前回からの変化

変わったこと(変化・新規)

  • 前回(9月30日)「次の注目決算」で挙げたマイクロン・テクノロジー、ジェイビル、ファクトセット・リサーチ・システムズの3社がいずれも9月30日(米国時間)に決算を発表し、本カテゴリの生成条件を満たした(新規)。
  • 3社とも売上高・EPSともに市場予想を上回る「増収増益・予想超過」の決算だったが、株価の反応は軒並み鈍いか下落となり、数字の良さがそのまま株価上昇に直結しない「好決算でも反応薄い」局面が複数社にわたって観測された(新規)。
  • マイクロンは通期見通しで、来期(FY2027第1四半期)の非GAAP粗利益率見通しがアナリスト予想を下回ったことが株価の重しとなった(新規)。

昨日と同じこと(継続)

  • 暦年ベースの主要企業による本格的な第3四半期決算シーズンは10月中旬以降に始まる見通しに変化はなく、9月30日〜10月1日時点でも閑散期が続いている。

要因の連続性

  • 継続要因: AI関連の設備投資需要の強さは、前回のカーニバルの予約動向に続き、今回はマイクロンのデータセンター向けメモリー需要、ジェイビルのインテリジェント・インフラストラクチャー(データセンター関連)事業の急拡大という形であらためて確認された。
  • 新規要因: ジェイビルの決算説明で、AI・ハイパースケーラー向けにメモリー供給が振り向けられ、他業種向けの供給が逼迫しているという「メモリー供給制約」が新たな論点として加わった。
  • 解消した要因: 前回挙げたカーニバルの燃料費上昇という逆風要因は、本日取り上げた企業の決算には該当せず、一巡した。

1. 本日のハイライト

企業名 売上高 EPS(実績/予想) 予想比 株価反応
マイクロン・テクノロジー(MU) 542.3億ドル(前年比+379%) 33.42ドル/31.61ドル(非GAAP) 増収増益・予想上回る 時間外取引でほぼ変わらず(小幅高)
ジェイビル(JBL) 106.2億ドル(前年比+29%) 4.40ドル/4.06ドル(コア) 増収増益・予想上回る 通常取引でおよそ7%安
ファクトセット・リサーチ・システムズ(FDS) 6.347億ドル(前年比+6.3%) 4.52ドル/4.35ドル(調整後) 増収増益・予想上回る 大きな方向感なし(260ドル前後で推移)

(出典: GlobeNewswire: Micron Technology Reports Record Fiscal Fourth-Quarter Results、SEC EDGAR: Jabil 8-K、SEC EDGAR: FactSet 8-K)

2. 個別決算

マイクロン・テクノロジー(MU) — FY2026第4四半期(6〜9月、9月3日期末)

売上高は542億2900万ドルで前年同期比379%増、GAAP希薄化EPSは32.87ドル、非GAAP(調整後)EPSは33.42ドルだった。LSEGが集計した市場予想(売上高510億7000万ドル、調整後EPS31.61ドル)をいずれも上回った(GlobeNewswire、qz)。

粗利率はGAAPベースで86.8%、非GAAPベースで87.0%。事業別ではコア・データセンター事業が前四半期比56%増の180億ドルとなり粗利率90%を記録、クラウドメモリー事業も162.8億ドルと大きく伸びた。製品別ではDRAMが売上高の73%(397.7億ドル)を占め、データセンター向けSSD売上高は前年同期の10倍超のおよそ100億ドルに達し、AI向けデータセンター需要がけん引役となった(GlobeNewswire)。

通期(FY2026)では売上高1331.9億ドル(前年比256%増)、GAAP EPS74.33ドル、非GAAP EPS75.52ドルといずれも過去最高を更新。営業キャッシュフローは896.8億ドル、設備投資は273.7億ドル、調整後フリーキャッシュフローは623.1億ドルだった。9月30日には1株0.15ドルの四半期配当を宣言している(GlobeNewswire)。

会社はFY2027第1四半期のガイダンスとして売上高615億ドル(上下15億ドル)、非GAAP EPS38.15ドル(上下1.00ドル)、非GAAP粗利率をおよそ86.25%と発表した。粗利率見通しはアナリスト予想(86.7%前後)やバイサイドの期待(87.5〜88%)を下回っており、製造インセンティブ報酬費用の増加が在庫コストを通じて重荷になったことが一因とされる。この粗利率見通しの下振れが嫌気され、決算自体は大幅な増収増益・予想超過だったにもかかわらず、株価の時間外取引での反応はほぼ変わらず(小幅高)にとどまった(ZeroHedge)。

ジェイビル(JBL) — FY2026第4四半期(6〜8月、8月31日期末)

売上高は106億2000万ドルで前年同期比29%増、GAAP希薄化EPSは3.76ドル、コア(非GAAP)希薄化EPSは4.40ドル(前年同期比34%増)だった。ウォール街の予想平均(EPS4.06ドル、売上高96億9000万ドル)をいずれも上回る決算だったが、発表当日(9月30日)の通常取引で株価はおよそ7%下落し、寄り前の時間外取引では6.11%安の299.35ドルまで売られた(Benzinga)。

AI・データセンター関連を含むインテリジェント・インフラストラクチャー事業の売上高は前年同期比56%増のおよそ58億ドルとなり、データセンター向け需要が供給を上回る状態が続いていると説明された。一方で会社は、メモリーがAI・ハイパースケーラー向けに優先的に振り向けられ、ジェイビルが手がける他の多様な最終市場向けの供給が逼迫しているとして、「メモリーの実質的な制約」を新たなリスク要因として挙げた(Benzinga)。

通期(FY2026)では売上高360億ドル(前年比21%増)、GAAP EPS9.75ドル、コアEPS13.09ドル、コア営業利益率5.8%(前年比0.4ポイント改善)。調整後フリーキャッシュフローは15億3200万ドルで、年間10億6000万ドルの自社株買いを実施した。設備投資は6億2800万ドル(有形固定資産売却収入1億5800万ドルを含む)だった(SEC EDGAR)。

FY2027第1四半期のガイダンスは売上高106億〜114億ドル、GAAP EPS2.78〜3.18ドル、コアEPS3.80〜4.20ドル。通期見通しは売上高445億ドル、コア営業利益率6.1%、コアEPS17.55ドル、調整後フリーキャッシュフローおよそ16億ドルとした。設備投資負担の重さや利益率改善のペースを懸念する見方が株価下落の背景にあるとみられる(SEC EDGAR、Benzinga)。

ファクトセット・リサーチ・システムズ(FDS) — FY2026第4四半期(6〜8月、8月31日期末)

GAAP売上高は6億3470万ドルで前年同期比6.3%増、オーガニック売上高は7.1%増。GAAP EPSは3.41ドル、調整後(非GAAP)EPSは4.52ドルで前年同期比11.6%増だった。市場予想(調整後EPS4.35ドル、売上高およそ6億2990万ドル)に対し、EPSは0.17ドル(3.9%)、売上高は484万ドル上回った(GuruFocus)。

オーガニックASV(年間契約金額)は前年同期比7.0%増の25億6820万ドルで、四半期のオーガニックASV純増額は8600万ドルと過去最高を記録した。ASV継続率は95%超を維持。AI関連ソリューションのASVは第4四半期のASV増加分の1割超を占め、FY2026通期では前年から倍増した(Investing.com)。

通期(FY2026)では売上高24億7630万ドル(前年比6.7%増、47年連続増収)、調整後EPS18.01ドル(前年比6.1%増、30年連続の増加)、調整後営業利益率34.5%。株主還元は自社株買い6億4390万ドルと配当1億6420万ドルの合計8億800万ドルで、27年連続の増配となった(GuruFocus、Investing.com)。

FY2027通期ガイダンスは売上高26億〜26億2500万ドル、調整後EPS19.25〜19.65ドル、オーガニックASV成長率5.0〜6.5%、調整後営業利益率34.75〜35.25%とした。決算自体は予想を上回ったものの、株価はおよそ260ドル前後で推移し、大きな方向感は出ていない(GuruFocus)。

3. 経営陣が語ったこと

マイクロンのサンジェイ・メロトラCEOは、AIが「スーパーインテリジェンス」の段階に移行しつつあり、メモリーがこうしたAIプラットフォームの知能と競争力を高める存在になっていると説明した。会社側はFY2027を通じて粗利率が四半期ごとに改善していくとの見通しを示し、第1四半期を「2027年度の粗利率の底」と位置づけた(GlobeNewswire、ZeroHedge)。

ジェイビルのマイク・ダストアCEOは「予想を上回る第4四半期を計上し、売上高21%増・コア営業利益率0.4ポイント改善・調整後フリーキャッシュフロー15億ドル超という好調なFY2026を締めくくった」と説明した。一方で経営陣は、メモリーがAI・ハイパースケーラー向けに再配分されていることで、ジェイビルが手がける多様な最終市場向けの供給が逼迫していると述べ、これを地政学的な混乱も重なった「世界的な生産能力の構造的シフト」と位置づけた(Benzinga)。

ファクトセットのサノーク・ヴィスワナタンCEOは「顧客がAIをより広く導入するほど、当社の基盤的な強みの価値は高まる」と述べ、AI関連ソリューションの拡大が既存のデータ・分析基盤事業の価値をむしろ押し上げているとの見方を示した(Investing.com)。

4. 業界トレンド

3社の決算を並べると、AI関連の設備投資需要が半導体メモリー(マイクロン)、電子機器受託製造・データセンター構築(ジェイビル)、金融データ・分析ソフトウェア(ファクトセット)という異なる業種に共通して業績の押し上げ要因になっている構図が確認できる。一方で、いずれも数字自体は市場予想を上回りながら株価の反応は鈍いか下落となっており、AI関連の高い期待が既に株価に織り込まれていたことに加え、マイクロンの粗利率見通し、ジェイビルの設備投資負担といった「数字の裏側」への懸念が、好決算の効果を打ち消した形だ。またジェイビルが挙げた「メモリー供給がAI・ハイパースケーラー向けに優先配分され、他業種向けが逼迫している」という論点は、データセンター以外の電子機器分野にもAI関連の需要超過の波及が及んでいることを示しており、今後発表が相次ぐ他業種の決算でも同様の供給制約が話題になるとみられる(Benzinga)。

5. 次の注目決算

  • ナイキ(NKE): 10月1日(木)引け後(米国東部時間午後1時15分)にFY2027第1四半期決算を発表予定(NIKE, Inc. Investor Relations)。
  • マコーミック(MKC): 10月1日(木)寄り前にFY2026第3四半期決算を発表予定。市場予想EPSは0.75〜0.76ドル程度(McCormick & Company Investor Relations)。両社とも本レポート時点(10月1日朝・日本時間)では未発表で、結果は次回レポートでフォローする。