前回からの変化
前回(2026-10-25、前日)との比較である。
変わったこと(変化・新規)
- ビットコインは前回の80,517.47ドルから80,404.46ドルへ(113.01ドル安、0.1%安)、イーサリアムは2,342.38ドルから2,334.39ドルへ(7.99ドル安、0.3%安)となった。いずれも小幅で、取得時刻は前回と異なる(CoinDesk、CoinDesk)
- 前回は銀行が自社アプリや公共チェーンでトークンを出す話題だった。今回は、銀行にシステムを提供する側(ジャックヘンリー)と、トークン化ファンドの売買を支える側(Libeara)という、周辺のインフラ事業者の動きが中心である
- 前回紹介したHSBCのRedCoinに続報があった。RedCoinを使って、トークン化した投資商品を購入できるようにする計画で、最初は香港ドルのMMFの新しいシェアクラスとされる。前回の「2026年内に提供予定」という整理と同じ内容で、新しい日程は出ていない(Ledger Insights)
昨日と同じこと(継続)
- 銀行が自らトークン化した預金やステーブルコインを出し、既存の決済や投資の枠組みへ取り込む流れは続いている。前回のHSBCとJPモルガンに続き、今回は銀行の裏側のシステムと、ファンドの売買の仕組みに広がった
- 米国の制度は、議会の審議が止まり、SECとCFTCの規則づくりが中心という前回の整理から、今回確認できた範囲では変化がない
要因の連続性
- 継続要因: 銀行預金とステーブルコイン、トークン化預金の競争と共存。ジャックヘンリーの計画は、地域の中小銀行がトークン化預金に参加する入口を広げる動きである(筆者の整理)
- 新規要因: 中小銀行向けのシステム事業者と、グーグルクラウドの台帳が結びついた点。前回までは大手銀行の自社発行が中心だった
- 解消した要因: なし
市況ひとこと
ビットコインは80,404.46ドルで24時間では0.05パーセント高、イーサリアムは2,334.39ドルで0.28パーセント安だった。数値は10月26日朝(日本時間)に価格サイトで確認した表示値で、いずれも5パーセント未満の変動のため、理由は付けない(CoinDesk: Bitcoin price today、CoinDesk: Ethereum price today)。
社会実装・インフラへの採用
ジャックヘンリー、グーグルクラウドの台帳でトークン化預金に対応する計画
- 誰が・何を: 米国で約7,200の地域銀行や信用組合にコアバンキング(預金や口座の基幹システム)を提供するジャックヘンリーが、グーグルクラウドの共通台帳「Google Cloud Universal Ledger(GCUL)」に、コアバンキング事業者として初めて接続すると表明した。目的は、顧客の銀行がトークン化預金(銀行預金をブロックチェーン上の記録として表したもの)を扱えるようにすることである
- 技術: グーグルクラウドの共通台帳。どのブロックチェーンの方式かは、出典で確認できていない
- 段階: 計画・発表の段階。開始時期や最初に導入する銀行は示されていない
- 規模: 対象となりうる顧客は約7,200機関。ジャックヘンリーの調査では、顧客の11%がトークン化預金を検討している。別の調査(CSBS)では、地域銀行の4%がすでに導入済みで、17.5%が12か月以内の導入を計画している
- トークンの扱い: ブロックチェーン上の預金トークンが使われる。企業独自のトークンの発行は示されていない
- 補足: GCULの共同事例は、CMEの法人間決済、スイスのデジタル資産の試験に続き3件目とされる(Ledger Insights)。発表日は出典で確認できず、掲載は直近である。一次情報(ジャックヘンリーの発表)は今回確認していない
スタンダードチャータード系Libearaが、Zodia Marketsジャージーを買収
- 誰が・何を: スタンダードチャータードのSCベンチャーズが運営するファンドのトークン化基盤Libearaが、ジャージー島で投資業の認可を持つZodia Markets(ジャージー)を買収する
- 技術と段階: ブロックチェーンでファンド持ち分を発行する基盤とステーブルコインの出入り口を組み合わせる。規制当局の承認待ちの段階である
- 規模: Libearaの基盤上のトークン化ファンドは合計8億1,000万ドル。うち中国のChinaAMCの分が7億ドル超、Boseraの流動性ファンドが1億300万ドルである
- トークンの扱い: ファンド持ち分のトークンと、売買代金に使うステーブルコインの両方が使われる。目的は、決まった申込・解約の時期を待たずに、認可を持つディーラー(売買の仲介業者)を通じて、適格な投資家がファンド持ち分を随時売買できるようにすることである(Ledger Insights)
各国の法改正・規制
米国
- 段階: 議会は審議中断、当局は規則の提案・準備の段階。前回の整理から、今回確認できた範囲で新しい動きはない。9月15日に上院で市場構造法案(CLARITY法案)が否決され、SECとCFTCの規則づくりが中心である(前回の整理。Orrick)
- 影響する人: 取引所、ステーブルコインの発行者、銀行
日本・EU・香港・その他
- 新しい制度の動きは、今回確認できなかった。香港では、前回紹介したHKMAの認可を受けたHSBCのRedCoinが運用を続けている
特集: 新しいビジネスの形
トークン化ファンドを、認可ディーラーが随時売買する
- 仕組み: 投資信託のようなファンドの持ち分を、ブロックチェーン上のトークンとして発行する。通常のファンドは、申込や解約が日次や週次などの決まった時期にしかできない。そこで、規制の認可を持つディーラーが自らの手元に持ち分を持ち、投資家が売りたい時に買い取り、買いたい時に売る形にすると、決まった時期を待たずに、1日の中でも売買ができる。代金の受け渡しにはステーブルコインを使える
- 誰がどう稼ぐのか: 収益源は、買い値と売り値の差(スプレッド)や取引手数料になりうる(筆者の整理。Libearaは収益の分け方を示していない)。投資家には、売りたい時に現金化しやすくなる利点がある。ファンド運用会社には、トークン化した商品が使いやすくなり、販路が広がる利点がある
- 既存のやり方との違い: 既存のファンドでは、売却を申し込んでから代金を受け取るまで数日かかることがある。ディーラーが間に入ることで、待ち時間と営業時間の制約が小さくなる。前回までの特集(10月14日のトークン化MMFを証券会社の口座で売る話)は、売る窓口の話だった。今回は、売買の相手方(流動性の供給者)の話という点が違う
- 課題・リスク: ディーラーが十分な在庫と資金を持たないと、売買が成立しにくくなる。買収は規制当局の承認待ちで、実現するとは限らない。対象は適格な投資家に限られ、一般の個人はすぐに使えない。ジャージー島の規制の枠内の話で、他国で同じ形が使えるかは別の問題である
- 具体例: スタンダードチャータード系のLibeara(ChinaAMCなどのトークン化ファンド約8億1,000万ドル)と、ジャージー島のZodia Markets(Ledger Insights)
業界トピック
- 10月25〜26日に、新しい大規模なハッキングや取引所の破綻は、確認できた範囲では見当たらない。参考として、PeckShieldによると9月の暗号資産の被害は55件・7億6650万ドルで、2026年で最悪の月だった(前回の整理)

