前回からの変化
前回(2026-10-21)との比較である。前回は20日(火)に決算を出したGEエアロスペースなど5社を扱った。今回は21日(水)の寄り前と引け後に決算を出した企業を取り上げる。
変わったこと(変化・新規)
- 前回「次の注目決算」に挙げた企業の結果が出た。テスラは調整後EPSが予想の0.45ドルに対し0.48ドル、IBMは予想の2.86ドルに対し2.95ドルで、ともに上回った。メタは予想の3.57ドルに対しGAAPのEPSが3.83ドルだった(Investing.com)
- 前回結果を確認できなかったインテュイティブ・サージカル(20日引け後)の内容が分かった。調整後EPSは予想の2.65ドルに対し3.00ドルと上回ったが、価格引き下げ方針で時間外に7%超下落した(Investing.com)
- 前回の中心は航空宇宙・自動車・動画配信だったが、今回はAIインフラ投資の負担(メタ、テスラ)、ITサービス(IBM)、医療機器・ライフサイエンス(インテュイティブ、サーモフィッシャー)へ広がった
昨日と同じこと(継続)
- 予想を上回るEPSが続いた。今回の5社でEPSが予想を下回った企業は確認できなかった
- 「好決算でも見通しや中身次第で売られる」構図が続いた。インテュイティブとラム・リサーチはEPSが予想を上回ったのに時間外で下落した
- 決算シーズン序盤の集計は、20日分以降の新しい版を今回も確認できなかった
要因の連続性
- 継続要因: 見通しの質が株価を左右する構図。前回はGMの見通しの狭めとネットフリックスの広告見通し引き下げが売りを招いたが、今回はインテュイティブの価格引き下げ方針が同じ役割を果たした
- 新規要因: AI投資の資金負担。メタは設備投資が営業キャッシュフローを上回りフリーキャッシュフローが赤字になった。テスラも設備投資が前年同期の2倍超となった(Stock Titan、Electrek)。関税還付による一過性の押し上げ(サーモフィッシャー)も新たに出た
- 解消した要因: 前回の論点だった「予想上振れ後の織り込み済み感」は、メタとIBMでは株価上昇につながり、今回は目立たなかった
1. 本日のハイライト
| 企業名 | 会計期間 | EPS | 予想比 | 株価反応 |
|---|---|---|---|---|
| メタ | 2026年7〜9月期 | GAAP3.83ドル | 上回る(予想3.57ドル) | 時間外で4〜5%高 |
| IBM | 2026年7〜9月期 | 調整後2.95ドル(GAAP2.31ドル) | 上回る(予想2.86ドル) | 時間外で約6%高 |
| テスラ | 2026年7〜9月期 | 調整後0.48ドル | 上回る(予想0.45ドル) | 時間外で約2%高 |
| インテュイティブ・サージカル | 2026年7〜9月期 | 調整後3.00ドル | 上回る(予想2.65ドル) | 時間外で7.31%安 |
| サーモフィッシャー | 2026年7〜9月期 | 調整後6.68ドル | 上回る(予想6.40ドル) | 寄り前で2.5%安 |
予想値は報道に引用された集計で、コンセンサスの出所は記事により明示されていない(Investing.com、Investing.com)。メタ、IBM、テスラは米東部時間21日の引け後の時間外取引、インテュイティブは20日の引け後、サーモフィッシャーは21日の寄り前である。報道により上げ幅に1〜2ポイントの差がある。
2. 個別決算
メタ — 2026年7〜9月期
売上高は646億ドルで前年同期比26%増(予想633億ドル)。GAAPの純利益は99億ドル(EPS3.83ドル)で、営業利益は130億ドルと第2四半期の205億ドルから37%減った。減益の主因は未成年者を巡る訴訟の和解に関連する約99億ドルの費用で、これを除いた営業利益は229億ドル、EPSは7.40ドル相当である。営業キャッシュフローは328億ドルに対し、設備投資は349億ドルで、フリーキャッシュフローは21億ドルの赤字(前年同期は106億ドルの黒字)だった(Fortune、Stock Titan)。
ガイダンスは、2026年通期の設備投資を1350億〜1450億ドル(従来1300億〜1450億ドル)に絞り、下限を引き上げた。10〜12月期の売上高は730億〜760億ドルを見込み、予想の約736億〜738億ドルをわずかに上回る水準である。あわせて2対1の株式分割に相当する新しい無議決権株(クラスC株)の発行も発表した(同上)。
株価は時間外取引で4〜5%上昇した。売上高の上振れと広告の勢いが好感され、和解費用による減益は一過性要因として受け止められたとの報道がある(同上)。
IBM — 2026年7〜9月期
売上高は171億ドルで前年同期比5%増(為替の影響を除くと6%増、予想168.2億ドル)。調整後EPSは2.95ドル、GAAPの希薄化後EPSは2.31ドルで26%増である。部門別は、ソフトウエアが78億ドルで8%増、インフラストラクチャーが37億ドルで4%増、コンサルティングが53億ドルで横ばい(為替除きで2%増)だった。売上総利益率は56.8%と0.5ポイント低下した。フリーキャッシュフローは30億ドルで、前年より7億ドル増えた(Stock Titan)。
通期見通しは、売上高の増加率(為替除き4〜5%)を据え置き、フリーキャッシュフローを「約10億ドル」増から「10億ドル超」増へ上方修正した(同上)。株価は時間外取引で6%前後上昇し、発表直後には7%超高となった(Investing.com)。
テスラ — 2026年7〜9月期
売上高は280.5億ドルで前年同期並み、予想とほぼ同水準だった。調整後EPSは0.48ドルで前年同期比4%減。自動車の粗利率(規制クレジット除く)は18.1%と前年同期の15.4%、前期の16.3%から改善した。一方、営業利益は7.18億ドルで56%減、GAAPの純利益は7.87億ドルで43%減った。営業費用は39%増の47.8億ドルで、研究開発費は69%増の27.6億ドルである。設備投資は47.3億ドルと2倍超、フリーキャッシュフローは15.3億ドル(前年同期は39.9億ドル)だった(Electrek)。
エネルギー部門は設備導入量が10%増の13.7GWhだったが、売上高は28.8億ドルで16%減った。関税還付の影響が一因とされる(同上)。通期の数値見通しは確認できなかった。株価は時間外取引で約2%上昇した(Investing.com)。
インテュイティブ・サージカル — 2026年7〜9月期(20日引け後に発表)
売上高は30.5億ドルで22%増(予想29.1億ドル)、調整後EPSは3.00ドルで25%増(予想2.65ドル)。手術件数は15%増で、肺の生検に使うIonは31%増だった。ダヴィンチの設置台数は28%増の546台で、うち最新のダヴィンチ5が315台、設置済みの総数は1万3200台超である。一方、第三者による保守・再生品を巡る独占禁止法関連の集団訴訟を和解し、4.5億ドルの費用を計上した(Investing.com)。
通期の手術件数の伸びは14〜15%(従来13.5〜15.5%)に絞り込んだ。同社は、器具・消耗品1件あたり売上が長期的に3〜5%減りうる価格変更を発表した(拡張使用プログラム2.0は2027年上半期から国ごとに開始、中国の値下げは2026年11月から)。20日の通常取引は1.11%高で、時間外は7.31%安の405.99ドルとなった。21日の寄り前取引でも約6%安だった(同上、CNBC)。
サーモフィッシャーサイエンティフィック — 2026年7〜9月期(21日寄り前に発表)
売上高は121.4億ドルで前年同期比9%増(オーガニック6%増、予想119.5億ドル)。調整後EPSは6.68ドルで15%増(予想6.40ドル)、GAAPのEPSは4.64ドルである。調整後営業利益率は24.5%と前年同期の23.3%から改善した(サーモフィッシャー、Investing.com)。
通期見通しは、売上高を477億〜482億ドル、調整後EPSを25.13〜25.43ドルへ上方修正した(EPSは中央値で0.15ドル上げ)。ただし調整後EPSには、関税還付による一過性の0.15ドル(営業利益で約6000万ドル)が含まれる。株価は寄り前に2.5%安の669.98ドルとなったが、午前には1%超上昇に転じたとの報道もあり、方向は定まらなかった(同上、CNBC)。
3. 経営陣が語ったこと
IBMのアービンド・クリシュナCEOは、「規律ある実行が収益の伸びの加速と強いフリーキャッシュフローにつながった」とし、顧客が事業運営そのものを変える形でAIを導入し始めていると説明した(Stock Titan)。
テスラは、販売台数が伸び悩んだ理由として電池の供給量が制約になっていると説明し、乗用車の受注残は4年ぶりの高水準になったとした。研究開発費は「スーパーインテリジェンス」、人型ロボットのオプティマス、無人タクシー車両のサイバーキャブの開発で増えたという(Electrek)。
サーモフィッシャーのマーク・キャスパーCEOは、需要環境の改善が第3四半期も続いたと述べた。医薬・バイオ向けは1桁台後半の伸びで、中国は2桁台前半の成長だったと説明している。AIは創薬の投資対効果を高める好循環を生むとの見方も示した(Investing.com)。
インテュイティブのデイブ・ロザCEOは、価格変更を良性疾患の手術に対象を広げるための戦略的な判断だと説明した(Investing.com)。
4. 業界トレンド
- AI投資の資金負担: メタは設備投資が営業キャッシュフローを上回り、テスラも設備投資が前年同期の2倍超になった。AIへの投資が損益より先にキャッシュフローに表れている(筆者の整理)
- 好決算でも見通しと価格方針が株価を決める: インテュイティブは価格引き下げ、ラム・リサーチは売上高82.2億ドルとEPS2.20ドルで予想を上回ったが、時間外で約6%下げた(10〜12月期売上見通しは86億ドルプラスマイナス4億ドル)(Investing.com)
- 関税還付が一過性の利益になった: サーモフィッシャーとテスラのエネルギー部門で関税還付が出ており、利益の質を見る際は一過性要因を分けて確認する必要がある
- ITとライフサイエンスは需要が堅調: IBMのソフトウエア8%増、サーモフィッシャーのオーガニック6%増と、受注環境の改善が確認された
5. 決算シーズンの進捗
20日以降の決算を反映した、S&P500の発表済み比率や上振れ比率の新しい集計は今回確認できなかった。前回紹介したFactSetの10月16日版(発表済み9%、EPS上振れ比率84%)以降の更新を待つ。
6. 次の注目決算
日付は米国時間である。引け後の発表は日本時間では翌朝になる。
- 10月22日(木)寄り前: ユニオン・パシフィックとハネウェル(いずれも予定、TheRightTrader)
- 10月22日(木)引け後: インテルが予定されているとの情報があるが、日付は公式には未確認
- 日本企業: 22日にディスコ、23日にファナックが決算を発表する予定で、半導体製造装置とロボットの需要をどう説明するかが注目される(松井証券)
- 前回「次の注目決算」に挙げたテキサス・インスツルメンツとラム・リサーチのうち、ラムは上記のとおり。テキサス・インスツルメンツの結果は今回確認できなかった

