前回からの変化
前回(2026-10-20)との比較である。前回は19日に決算を出した地銀2社と鉄鋼大手を扱った。今回は前営業日(20日、火曜)に決算を出した5社を取り上げる。
変わったこと(変化・新規)
- 前回「次の注目決算」に挙げたGEエアロスペースとRTXの結果が出た。GEの調整後EPSは予想の2.00ドルに対し2.25ドル、RTXは予想の1.78ドルに対し2.26ドルで、ともに上回って通期見通しも引き上げた。前回はRTXについて「見通しの据え置きは失望を招きうる」との見方を紹介したが、実際は引き上げとなった(Investing.com、Yahoo Finance)
- 前回のテーマは地銀だったが、今回は航空宇宙、素材・工業、自動車、動画配信と業種が広がった。前回は「予想超えでも株価が素直に上がらない」構図が中心だったが、今回もGE、GM、ネットフリックスで同じ構図が続いた
- 前回予告した引け後のネットフリックスの結果が出た。インテュイティブ・サージカルの結果は今回確認できず、次回以降にフォローする
昨日と同じこと(継続)
- EPSが予想を上回る企業が多い流れが続いた。今回の5社のうち、EPSが予想を下回った企業は確認できなかった
- 「好決算でも見通しや中身次第で売られる」という反応のねじれが続いた
- 決算シーズンは序盤で、上振れ企業の比率は高いが上振れ幅は小さいという集計も前回のまま(FactSetの10月16日版以降の更新は今回確認できなかった)
要因の連続性
- 継続要因: 見通しの質が株価を左右する構図。前回の地銀で純金利マージンの方向が分かれたのと同様に、今回は通期見通しの水準が反応を分けた(GMは見通しの狭め、ネットフリックスは広告見通しの引き下げ)
- 新規要因: 航空機エンジンの補修需要と国防需要による受注残の拡大、AIインフラ需要との部品の取り合い(RTXの説明)、原油高に伴う原材料コストの上昇(スリーエムの説明)が加わった
- 解消した要因: 前回の論点だった「地銀の純金利マージン低下」は、今回の5社には共通の論点として表れていない
1. 本日のハイライト
| 企業名 | 会計期間 | EPS | 予想比 | 株価反応 |
|---|---|---|---|---|
| GEエアロスペース | 2026年7〜9月期 | 調整後2.25ドル | 上回る(予想2.00ドル) | 取引時間中に約4%安 |
| RTX | 2026年7〜9月期 | 調整後2.26ドル(GAAP1.89ドル) | 上回る(予想1.78ドル) | 取引時間中に約0.5%高 |
| スリーエム | 2026年7〜9月期 | 調整後2.50ドル(GAAP2.63ドル) | 上回る(予想値は未確認) | 通常取引で5.78%高 |
| ゼネラル・モーターズ | 2026年7〜9月期 | 調整後3.70ドル | 上回る(予想3.56ドル) | 通常取引で6.84%安 |
| ネットフリックス | 2026年7〜9月期 | GAAP0.87ドル | 上回る(予想0.82ドル) | 時間外で約4.0%安 |
予想値は報道に引用された集計で、コンセンサスの出所は記事により明示されていない。GEとRTXの予想はYahoo FinanceとInvesting.com、GMはTransport Topicsによる。スリーエムとGMの通常取引の騰落率はみんかぶによる。
2. 個別決算
GEエアロスペース — 2026年7〜9月期
調整後売上高は133億ドルで前年同期比18%増(予想128.5億ドル)。受注は190億ドルで49%増と大きく伸びた。営業利益は30億ドルで30%増、営業利益率は22.5%と2.2ポイント拡大した。主力の民間エンジン・サービス部門は売上高103億ドルで、6四半期連続で20%以上伸び、利益率は27.9%だった。防衛・推進技術部門は売上高35億ドルで7%増だった(Yahoo Finance、Investing.com)。
通期見通しは、調整後EPSを8.00〜8.10ドル(従来7.65〜7.85ドル)、営業利益を109億〜110億ドル(従来105.5億〜107.5億ドル)、フリーキャッシュフローを91億〜94億ドル(従来89億〜92億ドル)に引き上げた(同上)。
株価は、発表直後の取引で約4%安の299.59ドルとなった(終値は確認できなかった)。要因として、新型エンジンの納入や補修部品に絡む値引き・引当金の増加、GE9X(新型大型エンジン)の売上計上が認証待ちで繰り延べられたこと、フリーキャッシュフローが20億ドル前後に減ったこと(減少率は出所で9%台から14%まで差がある)が挙げられている。航空宇宙・防衛ETFの下落は0.4%にとどまり、個社要因とみられる(Yahoo Finance)。
RTX — 2026年7〜9月期
売上高は250億ドルで前年同期比11%増(組織的成長は12%、予想241億ドル)。調整後EPSは2.26ドルで33%増、GAAPのEPSは1.89ドルである。差は買収会計の調整0.26ドルとリストラ費用0.11ドルによる。部門別の売上高は、コリンズ・エアロスペースが84億ドル(10%増、調整後営業利益率21.3%)、プラット・アンド・ホイットニーが92億ドル(10%増、同10.5%)、レイセオンが80億ドル(14%増、営業利益率14.1%)だった。フリーキャッシュフローは21億ドル、受注残は過去最高の3400億ドル(民間1760億ドル、防衛1640億ドル)である(PR Newswire)。
通期見通しは、調整後売上高を970億〜975億ドル(従来950億〜960億ドル)、調整後EPSを7.65〜7.75ドル(従来7.10〜7.25ドル)、フリーキャッシュフローを90億〜92億ドル(従来85億〜87.5億ドル)に引き上げた(Investing.com)。
株価は、取引時間中に0.52%高の193.15ドルだった(終値は確認できなかった)。EPSの上振れ幅が約27%と大きい割に反応は小さく、前回紹介した「予想が会社見通しの上限を超えていた」ことが織り込まれていたとみられる(Yahoo Finance)。
スリーエム — 2026年7〜9月期
GAAPの売上高は66億ドルで1.0%増、為替などを除く組織的成長は3.3%増。調整後EPSは2.50ドルで12%増、GAAPのEPSは2.63ドルである。調整後営業利益率は26.2%と1.1ポイント拡大し、調整後フリーキャッシュフローは12億ドルだった。通期の調整後EPS見通しは9.10〜9.15ドルに引き上げた(従来は8.95〜9.10ドルで、会計手法の変更を含む新基準での比較)。調整後の組織的売上成長率は3.5%超を見込む(3M)。
株価は通常取引で5.78%高だった(みんかぶ)。
ゼネラル・モーターズ — 2026年7〜9月期
売上高は500億ドル、調整後EBIT(金利・税引前利益)は41億ドルで予想の40.2億ドルを上回った。調整後EPSは3.70ドル(予想3.56ドル)、自動車部門のフリーキャッシュフローは59億ドルで40%増。通期の調整後EBIT見通しは145億〜155億ドルとし、従来の140億〜160億ドルから幅を狭めた。新たに200億ドルの自社株買いも承認した(Transport Topics)。
株価は通常取引で6.84%安だった。報道では、市場が見通しの引き上げを期待していたのに、狭めにとどまったことが嫌気されたとされる(みんかぶ、Transport Topics)。
ネットフリックス — 2026年7〜9月期
売上高は128.7億ドルで12%増(予想とほぼ同水準)。営業利益は44.6億ドルで37%増、営業利益率は34.6%(前年同期28.2%)。純利益は36.6億ドルで44%増、希薄化後EPSは0.87ドル(前年同期0.59ドル)だった。この間に48億ドルの自社株買いを実施した(Stock Titan)。
通期見通しは、売上高511億ドル、営業利益率31.5%。広告収入の見通しは「広告商品の展開の遅れ」を理由に、約30億ドルから約27億ドルへ引き下げた。通期のフリーキャッシュフローも125億ドルから約120億ドルに下げた。10〜12月期の売上高は134.4億ドル(11%超の増加)を見込む(同上)。
株価は、通常取引の終値が68.69ドルで、時間外取引では約4.0%安の65.97ドル(米東部時間16時20分時点)だった。EPSは予想を上回ったが、広告見通しの引き下げが嫌気されたとの報道がある(Stock Titan)。
3. 経営陣が語ったこと
RTXのクリス・カリオCEOは、商用の新品エンジン、補修、防衛のいずれも2桁成長だったと述べた。四半期に約590億ドルの防衛関連の受注があり、トマホークで約230億ドル、AMRAAMで140億ドル超が複数年の量産契約に切り替わったと説明した。一方、コンデンサー、抵抗器、プリント基板などの部品は、AIインフラ向けの需要と取り合いになっており、供給制約が生産増の鍵になると述べた(Investing.com)。
GEエアロスペースのローレンス・カルプCEOは「需要が強く、受注が49%増えた」と説明した。同社は商用サービスの受注残が1700億ドルあり、エンジンの工場内修理の処理量が過去最高だとした(Yahoo Finance、Yahoo Finance)。
スリーエムは決算説明会で、価格改定が下期に2%強の実効となり、1億8500万ドルの原材料・原油関連のコスト上昇を相殺していると説明した。原油高は営業利益率を約0.2ポイント押し下げるが、生産性の改善で取り戻す方針である。データセンター向け売上は2026年に約7億ドル(2025年は5.5億ドル)になる見通しで、アマゾンに最大320万株の購入権(ワラント)を付与する契約も明らかにした。一方、家電向けは2桁台半ばの減少、中国向けは1桁台後半の減少だった(Motley Fool)。
GMのCFOは、ハイブリッド車で成功しているメーカーの実績は「無視しがたい」と述べ、ハイブリッド戦略の見直しを示唆した(Transport Topics)。
4. 業界トレンド
- 航空宇宙・防衛: 商用の補修需要と防衛の量産契約が重なり、GEとRTXはともに受注残が過去最高圏で、見通しを引き上げた。成長の制約は需要ではなく、部品の供給と引当金などのコストに移っている
- AIインフラが他産業の供給を圧迫: RTXは電子部品の取り合いを、スリーエムはAIデータセンター向けの新規売上をそれぞれ語り、AI投資が他業種の供給と需要の双方に及ぶことが分かる
- 自動車: GMは利益が予想を上回ったが、見通しの狭めで売られた。足元の好調より、年間見通しの方向性が株価を決める局面である(筆者の整理)
- 5社中3社(GE、GM、ネットフリックス)で、予想超えのEPSにもかかわらず株価が下げた。決算シーズンの序盤で期待値が高くなっていることがうかがえる(筆者の整理)
5. 決算シーズンの進捗
FactSetの10月16日版によると、S&P500のうち発表済みは9%で、7〜9月期のEPSの上振れ比率は84%(5年平均78%)。ただし平均の上振れ幅は2.6%で、5年平均の7.5%を下回る。前年同期比の利益成長率は29.0%の見通しである。20日分を反映した新しい版は今回確認できなかった。上記の20日発表の5社は、EPSの上振れ比率を押し上げる方向に働いたとみられる(筆者の整理)。
6. 次の注目決算
日付は米国時間である。引け後の発表は日本時間では翌朝になる。
- 10月20日(火)引け後: インテュイティブ・サージカル(前回予告した決算。結果は今回確認できず)
- 10月21日(水)引け後: テスラ、メタ、IBM、テキサス・インスツルメンツ、ラム・リサーチなど(Earnings Watcher)。メタはAI投資の積み増し姿勢が焦点で、日本株や米国株のAI関連の地合いを左右するとされる

