前回からの変化
前回(2026-09-15)との比較。
変わったこと(変化・新規)
- FDAは小児の遺伝性疾患サンフィリッポ症候群A型に世界初の遺伝子治療ファユヴィを承認した(前回報告したアレキサンダー病治療薬ザンバストロ承認に続く、希少疾患領域での新たな世界初承認)
- FDAは乳がん領域でイムルネストラントとアベマシクリブの併用療法を承認した(前回報告したcamizestrant迅速承認とは別の新規承認)
- EMAのCHMPが12件の新薬に肯定的意見(承認勧告)を出した(前回はEMAの動きの報告なし)
- インフルエンザは、前回「全国定点あたり報告数が1.00を超え流行入りした」段階だったが、今回は定点あたり報告数が5.54(前週比で報告数がおよそ8000人増加)まで急拡大し、東京都で注意報基準を超えた
昨日と同じこと(継続)
- コンゴ民主共和国のエボラ様出血熱流行は、前回報告時点(確定6778例・致死率48.3%)からWHOの新たな更新がなく、高い致死率のまま流行が続いている
- 国内の新型コロナウイルス感染症は、前回に続き定点あたり報告数の増加傾向が続いている(全国値は本稿執筆時点で確認できず、地域の一例として愛媛県では第36週1.71から第37週2.37に増加)
要因の連続性
- 継続要因: 今シーズンの記録的に早い流行入りが、インフルエンザ急拡大の背景として前回から引き続き働いている
- 新規要因: 特になし(早期流行入りという同一要因の規模が拡大した形)
- 解消した要因: なし
今週の概観
過去1週間は、FDAが小児の遺伝性疾患サンフィリッポ症候群A型に対して世界初の遺伝子治療ファユヴィを承認したほか、乳がん領域でも新たな併用療法を承認するなど、希少疾患とがん領域で前進が相次いだ。EMAのCHMPは12件の新薬に承認勧告を出し、欧州でも薬剤供給の広がりが見込まれる。国内ではインフルエンザが例年より早いペースで拡大し、東京都をはじめ複数地域で注意報基準を超えた。新型コロナウイルスも定点あたり報告数の増加傾向が続いている。海外では米ニューヨーク市でレジオネラ症のクラスターが確認され、香港では2026年初の国内感染チクングニア熱が報告されるなど、局地的な感染症の動きも見られた。コンゴ民主共和国のエボラ様出血熱流行は、前回報告時点の水準で高止まりが続いている。
承認・審査の動き
FDA
- 米国食品医薬品局(FDA)は2026年9月17日、Ultragenyx Pharmaceutical(ウルトラジェニックス・ファーマシューティカル)が開発した遺伝子治療ファユヴィ(一般名rebisufligene etisparvovec-hopf)を、ムコ多糖症III型A(MPS IIIA、サンフィリッポ症候群A型。脳と神経系を進行性に傷害する稀な遺伝性疾患)の治療薬として承認した。同疾患を対象とした承認薬は世界初となる。対象は2〜5歳の小児患者。オーファンドラッグ・ファストトラック・ブレークスルー治療の各指定を受けた品目だが、通常承認・迅速承認いずれの区分かはFDA発表に明記されていない。非盲検単一群の臨床試験で、主要評価項目である認知スコアの平均変化を未治療の歴史的対照群と比較し、治療患者は認知機能を維持または改善したと報告された。安全性面では肝酵素上昇、悪心・嘔吐、発熱、食欲低下などが5%以上の患者で見られた。(出典: FDA - FDA Approves First Gene Therapy for Pediatric Patients with Sanfilippo Syndrome Type A)
- FDAは2026年9月18日、Eli Lilly(イーライリリー)のイムルネストラント(imlunestrant)とアベマシクリブ(商品名Verzenio)の併用療法を、ホルモン受容体陽性・HER2陰性・ESR1変異のある進行または転移性乳がん(少なくとも1ラインのホルモン療法後に進行した成人患者が対象)に通常承認した。第3相EMBER-3試験(登録874例)のESR1変異患者部分集団の解析では、主要評価項目である無増悪生存期間(治療後にがんが進行しなかった期間)の中央値が併用群11.1か月・単剤群5.5か月で、ハザード比0.53(95%信頼区間0.35〜0.80)と有意な改善を示した。奏効率は併用群35%、単剤群15%だった。(出典: FDA - FDA Approves Imlunestrant in Combination with Abemaciclib)
EMA
- 欧州医薬品庁(EMA)のCHMP(ヒト用医薬品委員会)は2026年9月14〜17日の会合で、12件の新薬に肯定的意見(承認勧告)をまとめた。主な品目は、血友病A患者の出血予防を対象とするFrehemgo(denecimig、Novo Nordisk)、ALK陽性の進行非小細胞肺がんを対象とするGevalka(ensartinib、SFL Pharmaceuticals)、全身型重症筋無力症を対象とするKlygefa(gefurulimab、Alexion Europe)、プラチナ耐性卵巣がんを対象とするLifyorli(relacorilant、Corcept Therapeutics)、短腸症候群を対象とするZeydovio(glepaglutide)など。あわせて11件の適応拡大も勧告され、第一三共とアストラゼネカのEnhertu(トラスツズマブ デルクステカン)の早期HER2陽性乳がんへの適応拡大が含まれる。CHMPの肯定的意見は欧州委員会の最終承認判断の基礎となる。(出典: EMA - Meeting highlights from the CHMP, 14-17 September 2026)
感染症・公衆衛生
- コンゴ民主共和国では、ブンディブギョウイルスによるエボラ様出血熱の流行が続いている。WHOによる直近の集計(2026年9月10日公表、データ基準日9月7日)では確定症例6,778例(コンゴ民主共和国6,757例、ウガンダ20例、フランス1例)、死者3,269例、致死率(感染確定者のうち死亡した割合)48.3%で、6州61保健地区に及ぶ。今週はWHOによる新たな状況報告の公表がなく、この水準からの大きな動きは確認されていない。(出典: WHO - Ebola disease caused by Bundibugyo virus – Democratic Republic of the Congo)
- インフルエンザは、厚生労働省が2026年9月18日に公表した第36週(9月7日〜13日)の全国定点あたり報告数(指定医療機関1か所あたりの週間患者報告数)が5.54となり、報告患者数は20,697人で前週からおよそ8,000人増加した。昨年同時期のおよそ7倍の水準で、感染症法が施行された1999年以降で2009年に次いで2番目に早い流行入りとなった今シーズンは、そのまま急速な拡大が続いている。東京都では同期間の患者報告数が注意報基準(定点あたり10人)を超えたと発表された。(出典: ウェザーニュース - インフルエンザ患者数2万人超え 既に昨年同時期の7倍以上に)
- 新型コロナウイルス感染症は、厚生労働省が2026年9月11日・18日に発生状況の報道発表を行い、定点あたり報告数の増加傾向が続いていることを示した。全国値は本稿執筆時点で確認できなかったため、地域の一例として愛媛県の集計(2026年9月18日公表)を示すと、定点あたり報告数は第36週1.71人から第37週2.37人に増加している。(出典: 愛媛県 - 新型コロナウイルス感染症の感染状況(2026年))
- 米ニューヨーク市の南ブロンクス(メルローズ・モリサニア地区)で、レジオネラ症(汚染された水の飛沫を吸い込むことで起こる肺炎)の地域クラスターが確認され、2026年9月15日時点で確定12例・死者1例が報告された。(出典: NaTHNaC(travelhealthpro) - Outbreak Surveillance)
- 香港では2026年9月17日、蚊が媒介するチクングニア熱の地域感染例が1例報告され、同地域における2026年最初の地域感染例となった。(出典: NaTHNaC(travelhealthpro) - Outbreak Surveillance)
- なお、本レポートは公表情報の要約であり、受診・服薬・ワクチン接種など個別の判断は必ず医師にご相談ください。
臨床試験・研究の結果
- 第3相MATTERHORN試験の最終解析結果が、2026年9月9日付でLancet誌に掲載された。切除可能な胃・胃食道接合部腺がんの患者948例(各群474例)を対象に、周術期のFLOT療法(フルオロウラシル・ロイコボリン・オキサリプラチン・ドセタキセル)にデュルバルマブを併用する群とプラセボを併用する群を比較した無作為化二重盲検試験で、スポンサーはアストラゼネカ。追跡期間中央値約43か月時点で、死亡はデュルバルマブ群34%(160/474例)、プラセボ群41%(192/474例)、全生存期間のハザード比は0.78(95%信頼区間0.63〜0.96、p=0.021)、3年生存率はデュルバルマブ群69%対プラセボ群62%と有意な改善を示した。公表自体は今週の直前だが、国内の医療ニュースでも今週にかけて広く紹介された。(出典: The Lancet - MATTERHORN: final results)
- 第3相LIBREXIA ACS試験の結果が、2026年8月29日にESC(欧州心臓病学会)議長講演で発表されると同時にNEJM誌に掲載された。急性冠症候群(ACS)後の患者14,194例(ミルベキシアン群7,094例・プラセボ群7,100例)を対象に、標準的な抗血小板療法へのミルベキシアン(第XIa因子阻害薬)上乗せの効果を検証した無作為化試験で、スポンサーはブリストル・マイヤーズ スクイブとジョンソン・エンド・ジョンソン。追跡期間中央値12.2か月で、主要評価項目(心血管死・心筋梗塞・虚血性脳卒中の複合)の発生はミルベキシアン群5.4%、プラセボ群5.1%、ハザード比1.05(95%信頼区間0.91〜1.21、p=0.50)で有意差はなく、2025年11月に無益性を理由として早期中止されていた。重篤な出血(BARC分類3c型または5型)の増加は見られなかった(両群とも0.3%)。有効性が示されなかった大規模な陰性結果として、今週の国内医療ニュースでも紹介された。(出典: NEJM - Milvexian with Antiplatelet Therapy after Acute Coronary Syndrome Event)
