前回からの変化

前回(2026-10-21、前日)との比較である。

変わったこと(変化・新規)

  • ビットコインは前回の82,690.82ドルから84,613.71ドルへ(1,922.89ドル高、24時間で2.25パーセント高)、イーサリアムは2,446.85ドルから2,489.83ドルへ(42.98ドル高、24時間で1.40パーセント高)。ともに上昇が続いた。取得時刻は前回と異なる(CoinDesk: Bitcoin price today、CoinDesk: Ethereum price today)
  • 前回の特集はAIエージェントの決済だった。今回は、米国の最終規則で扱いが焦点になったステーブルコインの報酬を扱う(CoinDesk)
  • 新たに、OCCの最終規則、HSBCのトークン化預金を使った資金運用、スタンダードチャータードのZodia買収が加わった

昨日と同じこと(継続)

  • ステーブルコインやトークン化を、既存の金融の枠組みに組み込む動きは続いている。前回はフランスの課税案とSECの特例だったが、今回は米国の銀行規制当局の最終規則である
  • マスターカードのAIエージェント決済、マレーシア中央銀行のトークン化債券、スイスの現物ビットコインETF、フランスの課税案には、新しい続報を確認できなかった

要因の連続性

  • 継続要因: ステーブルコインやトークン化商品を、当局が制度の内側に取り込もうとする流れ。銀行側が預金への影響を懸念する構図も、前回の発行体保護をめぐる指摘に続いて働いている
  • 新規要因: 米国のステーブルコイン最終規則が確定し、2027年1月18日の施行に向けて発行体の準備が動き出すこと。報酬をめぐる銀行業界との対立が表に出たこと
  • 解消した要因: なし

市況ひとこと

ビットコインは84,613.71ドルで、24時間では2.25パーセント高だった。イーサリアムは2,489.83ドルで、24時間では1.40パーセント高である。数値は10月22日朝(日本時間)に価格サイトで確認した表示値で、いずれも変動は5パーセント未満のため、理由は付けない(CoinDesk: Bitcoin price today、CoinDesk: Ethereum price today)。

社会実装・インフラへの採用

HSBCのトークン化預金で、アント・インターナショナルが余剰資金を運用

  • 誰が・何を: シンガポールを拠点とする決済大手アント・インターナショナルが、HSBCのトークン化預金(銀行預金をブロックチェーン上の記録にしたもの)を使い、使っていない資金をフランクリン・テンプルトンのトークン化MMF「BENJI」へ移す取引を行った
  • 技術: HSBCは許可制の台帳(参加者が限られたブロックチェーン)でトークン化預金を扱い、BENJIのファンドトークンは公開ブロックチェーン上で発行される。両者のあいだを、20行超の銀行をつなぐ「WhaleRTP」が取り持つ。申し込みと解約を時間を問わず行えるのが特徴である
  • 段階: 最初の取引を行った段階で、本格的な商用提供とは確認できない。取引額は公表されていない。トークンについては、トークン化預金とファンドトークンの双方が使われる(Ledger Insights)

ジェネラリ、MMFにトークン化シェアクラスを新設

  • 誰が・何を: イタリアの保険・運用大手ジェネラリが、運用資産およそ130億ユーロ(約150億ドル)のマネー・マーケット・ファンドに、デジタル型のシェアクラスを設けた
  • 段階: 当面の対象はジェネラリ・グループ内の会社に限られ、順次広げる計画である。使うブロックチェーンは、確認できた範囲では明示されていない。トークン化シェアクラスの規模も公表されていない(Ledger Insights)

各国の法改正・規制

米国

  • 米通貨監督庁(OCC)は10月21日、GENIUS法(米国のステーブルコイン法)に基づく最終規則を公表した。2027年1月18日に施行される。提案時から大きく緩み、1日で現金化できる資産を持つ義務は、提案の10パーセントから5パーセントに下がった。週次30パーセントの要件は削られ、準備資産の加重平均満期を20日以内に抑える上限もなくなった。残りの準備資産は、満期93日までの米国債で持てる。1つの機関への預け入れを50パーセントまでとする上限も外れた(Ledger Insights)
  • 報酬の扱い: 提案にあった、関連する第三者を通じた利回りの支払いを原則違法とみなす推定は、最終規則で削られた。代わりに、個別の事案ごとに判断される。一方、規則の施行前から続く報酬プログラムには、適合を認める安全地帯や是正の猶予は与えられない(CoinDesk)
  • 反応: 米国銀行協会(ABA)のロブ・ニコルズ最高経営責任者は、決済用ステーブルコインと銀行預金の区別が曖昧になりかねないと批判し、預金が流出する懸念を示した。TDコーエンのジャレット・サイバーグ氏は、裁判所が判断するまで、何が認められ何が禁じられるのかは不透明だと述べた(The Block)
  • 段階: 最終規則の公表済み。次の段階は2027年1月18日の施行で、訴訟になる可能性も指摘されている。誰に影響するかは、ステーブルコインの発行者、報酬を出す取引所、預金を預かる銀行である

日本・EU・その他

  • 新しい制度の動きは、今回確認できなかった。

特集: 新しいビジネスの形

ステーブルコインの「報酬」をめぐる稼ぎ方と制度の綱引き

直近2週間の特集は、トークン化預金、信託銀行、株式のトークン化、ローン債権、標準ウォレット、小規模銀行のトークン、担保ミラーリング、トークン化MMF、国債トークンを担保にする取引、事前積み立て、協調融資の共通台帳、送金事業者の買収、Partior、デジタル国債、AIエージェント決済だった。今回は、ステーブルコインを持つ人に報酬を出す仕組みを扱う。

  • 仕組み: ステーブルコインの発行者は、利用者から預かったドルの裏づけ資産を、短期の米国債などで運用して利息を得る。GENIUS法は、発行者が保有者へ利息や利回りを直接払うことを禁じている。しかし、取引所などの別の事業者が、自社のサービスの特典として報酬を出す余地が残されており、その線引きが争点になってきた。OCCの最終規則は、関連する第三者を通じた支払いを原則違法とする推定を外し、個別に判断する形にした
  • 誰がどう稼ぐのか: 発行者は準備資産の運用益を得る。取引所などの提携先は、運用益の一部を分け合い、報酬を呼び水に利用者を集めて取引手数料などを得る、というのが一般的な構図である。収益の分け方は公表されていないことが多く、ここから先は一般論である。保有者にとっては、預金より高い利回りが得られる場合がある
  • 既存のやり方との違い: 銀行預金は、銀行が運用益から利息を払う。ステーブルコインでは発行者と、利用者に接する事業者が分かれ、その分、利回りの出どころと払い手が見えにくい。銀行側は、この仕組みで預金が流れ出すと主張している
  • 課題・リスク: 個別判断になったことで、どの報酬が認められるのか、事前に分かりにくい。既存のプログラムには猶予がないため、事業者は施行の2027年1月18日までに設計を見直す必要が出る。訴訟で結論が変わる可能性もある
  • 具体例: 米国の取引所が、自社で扱うステーブルコインの保有者に報酬を出す例が知られている。今回の規則では、こうした提携型のプログラムが個別判断の対象になる(CoinDesk、The Block)

業界トピック

  • スタンダードチャータードは10月21日、暗号資産のカストディ(顧客の資産を預かる業務)を手がけるZodia Custodyの全株式の取得について、最終契約を結んだ。金額は公表されておらず、当局の承認などを条件とする。5月に拘束力のない提案を受け入れてから、6月に最終契約、8月に完了という見込みだったが、実際の契約は10月にずれ込んだ。Zodiaのソフトウェア事業は、別会社「Zodia Solutions」としてSC Venturesのもとに残る(The Block)
  • 新たな大規模ハッキングや取引所の破綻は確認できなかった。