前回からの変化
前回(2026-10-30、前日)との比較である。前回は10月29日時点、今回は10月30日時点の値で、いずれもTradingEconomicsの表示値(今回は31日朝に取得)である。取得時刻と限月は確認できておらず、確定終値でないものを含む。騰落率は出典の前日比をそのまま載せたため、前回値との差とは一致しない場合がある。
変わったこと(変化・新規)
- 金は前回の4,021.33ドルから3,874.08ドルへ(147.25ドル安)急落し、前回「大台」としていた4,000ドルを割り込んだ。月間では7.27%下げた(TradingEconomics: Gold)
- 銀は前回の52.150ドルから49.12ドルへ(3.03ドル安、5.80%安)下げ、2025年11月以来の安値となった。前回挙げたTDセキュリティーズの想定レンジ(50〜55ドル)の下限も割り込んだ(TradingEconomics: Silver)
- 金銀比価は前回の76倍超から約79倍に広がった(当方で金と銀の価格から算出)
- ブレント原油は前回の115.450ドルから112.35ドルへ(3.10ドル安)下げた。一方、WTIは102.917ドルから102.88ドルとほぼ横ばいだった(TradingEconomics: Commodities)
- 前回、急変動の特集で取り上げた銀のその後を追う。下落は一段と加速した
昨日と同じこと(継続)
- 12月の米利上げ観測が貴金属の重しとなる構図は続く。前回は利上げ確率が約80%と報じられており、30日付の分析でも80%超が意識されている(ISA Bullion)
- WTI原油は100ドル台での推移が続いた。中東情勢による供給不安が下値を支える(TradingEconomics: Crude Oil)
- 小麦は603.25セントで前回とほぼ同じ水準にとどまり、リスクプレミアムの縮小と供給の厚みが上値を抑える(TradingEconomics: Wheat)
- 天然ガスは前回の2.9034ドルから2.88ドルへ続落した。貯蔵量の積み増しと穏やかな気温予報という前回の弱気要因が続いている(TradingEconomics: Natural Gas)
要因の連続性
- 継続要因: 米国の物価の上振れと強い成長で、利上げ観測が続く。中東の供給不安による原油高も継続している
- 新規要因: ハイテク株が、AI関連の支出への懸念で大きく売られ、その影響で資産全体の換金売りが貴金属にも及んだ。原油高によるインフレ懸念が、利上げ観測をさらに強めた
- 解消した要因: 前回、原油の緩和材料だった米国とイランの外交再開の動きは後退した。トランプ大統領が米軍幹部から再攻撃の選択肢の説明を受けたと報じられ、イランも強硬姿勢を崩していない
価格サマリー
| 商品 | 価格(2026年10月30日) | 騰落率(前日比) | 前回値(10月29日) |
|---|---|---|---|
| 金 | 1オンス3,874.08ドル | 3.66%安 | 4,021.33ドル |
| 銀 | 1オンス49.12ドル | 5.80%安 | 52.150ドル |
| WTI原油 | 1バレル102.88ドル | 0.88%高 | 102.917ドル |
| ブレント原油 | 1バレル112.35ドル | 1.40%高 | 115.450ドル |
| 天然ガス | 1MMBtu 2.88ドル | 2.44%安 | 2.9034ドル |
小麦は1ブッシェル603.25セント(0.08%安)、トウモロコシは4.48ドル(0.83%安)、大豆は12.22ドル(0.14%高)、銅は1ポンド6.48ドル(1.50%安)である。週間の騰落は、金が3.00%安、銀が8.83%安、WTIが0.32%安、ブレントが3.75%安、天然ガスが5.58%安、小麦が3.48%安だった。コーヒーは2.87ドル(0.60%高、週間で6.60%安)、ココアは1トン5,454ドル(0.04%安)である。ブレントのように、前回値との差と出典の前日比が一致しない商品があるのは、取得時点が異なるためとみられ、取得時刻と限月は確認できていない(TradingEconomics: Commodities)。WTIは一覧表では102.94ドル(0.92%高)と表示された。
商品別動向
金・銀
TradingEconomicsによると、金は3.66%安の3,874.08ドルで、月間では7.27%下げた。米国の9月の物価が加速し、コア物価の伸びも強まったことから、12月の米利上げの見方が強まっている。さらに、AI関連の支出への懸念でハイテク株が大きく売られ、強制的な換金売りが資産全体に広がった。原油高によるインフレ懸念や、アジアの現物需要の弱さも重しとなった(TradingEconomics: Gold)。
銀は5.80%安の49.12ドルで、月間では18.81%下げた。2025年11月以来の安値である。金と同じく、利上げ観測の強まりと株安に伴う換金売りが主因とされる(TradingEconomics: Silver)。
原油
WTIは0.88%高の102.88ドル、月間では10.78%上昇した。TradingEconomicsによると、米軍幹部がトランプ大統領にイランへの再攻撃の選択肢を説明したと報じられ、大統領も再攻撃の可能性を示した。イランは、ヴァンス副大統領からの和平協議の提案を受けても、強硬な姿勢を保っている。ホルムズ海峡付近でのタンカーの事故や、ウクライナによるロシアの製油所への攻撃も、供給不安を強めた(TradingEconomics: Crude Oil)。
OilPrice.comによると、ホルムズ海峡でのタンカー火災でブレントは117ドルに迫り、フーシ派によるサウジの製油所への攻撃も供給の不安材料である。ANZはブレントの年末予想を約105ドルに引き上げ、「湾岸からの流れが開戦前を下回る状態が続く」と説明した。欧州は4,200万バレルの緊急備蓄を放出し、日本はガソリン補助金に70億ドルを充てる(OilPrice.com)。
天然ガス
米国の天然ガスは2.88ドルで2.44%安となり、1週間ぶりの安値をつけた。貯蔵量は予想を上回る800億立方フィート増え、合計は3.724兆立方フィートで、前年同期より3.8%少ないが5年平均を1%上回る。11月13日までの気温が平年より穏やかな見通しで、暖房需要が弱いとみられている。本土48州の生産は日量約1,133億立方フィートに回復した。LNG輸出向けの流入は10月に日量185億立方フィートと9月の179億立方フィートより増え、下値を支えた(TradingEconomics: Natural Gas)。
農産物
小麦は603.25セントで0.08%安だった。中国が米国産の軟質赤冬小麦の購入を打診したことで、16週間ぶりの安値圏から小幅に戻した。一方、世界の生産が記録に近い水準で、豪州とアルゼンチンの収穫増、ロシア・ウクライナの和平協議への期待による黒海の穀物供給の改善が重しとなる。月間では11.64%下げたが、前年同期比では12.97%高い(TradingEconomics: Wheat)。
急変動の特集
金と銀が同時に急落、銀は1日で5.8%安
30日は金が3.66%、銀が5.80%と、目安の3%を超えて下げた。銀は週間で8.83%、月間で18.81%安となり、月初の水準から2割近く下がった。
理由として、TradingEconomicsは次の点を挙げる。第1に、米国の物価が加速し、12月の利上げ観測が強まった。利息を生まない金や銀は、金利が高い局面では持つコストが相対的に上がる。第2に、ハイテク株がAI関連の支出への懸念で売られ、強制的な換金売りが貴金属にも及んだ。第3に、原油高がインフレ懸念を強めた。第4に、アジアの現物需要が弱かった(TradingEconomics: Silver、TradingEconomics: Gold)。
前回、メタルズ・フォーカスが指摘した銀の需給の緩み(ETFからの流出、地金コイン販売の減少、市場在庫の積み上がり)は、30日の下落でも背景として働いているとみられる(筆者の整理)(Kitco: Metals Focus)。
生活への波及は、貴金属では限定的である。金銀比価(金1オンスを買うのに必要な銀の量)は約79倍に広がり、銀の相対的な弱さを示す。
強気派 vs 弱気派
調査したのはTradingEconomics、OilPrice.com、ISA Bullion、Kitcoの4サイトである。
金・銀
- 弱気(短期): ISA Bullionは30日付の分析で、金は下降する平行チャネル内にあり「短期は弱気」、銀は「弱気の傾向が確立している」とみる。ただし売られすぎの水準にあり、反発の余地もあるとしている(ISA Bullion)
- 弱気(前日付の見方): TDセキュリティーズのバート・メレク氏は29日、金は3,900〜4,250ドル、銀は50〜55ドルのレンジにとどまるとみていた。30日の下落で、どちらもレンジの下限を割り込んだ。同氏は、インフレが2%に近づけばFRBが雇用重視に転じ、長期では金が高値に戻ると強気でもある(Kitco: TDS' Melek)
- 強気: 30日付で金・銀に強気の見方を示す、名前の付いた出典は今回確認できなかった
原油
- 強気: ANZはブレントの年末予想を約105ドルに引き上げた。根拠は、湾岸からの流れが開戦前の水準を下回ったままであることである。報道によると、ウォール街の複数の銀行も、供給への不安の深まりを理由に原油の予想を引き上げた(OilPrice.com)
- 弱気: 今回の出典では、名前の付いた弱気派は確認できなかった。欧州の備蓄放出は、価格の下押し材料として挙がっている
前回の顔ぶれのうち、UBS(ブレント年末110ドル)の見方は今回再確認できていない。
地政学・物価関連ニュース
米国の中東政策は、再攻撃の選択肢の検討が報じられ、外交による緩和期待は前日から後退した。ホルムズ海峡付近のタンカー事故、フーシ派によるサウジの製油所への攻撃、ウクライナによるロシアの製油所への攻撃が、供給不安を重ねている(TradingEconomics: Crude Oil、OilPrice.com)。
エネルギー企業の決算は、精製の利益が膨らんだ。エクソンモービルの純利益は154億ドル、シェブロンは99億ドルと報じられた。燃料の精製能力の不足が背景にある(OilPrice.com)。
物価への波及は、原油が100ドル台にある間は、日本でもガソリンや電気料金の高止まりにつながる(一般論)。日本政府は、ガソリン補助金に70億ドルを充てた。欧州は冬の燃料価格の上昇を和らげるため、備蓄を放出する。
穀物では、ロシア・ウクライナの和平協議への期待が小麦の重しで、中国の購入打診が小さな支えとなった。
テクニカル分析(金・銀・原油・天然ガス・農産物)
移動平均線とRSIの30日終値時点の値、投機筋の建玉の詳細は、今回の出典では確認できなかった。確認できた範囲だけを載せる。断定的な売買判断ではない。
金: ISA Bullionの30日付レポートは、29日終値(4,021ドル)時点で、RSI(買われすぎ・売られすぎを示す指標。30以下が売られすぎの目安)が約35、MACD(勢いの方向を示す指標)は売りの向きと伝える。サポート(下値の支え)は3,972ドル、3,933ドル、3,900ドルで、30日の3,874ドルは、この一番下の3,900ドルも下回った。つまり、見込まれていた支えを割り込んだ状態である。前回挙げたTradingEconomicsの四半期末予測(3,922.74ドル)も、すでに下回っている(ISA Bullion)。
銀: 同レポートが挙げたサポート(51.00ドル、50.62ドル、50.25ドル)は、いずれも30日の49.12ドルが下回った。レジスタンス(上値の抵抗)は51.60ドル、52.00ドル、52.38ドルとされる。売られすぎの水準にあり、反発(戻り)が入る余地があるとされるが、下降の流れは続いている(ISA Bullion)。
原油: WTIは100ドルを上回る水準を保つ。TradingEconomicsの予測は、10〜12月期末に106.90ドル、12か月後に123.86ドルである(TradingEconomics: Crude Oil)。天然ガスは、1週間ぶりの安値圏にある(TradingEconomics: Natural Gas)。小麦は、四半期末に635.81セントとの予測で、当日のテクニカル指標は確認できなかった(TradingEconomics: Wheat)。

