前回からの変化
前回(2026-10-27、前日)との比較である。
変わったこと(変化・新規)
- 前回は国債レポのトークン化提案など、実証段階の話題が中心だった。今回は、欧州の公的機関によるデジタル債の実発行と、香港の個人向け売買という、本番運用の話題が加わった
- ESMは10月14日の本レポートで「ポンテス上でのトークン化発行を予告」していた案件で、今回、実際の起債にたどり着いた。構想から実発行への進展として、続報にあたる(Ledger Insights)
- ビットコインは前回の79,728.49ドルから80,570.76ドルへ(842ドル高、1.1%高)、イーサリアムは2,306.10ドルから2,338.81ドルへ(33ドル高、1.4%高)となった。取得時刻は前回と異なる(CoinDesk、CoinDesk)
- 前回の特集だった国債レポのトークン化と、前々回のカナダのステーブルコイン規則案は、今回確認した範囲で新しい動きはなく、続報なしである
昨日と同じこと(継続)
- 公的機関や銀行が、既存の決済網や担保・債券の市場に、台帳技術をつなぎ込む流れは続いている。昨日のシンガポールのBLOOM、日本の国債レポに続き、今日は欧州と香港で同種の動きが出た
- 米国の制度は、10月21日にOCCが公表したGENIUS法の最終規則(2027年1月18日施行)の整理から変化がなく、今回新しい動きは確認できていない
要因の連続性
- 継続要因: 銀行・公的機関が、トークン化した預金や債券を既存の決済と共存させる構図。ポンテスは、民間のトークンではなく中央銀行のお金で決済する接続策で、前回までの整理を裏づける(筆者の整理)
- 新規要因: 個人投資家が24時間いつでもトークン化ファンドを売買できる、香港の取引の仕組みが加わった
- 解消した要因: なし
市況ひとこと
ビットコインは80,570.76ドルで24時間では1.01パーセント高、イーサリアムは2,338.81ドルで1.53パーセント高だった。数値は10月28日朝(日本時間)に価格サイトで確認した表示値で、いずれも5パーセント未満の変動のため、理由は付けない(CoinDesk: Bitcoin price today、CoinDesk: Ethereum price today)。
社会実装・インフラへの採用
欧州安定メカニズム、ポンテスで決済するデジタル債を起債
- 誰が・何を: ユーロ圏の危機対応基金である欧州安定メカニズム(ESM)が、10億ユーロ(注文は22億ユーロ)のデジタル債を起債した。発行・支払い代理はドイツ連邦銀行で、主幹事はDZ銀行、HSBC、サンタンデール、ソシエテ・ジェネラルが務めた
- 技術: ドイツ取引所のD7(台帳技術の発行基盤)で発行し、ユーロシステム(ユーロ圏の中央銀行群)の新しい決済接続「ポンテス」で決済する。現金のトークンは使わず、既存の決済網T2へ直接の支払い指示を出す「トリガー方式」を採る
- 段階: 本番の実発行。期間3年、利率3.375パーセント、満期は2030年4月8日で、決済は来週に行われる。ポンテスが稼働して5週間後の最初の取引だと報じられている
- 規模: 10億ユーロ。投資家は従来のクリアストリーム口座で保有でき、台帳技術に対応していなくても参加できる混合方式である
- 暗号資産(トークン)そのものが使われるのか: 債券は台帳上で発行されるが、一般の暗号資産は使われない。決済は中央銀行マネーで行う(Ledger Insights)。掲載日は記事から確認できず、10月28日朝の時点で最新記事の1つだった
香港、規制対象のトークン化MMFを個人向けに24時間売買
- 誰が・何を: 香港証券先物委員会(SFC)の認可のもと、チャイナAMC(香港)のデジタルMMF(米ドル建てと香港ドル建て、運用資産は約6億6,000万ドル)の個人向け売買が、Futu Holdings傘下の取引所PantherTradeで24時間可能になった。決済にはHSBCのトークン化預金とスタンダードチャータードの香港ドル・ステーブルコインが使われる
- 技術: 取引所の板取引。ただし、トークンは取引所から出金できず、正式な所有権はファンドの従来の名簿に残る。取引できるのはFクラスの株式のみ
- 段階: 本番運用。個人投資家は、従来の申込・解約の時間帯を待たずに、いつでも売れる(費用はかかる)
- 狙い: 暗号資産の取引所が、暗号資産とトークン化証券を同じ場所で扱える香港の免許制度が背景にある。ブロックチェーン上の自由な移転ではなく、取引の時間と利便性の改善が中心である(Ledger Insights)。開始日は記事から確認できていない
各国の法改正・規制
香港
- 段階: 上記のとおり、SFCが認可した商品の24時間売買が運用段階に入った。新しい法律の制定ではなく、既存の免許制度の枠内での運用である
- 影響する人: 取引所、運用会社、個人投資家
米国・日本・EU・その他
- 今回確認できた範囲で、新しい法改正や当局の規則の動きは見つかっていない。米国は10月21日のOCC最終規則(10月22日の本レポートで紹介)から変化がなく、カナダのステーブルコイン規則案の意見募集は12月23日までである
特集: 新しいビジネスの形
既存ファンドを包むのでなく、最初からオンチェーンで発行するトークン化ファンド
直近2週間の特集は、トークン化したMMFの販売、担保取引、送金の事前積み立て、協調融資の共通台帳、Partior、デジタル国債、AIエージェント決済、ステーブルコインの報酬、利息付きトークン化預金、国債レポなどだった。今回は、運用会社が指数連動ファンドをオンチェーンで直接発行する形を扱う。
- 仕組み: 運用会社のジャナス・ヘンダーソン(運用資産約5,000億ドル)が、ナスダック100に連動する「JQQQ」をステラ(Stellar)のブロックチェーン上で発行する。既存のETFをトークンで包む(ラップする)のではなく、新しいファンドそのものを最初からオンチェーンで作る。ナスダックから直接ライセンスを受けて指数を再現する点が特徴で、価格を模す合成型の商品とは違う
- 誰がどう稼ぐのか: 運用会社は運用報酬を得る。販売はセントリフュージ(Centrifuge)の投資ポータルが担う。報酬率などの収益の詳細は、確認できた範囲では公表されていない(以降は筆者の推測で、明示された情報ではない)
- 既存のやり方との違い: 既存の「ETFのトークン版」(DTCCが扱うインベスコQQQの例)や「連動証券」(クラーケンのxStocksの例)と比べ、投資家の法的な権利や投資家層が異なる。JQQQは最低投資額が10万USDCで、米国外のプロ投資家に限られる
- 課題・リスク: 運用資産はゼロから始まり、「まもなく初回の資金投入」の段階で、実際に資金が集まるかは未知数である。米国の個人投資家は対象外で、流動性は限られる
- 具体例: ジャナス・ヘンダーソンのJQQQ、ステラ、セントリフュージ(Ledger Insights)
業界トピック
- 10月27〜28日に、新しい大規模なハッキングや取引所の破綻は、確認できた範囲では見当たらない

