前回からの変化
前回(2026-10-19、前日)との比較である。
変わったこと(変化・新規)
- ビットコインは前回の80,800.86ドルから81,917.35ドルへ(1,116.49ドル高、24時間で0.98パーセント高)、イーサリアムは2,345.24ドルから2,399.79ドルへ(54.55ドル高、24時間で1.28パーセント高)。前回は24時間でともに下落していたが、今回は上昇に転じた。取得時刻は異なる(CoinDesk: Bitcoin price today、CoinDesk: Ethereum price today)
- 前回の特集は銀行共同のトークン化預金の決済網Partiorだった。今回は、国が発行する国債そのものをブロックチェーン上で発行した事例を扱う(Ledger Insights)
- 株式のトークン化では、発行体の側が取引に反対する動きが新たに表面化した(Ledger Insights)
- 米国の法的な動きとして、ビットコインの永久先物をめぐるCFTCとCMEの対立と、Tetherへの上院民主党の調査への反論が加わった
昨日と同じこと(継続)
- 銀行・決済大手がブロックチェーンを既存の業務に組み込む流れは続いている。前回のバーレーン国立銀行とPartiorの件は、覚書による調査段階のままで、新しい続報は確認できなかった
- ラトビアの課税法やホワイトハウスの暗号資産責任者の退任は、新しい続報を確認できなかった。ブラジルと豪州の件も前回の整理のままである
- 大規模なハッキングや取引所の破綻は、今回も確認できなかった
要因の連続性
- 継続要因: 金融機関と決済大手による実利用への組み込み。前回のPartiorに続き、今回はマスターカードとビザ、ルクセンブルクの国債が加わった
- 新規要因: 既存の上場企業が、自社株式を第三者がトークン化して取引することに反対する動き。トークン化の拡大に、発行体の同意という論点が加わった
- 解消した要因: なし
市況ひとこと
ビットコインは81,917.35ドルで、24時間では0.98パーセント高だった。イーサリアムは2,399.79ドルで、24時間では1.28パーセント高である。数値は10月20日朝(日本時間)に価格サイトで確認した表示値で、いずれも変動は5パーセント未満のため、特記する理由は付けない(CoinDesk: Bitcoin price today、CoinDesk: Ethereum price today)。
社会実装・インフラへの採用
OKXICE、トークン化株式の取引に16社が異議
- 誰が・何を: OKXICEは、インターコンチネンタル取引所(ICE)と暗号資産取引所OKXの合弁事業である。米国株をトークン化して取引する場で、SECが9月に与えた5年間の特例(トークン化証券の取引場に対する免除)のもとで運営される。登録済みの取引所に課される規則の一部が免除される代わりに、参加者を限った自動売買の仕組みで取引する。ここで株式がトークン化されることに、16社が異議を出した
- 経過: 異議は10月4日に1社、15日までに9社、15〜19日にさらに増えて16社になった。当初予定の63銘柄のうち17銘柄が、開始前に取引対象から外れた。最初の波はAI関連のセレブラス、コアウィーブ、アプライド・デジタル、ブロードコム。次の波はマイクロソフト、アルファベット、ゴールドマン・サックス、クアルコム、キャタピラー、マクドナルド、ウエスタン・デジタルである
- 段階: 取引の開始前。異議を出していない暗号資産系の企業(コインベース、ロビンフッド、サークル、セキュリタイズ)は上場する見込みである
- トークンの扱い: 株式を裏付けとするトークンであり、暗号資産そのものではない。異議が法的にどう扱われるかは、記事から確認できなかった(Ledger Insights)。SECの一次資料は今回確認していない
マスターカードとビザ、ステーブルコインの決済基盤を本番へ
- 誰が・何を: マスターカードは10月15日、「グローバル・マネー・プラットフォーム」を始めた。8月に18億ドルで買収を完了した決済会社BVNKの技術を基盤に、法定通貨とステーブルコインを並べて持てる口座を、一つのAPIで提供する。ステーブルコイン連動カード、マスターカード・ムーブ経由の送金(2027年中に200か国超・40通貨超の予定)、将来のトークン化預金への対応を含む。初期の利用企業はヌベイ、マーカータ、オンタップなど
- 同じ日、ビザはステーブルコインによる国境をまたぐ決済の事前積み立てを、2025年からの試験を経て本番に移した。最初に使う事業者は決済処理会社のインヨ・グローバルである
- 段階: ビザは本番運用、マスターカードは基盤の提供開始で、国際送金の拡大は2027年の予定。ステーブルコイン(法定通貨に価値を連動させたトークン)そのものが決済の裏側で使われる(Ledger Insights)
欧州のデジタル債、2026年は64億ユーロに
- 誰が・何を: 欧州の金融市場協会(AFME)の報告によると、ブロックチェーン上で発行されるデジタル債の発行額は2026年に64億ユーロ(約72億ドル)に達し、2025年通年を30%上回った。アジアの発行が欧州の4倍(2025年)から3倍(2026年)に縮まったとされる。デジタル債の利回りは、従来の債券より中位から低めという分析もあるが、標本が小さく統計的な意味は限られる
- 段階: 本番運用の統計である(Ledger Insights)
各国の法改正・規制
米国
- CFTCは、CMEグループが起こした訴訟について、CMEには訴える資格がないとする書面を10月18日に裁判所へ出した。争点は、CFTCが5月に初めて承認したビットコインの永久先物(満期のない先物)の扱いである。最初の承認を受けたのはカルシ。CFTCは9月にも訴えの却下を求めており、訴訟は初期の段階。CMEが勝てば、永久先物は先物ではなくスワップの扱いになりうる(CoinDesk)
- Tetherのパオロ・アルドイノCEOは19日、ステーブルコインがイランの影のネットワークの資金源になっているとする上院民主党の報告(9月公表)に反論した。同氏は、制裁の指定より平均4週間早く資金を凍結してきたと主張し、イラン関連の取引量は2023年から94パーセント減ったとした。数字は同社自身の主張である(CoinDesk)
日本・EU・その他
- 新たに確認できた制度の動きはない。ルクセンブルクの国債は、下の特集で扱う。
特集: 新しいビジネスの形
国がブロックチェーン上で国債を発行する「デジタル国債」
直近2週間の特集は、ステーブルコインの準備金、トークン化預金、信託銀行、株式のトークン化、ローン債権、標準ウォレット、小規模銀行のトークン、担保ミラーリング、トークン化MMF、国債トークンを担保にする取引、事前積み立て、協調融資の共通台帳、送金事業者の買収、Partiorだった。今回は、国債を最初からブロックチェーン上で発行する取り組みを扱う。
- 仕組み: ルクセンブルク財務省は10月14日、17億ユーロの10年債(利率3.7パーセント)を、ドイツ取引所の「D7」で発行した。D7は、参加者を限ったイーサリアム互換のブロックチェーンである。発行と管理はLuxCSD(証券の保管・決済機関)が担う。発行そのものはチェーン上で行うが、発行時と流通市場での決済・利払いなどは、従来の仕組みで処理できるよう、チェーン外の記録でも表す。つまり、投資家は従来の口座のまま買え、裏側の発行手続きだけがブロックチェーンになる
- 誰がどう稼ぐのか: 国は、従来と同じ国債を新しい手続きで発行して、実務の合理化の効果を試す。注文は31億ユーロ超(幹事の1.5億ユーロ分を含む)と、発行額の約1.8倍に達した。幹事団や基盤の運営会社は手数料を得ているとみられるが、収益の分け方は記事に記載がなく、筆者の推測である
- 既存のやり方との違い: この債券は欧州中央銀行(ECB)の担保として使える。基盤が新しくても、中央銀行の資金繰りの仕組みに乗れる点が大きい。発行額は17億ユーロで、11月に満期を迎える既存債に合わせて上限を決めた。欧州の国としては2例目、世界では、9月に香港が出した25.5億ユーロのグリーン債に次ぐ規模とされる
- 課題・リスク: デジタル債の利回りが従来より低めという分析はあるが、標本が小さく、有利さが確かとは言えない。発行額は欧州全体でも64億ユーロにとどまり、アジアの国・公的機関が主役である。普及の壁は、投資家側の管理システムの対応と、発行する国の数、流通市場での売買の厚みである
- 具体例: ルクセンブルク財務省、ドイツ取引所のD7、LuxCSD(Ledger Insights、Ledger Insights: 欧州のデジタル債)
業界トピック
新たな大規模ハッキングや取引所の破綻は確認できなかった。

