前回からの変化
前回(2026-10-21、10月20日の値)との比較である。値はTradingEconomicsの10月21日の表示値で、取得時刻と限月は確認できていない。確定終値でないものを含む。
変わったこと(変化・新規)
- 天然ガスは前回の2.99ドルから2.77ドルへ(0.22ドル安、前日比6.38パーセント安)と大きく下げ、目安の3パーセントを超えたため、今回の特集で扱う(TradingEconomics: Natural gas)
- 小麦は前回の642.75セントから628.25セントへ(14.50セント安、2.33パーセント安)下げ、5日続落になった。前回は「ロシアの輸出増と豪州の豊作観測」が主因だったが、今回はロシアとウクライナの和平期待が加わった(TradingEconomics: Wheat)
- ブレントは前回の109.07ドルから109.67ドルへ(0.60ドル高、0.81パーセント高)上げた。WTIは98.20ドルから97.70ドルへ(0.50ドル安、0.12パーセント安)下げた(TradingEconomics: Commodities)
- 金は前回の4,125.09ドルから4,140.83ドルへ(15.74ドル高、0.39パーセント高)戻した。銀は57.98ドルから57.97ドルでほぼ横ばいだった。Kitcoのスポット表示は金が4,136.70ドル(0.31パーセント高)、銀が57.51ドル(0.64パーセント安)である(Kitco)
- 12月の米利上げ観測は、前回の約90パーセントから約94パーセントへ高まった(同上)
昨日と同じこと(継続)
- ホルムズ海峡周辺での船舶攻撃が続いている。革命防衛隊は地雷でタンカー3隻が止まったと発表した
- 米国の利上げ観測が金・銀の重しになる構図は前回と同じである
- 小麦が安値圏で下げ続ける状況と、天然ガスが温暖な天候で売られる流れは続いている
要因の連続性
- 継続要因: 中東の供給不安、米利上げ観測と米長期金利の高さ、小麦のロシア輸出増と豪州の豊作観測、天然ガスの温暖な天候
- 新規要因: ロシアとウクライナの和平期待(小麦の下げ要因)、米9月の物価の強さ(消費者物価が前年比3.7パーセント上昇、生産者物価が6.3パーセント上昇)による12月利上げ観測の高まり、ロシア中央銀行の金売却の報道
- 解消した要因: 前回の新規要因だった米イラン協議への期待は、今回の出典では大きく取り上げられておらず、後退している。米国の9月住宅着工の悪化も、今回は材料として扱われていない
価格サマリー
| 商品 | 価格(2026年10月21日) | 騰落率(前日比) | 前回値(10月20日) |
|---|---|---|---|
| 金(スポット) | 1オンス4,140.83ドル | 0.39パーセント高 | 4,125.09ドル |
| 銀 | 1オンス57.97ドル | 0.01パーセント高 | 57.98ドル |
| WTI原油 | 1バレル97.70ドル | 0.12パーセント安 | 98.20ドル |
| ブレント原油 | 1バレル109.67ドル | 0.81パーセント高 | 109.07ドル |
| 天然ガス(Henry Hub) | 1MMBtu 2.77ドル | 6.38パーセント安 | 2.99ドル |
小麦は1ブッシェル628.25セント(2.33パーセント安、前回642.75セント)、トウモロコシは4.64ドル(0.49パーセント高)、大豆は12.46ドル(0.16パーセント安)、銅は1ポンド6.54ドル(0.38パーセント安)である。表示値はTradingEconomicsで、取得時刻と限月は確認できていない(TradingEconomics: Commodities)。
商品別動向
金・銀
Kitcoによると、スポット金は4,136.70ドルで12.60ドル高、スポット銀は57.51ドルで0.37ドル安だった。原油高と米利上げ観測が貴金属の重しとなっている。9月の米消費者物価は前年比3.7パーセント上昇、生産者物価は6.3パーセント上昇と強く、10月27〜28日の米連邦公開市場委員会で据え置く確率は約83パーセント、12月に利上げする確率は約94パーセントと織り込まれている。米10年債利回りは約5.1パーセントで、直近の5.3パーセント超からは下がり、金には小さな支えになった(Kitco)。
中央銀行の動きでは、ロシア中央銀行が9月に金を6.2トン(20万オンス)売却し、保有量は2,264トンと2019年末以来の低さになった。売却は10か月連続で、2025年12月からの累計はおよそ62トンである。財政の圧迫が背景とされる(Kitco)。
原油
ブレントは109.67ドルで0.81パーセント高、月間では10.50パーセント高、年間では75.22パーセント高である。TradingEconomics: Brent oilによると、中東では船舶やエネルギー施設への攻撃が続き、革命防衛隊は地雷でタンカー3隻が止まったと発表した。オマーン沖では船が攻撃を受け、イエメンの武装勢力フーシ派はサウジアラムコの施設や空港への攻撃を主張した。一方、ルビオ米国務長官は、ホルムズ海峡の輸送が紛争前の水準に近づいていると述べた。米国の原油在庫は前週に3百万バレル余り減り、市場予想の490万バレル減を下回った。
WTIは97.70ドルで0.12パーセント安である。OilPrice.comの表示では97.54ドル(0.29パーセント安)で、ブレントは109.50ドル(0.61パーセント高)だった。
天然ガス
TradingEconomics: Natural gasによると、Henry Hubは2.77ドルで6.38パーセント安、月間では6.44パーセント安、年間では19.59パーセント安である。詳しくは次の特集で扱う。
農産物
TradingEconomics: Wheatによると、小麦は628.25セントで2.33パーセント安、月間では12.41パーセント安、前年比では24.71パーセント高である。5日続落で、7月9日以来の安値をつけた。トランプ大統領が推す合意への期待から、ロシアとウクライナの和平期待が売りを誘った。供給面では、ロシアの穀物輸出団体ルサグロトランスが10月の小麦輸出を300万トンと見込み、豪州では収穫が大きくなるとの見方がある。黒海の輸送が乱れるリスクは残っている。
急変動の特集
天然ガスが1日で6.4パーセント安 温暖な天候で冬の需要見通しが後退
- 何が起きたか: Henry Hubの天然ガスは10月21日、2.99ドルから2.77ドルへ6.38パーセント下げた。月間でも6.44パーセント安、年間では19.59パーセント安である。前回は3ドルを割った段階だったが、さらに一段下げた(TradingEconomics: Natural gas)
- なぜ動いたか: 10月下旬まで温暖な天候が続く見通しで、暖房と冷房の需要がともに抑えられる。エルニーニョ(太平洋の海面水温が高くなる現象)による暖冬への期待も、冬の需要見通しを弱めている。供給面では、米国の生産量は10月に日量1,114億立方フィート(約111.4bcfd)と、8〜9月の過去最高(113.3bcfd)から減ったが、LNG(液化天然ガス)輸出施設への流入は日量182億立方フィートに増えて下支えになっている。貯蔵量は10月9日時点で前年同期より3.9パーセント少なく、過去5年平均を1.3パーセント上回る
- 生活・産業への波及: 米国のガス価格の下落は、米国内の電気代や暖房費の抑えにつながりやすい。一方、海外は事情が異なる。前回伝えたとおり、中東の輸送リスクでアジアのLNG価格は30ドルを超えており、米国の安値と海外の高値が開いている。日本の貿易赤字がエネルギー輸入費の増加で前年の2倍に膨らんだとも報じられた(OilPrice.com)
- 先行きの見方: TradingEconomicsのモデルは、四半期末に3.28ドル、12か月後に4.00ドルへ戻ると予想している。これは同社の見通しである
強気派 vs 弱気派
金(強気): ブラックロックのエビー・ハンブロー氏(テーマ・セクター投資の世界責任者)は「金価格は他の場所の痛みを映す」と述べた。根拠は、各国政府の債務と赤字が膨らみ返済の道筋が見えないこと、通貨の購買力が長く目減りしてきたこと、中央銀行が緊縮ではなくインフレの容認を選びやすいことである。資産の約10パーセントを金に振り向けることを保険として勧め、金鉱株は金価格に対しておよそ3倍の値動きになりやすいと説明した(Kitco)。CIBCキャピタル・マーケッツも、2026年の予想を下げた一方、2027年の平均価格は5,200ドルへ回復するとみている(前回も扱った見方)(Kitco)。
金(弱気・慎重): 同じCIBCは2026年第4四半期の予想を4,500ドルに引き下げた。実質金利の上昇による保有の機会費用の増加とドル高、米10年債利回りの高さが理由で、前回と変わらない。今回の出典では、新しく発言者と根拠を確認できる弱気の見通しは見つからなかった。
原油: 今回の出典では、発言者と根拠を確認できる強気・弱気の見方は見つからなかった。ゴールドマン・サックスは、タンカーの運賃が3ドルから20ドルへ急騰したことを挙げて原油ショックの可能性を警告し、モルガン・スタンレーは燃料市場の逼迫が2027年半ばまで続くと見ている。これらは強気寄りの見方としてOilPrice.comが伝えたものである。
地政学・物価関連ニュース
ホルムズ海峡周辺では攻撃が続いており、革命防衛隊は地雷でタンカー3隻が止まったと発表し、オマーン沖では船が攻撃を受けた。フーシ派はサウジアラムコの施設への攻撃を主張している。一方、ルビオ米国務長官は輸送が紛争前の水準に近づいていると述べた(TradingEconomics: Brent oil)。
OilPrice.comによると、サウジアラビアの8月の原油輸出は日量445万バレルと5か月ぶりの高さで、ロシアは今週、米国向けに初のディーゼル燃料を出荷する予定である。英国は北海のジャックドー・ガス田を承認した。インドの国営製油最大手は、2027〜28年の中東産原油の長期契約の買い入れを減らす方針と伝えられた。
物価への波及としては、エネルギー価格の上昇が各国のインフレを押し上げている。米国の9月の消費者物価は前年比3.7パーセント上昇、生産者物価は6.3パーセント上昇で、利上げ観測が続く一因になった。日本ではエネルギー輸入費の増加で貿易赤字が前年の2倍に膨らんだ(Kitco、OilPrice.com)。
テクニカル分析(金・銀・原油・天然ガス・農産物)
今回の出典では、移動平均線とRSIの当日値は確認できなかったため、数値は載せない。確認できた範囲で、節目の水準を整理する。断定的な売買判断ではない。
金: Kitcoによると、買い方は4,154〜4,180ドルの上値の壁(レジスタンス)を抜けて4,200ドルを目指す構図で、売り方は4,083ドルと4,070ドルの下値(サポート)を狙う。スポットは4,136ドル台で、この2つの水準の間にある。上値の壁を超えれば4,200ドルが意識され、下値を割れば4,070ドル付近が焦点とされる(Kitco)。
銀: 上値は57.86〜58.37ドルの帯と、その上の60.84ドル、下値は56.92ドルと56.34ドルとされる。スポットは57.51ドルで、上値の帯の下限をわずかに下回っている(同上)。
原油: ブレントは月間で10.50パーセント高と上昇基調にあり、109ドル台の高値圏で推移している。前回は取引時間中に110ドルに触れており、この水準を超えられるかが焦点とされる。
天然ガス・小麦: 天然ガスは3ドルを割り込んだ2.77ドルで、年間で約2割安い位置にある。小麦は5日続落して7月9日以来の安値圏にあり、下げが続いている位置を示す手がかりである。

