前回からの変化

変わったこと(変化・新規)

  • 米10年債利回りは日中一時5.135%(前日比+17.8bp)まで急伸し、NY引けは5.11%(前日比+15.3bp)で、2007年7月以来の高水準となった。2年債は4.897%(+15.4bp、2023年以来の高水準)、30年債は5.438%(+14.1bp、2004年以来の高水準)と、いずれも一段の上昇となった(Yahoo Finance)。
  • FRBのバー理事が9月23日、シカゴでの講演で「インフレは2%目標に向けて明確には推移していない」「さらなる政策調整(利上げ)が必要になる可能性が高い」と明言した(FRB公式、FXStreet)。これを受け、CME FedWatchが示す10月28日FOMC会合での0.25%利上げ確率は9月23日時点の54.2%から9月24日時点73.5%へ急上昇した(phemex)。
  • 原油(WTI11月限)は米・イランの交渉停滞とホルムズ海峡を巡る緊張の高まりを受け、9月23日終値92.16ドル(+1.8%)、9月24日終値94.76ドル(+2.82%)と2営業日連続で急伸した。前回レポート時点で金利の下押し材料だった「外交交渉期待による原油安」の構図が反転した(日本経済新聞、Yahoo Finance)。
  • 米新築住宅販売件数(8月)は年率68.4万戸(前月比+6.4%)と市場予想61.5万戸を上回り、経常収支(4-6月期)も赤字幅2460億ドルと予想2550億ドルより小幅にとどまった。新規失業保険申請件数(9月19日終了週)も19.7万件と予想20.4万件を下回り、労働市場の底堅さを示した(Bloomberg、BEA、Yahoo Finance)。
  • 日本国債市場はシルバーウィーク明けで取引を再開し、10年債利回りは休場前終値2.985%から日中一時3.055%、引けは3.070%(+8.5bp)まで上昇した。1996年8月以来およそ30年ぶりの高水準となり、長期国債先物にはサーキットブレーカーが発動した(財経新聞、日本経済新聞)。
  • 米5年債入札(9月23日実施)は応札倍率2.21倍・テール3.1bpと、記録的に低調な需要となった(helious.io)。
  • ECB政策委員会メンバーのナーゲル・ドイツ連邦銀行(ブンデスバンク)総裁が9月22日夜、ロンドンで「エネルギー価格の高止まりが長期化すれば、金融政策を緩やかな景気抑制領域に移行する可能性を排除できない」と述べた(ただし判断は時期尚早とも付言)(Bloomberg)。

昨日と同じこと(継続)

  • 9月16日のFOMC利上げ(政策金利3.75〜4.00%)、9月18日の日銀利上げ(1.00〜1.25%)という「日米そろっての利上げ」の基調は引き続き市場の前提にある。
  • 2年10年スプレッドはプラス約21bp(9月24日時点、10年5.11%−2年4.897%)で、逆イールド解消の状態が続いている。
  • 日銀からは9月18日の植田総裁会見以降、新たな公式発言は確認できず、「物価の上振れリスク次第では連続利上げ・利上げ幅の拡大も排除しない」との姿勢が引き続き市場の金利観の前提となっている。
  • ECB(9月10日、0.25%利上げ・中銀預金金利2.5%)、BOE(9月17日、バンクレート3.75%で6会合連続据え置き、票決6対3)の直近決定に変更はない。

要因の連続性

  • 継続要因: FOMCの年内追加利上げ観測と、日銀の連続利上げの可能性が、引き続き米国債・JGB双方の金利押し上げ要因として働いている。
  • 新規要因: バー理事の明確な追加利上げ支持発言と、それを受けたCME FedWatchの10月利上げ確率急上昇(54.2%→73.5%)が、新たに金利上昇を加速させる材料として加わった。ホルムズ海峡を巡る地政学緊張による原油急伸も、新規のインフレ懸念材料として加わった。
  • 解消した要因: 前回時点で金利の下押し材料だった「米・イラン外交交渉への期待による原油安」は、交渉停滞の報道を受けて解消(反転)した。

1. 指標・金利サマリー

指標 結果 市場予想 前回値
米・新規失業保険申請件数(9/19週、9/24発表) 19.7万件 20.4万件 19.8万件(改定)
米・新築住宅販売件数(8月、9/24発表・年率) 68.4万戸 61.5万戸 64.3万戸
米・経常収支(4-6月期、9/24発表) -2460億ドル -2550億ドル -2126億ドル(改定)
年限 水準(取得時点) 前日比
米2年債 4.897%(9/24 NY引け) +15.4bp
米10年債 5.11%(9/24 NY引け、日中一時5.135%) +15.3bp
JGB10年 3.070%(9/24 東京引け) +8.5bp(休場前比)
独10年債(Bund) 3.57%(9/24時点) —

(取得時点: 日本時間2026年9月25日早朝。米国債利回りはNY時間9月24日引け。出典: Yahoo Finance)

2. 経済指標の結果

新規失業保険申請件数(9月19日終了週)

9月24日発表の新規失業保険申請件数(季節調整値。季節ごとの変動要因を均した値)は19.7万件となり、市場予想の20.4万件を下回った。前週分は当初発表の19.6万件から19.8万件に上方改定され、それに対しても1,000件の減少となった。4週移動平均は20.225万件で、前週の20.4万件から低下した。低水準の申請件数は、レイオフの少なさと労働市場の底堅さを示している(Yahoo Finance)。

雇用の底堅さは、FRBが「インフレ抑制を優先しても労働市場への配慮は薄れつつある」との判断を取りやすくする材料であり、バー理事の発言とも整合的である。

新築住宅販売件数(8月)

8月の新築住宅販売件数(季節調整年率換算)は68.4万戸となり、市場予想の61.5万戸、7月の64.3万戸(改定値)をいずれも上回り、前月比+6.4%と今年最速の伸びとなった。一方で前年同月比では-2.0%。中央値価格は39万3,700ドルで前月比+0.4%・前年比-5.8%となり、住宅ローン金利の高止まり(30年固定金利は9月半ばに6.95%と2025年1月以来の高水準)の下でも、値引きを伴いながら販売が持ち直したことを示した。在庫は48.3万戸で供給月数は8.5か月分だった(Bloomberg)。

強い結果は、金利高止まりの下でも住宅需要が完全には冷えていないことを示し、FRBの追加利上げ判断を後押しする材料の一つとなり得る。

経常収支(2026年4-6月期)

米商務省経済分析局(BEA)が9月24日発表した4-6月期の経常収支は、赤字額が2460億ドルとなり、前期(改定値2126億ドル)から334億ドル(15.7%)拡大した。ただし市場予想の2550億ドル赤字よりは小幅にとどまった。GDP比では3.0%(前期2.7%)に拡大。赤字拡大の主因はモノの貿易赤字の拡大で、第一次所得収支・経常移転収支の赤字縮小が一部相殺した(BEA)。

経常赤字の拡大自体は目新しい構図ではないが、対内資金流入(米国債需要)への含意として、海外勢の米国債保有動向が引き続き注視点となる。

3. 金利の動き

米国債利回りは9月24日、強い経済指標とバー理事の追加利上げ支持発言を受けて全年限で上昇した。2年債は前日比+15.4bpの4.897%(2023年以来の高水準)、10年債は+15.3bpの5.11%(日中一時5.135%、2007年7月以来の高水準)、30年債は+14.1bpの5.438%(2004年以来の高水準)で取引を終えた。2年10年スプレッドはプラス約21bpで、短期金利が長期金利を上回る「逆イールド」(将来の景気後退シグナルとされる)が解消した状態を維持している(Yahoo Finance)。

日本国債(JGB)10年物は、シルバーウィーク休場明けの9月24日に取引を再開し、休場前(9月18日)終値2.985%から日中一時3.055%、引けは3.070%(+8.5bp)まで上昇した。1996年8月以来およそ30年ぶりの高水準で、急激な変動を受け長期国債先物にはサーキットブレーカーが発動した。上昇の主因は、23日発表の欧米PMI速報値が市場予想を上回り欧米の追加利上げ観測が強まったことによる欧米金利上昇の波及とされる。20年債は3.909%、5年債は2.366%、2年債は1.886%だった(財経新聞、日本経済新聞)。

ドイツ10年債(Bund)利回りは9月24日時点で3.57%だった。市場では、世界的な国債売りの背景として、インフレ期待の上振れよりも実質金利(名目金利からインフレ期待を差し引いた水準)の上昇が主因との見方も出ている(実質金利・ブレークイーブンインフレ率の具体的な取得時点別数値は本レポート作成時点で確度の高い一次情報を確認できず、次回以降で補う)。

4. 中央銀行の動き

FRB

FRBのバー理事は9月23日、シカゴで開かれた住宅関連の会合での講演で、金融政策について踏み込んだ発言をした。「インフレは2%目標を上回っており、タイムリーな方法で目標に向かって明確には推移していない」「さらなる政策調整(利上げ)が必要になる可能性が高い」と述べ、9月16日のFOMC利上げ決定について「重要な行動であり、私はこれを支持した」「委員会は(利上げの)ポジションから外れていたため、政策を再調整する必要があった」と説明した(FRB公式、FXStreet)。FOMC参加者個々の政策金利見通しを点で示した図である「ドットプロット」が示唆する年内あと1回の追加利上げについて、10月・12月のどちらで実施するかを巡る議論は続いている。

日銀

9月18日の利上げ決定・植田総裁会見以降、新たな公式発言は確認できていない。植田総裁が示した「物価の上振れリスク次第では連続利上げ・利上げ幅の拡大も排除しない」という姿勢が、引き続き市場の金利観の前提となっている。

ECB・BOE

ECBは9月10日の理事会で0.25%の利上げを決定し、中銀預金金利を2.5%とした。ラガルド総裁は記者会見で「中東での紛争はインフレに圧力をかけ続けており、インフレ率は長期間にわたり目標を大きく上回る見込みだ」と述べた。政策委員会メンバーのナーゲル・ブンデスバンク総裁は9月22日夜、「エネルギー価格の高止まりが長期化する状況に直面すれば、金融政策を緩やかな景気抑制領域に移行しなければならない可能性を排除できない」としつつ、そうなるかの判断は時期尚早とも述べた(Bloomberg)。

BOEは9月17日の金融政策委員会(MPC)でバンクレートを3.75%に6会合連続で据え置いた。票決は据え置き支持6票、0.25%利上げ支持3票で、引き締め(利上げ)志向の強い「タカ派」寄りの委員が一定数存在する構図が続いている。

市場の織り込み

CME FedWatchが示す10月28日のFOMC会合での0.25%利上げ確率は、9月23日時点の54.2%(据え置き45.8%)から、バー理事発言とPMI好調を受けた9月24日時点で73.5%へ急上昇した。前日から約19ポイントの大幅な上振れであり、年内あと1回の追加利上げの実施時期を巡る市場の見方が、10月実施によりシフトしつつある(phemex)。

5. 債券需給

9月23日実施の米5年債入札は、最高落札利回り5.033%、応札倍率2.21倍、テール(入札前の市場実勢利回りを落札利回りが上回った差。大きいほど需要が弱いことを示す)3.1bpと、記録的に低調な需要となった。海外投資家(インダイレクト)・機関投資家の需要が弱含み、金利高止まりの下で需給悪化への警戒がくすぶっている(helious.io)。JGBについては、シルバーウィーク休場明けの取引再開に伴う需給の偏りが利回り急伸の一因になったとみられるが、新規の入札結果は確認できていない。クレジットスプレッド(IG・HY)については、本レポート作成時点で確度の高い最新値を確認できなかった(次回以降で補う)。

6. 他資産への波及

金利上昇と原油急伸を受け、米国株は9月24日にまちまちの動きとなった(S&P500は7,704.13、-0.02%、ダウは51,349.98、-0.31%、ナスダックは26,939.37、+0.01%)。ドル円は日米金利差の拡大を意識し158円台での推移が続いている(詳細はfxカテゴリ参照)。NY金は利上げ観測の強まりで3営業日続落し、12月限は前日比58.0ドル安の4,318.4ドルとなった(詳細はcommodityカテゴリ参照)。暗号資産市場では、米短期金利上昇を受けビットコインが8.5万ドルを割り込み、清算(強制決済)が広範囲で発生した。

7. 今夜の注目イベント

  • 9月25日(金、日本時間21:30発表予定): 耐久財受注速報値(8月)。7月分は前月比+1.1%(コア〔輸送機器除く〕+0.4%)と市場予想を上回っており、堅調な設備投資の継続が焦点
  • 9月25日(金、日本時間23:00発表予定): ミシガン大学消費者信頼感指数確報(9月)。速報値(9月11日発表)は47.8と市場予想51.0を下回り、統計開始以来2番目の低水準だった。期待インフレ率(1年先)も8月の4.0%から4.6%に上振れしており、確報での改定幅が注目される
  • 引き続きFRB高官の発言機会が多く、10月FOMCに向けた追加利上げのペース・時期を巡る発言に注目が集まる