前回からの変化
前回(2026-10-26、前日)との比較である。
変わったこと(変化・新規)
- ビットコインは前回の80,404.46ドルから79,728.49ドルへ(676ドル安、0.8%安)、イーサリアムは2,334.39ドルから2,306.10ドルへ(28ドル安、1.2%安)となった。いずれも小幅で、取得時刻は前回と異なる(CoinDesk、CoinDesk)
- 前回は銀行向けシステムとトークン化ファンドの話題だった。今回は、カナダの規則案という各国の制度の動きと、日本の国債レポのトークン化提案、シンガポールのBLOOM拡大という、決済・担保の基盤をめぐる話題が中心である
- 前回紹介した米国のジャックヘンリーとグーグルクラウドの件は、今回確認した範囲で新しい日程や導入銀行の発表はなく、続報なしである(Ledger Insights)
昨日と同じこと(継続)
- 銀行や決済事業者が、トークン化した預金やステーブルコインを既存の決済網へ取り込む流れは続いている。今回はシンガポールの国際決済の枠組みと、日本の国債の担保取引に広がった
- 米国の制度は、議会の審議が止まり、SECとCFTCの規則づくりが中心という前回の整理から、今回確認できた範囲では変化がない
要因の連続性
- 継続要因: 銀行預金、ステーブルコイン、トークン化預金が共存・競争する構図。BLOOMは両者の相互運用を目指す枠組みで、前回の整理を裏づける動きである(筆者の整理)
- 新規要因: ステーブルコインの利回りを禁じる範囲を、発行者だけでなく取引所などの仲介業者にも広げるカナダの規則案が加わった
- 解消した要因: なし
市況ひとこと
ビットコインは79,728.49ドルで24時間では0.88パーセント安、イーサリアムは2,306.10ドルで1.08パーセント安だった。数値は10月27日朝(日本時間)に価格サイトで確認した表示値で、いずれも5パーセント未満の変動のため、理由は付けない(CoinDesk: Bitcoin price today、CoinDesk: Ethereum price today)。
社会実装・インフラへの採用
シンガポールのBLOOMに、マレーシアとタイの中央銀行が参加
- 誰が・何を: シンガポール金融管理庁(MAS)が進める、トークン化預金と規制対象のステーブルコインを使った国際決済の枠組み「BLOOM」に、マレーシア国家銀行とタイ中央銀行が加わった。民間ではビザ、マスターカード、リップル、マレーシアのメイバンク、世界銀行グループなど9者も参加した。参加する民間企業は計24社となった
- 技術: トークン化預金と規制対象のステーブルコイン。個別のブロックチェーンの指定は出典では確認できていない
- 段階: 共同の検討・実証の段階で、本番運用の開始時期は示されていない。作業は、国をまたぐ受け入れと決済、デジタルマネー同士の相互運用、本人確認や制裁照会などの自動制御の3本立てである
- 規模: 参加民間企業24社(DBS、OCBC、UOB、JPモルガン、スタンダードチャータード、サークル、ストライプなど)
- 狙い: 複数の決済網が併存する中で、金融機関が相手ごとに個別の取り決めを結ばずに済むようにすること。トークンそのものが使われるが、特定の企業独自のトークンの採用は示されていない(Ledger Insights、10月23日付)
日本の国債レポ取引のトークン化を提案
- 誰が・何を: 367会員のデジタル資産共創コンソーシアム(運営はProgmat)が、日本国債のレポ取引(債券を担保に短期の資金をやりとりする取引)のうち、清算機関を通さない相対の部分を、ブロックチェーン上で扱う提案をまとめた。現在はファックスやメールで確認している取引で、非居住者、生命保険会社、地方銀行などが対象である
- 技術: Canton Networkのテストネット(試験用ネットワーク)
- 段階: シミュレーション(実証)の段階で、11月から3月まで実施する
- 規模: 国債レポ市場全体はおよそ250兆円で、提案の対象はそのうち約4割、およそ106兆円(出典の記載)
- 狙い: 日銀の無利子の流動性を使えない参加者向けに、日中の資金調達を可能にすること。トークンというより台帳技術の活用である(Ledger Insights)
各国の法改正・規制
カナダ
- 段階: 財務省が規則案を公表し、意見募集(パブリックコメント)を12月23日まで60日間行う。施行は2027年秋の見込みである
- 内容: 銀行以外のステーブルコイン発行者はカナダ銀行への登録が必要になり、準備資産の全額確保と、会計士による月次の報告が求められる。ソフトウェアウォレットも決済関連の規制の対象に含める
- 影響する人: 発行者、取引所、ウォレット事業者、利用者
- 他国との違い: 米国のGENIUS法は発行者による利息の支払いを禁じるが、カナダは発行者が仲介業者と収益を分け合うなど、保有額に応じた報酬につながる取り決めも禁じる。取引に応じた報酬は認められる(Ledger Insights)
米国
- 段階: 前回の整理から、今回確認できた範囲で新しい動きはない。上院での市場構造法案の否決後、SECとCFTCの規則づくりが中心である
日本・EU・その他
- 日本では上記の国債レポの提案が制度面ではなく実務の取り組みとして出た。EUやその他の国で、今回新たに確認できた制度の動きはない
特集: 新しいビジネスの形
国債の担保取引をトークン化し、日中の資金調達を可能にする
- 仕組み: 国債を担保に現金を借りるレポ取引では、担保の国債と現金を同時に受け渡す必要がある。これを共通の台帳で管理し、担保と現金の受け渡しを同時に処理する。日本の提案では、清算機関を通さずに電話やメールで確認している部分が対象である
- 誰がどう稼ぐのか: 資金の出し手は担保付きで貸した利息を得て、借り手は日中に必要な資金を調達できる。台帳の運営者やプラットフォーム事業者は、利用料などが収益源になりうる(筆者の整理で、コンソーシアムは収益の分け方を示していない)
- 既存のやり方との違い: 確認の手作業が減り、日銀の決済が動かない時間帯でも担保と資金の受け渡しを進められる可能性がある。日銀の無利子の流動性を使えない非居住者などが主な対象という点が特徴である
- 課題・リスク: 現時点はテストネットでのシミュレーションにとどまる。台帳上の決済と日銀の決済との整合、法的な決済の確定時点、既存の清算機関との役割分担が課題である。本番運用の時期は示されていない
- 具体例: Progmatが運営するコンソーシアムと、Canton Networkの試験環境。米国では別の事業者が、ステーブルコインを使ったレポの即時決済を計画している(Ledger Insights)
業界トピック
- 10月26〜27日に、新しい大規模なハッキングや取引所の破綻は、確認できた範囲では見当たらない

