前回からの変化
変わったこと(変化・新規)
- 前回「次の注目決算」の筆頭に挙げたブロードコムが9月2日(米国時間)引け後に2026年度第3四半期決算を発表した。前回時点の市場予想(売上高292.4億ドル、調整後EPS3.22ドル)に対し、実績は売上高295.9億ドル(前年同期比+86%)、非GAAP希薄化後EPS3.32ドル(同+96%)といずれも上回った。ただしQ4ガイダンス(売上高348億ドル)が一部で見込まれていたより強気な水準(約350億ドル)にわずかに届かなかったとされ、時間外取引で株価は下落した。 出典: StockTitan、StockAnalysis.com
- 同じく前回挙げたHPEも9月2日引け後に決算を発表した。前回時点の会社自身のガイダンス(売上高115億〜121億ドル、非GAAP EPS88〜93セント)に対し、実績は売上高122.13億ドル、非GAAP EPS1.11ドルと大きく上振れ、通期(FY2026)の売上成長率見通しを34〜37%へ、フリーキャッシュフロー見通しを37.5億ドル以上へ、それぞれ再上方修正した。 出典: StockTitan
- 前回はデル・テクノロジーズ1社にとどまっていた「好決算にもかかわらず反応が鈍い」現象が、本日はブロードコム(時間外-3.6%)・HPE(時間外-0.8%)の2社に拡大した。
昨日と同じこと(継続)
- ズームスケーラーの決算発表(米国時間9月3日引け後、日本時間では9月4日早朝)は前回から変わらず予定通りで、本レポート時点ではまだ結果が出ていない。
- AI関連の設備投資拡大を背景に主要IT企業の売上が高い伸びを続けている構図(前回のデル、本日のブロードコム・HPE)は継続している。
要因の連続性
- 継続要因: AI関連の設備投資・受注拡大は前回のデルの受注残急増に続き、本日もブロードコムのAI半導体売上(+221%)、HPEのクラウド&AI事業(売上90億ドル、+25.4%)の両方で中心的な牽引役だった。また、急ピッチな株価上昇による期待値の高さ(前回のデルは決算前に年初来266%高)も継続しており、HPEは年初来120%高の状態で決算を迎え、好決算・上方修正にもかかわらず時間外株価は小幅安にとどまった。
- 新規要因: ブロードコムについては、Q4ガイダンス(売上高348億ドル、前年比+93%)が伸び自体は高水準ながら一部で期待されていたより強気な水準にわずかに届かなかった点が、新たな下落要因として加わった。決算の「実績」ではなく「先行きの伸び率の減速有無」を市場が厳しく見る局面に移りつつある。
- 解消した要因: 前回懸念されていた「AIサーバーの低マージン化」は、デルに続きHPEでも非GAAP営業利益率が16.2%(前年同期比+7.7ポイント)へ改善しており、この懸念はさらに後退した(ブロードコムは非GAAP営業利益率66%前後を今回・来期とも維持見通しで、この論点自体は該当が薄い)。
1. 本日のハイライト
前営業日(9月2日、米国時間火曜)引け後にブロードコムとHPEが決算を発表した。日本時間では9月3日早朝の発表にあたる。
| 企業 | 会計期間 | 売上高/EPS(実績) | 予想比 | 株価反応 |
|---|---|---|---|---|
| ブロードコム | FY2026 Q3(5〜8月) | 売上295.9億ドル/非GAAP EPS3.32ドル | 売上+0.4%上振れ(Zacks予想294.7億ドル)、EPS+3.1%上振れ(予想3.22ドル) | 時間外-3.6%(9/2 17:02ET、354.00ドル) |
| HPE | FY2026 Q3(5〜7月) | 売上122.13億ドル/非GAAP EPS1.11ドル | 売上+2.5%上振れ(予想119.1億ドル前後)、EPS+19%上振れ(予想0.93ドル) | 時間外-0.8%(9/2 17:00ET、51.40ドル) |
出典: WTOP、StockAnalysis.com、24/7 Wall St.
2. 個別決算
ブロードコム(AVGO)
2026年9月2日発表の2026年度第3四半期(2026年5月4日〜8月2日)決算は、売上高295.9億ドル(前年同期比+86%)、GAAP純利益130.9億ドル(同+216%)、GAAP希薄化後EPS2.68ドル(同+215%)、非GAAP希薄化後EPS3.32ドル(同+96%)。市場予想はZacks Investment Research(アナリスト9人の平均)で売上高294.7億ドル・EPS3.22ドル、別集計のLSEGでは売上高295.2億ドルとされており、いずれの予想もわずかに上回った。 出典: WTOP、PR Newswire
セグメント別では、半導体ソリューション事業が売上208億ドル(前年同期比+127%)、インフラソフトウェア事業(VMware含む)が売上87億5,200万ドル(同+29%)。AI半導体売上は167億ドル(同+221%、前四半期比+54%)で、非GAAP営業利益率は約68%だった。フリーキャッシュフローは137億ドル(売上の約46%、同+95%)で、四半期配当は1株0.65ドル(9月21日基準、9月30日支払)。 出典: StockTitan、PR Newswire
ガイダンスは第4四半期(8〜10月)が売上高348億ドル(前年比+93%)、非GAAP営業利益率は今期同様の66%程度、AI半導体売上高は217億ドル(前年比+236%)へさらに加速する見通し。通期の具体的な数値レンジは開示されていない。 出典: StockTitan
株価反応は「数字と反応のねじれ」が見られた。発表直後の時間外取引では一時+2.8%まで買われる場面があったが、その後のカンファレンスコールを通じてQ4ガイダンスの内容が伝わると失望売りに転じ、9月2日17時2分(米国東部時間)時点では354.00ドル(-3.6%)まで下げた。通常取引は367.24ドル(-0.7%)で終えている。 出典: TipRanks、StockAnalysis.com
ヒューレット・パッカード・エンタープライズ(HPE)
2026年9月2日発表の2026年度第3四半期(2026年5〜7月、7月31日締め)決算は、売上高122.13億ドル(前年同期比+34%、前四半期比+14.4%)、GAAP希薄化後EPS1.06ドル(四半期純利益15.4億ドル)、非GAAP EPS1.11ドル。市場予想(StockTitanの集計、具体的な出所機関は非開示)は売上高119.1億ドル前後・非GAAP EPS0.93ドル前後で、売上は+2.5%、EPSは+19%上回った。前回レポートで挙げた会社自身のガイダンス(売上高115億〜121億ドル、EPS88〜93セント)に対しても上振れている。 出典: StockTitan
セグメント別では、ネットワーキング事業が売上29億ドル(前年同期比+74.9%)で、うちデータセンター向けが3億8,200万ドル(同+112.2%)、ルーティングが7億8,800万ドル(同+270%)と高い伸び。クラウド&AI事業は売上90億ドル(同+25.4%)で、うちサーバーが68億ドル(同+35.3%)、ストレージが13億ドル(同+10.2%)。営業利益率はネットワーキング事業22.0%、クラウド&AI事業17.0%と、全社の非GAAP営業利益率16.2%(前年同期比+7.7ポイント)を押し上げた。 出典: StockTitan
通期(FY2026)ガイダンスは、売上成長率34〜37%(上方修正)、非GAAP営業利益成長率100〜105%、フリーキャッシュフロー37.5億ドル以上(いずれも従来から上方修正)へ引き上げられた。CEOアントニオ・ネリ氏は「記録的な売上・受注・収益性」「AIは複数年にわたる成長ドライバーになりつつある」と説明した。 出典: StockTitan
株価反応も「数字と反応のねじれ」が見られた。決算発表(9月2日16時5分、米国東部時間)前の通常取引は決算期待から51.83ドル(+1.9%)まで買われていたが、記録的な決算・上方修正が伝わった直後の時間外取引(17時)ではむしろ51.40ドル(-0.8%)へ小幅に下げた。年初来120%高という既に高い株価水準が、好材料の織り込み済み感につながった可能性がある。 出典: 24/7 Wall St.、StockAnalysis.com
3. 経営陣が語ったこと
ブロードコムのCEOホック・タン氏は「カスタムAIアクセラレータとネットワーキング向けの需要は非常に強い」と述べ、Q4のAI半導体売上高が217億ドルまで加速する見通しを示した。CFOアミー・チューナー氏はQ4の非GAAP営業利益率について「66%を維持する見通し」とコメントしており、特定顧客名への言及や受注残(バックログ)の具体的な金額は今回の発表資料からは確認できなかった(前四半期までの決算では受注残の言及があったため、開示の一貫性は今後の決算説明会で確認したい)。 出典: StockTitan
HPEのCEOアントニオ・ネリ氏は「顧客の旺盛な需要がポートフォリオ全体を牽引した」「AIは当社にとって複数年にわたる成長ドライバーになりつつあり、差別化されたポートフォリオが大規模な機会を獲得できる立場にある」と説明した。AIサーバーの受注残についても「記録的な水準」との言及があったが、具体的な金額は決算資料では開示されていない。 出典: StockTitan
4. 業界トレンド
- AI関連の設備投資拡大は、前回のデル(受注残513億ドル→950億ドル)に続き、ブロードコムのAI半導体売上(+221%)、HPEのクラウド&AI事業(+25.4%)でも確認され、インフラ供給側の決算が軒並み高成長を示す構図が続いている。
- 一方で市場の見方は徐々にシビアになりつつある。ブロードコムは今回の実績自体は市場予想を上回ったにもかかわらず、Q4ガイダンスがより強気な一部の期待値にわずかに届かなかっただけで株価が時間外で3.6%下落した。HPEに至っては予想を大幅に上回り通期見通しも引き上げたのに、時間外株価はほぼ横ばい(-0.8%)にとどまった。デル・マーベル・HPに続きこの2社でも「好決算=株高」という単純な構図が崩れており、AI投資テーマの息の長さそのものより「どれだけ加速し続けられるか」に投資家の焦点が移っていることを示唆する。
- 決算シーズンはS&P500全体では大部分が発表を終えており、ブロードコム・HPEのように会計年度末が7〜8月にずれる企業がシーズン終盤の話題を提供する形になっている。9月前半はズームスケーラー・オラクルなど会計年度がずれた企業の決算が続き、AI関連需要の強さが企業横断で続くかどうかの検証が続く見通し。
5. 次の注目決算
- ズームスケーラー(Zscaler): 米国時間9月3日引け後発表予定(2026年度第4四半期・通期、日本時間では9月4日早朝)。会社ガイダンスは売上高8億7,500万〜8億7,800万ドル(Zacksコンセンサス8億7,710万ドル、前年比約22%増)、非GAAP EPS1.08〜1.09ドル(前年比約22.5%増)。同日にはドキュサインやユーアイパスなど他のIT企業の決算も予定されている。 出典: Yahoo Finance
- オラクル(Oracle): 米国時間9月10日引け後に2027年度第1四半期(2026年6〜8月)決算を発表予定。クラウドインフラ(OCI)向けのAI関連需要と設備投資額が焦点になるとみられる。 出典: StockTitan

