前回からの変化

前回(2026-10-15)との比較である。前回は14日発表のバンク・オブ・アメリカとモルガン・スタンレーを整理した。本日は15日発表の、証券・地銀・ネット証券の3社を扱う。

変わったこと(変化・新規)

  • 話題が投資銀行・大手銀から、個人向け証券(シュワブ)、地方銀行大手(PNC)、ネット証券(インタラクティブ・ブローカーズ)へ移った
  • 前回は予想未達のバンク・オブ・アメリカが約8.6%下落した。本日のシュワブは調整後EPSが予想を上回りながら約5%下落しており、反応の理由が「未達」ではなく「純金利収入の伸び鈍化と見通し」に変わった(TIKR: Schwab)
  • 前回レポートの「次の注目決算」では、15日の決算予定を確認できていなかった。今回、PNC、シュワブ、インタラクティブ・ブローカーズが15日に発表したことを確認した

昨日と同じこと(継続)

  • 好決算でも株価が下がる「数字と反応のねじれ」は、前回のモルガン・スタンレーに続き、シュワブとPNCでも見られた
  • 金融各社で、売買や預かり資産など市場関連の事業が好調という構図は続いた(シュワブの1日平均取引件数は前年同期比44%増)

要因の連続性

  • 継続要因: 市場が足元の数字より先行き(収益の伸びの持続性)を見て売る構図
  • 新規要因: シュワブの純金利収入の伸びが14%と直近で最も遅く、通期の売上高成長と純金利マージン拡大が従来レンジの下限近くになるとの説明。PNCは貸出収益が予想に届かなかったと報じられた
  • 解消した要因: 前回のバンク・オブ・アメリカにあった12億ドルの和解金のような個別の一過性要因は、本日の3社では確認できなかった

1. 本日のハイライト

企業名 会計期間 売上高 EPS 予想比
シュワブ 2026年7〜9月期 純収益72億ドル(17%増) 調整後1.69ドル(GAAP 1.62ドル) EPSは予想1.66ドルを上回り、売上高は予想72億ドルをわずかに下回る
PNC 2026年7〜9月期 約66億ドル 希薄化後4.97ドル(調整後5.09ドル) EPSは予想4.89ドルを上回る
インタラクティブ・ブローカーズ 2026年7〜9月期 純収益19.1億ドル(調整後18.7億ドル) 調整後0.67ドル(GAAP 0.69ドル) EPSは予想並み、売上高は予想18.7億ドルを上回る

予想の出所は、シュワブとインタラクティブ・ブローカーズがInvesting.comの記事、PNCがBenzingaの記事に基づく。いずれもコンセンサスの具体的な集計元は明記されていない。

2. 個別決算

シュワブ — 2026年7〜9月期

純収益は72億ドルで前年同期比17%増、純利益は29.06億ドル(23%増)、GAAPベースのEPSは1.62ドル(29%増)だった。取引関連費用1.51億ドルを除いた調整後EPSは1.69ドルである(SEC 8-K: Charles Schwab)。

収益の内訳は、純金利収入が34.76億ドル(14%増)、資産運用・管理手数料が19.13億ドル(14%増)、取引収入が11.58億ドル(16%増)だった。税引前利益率は52.7%で、前年同期の49.2%から上がった。顧客の預かり資産は13.33兆ドル(15%増)、中核の純資金流入は四半期で過去最高の1,904億ドル(38%増)、新規口座は120万件だった。信用取引(マージンローン)の残高は1,879億ドルである(SEC 8-K)。

株主還元は、自社株買いが470万株・5億ドルだった。

ガイダンスについて、TIKRは、通期の売上高成長と純金利マージンの拡大が、従来示したレンジの下限近くになると経営陣が説明したと伝えている。純金利収入の14%増は直近の伸びでは最も遅かった。株価は15日の通常取引で約5%下落し、92ドル近辺となった(TIKR: Schwab)。なお、別の報道は発表直後に1.3%安と伝えており、時点により下落幅が異なる。J.P.モルガンの予想は純資金流入1,600億ドルで、実績はそれを約300億ドル上回った。

PNC — 2026年7〜9月期

純利益は21億ドルで前年同期比15%増、希薄化後EPSは4.97ドル(14%増)、調整後EPSは5.09ドルだった。総収益は約66億ドル、純金利収入は42億ドル、手数料収入は21億ドルである(SEC 8-K: PNC)。

平均貸出残高は3,722億ドルで前四半期から2%増(前年同期比14%増)、平均預金残高は4,612億ドルで1%増だった。純金利マージンは2.94%、効率性比率は57%、有形普通株資本利益率(ROTCE、非GAAP)は18.28%、普通株式Tier1比率(CET1、推定)は9.8%である。配当に8億ドル、自社株買いに6億ドルを充てた(SEC 8-K)。

EPSは予想の4.89ドルを上回ったが、貸出収益が予想に届かなかったとして、株価は15日の寄り付き前に約3%下げたと伝えられた(Benzinga)。通常取引の終値は今回確認できていない。

インタラクティブ・ブローカーズ — 2026年7〜9月期

純収益はGAAPで19.1億ドル(前年同期16.6億ドル)、調整後で18.7億ドル(同16.1億ドル)だった。税引前利益は15億ドルで、税引前利益率は78%(前年同期は79%)。GAAPのEPSは0.69ドル(前年同期0.59ドル)、調整後は0.67ドル(同0.57ドル)である(SEC 8-K: Interactive Brokers)。

手数料収入は6.02億ドルで12%増。1日平均の取引件数は18%増の427万件だったが、株式の取引量は24%減だった。純金利収入は11.5億ドルで19%増と、信用取引残高の36%増(1,052億ドル)が支えた。顧客口座は558万件(35%増)、顧客の資産は9,647億ドル(27%増)である。四半期配当は1株0.0875ドルから0.15ドルへ引き上げた(SEC 8-K)。

発表後の時間外取引で株価は約2%下落した。EPSが予想並みにとどまり、利益率が小幅に低下した点が嫌気されたとみられる(Investing.com)。この理由は記事の推測であり、会社の説明ではない。

3. 経営陣が語ったこと

シュワブのワースターCEOは、顧客が120万の口座を新たに開き、1,904億ドルの資産を預けたとして、年率換算で5.8%の資産増加になったと説明した(SEC 8-K: Charles Schwab)。PNCのデムチャクCEOは、上期の勢いを受け継ぎ、新規の貸出実行と利用の増加が商業向け貸出を伸ばしたと述べた(SEC 8-K: PNC)。カンファレンスコールの質疑の詳細は、今回確認できていない。

4. 業界トレンド

3社に共通するのは次の点である(筆者の整理)。第一に、預かり資産や信用取引残高が大きく伸びた。シュワブの預かり資産は15%増、インタラクティブ・ブローカーズの顧客資産は27%増である。第二に、金利収入が収益の柱で、純金利収入はシュワブが14%増、インタラクティブ・ブローカーズが19%増となったが、市場は伸びの鈍化や貸出収益の不足に敏感に反応した。第三に、PNCの貸出残高が前年同期比14%増となるなど、貸出需要は強い。第四に、EPSが予想を上回っても株価が下がる例が、前日のモルガン・スタンレーに続いた。

5. 決算シーズンの進捗

S&P500の発表済み社数や予想を上回った企業の比率の最新集計は、今回確認できていない。前回レポートが引用したFactSetの7〜9月期の予想(S&P500の利益成長率が前年同期比29.5%)が、直近で確認できる集計である。

6. 次の注目決算

  • 10月20日(火): ネットフリックスが引け後に発表する予定(InsiderFinance)
  • 10月21日(水): AT&Tが7〜9月期決算を発表する予定(AT&T)。アボットも同日の寄り前に発表予定との報道がある(MarketBeat)。同社の会社予想は調整後EPS1.38〜1.46ドルである
  • 注目点は、金融以外の業種で、物価上昇と高金利が売上高や利益率にどう影響しているかである