前回からの変化

前回(2026-10-16)との比較である。前回は15日発表のシュワブ、PNC、インタラクティブ・ブローカーズを整理した。本日は16日に発表した米地銀3社を扱う。

変わったこと(変化・新規)

  • 話題が証券・ネット証券から、地方銀行大手のトゥルーイスト、リージョンズ、シチズンズへ移った
  • 前回は「EPSは予想超えでも株価が下落」という構図が中心だった。本日は、売上高の未達が下落の理由として報じられている(Investing.com: Citizens Financial)
  • トゥルーイストは新CEOのもとで事業の整理を進め、GAAPの利益が調整後を大きく下回った点が新しい論点である(SEC 8-K: Truist)

昨日と同じこと(継続)

  • EPSが予想を上回っても、株価が先に下がる「数字と反応のねじれ」は前回から続いた
  • 前回挙げたシュワブ、PNC、インタラクティブ・ブローカーズの続報は、今回確認できていない

要因の連続性

  • 継続要因: 市場が足元のEPSより、収益の伸びや先行きを重く見る構図
  • 新規要因: 証券ポートフォリオの再編に伴う損失や貸出債権の売却で、トゥルーイストの売上高が予想を大きく下回った。シチズンズとリージョンズは売上高がわずかに予想未達だった
  • 解消した要因: 前回は純金利収入の伸び鈍化が焦点だったが、本日の3社では純金利マージンが拡大傾向(トゥルーイストとリージョンズは前四半期比0.02ポイント上昇、シチズンズは前年同期比0.19ポイント上昇)にあり、焦点から外れた

1. 本日のハイライト

企業名 会計期間 EPS 予想比 取引開始前の株価
トゥルーイスト 2026年7〜9月期 調整後1.16ドル(GAAP 0.56ドル) 予想1.14ドルを上回る 2.53%安
リージョンズ 2026年7〜9月期 調整後0.73ドル(希薄化後0.71ドル) 予想0.66ドルを上回る 報道により2.27%高〜1.94%安
シチズンズ 2026年7〜9月期 1.41ドル 予想1.39ドルを上回る 5.41%安

予想の出所は、トゥルーイストとリージョンズがYahoo FinanceとInvesting.comの記事、シチズンズがInvesting.comの記事で、具体的な集計元は明記されていない。株価は通常取引の終値を確認できていないため、取引開始前の値を載せた。

2. 個別決算

トゥルーイスト — 2026年7〜9月期

GAAPの純利益は8.0億ドル、希薄化後EPSは0.56ドル、調整後EPSは1.16ドルで前年同期比12%増だった。総収益は37.5億ドルである。調整後の純利益は14.2億ドルだった(SEC 8-K: Truist)。

GAAPと調整後の差は0.60ドルで、主因は利用可能売却証券の再編に伴う約14億ドル(税引き前)の損失(1株あたり0.90ドル相当)である。これは一過性要因にあたる。一方、貸出債権の売却に伴う貸倒引当金の戻し入れ5.81億ドルが、差を縮める方向に働いた(同上)。

純金利収入は36.6億ドル、純金利マージン(課税相当ベース)は3.00%で前四半期から0.02ポイント上昇した。貸出残高は3,239億ドルで59億ドル減り、これは自動車ローン子会社(RAC)の債権売却による。預金残高は4,132億ドルで0.9%増、普通株式Tier1比率(CET1)は10.7%で0.2ポイント低下した。自社株買いは12億ドルである(同上)。

ライオンズCEOは、事業を絞り込み、資本と経費を強みのある事業に振り向けると説明した。ガイダンスとして、近い将来と長期の自己資本利益率(ROTCE)の目標を達成できるとの自信を示している(同上)。Yahoo Financeによると、10月14日に無担保の個人向けローン「ライトストリーム」の債権77億ドルをカーライル・グループへ売却することで合意した。株価は取引開始前に2.53%下落した。売上高は、予想53.5億ドルに対し、損失を含む37.9億ドル(課税相当ベース)で大きく届かず、損失を除くと53.0億ドルだった(Yahoo Finance)。

リージョンズ — 2026年7〜9月期

純利益は6.31億ドル、普通株主に帰属する利益は6.11億ドルで、希薄化後EPSは0.71ドル(前年同期比16%増)、調整後EPSは0.73ドルだった。収益は19.73億ドル、純金利収入は12.98億ドル、純金利マージンは3.68%である(SEC 8-K: Regions)。

平均貸出残高は991.8億ドル、平均預金残高は1,291.4億ドル、効率性比率は56.2%、CET1は10.8%(推定)だった。株主還元は、自社株買い0.95億ドルと配当2.55億ドルである(同上)。同社は明示的な業績見通しを示していない。

調整後EPSは予想の0.66ドルを上回ったが、収益は予想の19.9億ドルに対し19.7億ドルとわずかに届かなかった。株価は取引開始前に2.27%高と報じられた一方、別の報道は1.94%安としており、方向が割れている(Investing.com: Regions)。

シチズンズ — 2026年7〜9月期

純利益は6.36億ドルで前年同期比29%増、希薄化後EPSは1.41ドル(34%増)だった。収益は23.22億ドル(10%増)、純金利収入は16.75億ドル(13%増)、純金利マージンは3.19%で前年同期から0.19ポイント上昇した。貸出残高は1,482億ドル、預金残高は1,852億ドル、CET1は10.5%、ROTCEは15.1%である(SEC 8-K: Citizens)。

株主還元は、四半期配当を13%増の1株0.52ドルに引き上げ、自社株買いの枠を拡大して総枠19.5億ドルとした。四半期の買い戻しは1.25億ドルである(同上)。

収益は予想の23.4億ドルに対し23.2億ドルと届かず、株価は取引開始前に5.41%下落した。EPSは予想超えで増配もあったが、売上高の未達が重しになったと報じられている(Investing.com: Citizens)。

3. 経営陣が語ったこと

シチズンズのバン・サウンCEOは、外部環境の変動が大きいなかでも、魅力的な収益と利益の成長を続けたと説明し、第4四半期と2027年の見通しに自信があると述べた。ただし具体的な数値目標は示していない(SEC 8-K: Citizens)。リージョンズは、リスク管理と健全性への規律を保ちながら成長を続けると説明した(SEC 8-K: Regions)。カンファレンスコールの質疑の詳細は、今回確認できていない。

4. 業界トレンド

3社の決算から見える共通点は次のとおりである(筆者の整理)。第一に、純金利マージンは3.00〜3.68%の範囲で、リージョンズとトゥルーイストは前四半期から小幅に拡大し、シチズンズは前年同期から0.19ポイント広がった。第二に、EPSは3社とも予想を上回ったが、売上高は3社とも予想に届かなかった。第三に、トゥルーイストは債権や証券の売却で貸出残高を減らし、事業の選別を進めている。第四に、株主還元は拡大しており、シチズンズは13%の増配と買い戻し枠の拡大を発表した。

5. 決算シーズンの進捗

FactSetの10月9日版では、7〜9月期のS&P500の利益成長率は前年同期比29.6%の見通しで、10月9日までに発表した19社のうち84%がEPSの予想を上回り、平均で4.9%上振れた。さらに、決算シーズンを通じた上方修正の傾向から、最終的に35%を超える可能性があるとされる(FactSet: Earnings Insight)。10月16日時点の最新集計は今回確認できていない。

6. 次の注目決算

  • 10月20日(火): ネットフリックスが引け後に発表する予定で、予想EPSは0.82ドル。同日の寄り前には、フィリップ・モリス、GEエアロスペース、RTX、3Mの発表予定がある。引け後にはチャブ、キャピタル・ワンなどの予定もある(TheStreet)
  • ネットフリックスは16日の通常取引で、経営陣の交代と人員削減の発表を受けて2.9%下落した(BNN Bloomberg)。決算で、この影響がどう示されるかが注目点である