前回からの変化
前回(2026-10-24、前日)との比較である。
変わったこと(変化・新規)
- ビットコインは前回の81,264.28ドルから80,517.47ドルへ(746.81ドル安、0.9%安)、イーサリアムは2,400.81ドルから2,342.38ドルへ(58.43ドル安、2.4%安)となった。前回はほぼ横ばいだったが、今回は小幅に下げた。CoinDeskは、週末にかけて「米国の中東からの避難の報道でビットコインが8万ドルを割り込んだ」と伝えている。取得時刻は前回と異なる(CoinDesk、CoinDesk)
- 前回はアジアの中央銀行どうしの協調(BLOOM)と日本の銀行の共同発行だった。今回は、香港の大手銀行が一般の消費者向けに規制下のステーブルコインを始めた話と、米銀の預金トークンの対応チェーン拡大である
- 前回確認できなかった米国の制度の動きを整理した。上院で市場構造法案が否決され、焦点が当局の規則づくりに移っている
昨日と同じこと(継続)
- 銀行が自らトークン化した通貨や預金を出し、既存の決済の枠組みに取り込む流れは続いている。前回の日本の3メガバンク、前々回のSoFiに続き、今回はHSBCとJPモルガンである
- 前回扱ったBLOOM、メガバンクの共同ステーブルコイン、SoFiの続報は、今回の出典では確認できていない
要因の連続性
- 継続要因: 銀行預金とステーブルコインの競争と共存。今回のHSBCは、銀行が自らステーブルコインを出して決済アプリに載せる形で現れた(筆者の整理)
- 新規要因: 一般消費者の使うアプリに、規制当局の認可を受けたステーブルコインが直接載った点。前回までは機関投資家・企業間・実証が中心だった
- 解消した要因: なし
市況ひとこと
ビットコインは80,517.47ドルで24時間では1.01パーセント安、イーサリアムは2,342.38ドルで2.28パーセント安だった。数値は10月25日朝(日本時間)に価格サイトで確認した表示値で、いずれも5パーセント未満の変動のため、理由は付けない(CoinDesk: Bitcoin price today、CoinDesk: Ethereum price today)。
社会実装・インフラへの採用
HSBC、香港ドル建てステーブルコインRedCoinを決済アプリで開始
- 誰が・何を: HSBCが、香港ドル建てのステーブルコイン「RedCoin」(ティッカーはRCHKD)を、同社の決済アプリPayMe(香港で利用者330万人超、加盟店10万超)で10月23日に始めた。ステーブルコインは、法定通貨と1対1で価値が連動するよう設計されたトークンである
- 技術: どのブロックチェーンで動くかは、HSBCが公表しておらず、確認できていない
- 段階: 本番運用(一般の消費者向け)。ただし当面はHSBC自社のアプリ内に限る。HSBCのメインの銀行アプリへの展開は2026年末までの予定である。新しい口座や最低残高は要らず、ウォレット(トークンの保管場所)を有効にするだけで使えるという
- 規模: 発行残高、ウォレット数、利用者数は公表されていない
- トークンの扱い: 香港金融管理局(HKMA)のステーブルコイン発行者の認可(2026年4月10日付)を受け、準備金は分別管理されるとされる。ブロックチェーン技術が使われるだけでなく、トークンそのものを一般の利用者が保有・利用する形である(Crypto News Flash)
- 次の予定: 2026年内に、トークン化した投資商品を購入できるようにする計画で、最初は最低100香港ドルから買える香港ドルのMMF(短期の債券などで運用する投資信託)とされる。決済が数日ではなく即時に済むという(同上)
JPモルガン、預金トークンJPM Coinをイーサリアムへ展開
- 誰が・何を: JPモルガンのブロックチェーン事業Kinexysが、ドル建ての預金トークン「JPM Coin(JPMD)」を、10月19日にイーサリアムのメインネット(本番のネットワーク)上で提供開始した。預金トークンは、銀行の預金を公共ブロックチェーン上の記録として表したものである
- 技術: イーサリアムのほか、2025年11月からコインベース系のレイヤー2(取引を別のネットワークでまとめて処理する技術)であるBaseで稼働しており、Canton Networkへの対応も予定されている
- 段階: 本番運用。ただし対象は承認された機関投資家の顧客に限る。24時間いつでもチェーンをまたいで移転できる
- 規模: Kinexys全体の累計取扱高は4兆ドル超、1日の取扱高は70億ドルと同社は報告している。ただしこれは決済や担保など全サービスの合計で、公共チェーン上のJPMDだけの数字ではない
- トークンの扱い: ブロックチェーン技術と、銀行預金を表すトークンの両方が使われる。ブラックロックの運用商品BUIDLなど、イーサリアム上のトークン化資産の担保・流動性との相性が、展開の理由とされる(Ledger Insights)
各国の法改正・規制
米国
- 段階: 議会は審議中断、当局は規則の提案・準備の段階。米上院は9月15日、市場構造法案(CLARITY法案)の審議を進める採決で、可決に必要な60票に届かず49対50で否決した。倫理規定(公職者の暗号資産保有)と、ステーブルコインの利回りが銀行預金を奪うという懸念が争点だった。今の議会での成立は難しいとみられている(出所の見方)
- 何が変わるのか: 議会が止まったため、SEC(米証券取引委員会)とCFTC(米商品先物取引委員会)の規則が制度づくりの中心になる。CFTCは9月17日に暗号資産の規則案をホワイトハウスの規制審査部門(OIRA)に提出した。SECの暗号資産に関する規則案(Regulation Crypto Assets)は8月18日に公表され、意見募集は10月20日に締め切られた。拘束力のある規則の確定は1年以上先とされる(Orrick)
- 影響する人: 取引所、ステーブルコインの発行者(利回りの扱い)、銀行。日本や欧州と違い、法律ではなく当局の規則で決まる点が違いである
香港
- 段階: 認可制度の運用。HKMAは2026年4月10日付でHSBCにステーブルコイン発行者の認可を与えたとされる。発行・準備金の分別管理など規制の枠内で、一般向けサービスが始まった段階である(Crypto News Flash)
日本・EU
- 新しい制度の動きは、今回確認できなかった。
特集: 新しいビジネスの形
銀行が自社の決済アプリに、認可を受けたステーブルコインを載せる
- 仕組み: 銀行が、法定通貨(香港ドル)と1対1で連動するトークンを自ら発行し、準備金を別の口座で管理する。利用者は、すでに使っている決済アプリの中でウォレットを有効にするだけで保有・利用できる。ブロックチェーン上のウォレットや秘密鍵を自分で扱う必要がなく、見た目は既存のアプリのままである
- 誰がどう稼ぐのか: 収益の分け方は公表されていない。一般には、準備金の運用益、アプリ内の決済や両替の手数料、トークン化した投資商品の販売が収益源になりうる(筆者の整理)。HSBCは次の段階で、香港ドルのMMFを最低100香港ドルから、即時決済で売る計画を示している。利用者にとっての利点は、少額から始められ、決済が早い点である
- 既存のやり方との違い: 既存の電子マネーやアプリ内の残高は、アプリ運営者の帳簿上の数字で、他のサービスに持ち出せないことが多い。ブロックチェーン上のトークンなら、今後は他の事業者やチェーンとも接続できる余地がある。ただし現在は、HSBC自社のアプリ内に限られる
- 課題・リスク: 発行残高や利用実績が公表されておらず、普及の度合いは分からない。使うブロックチェーンも明らかでなく、第三者が仕組みを検証しにくい。香港外への送金や他社アプリでの利用は、当面できない
- 具体例: HSBCのRedCoin(PayMe)。前回までの特集(10月11日のスマートフォンの標準ウォレット、10月23日の米国SoFiの利息付きトークン化預金)とは、「銀行が規制下で自らステーブルコインを出し、既存の決済アプリに載せる」点で異なる(Crypto News Flash)
業界トピック
- 10月23〜25日に、新しい大規模なハッキングや取引所の破綻は、確認できた範囲では見当たらない。参考として、PeckShieldによると9月の暗号資産の被害は55件・7億6650万ドルで、2026年で最悪の月だった(Cointelegraph)

