前回からの変化

前回(2026-10-28、前日)との比較である。

変わったこと(変化・新規)

  • 前回は欧州のデジタル債と香港の個人向け売買が中心だった。今回は、米国の証券決済の中核であるDTCCが、トークン化の本番サービスを開始した。米国側の本番運用の話題が加わった(Ledger Insights: DTCC Tokenization Service)
  • 前回のESMのデジタル債と同じく、ユーロシステムの新基盤ポンテスでの決済案件が続いた。ドイツのバイエルンLBが1億ユーロのトークン化コマーシャルペーパーを発行した。ポンテスの利用が民間銀行の短期資金調達に広がった点が続報にあたる(Ledger Insights: BayernLB)
  • 米国の制度面では、リップルへの信託銀行免許の最終承認が加わった。前回は米国で新しい動きがなかった
  • ビットコインは前回の80,570.76ドルから81,243.16ドルへ(672ドル高、0.8%高)、イーサリアムは2,338.81ドルから2,358.85ドルへ(20ドル高、0.9%高)となった。取得時刻は前回と異なる(CoinDesk、CoinDesk)

昨日と同じこと(継続)

  • 公的機関や銀行が、既存の決済網や証券市場に台帳技術をつなぎ込む流れが続いている。昨日の欧州と香港に続き、今日は米国とドイツで同種の動きが出た
  • 前回の特集だったジャナス・ヘンダーソンのオンチェーン発行ファンドと、香港の24時間売買は、今回確認した範囲で新しい動きはなく、続報なしである

要因の連続性

  • 継続要因: 中央銀行マネーでの決済と台帳技術を組み合わせる構図。ポンテスの利用が昨日のESMに続いて今日も確認された
  • 新規要因: 米国で、証券の保管・決済の中核機関が既存の証券と同じ権利を持つトークンを扱い始めた。また、暗号資産企業が連邦の信託銀行免許を得る流れが、リップルにも及んだ
  • 解消した要因: なし

市況ひとこと

ビットコインは81,243.16ドルで24時間では0.70パーセント高、イーサリアムは2,358.85ドルで0.73パーセント高だった。数値は10月29日朝(日本時間)に価格サイトで確認した表示値で、いずれも5パーセント未満の変動のため、理由は付けない(CoinDesk: Bitcoin price today、CoinDesk: Ethereum price today)。

社会実装・インフラへの採用

DTCC、トークン化サービスを開始

  • 誰が・何を: 米国の証券保管・決済機関DTCCが、トークン化サービスを開始した。JPモルガン、シティ、バンク・オブ・アメリカ、バークレイズ、UBS、モルガン・スタンレー、ステート・ストリート、フィデリティ、アルパカなど20の参加者が使う。BNYとゴールドマン・サックスは参加者に入っていない
  • 技術: Canton Networkと、DTC独自のBesuを基にした非公開の台帳を使う。ステラ(Stellar)とサークルのArcは2027年に加わる予定である
  • 段階: 本番運用の開始。ただし参加者を順次受け入れる初期段階で、対象は開始時点で34銘柄(株式、米国債、ETF)。SEC(米証券取引委員会)の承認範囲はラッセル1000構成株、米国債、主要指数ETFで、DTC保管残高114兆ドルのうち約30兆ドル分にあたる
  • 規模・制約: 台帳の間でのトークンの移動はDTCの変換サービス(米東部時間の営業日午前2時〜午後6時)に限られ、移転は登録済みのウォレット間のみである
  • 暗号資産(トークン)そのものが使われるのか: トークンは従来の証券と同じ権利(同じCUSIP識別番号)を持つ「権利の記録」であり、一般の暗号資産ではない。ブロックチェーン技術が使われる(Ledger Insights)。掲載日は10月29日朝(日本時間)の時点で最新記事の1つだった

バイエルンLB、ポンテスで決済するトークン化CPを発行

  • 誰が・何を: ドイツのバイエルンLBが、1億ユーロのトークン化コマーシャルペーパー(企業や銀行が短期の資金を集める無担保の証書)を発行した
  • 技術: SWIAT(スイアット)というブロックチェーンで発行し、ユーロシステムのポンテスで中央銀行マネーにより決済した
  • 段階: 発行は完了している。同行の財務責任者は、所有権の移転と支払いが数分で済み、従来は少なくとも1日かかっていたと述べた。投資家と期間は確認できなかった
  • 暗号資産(トークン)そのものが使われるのか: 一般の暗号資産は使われない。台帳技術と中央銀行マネーの組み合わせである(Ledger Insights)。発行日は「昨日」とされ、10月28日と思われる

各国の法改正・規制

米国

  • 段階: リップルが米通貨監督庁(OCC)から「リップル・ナショナル・トラスト・バンク」の最終免許を得た(記事は10月27日付)。ステーブルコインRLUSDの準備資産の管理、RLUSD保有者のための担保の受託、機関投資家向けの暗号資産の保管(カストディ)を担う。RLUSDの発行権限は別の子会社に残る
  • 影響する人: RLUSDの保有者、機関投資家。同時に、BNY(保管と貿易金融)とRobinhood(個人向け取引)との提携拡大も発表された
  • 注意点: 現政権下で少なくとも21の信託銀行免許が承認または条件付き承認を受け、うち13以上が暗号資産企業に関連する。一方、独立地域銀行協会(ICBA)は10月2日、OCCが権限を超えているとして提訴しており、制度の先行きは不確かである(Ledger Insights)

日本・EU・その他

  • 今回確認できた範囲で、新しい法改正や当局の規則の動きは見つかっていない。カナダのステーブルコイン規則案の意見募集は12月23日までである(前回の整理のまま)

特集: 新しいビジネスの形

証券の保管機関が、既存の株式と同じ権利を持つトークンを動かす

直近2週間の特集は、国債のレポ、送金の事前積み立て、協調融資の共通台帳、Partior、デジタル国債、AIエージェント決済、ステーブルコインの報酬、利息付きトークン化預金、銀行アプリのステーブルコイン、トークン化ファンドの随時売買、オンチェーン発行ファンドなどだった。今回は、証券の保管・決済の中核機関そのものがトークン化を提供する形を扱う。

  • 仕組み: 投資家の証券は通常、DTCCの子会社DTCの帳簿で、銀行や証券会社の名義でまとめて保管される。新サービスでは、この「保管上の権利」をトークンとして台帳に記録し、登録済みのウォレット間で24時間移転できる。トークンは元の証券と同じ権利と識別番号を持つので、別の証券を新しく作るのではなく、同じ証券の記録方法が増える形である
  • 誰がどう稼ぐのか: 主体はDTCCで、参加者の銀行・証券会社が顧客に提供する。収益や手数料の詳細は、確認できた範囲では公表されていない(以降は筆者の推測で、明示された情報ではない)。決済が速くなれば、参加者の担保や資金の拘束が減る利点があるとの見方である
  • 既存のやり方との違い: 前回の特集のような運用会社によるオンチェーン発行や、取引所によるトークン化株式と違い、保管機関が自ら動かすため、既存の証券と同じ権利をそのまま引き継げる。従来の「翌営業日決済」を待たずに移転できる点が特徴で、決済時間の短縮が中心である
  • 課題・リスク: 開始時は34銘柄、20参加者にとどまる。台帳の間の移動は営業日の限られた時間のみで、移転は登録済みのウォレットだけである。決済の取り決めも当面は参加者に任されている。BNYやゴールドマン・サックスが不在で、参加者がどこまで広がるかが課題である
  • 具体例: DTCC、Canton Network、ステラ、アルパカ(Ledger Insights)

業界トピック

  • 10月28〜29日に、新しい大規模なハッキングや取引所の破綻は、確認できた範囲では見当たらない