前回からの変化

前回レポートなし(比較対象なし)

今週の概観

過去1週間は、FDAが希少神経疾患と乳がんの領域で相次いで承認を出した一方、コンゴ民主共和国ではブンディブギョウイルスによるエボラ様出血熱の流行が続き、致死率の高さが依然として大きな課題となっている。国内では新型コロナウイルスとインフルエンザの定点あたり報告数がそろって増加し、秋にかけての感染拡大に注意が呼びかけられている。学術面では、高齢者向けの新しいインフルエンザワクチンの第3相試験結果がLancet姉妹誌に掲載された。

承認・審査の動き

FDA

  • 米国食品医薬品局(FDA)は2026年9月3日、Ionis Pharmaceuticals(アイオニス・ファーマシューティカルズ)が開発した核酸医薬ザンバストロ(一般名zilganersen、ジルガネルセン)を、希少な遺伝性神経疾患であるアレキサンダー病の治療薬として承認した。同疾患を対象とした承認薬は世界初となる。オーファンドラッグ・ファストトラック・希少小児疾患等の指定を受けた品目だが、承認区分自体は通常承認で、対象は小児から成人まで。第1相試験(49例、2歳以上が対象)では、歩行に困難があった5歳以上の患者群で、61週時点の歩行速度が未治療の対照群より有意に良好だった。(出典: FDA - FDA Approves First Drug to Treat Alexander Disease)
  • FDAは2026年9月4日、アストラゼネカのcamizestrant(商品名Etcamah)について、CDK4/6阻害薬(アベマシクリブ、パルボシクリブ、リボシクリブのいずれか)との併用で、ホルモン受容体陽性・HER2陰性の局所進行または転移性乳がん(治療中にESR1変異を新たに獲得した患者)を対象に迅速承認(Accelerated Approval)を出した。血液検査でがん由来DNA(ctDNA)のESR1変異を検出し、画像診断で進行が確認される前に治療薬を切り替える仕組みに基づく初のがん治療薬承認とされる。無増悪生存期間(治療後にがんが進行しなかった期間)の推定中央値は、Etcamah併用群で16か月、アロマターゼ阻害薬併用群で9.2か月だった(信頼区間・p値はFDA公表資料に記載なし)。併用するコンパニオン診断薬Guardant360 CDxも同時承認された。(出典: FDA - FDA Grants Accelerated Approval to a New Breast Cancer Treatment)

感染症・公衆衛生

  • コンゴ民主共和国では、ブンディブギョウイルスによるエボラ様出血熱の流行が続いている。WHOが2026年9月10日に公表した疾病流行ニュース(データ基準日は同年9月7日)によると、確定症例数は6,778例(コンゴ民主共和国6,757例、ウガンダ20例、フランス1例)、死者3,269例、致死率(感染確定者のうち死亡した割合)は48.3%。流行は6州61保健地区に拡大しており、通常のエボラウイルス病向けに承認済みのワクチン・治療薬がブンディブギョウ株には効かないことが対応を難しくしていると指摘されている。(出典: WHO - Ebola disease caused by Bundibugyo virus – Democratic Republic of the Congo)
  • 国内の新型コロナウイルス感染症は、厚生労働省が2026年9月10日に公表した第36週(8月31日〜9月6日)の全国定点あたり報告数(指定医療機関1か所あたりの週間患者報告数)が2.08となり、前週の1.47から増加した。全国の報告数は7,777人で、前週から2,318人増えた。(出典: H・CRISIS(国立健康危機管理研究機構) - 新型コロナウイルス感染症に関する報道発表資料(発生状況)2026年(令和8年9月10日))
  • インフルエンザは、厚生労働省が第34週(8月17日〜23日)時点の全国定点あたり報告数が1.11となり、流行開始の目安である1.00を超えたと発表した。感染症法が施行された1999年以降では2009年に次いで2番目に早い流行入りとなる。今週分(第36週前後)の最新定点データは公表元サイトの閲覧制限により確認できなかったが、例年より早い流行入りを踏まえ、今後の報告数の推移に注意が必要とされている。(出典: 厚生労働省 - インフルエンザの発生状況について(報道発表))

臨床試験・研究の結果

  • CSLセキラス(CSL Seqirus)は、50歳以上を対象とした細胞培養由来・高用量・MF59アジュバント添加の4価インフルエンザワクチン(aQIVc、製品名AUJEMFLU)の第3相試験(Celljuvant試験)結果が、2026年9月10日付でLancet Infectious Diseases誌に掲載されたと発表した(企業発表)。カナダ・デンマーク・エストニア・ドイツ・パキスタン・フィリピン・英国・米国の50歳以上7,699例を対象に、MF59アジュバント添加の卵由来4価ワクチンおよび組み換え4価ワクチンと免疫原性・安全性を比較した。結果、卵由来アジュバントワクチンに対しては対象4系統すべてで優越性を示し、組み換えワクチンに対しては50歳以上で4系統中3系統、65歳以上では4系統すべてで非劣性を示した(効果量の詳細な数値は論文本体に記載されており、プレスリリースでは非開示)。(出典: BioSpace - Lancet Publication Marks Important Advance in Influenza Prevention for Older Adults)