り上げたゴールドマン・サックスの1Source参加と、イングランド銀行のトークン化担保の意見募集は、今回確認した範囲で新しい動きは見つかっていない(続報なし)

昨日と同じこと(継続)

  • 銀行や市場インフラが既存業務に台帳技術を組み込む流れは続く。ECBの動きは、許可制の台帳や中央銀行マネーと組み合わせる点で前回と同じ路線である
  • CoinDeskの見出しによると、前回触れたICEとハイパーリキッド系の無期限先物の話題が、今回は具体的な発表に進んだ

要因の連続性

  • 継続要因: 当局の枠組みの中で、金融機関や中央銀行が台帳技術を採用していく構図
  • 新規要因: 取引所の保管体制という民間側の弱点が露呈した。流出額が過去最大となり、業界全体のセキュリティ基準が議論の的になった
  • 解消した要因: なし

市況ひとこと

ビットコインは76,838.60ドルで24時間では2.49パーセント安、イーサリアムは2,236.80ドルで1.51パーセント安だった。数値は10月31日朝(日本時間)に価格サイトで確認した表示値で、いずれも5パーセント未満の変動である。CoinDeskは、バイナンスの流出事件を受けた売りと、約15.7億ドルの強制清算が重なったと伝える(CoinDesk: Bitcoin price today、CoinDesk)。

社会実装・インフラへの採用

欧州中央銀行、デジタルユーロの通信網の事業者に2陣営を選定

  • 誰が・何を: 欧州中央銀行(ECB)が、デジタルユーロ(CBDC、中央銀行が発行する電子的な通貨)の通信網を運営する事業者として、イタリアの決済会社Nexiとドイツテレコムの陣営、スペインのテレフォニカとインドラの陣営を選んだ
  • 技術: 銀行や決済事業者がデジタルユーロを扱うために接続する通信網である。どちらの事業者にもつなげる二重の構成で、既存のユーロ圏の決済インフラと同じ考え方
  • 段階: パイロット(試験運用)の段階。最初の契約は2025年9月28日で、2社目は2027年5月に始まる。デジタルユーロの本格対応は、ECBの承認とEUの法整備を待って2029年以降とされる
  • 規模: 接続する銀行や決済事業者の数は確認できなかった
  • 暗号資産(トークン)そのものが使われるのか: 民間の暗号資産は使われない。中央銀行が発行するデジタル通貨のための通信網である(Ledger Insights)。記事の公開は31日朝(日本時間)の約2時間前だった

ECB、トークン化預金と証券の作業部会を設置

  • 誰が・何を: ECBが、新しい決済・清算の枠組み「アピア」の下で、トークン化預金(銀行預金を台帳上のトークンとして扱う仕組み)、トークン化証券、共通ネットワークの運営ルールの3つの作業部会を立ち上げる
  • 段階: 協議から構築へ進める段階。分野をまたぐ試験は2027年、設計図の完成は2028年を目標とする。トークン化預金には欧州共通の法的な定義がなく、国ごとに市場が分断する恐れがあるとされる
  • 既存の取り組み: ECBのプロジェクト「ポンテス」がすでにキャッシュ・トークンと中央銀行の決済システムによる決済を提供しているが、機能は「現時点では初歩的」とされる(Ledger Insights)。決済インフラの設計に、トークン化預金が正式に加わる位置づけである

各国の法改正・規制

米国

  • 段階: ICEとTrade[XYZ]が、ハイパーリキッドというブロックチェーン上で展開されている無期限先物を、米国内の規制下に持ち込むことで合意した。CMEグループは6月に、無期限先物は先物ではなくスワップにあたるとして、CFTCを提訴している。裁判所の判断はまだ出ていない
  • 影響する人: 無期限先物を取引する投資家、先物取引業者、取引所。分類が先物かスワップかで、証拠金の期間や課税が変わる(Ledger Insights: ICE bets on perpetual futures)

EU

  • 段階: 上記のとおり、ECBが決済インフラ面でデジタルユーロの通信網とトークン化預金の枠組みを前に進めた。MiCA(暗号資産市場規則)やステーブルコイン規制の新しい動きは、今回確認できていない

日本・その他

  • 今回確認できた範囲で、新しい法改正や当局の規則の動きは見つかっていない

特集: 新しいビジネスの形

無期限先物を、規制された取引所で売る

直近2週間の特集は、国債のレポ、送金の事前積み立て、協調融資の共通台帳、Partior、デジタル国債、AIエージェント決済、ステーブルコインの報酬、利息付きトークン化預金、銀行アプリのステーブルコイン、トークン化ファンドの随時売買、オンチェーン発行ファンド、証券保管機関のトークン化、証券貸借の共有台帳などだった。無期限先物は含まれていない。

  • 仕組み: 無期限先物とは、満期のない先物取引である。通常の先物は満期日に清算されるが、無期限先物は持ち続けられる。その代わり、先物価格が現物価格から離れすぎないよう、買い方と売り方のあいだで定期的に資金調整料(ファンディングレート)をやり取りする(一般論)。Trade[XYZ]は、これを暗号資産だけでなく株式、指数、商品、外国為替の価格に連動させたものを、ハイパーリキッド上で提供している。ICEは今回、同じ種類の商品を米国内で、規制を受ける形で売る
  • 誰がどう稼ぐのか: ICEは取引所として手数料を得るとみられる(収益の詳細は発表で明示されていない)。ICEはTrade[XYZ]に少数株主として出資する。顧客は先物取引業者(FCM)を通じて取引し、本人確認(KYC)を受ける
  • 既存のやり方との違い: 従来の無期限先物は、海外の暗号資産取引所やブロックチェーン上で、本人確認なしで取引される例が多かった。今回は、米国の規制の枠内で、既存の証券会社・先物業者の口座から取引できる点が変わる
  • 課題・リスク: 法的な位置づけが鍵である。CMEが主張するようにスワップと判断されれば、証拠金の期間が1日から5日に延び、課税上の扱いも不利になる。ICEの枠組みは、CFTCの現在の立場が裁判で維持されることを前提としている
  • 具体例: Intercontinental Exchange(ICE)、Trade[XYZ]、ハイパーリキッド、CMEグループ(Ledger Insights)

業界トピック

バイナンスから約63億ドルが流出、史上最大の取引所ハッキング

  • 何が起きたか: 木曜日(10月29日、米国時間)の深夜、攻撃者が複数のブロックチェーンにまたがるバイナンスのホットウォレット(インターネットにつながった保管用の財布)から、約20分間で約63億ドル相当を抜き取った。ビットコイン、イーサリアム、USDT、USDCのほか、複数の小型トークンが対象で、流出したFUNというトークンは攻撃者の売却で9割下落した。当初は運用担当技術者のノートパソコンが乗っ取られ、内部の出金システムを通じて不正な出金依頼が出されたとみられたが、バイナンスはその後、ほかの侵入経路も見つけた(CoinDesk)
  • 誰の仕業か: ブロックチェーン分析会社のチェイナリシスとTRMラボは、北朝鮮のハッカー集団(Lazarus Group、TRMは「トレーダートレイター」と呼ぶ部隊)と、高い確度で関連づけた。公式な認定ではなく、分析会社の見立てである(crypto.news)
  • バイナンスの対応: 顧客の残高を1対1で戻すため、会社の資金63億4,000万ドル超を確保した。ユーザー向け緊急基金(SAFU)も使う。取引業界の協力者により約30億ドルが凍結されたとし、不足するトークンは市場や相対取引で買い付けている。入金は受け付けているが、出金は安全確認のため止められており、日曜日(11月1日)の再開を目標に、月曜日に準備金の完全な証明を公表するとしている(Decrypt)
  • 市場への影響: ビットコインは77,000ドルを割り込み、強制清算は約15.7億ドルに達した。CoinDeskの見出しによると、攻撃者は約14億ドル分のビットコインを19のウォレットに分け、凍結しにくい状態にした(CoinDesk)

その他

  • CoinDeskの見出しによると、ストラテジーの最高財務責任者アンドリュー・カン氏が辞任し、ビットコイン保有企業のデータボルトAIは、保有するビットコインにアクセスできないと表明して株価が5割下落した。いずれも見出しのみの確認である(CoinDesk)