前回からの変化

前回(2026-10-25、前日)との比較である。

変わったこと(変化・新規)

  • 前回は性能値が中心だったKimi K3.1 Proについて、Moonshot自身のブログで「サイバー関連のデータを学習の中盤とRL環境から取り除いた」ことが確認できた。攻撃的なサイバー能力の指標xdev-bench-hard(pass@3)は、制限なしの内部版が90.5%、公開版が81.0%と説明されている(Kimi)
  • 前回は24日公開と整理したが、Simon Willisonの記事は10月23日付で、公開日は23日が正しい可能性が高い。価格は入力が100万トークンあたり2ドル、出力が10ドルで、Claude Opus 5.5の半額とされる(Simon Willison)
  • 前回は米国の大手モデルとの比較が中心だったが、今回は、Artificial Analysisの指数でK3.1 Proが55、Claude Opus 5.5が58、Claude Fable 5.1とGPT-6 Astraが53という並びが確認できた(同上)
  • 前回ニュースレター経由だった話題の一次情報を確認した。Claude Duetは、AnthropicのクラウドでユーザーのオフラインにもアプリやWebを操作する研究プレビューのエージェントで、承認カードと別系統の意図確認、認証情報をモデルに渡さない設計、隔離したブラウザ仮想マシンが特徴である(Anthropic)

昨日と同じこと(継続)

  • 新モデルの性能値が各社の自己申告に偏り、第三者の検証が遅れる構図は続いている。Kimi K3.1 ProのTerminal-Bench 4.0(65.7%)などはMoonshot自身の数字で、重みが出るまで手元での再現はできない
  • エージェントの自律性が高まるほど、監視・封じ込め・承認の設計が焦点になる流れが続いている。前回のClaude Mythos 5の試験とOpenAIの訓練環境の話題に続き、今回はRedwood Researchの評価手法とClaude Duetの設計が挙がった

要因の連続性

  • 継続要因: エージェントの安全と監視の設計が中心になる流れ。前回の封じ込めの失敗事例に続き、今回は評価と防御の設計側の話題が加わった
  • 新規要因: オープンウェイトの公開に、能力を意図的に弱める調整を組み込む動き。公開と安全のバランスが、モデルの出し方そのものに入り込んだ
  • 解消した要因: 前回の「Kimi K3.1 Proの数字の出典が二次情報のみ」という点は、Moonshotのブログで一部確認できた。ただし第三者の検証は引き続き出ていない

本日のハイライト

Kimi K3.1 Pro: サイバー能力を弱めたオープンウェイト

Moonshot AIは、Kimi K3.1 ProをKimi.com、Kimi Work、Kimi Code、APIで公開した。コンテキスト長は100万トークンで、画像などを扱えるマルチモーダルである。総パラメータ2.8兆のうち動くのは1040億の専門家混合(MoE)構成と報じられている(自社ブログにパラメータ数の記載はなく、Startup Fortuneなど他の報道による数字)。完全なオープンウェイト(重みの公開。自分の環境で動かせる形)は11月4日までに出す予定で、ライセンスは今回確認した範囲では示されていない(Kimi)。

Moonshotが自社で測った数字は、Terminal-Bench 4.0が65.7%(Claude Opus 5.5は66.4%、GPT-6 Astraは58.2%)、Kimi Code Bench 3.0が61.2%、BenchCAD(ツールあり)が92.7%(Opus 5.5は96.2%)である(いずれもMoonshot自社の数字)。Simon Willisonによると、Artificial Analysisの指数は55で、「重みが出る予定のモデルでここまで高い値は初めて」と整理されている(Simon Willison)。

注目点は安全面の調整である。サイバー関連の内容が学習データの中盤と強化学習の環境に含まれていたため、公開用では両方から取り除いたと説明されている。攻撃的な能力の指標xdev-bench-hardは、内部の制限なし版の90.5%に対し公開版は81.0%で、Moonshotは「大幅に下げた」と位置づけている(Kimi)。どちらの数字も自社発表で、第三者の検証はまだ出ていない。

主要企業のリリース

  • Anthropic: Agent Skills(AIに手順や知識を渡す「手順書」の形式)を、Linux Foundation傘下のAgentic AI Foundationへ寄贈した(10月22日)。Anthropic、Block、OpenAIが共同で立ち上げた同財団には、MCPの仕様もすでに寄贈されている。ベンダー中立でコミュニティ主導の標準にする位置づけである(Simon Willison)
  • Anthropicのエージェント設計の指針として、複数のサブエージェントを1つの主エージェントのループに統合することを勧める内容が、ニュースレターで紹介された。約15のエージェントを1つにまとめたら評価が上がったという開発者の報告も添えられている(二次情報で、一次情報は確認できていない。Another Daily AI Newsletter)
  • Google、OpenAI、Meta、xAIの新しいモデルの技術的なリリースは、確認できた範囲では見当たらない

新興AI・注目の新顔

  • Flint(Recursive SI): コーディングエージェント向けのMoEモデルで、総パラメータ約398億、1トークンあたり動くのは約25億、コンテキスト長262,144トークン。Apache 2.0で公開され、SGLangで動かせる(1つのB300またはH200のGPUが目安)。モデルカードには、Terminal-Bench 2.1で54.9%、SWE-bench Pro v2で89.7%、SWE-bench Verifiedで74.2%という値がある。いずれも作者が示した数字で、評価条件の詳細と第三者の検証は確認できていない(Hugging Face)。Hugging Faceのトレンド上位に入っている(Hugging Face)
  • Hugging Faceのトレンドには、DeepSeek-V4.1-Flash-1017(7,630億パラメータ)やQwen3.8-27Bも並ぶ。後者は780万回超ダウンロードされている(一覧の表示値。個別の中身は今回確認していない)
  • 前回までに紹介したMiniMax M3.1 FlashとMercury 3の続報は、今回の出典では確認できなかった

AI開発手法

  • Redwood Researchは、エージェントの監視役(モニター)の効果を測る新しい手法「Simulated Control Evaluations」を公表した。攻撃を試みるAIが実際には動作せず、LLMのシミュレーターが道具の出力をそれらしく作り、LLMの審査役が攻撃の成否を判定する。LinuxArenaの安全性の数字を誤差3.6ポイントで予測でき、単純な設定(BashArena)の誤差10.1ポイントより小さい。実際の環境で試せる範囲での検証にとどまり、長時間・複数エージェントの協調攻撃は対象外と限界も書かれている(Redwood Research)
  • 課題に効く条件: エージェントの安全評価を、本物のシステムを危険にさらさず安く回したい場合。再現には、信頼できるシミュレーターが必要である
  • ニュースレターは、Codex CLIのプリセット機能(v0.164.0)や、コードを書き換えながら動くオープンソースのエージェント基盤「Octopus OS」も挙げているが、詳細は一次情報で未確認である(Another Daily AI Newsletter)

AIを使った新サービス

  • Claude Duet(研究プレビュー): ユーザーがオフラインの間も、連携したアプリやサービスを使ってメールの下書きや予約などを進めるエージェント。機微な行動の前に承認カードを出し、別系統の分類器が「操作が本人の意図に合うか」を確認する。パスワードや認証トークンはモデルに渡らず、専用の隔離したブラウザ仮想マシンが画面操作だけを受け持つ。健康や金融などの機微情報は、同意なしに共有しない(Anthropic)。利用開始の条件や価格は、今回確認した範囲では示されていない

トレンドのAI活用法

特筆すべきトレンドなし。

LLM性能比較・得意分野

エビデンス付きの新しい比較として、Artificial Analysisの指数が確認できた。Kimi K3.1 Proが55、Claude Opus 5.5が58、Claude Fable 5.1とGPT-6 Astraが53である。ベンチマーク名と点数は確認できたが、評価条件の詳細までは今回確認しておらず、「この指数ではこの並びだった」という範囲にとどめる(Simon Willison)。

法律業務の評価Vals Legal Indexでは、Wonder Fullが77.9%、Gemini 4 Argonが76.7%と報じられた。OCRの評価OmniParseBenchでは、オープンな17モデルを16,288件のテストで比べ、Chandra OCR 2が表で90.1%と最高だった(いずれもニュースレター経由の二次情報。Another Daily AI Newsletter)。

研究・技術

自己書き換えを行うLLMの実験では、2回の全面的な書き換えで保持データの得点が2.80ポイント上がったが、95%信頼区間が0をまたぎ、人が手を入れる改善のほうが優れていたという報告がある(二次情報。論文などの一次情報は未確認)。近いうちに道具として使えるかの見立ては、重みが出るKimi K3.1 Proが、100万トークン規模のMoEを手元で試せるかが次の論点になる。ただし実際に動かすには非常に大きな計算資源が必要とみられる。

規制・政策

提供条件に関わるものとして、GoogleのPersonal Intelligence(個人データを使うAI機能)で、GmailやフォトのデータをAI機能の広告のパーソナライズに使える例外を10月16日付で追加したと、ニュースレターが伝えている。参加しない利用者の初期設定は変わらないとされる(二次情報で、一次情報は未確認。Another Daily AI Newsletter)。